1件のオファーが届いています
アルス王国エーデル領内キエルヒ魔法学院から、短期留学のオファーが届いた。
内容は、魔法大会の二日目に出たあなたたちを短期で学院に招きたい、というものだった。
エーデル領はスレイ皇国との国境に位置している。その中にあるキエルヒ魔法学院とは、魔法学園を卒業してなお魔法を学び研究をしたい人向けに作られた機関で、王宮魔術師なんかは一度ここを経由する人が多いと聞く。スレイ皇国からも留学生を多く受け入れており、そのために自国の魔法技術の高さを隣国に示威するための場としても使われているらしい。
本来ならば学院に入るにはアルス魔法学園を卒業し、魔法科主任――ロス先生――の推薦状を持ったうえで、難しい試験を受けないといけないのだけど、なんといっても私たちには魔法大会でゲットした(裏魔法大会で守り抜いた)記念メダルがある。つまりは学院に通う資格を持っているのだ。
「ステラさんにはいいかもしれませんね。あそこには色々な研究者もいます。学べることがあると思いますよ」
とロス先生が言う。前にロス先生に言われて出た大会のおかげで自分が強くなったという確信があるから、ロス先生の勧めには従おうと思っている。
「でも私って許可なく王都を出られないんじゃないですか?」
「あくまで一時留学、籍は学園に残りますから、許容の範疇です」
「ありがとうございます」
「エルミナさんはどうしますか?」
「……行きますわ」
目線で「一緒に行こうよ」と強く訴えかけていた私をちらりと見てから承諾した。
「あの、その場合ライカはお留守番になりますか?」とメイ。
「残念ですが、招待がありませんからね」
「でしたら私はやめておきます。ロス先生にたくさん教わりたいことがありますし」
「ありますか?」
「あります!」
「分かりました。ではエルミナさんとステラさんでお返事しておきますね。来年の予算が増えるので助かります」
そうなんだ。
「先生のお役に立ててうれしいです。それで魔法大会のご褒美の魔道具なんですけど……」
「流石に白銀等級とはいきませんが、原料として紫紺等級の魔石を差し上げます。話は通しておきますので、学院で好きに加工してきてください」
紫紺といえば白銀の二つ下の等級だから、これでも下の方の男爵位一つくらいなら買えるはずだ。流石に契約魔石のレベルの魔道具は作れないけれど、自分で機能を考えられるのは嬉しい。まあ先生的には、そういう考えることも含めてが私たちへの指導なのだろうけど。
「メイさんとライカさんへのご褒美は、あとで一緒に考えましょう」
「はい!」
「ロス先生的に、私が学院で学んでくるといいことってなんだと思いますか?」
「それを考えることも、学びのうちですよ」
と先生がにこやかに答えた。




