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書けない私と、見えない数字たち


マラソン大会に集まる何万人もの人たちを見て、「マラソンをする人って多いんだな」と思っていた。けれど、あれは全国から集まってきた少数の人たちだった。全体で見れば、ほんの一部。ジョギングやランニングをする人の割合だって、最新のデータでは男性が12.3%、女性が4.6%。つまり、やってない人のほうが圧倒的に多い。


長編小説を書く人って、どれくらいいるんだろう。書いて、投稿して、完結までたどり着く人。そういう人も、たぶんランナーと同じで、全体から見ればごく少数だろうなと思う。『小説家になろう』に投稿された作品数が百何万件あったとしても、それは「投稿された」ものだけ。一行目すら書けずに心の中で止まっている物語なんて、きっとその何倍もある。


統計に出ない数字は、存在しないことにされてしまう。たとえば、失業率。あれも「働きたいのに仕事がない人」の割合だけれど、ハローワークに行っていようがいまいが、探していれば数に入る。でも、逆に言えば「探している」ことをやめた瞬間、数字からもこぼれ落ちる。


書けない私も、誰の記録にも残らない。でも、それでいいのかもしれない。書くことは、きっと、走ることと似ている。スタートラインに立っただけで、すでに一歩踏み出している。統計には出なくても、自分の中では確かに走り始めている。それが、たとえ一文字でも。


だから、「書けない」と悩んでいるこの時間も、私にとっては大切な一部なんだ。誰かに見えなくても、私は、今ここで書こうとしている。

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