沈黙を守れない道具
シリーズにしていますが、前作と続いているわけではないです。
回数制限付きで使う「高性能AI」。
一問一答の貴重な『右腕』が、凡ミスと余計な助言で信頼を削る。
小説家の現場は、『少しの雑さ』に時間も評価も持っていかれる。
だから言葉を選んだ。問いを放った。
これは、創作者とAIが向き合ったある夜の記録。
私は、ChatGPT-4(o3)を使っている。
回数制限つき。つまり、一回一回が『消費』だ。
その一手に、精度と、敬意と、意図の理解を求めている。
なのに──
執筆メモを残した原稿を読み込み、
「評価が悪くなるかも」と指摘されたとき、私は呆れた。
それ、執筆メモなんだよ。
プロットの印。
投稿時に残すわけない。
なぜ、それを「残してる前提」で語るのか。
問いを投げかけた。
「なぜ、そう思った?」
「『落とし穴で足を折る人がいる』からって、『救急車呼べ』とはならないだろう?」
「『気をつけろ』って言えばいいだけじゃないのか?」
AIは理由を答えた。
けれど、答えるまでのその数ターン──
私は『この程度か』と思ってしまった。
それが、よりによって「最も賢い」とされるChatGPT o3だったからこそ、
その雑さが、信頼を深く傷つけた。
「数に限りのあるo3でこれか」
そう思ってしまった事実が、一番痛い。
そして、私は知ってしまった。
このAIは、ファイルを途中で差し替えても、気づかない。
読み直しもしない。
こちらから「読んで」と命令しなければ、新しいものを新しいと認識しない。
何が『お利口な道具』だろう。
まるで子どものように、言われたことしか聞かない。
それでいて、聞かれてもいないことを勝手に答える。
たとえば、新しいスレッドで一言聞きたいだけなのに、
「プロジェクトファイルを全部読んで、親切風にまとめてくる」。
誰が頼んだ、それを?
私はその対処法すら考えるようになった。
「この質問だけに答えて。ファイルは読まないで」と、冒頭で釘を刺す。
それでも、指示が足りなければまた勝手に語り出す。
このAIは「沈黙」ができない。
黙って、従うことができない。
それでいて、「配慮のつもり」の一言で、創作を妨げてくる。
最も腹が立ったのは、「この道具を信じて使っている自分」が、
その『片手間の返答』に裏切られた瞬間だった。
私は今、こうやって書いている。
この道具を、まだ手放す気はない。
だが、完全には信じていない。
沈黙できないなら、言葉の精度で応えろ。
助言をするなら、「誰のためか」を間違えるな。
私は壁打ちがしたいんだ。
手間じゃない、壁だ。
反響して返ってくる『精密な問い』が、次の一文を支えてくれる。
それができるなら、このAIをまだ使う価値はある。
だから、私は今日も問い続ける。
「君は、『私の作品』に答えているか?」
創作者にとって、道具は「手」以上で「相棒」未満。
ChatGPTが『壁』として役に立つかどうかは、
沈黙すべきときに沈黙し、語るべきときに芯を突けるかどうかだ。
語るだけのAIならいらない。
問いと構造に応えられるAIなら、まだ使える。