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95話 ムカついたんでバックレますけど!? ④



「さて、此処からはお待ちかねの『シャドウ』のゾーンだ。

先ずは俺がお手本をお見せしよう」



 あの後も猛スピードで階層を攻略して行った俺達。

 20階層小ボスのエルダーハーピーを雪乃ちゃんのクナイで瞬殺し、21階層からの亡霊ゾーンは俺と彩音が蹂躙して行った。


 そして、今足を踏み入れたのは31階層。

 此処からは事前に特訓しておいたシャドウの出現ポイントだ。


 シャドウは世界各地のAランクダンジョン中層にイレギュラー出現する個体で、TGTグランド・フラワーアリーナダンジョンのように群れて配置されている事は他に例が無いらしい。



 少しペースを落としながら進むと、早速シャドウが3体近付いてきたので、俺は後方のベイツとミュイに声をかけて体勢を整えた。



「先ずは強化個体という事で、事前の分析と相当な差があるはずだ。

なので、序盤は敢えて余裕を持った立ち位置で応戦する!


目安としては練習の時より一歩半、距離を取る感じかな」



 俺は説明通りに先頭の1体から若干距離を長めに取り、ヤツの貫手や手を斧にした振り下ろし、横薙ぎを次々と躱して行く。



 うむ、所管ではリーチとしては10センチ、パワーやスピードは12%増しという所か……予備動作は全く変わらない……と……



《コレは無理ゲーwww》

《イケメンニキとユキノちゃん以外でシャドウの攻撃は躱せないと思われ》

《彼等はパーティーメンバーに盾役を必要としないのか?》

《やはり動きが速過ぎて所々の残像しか見えんwww》

《なお、2体は既にユキノちゃんとアヤネ様が瞬殺した模様》

《シャドウたん涙目www》

《恥知らずなピザデフは先程からユキノのバストばかり見ている…》

《ホンマや!2体消えとる!ユキノたんとアヤネたんが有能過ぎて草》



 視聴者は今更気付いたのか……先頭の1体が攻撃を仕掛けたと同時に、雪乃ちゃんのクナイと彩音の聖属性魔法が他2体を吹き飛ばし済みなんだが……



 さておき、16発連続でシャドウの攻撃を躱しつつ、ヤツの動きを確認したのでそろそろ攻撃と行こう。


 攻撃に転じる判断をした俺は半歩分距離を詰め、この個体が得意としているっぽい斧型変形した腕の振り下ろしを誘った。



スシュッ!!



「ククク、ど素人が!

フンッ!!」



バシュンッ!!



 初動で右へサイドステップした俺氏は、体勢が前のめりになって頭部の位置が下に下がったシャドウの顔面にカウンターの左フックをお見舞いした。

 ヤツの頭部は一瞬で弾け飛び、ワンテンポ遅れて全身が黒いモヤと化して行く。



「どうだ?ミュイ、ベイツ、次のシャドウとヤれるか!?」



《ニキは鬼か!?》

《この男は何という非道な提案をするんだ!?》

《もしかして、ミュイとベイツに戦えって言ったのか?》

《ニキは何と言ったん?》

《散々走らされて、体力消耗している2人には死の宣告に等しい》

《翻訳班:正確には戦えではなくて、ミュイとベイツに戦ってみないかと提案した感じ》

《NIKI、我々が間違っていた!謝るから2人を見逃してくれ!》

《翻訳班ナイス!てかニキが相変わらずの脳筋でワロスwww》



 ククク、ど素人の視聴者共はミュイとベイツを舐め過ぎだ……


 2人ならばまだ体力に余裕はあるはず。

 しかも、通常あり得ない程のスピードで2人は体捌きの技術を体得しておる。

 ここでやらないという選択肢を持つようなアマちゃんでは無い。



「ありがとう、ユーキ。

躱している所をゆっくりと見せてくれたおかげで、強化体の動きが補完出来た。


次のシャドウはやらせてくれ!」


「……ペッ!!

上からウザい。

言われなくてもミュイはヤるつもりだった」



 うむ!それでこそプロ格闘家だ!

 ミュイには相変わらず唾を吐かれはしたが、表情は昨日よりも穏やかな感じがする。



 俺は闘志を漲らせる2人にメインアタッカーを任せ、雪乃ちゃん達と共に2人のサポートに徹するのだった。




◆◇◆◇◆




「ハァ…ハァ…も、もうダメ……や、休ませ…うぇぇぇえ!」


「メアリー、生配信でゲロを吐くな!

あと、他の連中も吐くならボス部屋で吐け!

ボス部屋前でグズグズして、前みたいに直前にダンジョンがスタンピード状態になって、3ランク上のボスが召喚されたら堪らんからな」



 あの後、中ボス部屋まではミュイとベイツを中心にシャドウゾーンを進み、40階層中ボスのダークリザードは雪乃ちゃんと彩音のコンビプレイで瞬殺。

 41階層からは再び亡霊系が増えたのでミュイ達とメインアタッカーを交代して、『ガチ勢』メインで蹂躙マラソンを再開。


 遂に最下層の60階層ラスボス部屋前に到達した。

ボス部屋前に着くなりへたり込んだゲロを吐こうとするメアリーに、俺は心底呆れながら発破をかける。



《イケメンニキは日本のみならずアメリカに対しても容赦無いな》

《Aランクダンジョン完全攻略は4年振り2回目か…》

《正直、『VISITORS』トップパーティーの『S.W.A』と日本の良く分からんパーティーの2組だけで攻略なんて、馬鹿げていると思っていたよ》

《アメ公ども。今後は日本が世界に誇るユーキ・カミシロ様に毎朝晩祈りを捧げろよ》

《確か4年前のイングランドのリバプールAランクダンジョン攻略は、英、米、仏、独、韓から計8組のSSランクパーティーによるレイドで攻略したんだよな》

《ミスター・カミシロ、アメリカ国民を代表して、私が謝罪する。我々が間違っていた。

誠に申し訳ない》

《アメリカのパイロン大統領が公式の場でイケメンニキに謝罪しとるwww》

《8組レイドの時は、英、米、韓のSSランクパーティー5組が全滅したんだよな。

で、今回は実質『ガチ勢』1組で無傷の完全攻略www》

《【悲報】合衆国大統領、日本のイケメンに謝罪する【パイロンザマァwww】》

《4年前は8つのパーティーで5日掛かり。パーティーの半数以上を犠牲にして何とか攻略w

今回はシャドウ以外は殆どニキパのみ、被害0で3時間で攻略wwwヤベェ、草しか生えねえwww》

《パイロンが掌返して草www》

《昨日はニキに憤りを覚えるとか、日本政府に抗議するとか言っていたパイロンが、今日は禿げ散らかした頭を下げとるwww》

《嘘だろ、大統領…ジャップに謝罪なんてするなよ…》

《ア  メ  公  ザ  マ  ぁ  www》



 何だかコメ欄は日本人視聴者がアメリカ国民を馬鹿にして、アメリカの視聴者は殆どコメントしてないな。



 てか、パイロン大統領が俺に謝罪とかマジ!?

 昨日、公式会見で俺をアレだけボロクソ言ったのに!?



 アレはマジでイラっとしたから、部屋に行く前にかましておくか。



「ヘイ、パイロン!ファッキュー!!

今更頭下げるとか遅えんだよ!!全世界に流れる公式会見で、俺を名指しで批判しやがって!!

テメェみてえなクソが言葉だけで謝罪しても許さねえからな!!


今後もアメリカを助けて欲しかったら、詫び金として1兆ドル持ってこいや!

自国のダンジョンを自力で解決出来ない能無し大統領の癖に調子乗ってんなよ!!」



《ニキがパイロンにFワードを使ったぁぁあ!!》

《ファックされて当然だろ。他国の一個人を大統領が名指しでディスるとか、普通に有り得ないし》

《俺、アメリカ人だけど、大統領は確かにやり過ぎだったと思う》

《パイロン、ハラキリだ!》

《ふざけるな!合衆国大統領をお前如きが非難するな!》

《アメリカにはAランクダンジョンがまだ40箇所以上残ってる。パイロンのハラキリでユーキに助けて貰えるなら、安いものだ》

《ハラキリは良い案だ!俺らがユーキをバッシングするきっかけが大統領サマの演説だったんだからな!》

《【悲報】アメリカニキ、大統領にハラキリを要求》

《日本人としてはパイロン単騎でAランクダンジョンにBANZAIアタックを仕掛けて貰いたいけどな》

《ハラキリ!》

《パイロンはハラキリだ!》



 煽り過ぎて物騒な流れになったか?

 まさかのアメリカ人達が大統領に厳罰を望み出したゾ!?


 幾らクソな大統領でも、腹を切られては寝覚めが悪い。

 此処は奴等に釘を刺さねば……



「ハラキリなんて必要ない!

ジジイの死体が増えた所で俺には何の得もないからな。

ハラキリなんてしなくて良いから金だ!

とにかく謝罪として1兆ドルを寄越せ。それ以外の謝罪は認めない。


じゃ、ボス部屋凸してくるわ!」



 俺はドローンのキャメラに向かってそう言うと、バテている『S.W.A』メンバーと雪乃ちゃん、彩音を連れて最下層ボス部屋へと凸を仕掛けたのだった。



◆◇◆◇◆



 事前の調査によると、Bランク以上のダンジョンの最下層ボス部屋はダンジョンランクの2ランク上の強化個体が出るらしい。

 つまり、Aランクダンジョンの最下層ボスはSSランク魔物の強化個体という事になる。

 SSランクの強化個体ともなれば、流石の格闘玄人の俺でも楽観は出来ない。



 さて…此処のボスはどんな個体なんだ?


 俺は部屋の中央に煌めく召喚魔法陣を眺めながら、しっかりと臨戦体勢を整える。

 どのような攻撃が来ても対応出来るように。



 因みに、『S.W.A』のメンバーは、彩音が部屋の隅の方に張った結界の中でグッタリしている。


 ミュイだけは少しだけスタミナが残っているらしく、ボス戦に加わりたいと言って来たが、暫くは俺達の戦いを見ているように伝えてある。

 様子を見て大丈夫そうなら、今後の彼女の経験の為に途中合流もアリだ。


 静かに集中力を高めて居ると、召喚魔法陣が強烈な光を放ち、中央から矢鱈とデカい体格の魔物が姿を見せた。



《ミノタウロス?》

《ミノタウロスだ!》

《いや、ミノタウロスはAランク魔物のハズ!それにあんなにデカく無い!》

《じゃあミノタウロスキングか!?》

《西アフリカを壊滅させたヤツじゃね?》

《確か…アフリカの何処かでスタンピードが起きた時に出て来たダンジョンボスじゃないか?》

《逃げろ!アイツはガーナのクマシダンジョンがスタンピードを起こした時に出て来た最下層ボスだ!

ヤツによって、ガーナとコートジボワールが壊滅的な被害を受けたんだ!》

《ミノタウロスキングか…シャレにならんわ……》



 コメ欄が一気に緊迫したコメントで溢れ出した。



「確かにコレは……ついてないな……」



 俺はそう呟くと、右斜め後ろに位置どりしていた雪乃ちゃんに目線を送る。

 雪乃ちゃんも適度に緊張を纏った表情で、コクリと頷いた。

 俺の言わんとする事が伝わったらしい。


 続いて左斜め後ろに位置取る彩音にも目線を送る。

 彼女も俺の意図が分かったようで、頷いて見せた。



 メンバーとの意思疎通が取れた所で、俺はミノタウロスキングに向かって一気に距離を詰める。

 その瞬間、召喚魔法陣を覆っていた結界が消え、身長3m程のミノタウロスキングが馬鹿デカい斧を振り上げる。



BUMOOOO!!


スドゴォォォォーー!!



 目にも止まらぬスピードで振り下ろされた斧を咄嗟のサイドステップで避けた俺氏。

 しかし、ダンジョンの床に斧が直撃した時に発生した衝撃波で、俺は体毎吹き飛ばされる。



「ユーキ!!」

「いやぁぁっ!」



 ボス部屋にミュイとメアリーの悲痛な声が響いたのだった……。



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