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91話 『ディアブロ』の幹部にヤられてしまうヤツ 後編


挿絵(By みてみん)




吉永(よしなが)美優(みゆう)視点》



「て、テメェ!何で下着を付けてやがる!?」



 スプレーで汗を抑えた私は、ヤツの視線が切れたタイミングで素早く下着を身に付けた。



 ヤツはその事に気付いてガミガミと言っているが、もう遅い!



「決まっているだろう?

貴様と一戦交える為だ。

ふぅ……タオル一枚では大胆な動きが出来なくてジリ貧だったが、コレで随分と動き易くなったな。


で、どうだった?

私の悩殺『全身火照り尻肉チラリ見せ振り返りウル目アタック』の破壊力は!?」


「ク、クソ!!

あのエロさは罠だったっつうのか!?」


「ククク……お前がアホな助兵衛で助かった……ゾ!」



ゴンッ!!



 私はそう言うと同時に一気にステップインをして、ヤツの粗末な股間を目掛けて前蹴りを入れた……が、案の定ヤツが一瞬で周囲に展開した防護結界によって前蹴りは防がれた。


 

「もうムカついた!

こーなったら木偶状態でも構わねえ!ナイフで切り刻んで薬漬けにしてから肉便器にしたらゼェ!!」



 くっ、体術素人にステータスゴリ押しで来られるというのも中々しんどいモノだな……

 だが、今は弟クンで言う所の『(けん)』に徹する時間だ。



 力制限の魔導具を全解除した今、【姫騎士】の私に見切れぬ攻撃など無い!!



 私はヤツの初動に応じて、最適な距離を取れるように立ち回る。

 ヤツの利き手、リーチはインプット済み。後はヤツの足位置と初動の癖を注視して、周囲の障害物に注意すれば、幾らヤツのステータスが私を上回ろうが問題無く躱し続けられる。



「クッ!な、何故当たらねえ!?

『ソウルキャンディ』で俺は1時間無敵のハズだっつーのに!!

さっき迄は手加減してたっつーのかよ!?」


「それは当然だろう?

あんなバスタオル一枚で激しく動いたら、貴様に大事な所を見られてしまう。


生憎、私は弟クン以外に大事な部分は見せない主義なんでな!」



 ククク……ヤツは相当焦っているな……

 ヤツは全てが力任せで動きがチグハグ。前重心になり過ぎた上に力任せにナイフを振るっては、時折稚拙な蹴りを入れて来る。

 攻撃の繋ぎもバラバラで脱力も出来ていない。



「フ、フヒヒヒ!こ、攻撃したくても出来ねーよなぁ?

そんな濡れたバスタオル一枚じゃ、何も出来る訳がねえ!!

こ、このまま攻め続けりゃ……い、つか、あ、当たるぜ!」


「ククク、息が切れているが大丈夫か?

魔力切れよりも先にスタミナ切れを起こすとは、何ともお粗末だな」



 更に煽るような事を言ってみたんだが、ロン毛の重長は私の言葉に反応出来ぬ程バテているようだ。


 幾らステータスが上がろうとも、強い力を平均して長い時間出し続けるには日頃の基礎トレーニングが重要だと弟クンが動画で言っていた。


 私も全くの同感だ。

 格闘技に於いてスタミナはとても重要であり、戦闘でのスタミナ程、その時の状況や緊張、相手との相性、精神面等によって変動するモノは無い。


 例えば、毎日20キロを走り、スパーを10ラウンドやり切るスタミナのある選手が居たとしよう。

 その選手が、普段よりも大きな会場で相性の悪い相手と試合をすると、僅か4Rでスタミナ切れを起こす事はままある事だ。


 相手と戦っている最中にスタミナ切れを起こす程過酷な事は無い。

 ガードをしたくても腕が上がらず、攻撃も繰り出せなくなる。

 頭も回らなくなり、冷静な判断も出来なくなる。僅か3分が1時間以上に感じられる事すらある程だ。

 

 ロン毛君は戦闘中のガス欠という地獄に落ちてしまった訳だ。


 動きに精彩も無く、基礎スピードは速いものの狙いを絞る事も出来ずに何とかナイフを振り回すだけ。

 当然、私は軽々と躱して“その時”を(うかが)う。



ブオンッ……



「ココだっ!!」



 ロン毛君が乱雑に横一文字にナイフを振るい、空振った勢いでバランスが崩れた。

 私は濡れタオルを振るってヤツの左手首を絡め取り、掴んでいるナイフを剥ぎ取った。



……漸く手に入れたゾォ……大雑把な分類ではナイフも剣だと言えなくも無い……EX職業スキル【姫騎士】の本領発揮だ!!



「ククク……コレで貴様を結界毎切り裂ける……



喰らえ!【ヴァルキリー・スプラッシュ】!!」



ザシュンッ…ピキピキィィ……



「ひげはぁぁぁぁあ!!

あぁぁあ!!い、いであぁぁぁ……あ、あで?いだぐねぇ……」



 私はUR戦闘スキル【ヴァルキリー・スプラッシュ】を使い、アーミーナイフを逆一文字に振るった。

 氷結魔力を内包した斬撃波が刃から放たれ、ロン毛君の防護結界ごと両脚とタマタマを切断して見せた。

 スッパリとイッた切断面は氷結魔法の干渉でガチガチに凍っている。



「ふぅ……人間との一対一の決闘には慣れていないから、殺してしまわないかドキドキしたが上手く加減が出来て安心した。


……さて、ロン毛の重長(オモナガ)君には『ディアブロ』の事を色々と話して貰わないとな」


「クッ……殺せぇ……」


「ククク。『くっころ』は姫騎士が陵辱されそうな時に吐くセリフだぞ?

姫騎士に対してそのセリフを使ったヤツは君が世界初じゃないのか?


先ずは何故、弟ク…神城雄貴の関係者を拉致ろうとした?」


「……だ、誰が話す……ひぇぇえ!」


「分かるか?タマタマの切断面の冷気は徐々に君の粗末な竿に上がっている。

早く話さないと少しずつ竿が壊死しちゃうゾ?」


「わ、分かった!は、話すから……」



 ロン毛君が口を割ろうとした瞬間、突如黒装束の男がロン毛君の背後に現れて、バックチョークをして……



グジュゥッ!



 ゴツいアイスピックのようなモノをロン毛君の脳天に突き立てた……



 クソ、口封じに重長(オモナガ)をヤられてしまったか……



バキャァァアン!!



「あ〜あ、女風呂に逃げ込むんだもんなぁ。

ディスアキィ?ボク自ら出向いてやったのにどうして逃げる訳?」



 ムッ!?結界をブチ破って別の全身黒の男が入って来たゾ!?

 コッチはシュッとした細面の金髪イケメン君だ。

 弟クンと同系統イケメンというヤツか……はぅぅ……弟クンを思い出してお股が大変な事になっちゃうじゃないか……



 イヤ、今はそれどころでは無い。

 金髪イケメンはロン毛の頭にアイスピックを突き立てる変な男の背後を取り、頭を鷲掴みにしている。



挿絵(By みてみん)



 2人とも私に気取らせぬ気配の殺し方から超一流の使い手のようだな……



「なぁ、『ディアブロ』の幹部さぁん。

もう逃げられないよぉ?大人しく『蜷川コーポレーション』との関係や日本に潜伏している『ディアブロ』の構成員の人数、後はアジトかな?洗いざらいゲロしちゃって?」



 金髪イケメンは軽い感じで黒装束の男に声をかけている。

 黒装束の男は微動だに出来ないようだ。


 この金髪の男が放つ憎悪の籠った殺気が場に充満している。

 部外者の私ですら下手に動くと殺されそうだが、そもそもここは私の場だったのだ。

 外から来た2人に引っ掻き回されているのだから、一言言ってやらないと気が済まない。



「いきなり来て、好き勝手やられては困るな。

貴様らは一体何なのだ?」


「あ、どうも失礼してまぁす。

女風呂に入り込んでおいて説得力ゼロだけど、ボクは変質者じゃないからナイフで刺さないでネ?」


「いや、さっきから横目で私の股ぐらをチラチラ見ておいて、変質者じゃないというのは通らないだろう?


お面の男は私の獲物を殺しやがったし、貴様は女子更衣室に入って来てイヤらしい目を私に向けている。

貴様のせいで高級ブランドのおパンツがグショグショになってしまったではないか!


どう落とし前をつけるつもりだ?」


「クッ……い、いや、そりゃあ貴方のようなスタイル抜群の美女が下着姿で立っていたらボクじゃなくても見ちゃうでしょ?

何か、お股の所はシャレにならんくらい濡れてるし」



 く、くそう…指摘されて初めて気付いたが、本当にシャレにならん程濡れてしまっている……

 弟クン……はしたない姿を他の男に見られてしまった……許してくれぇ……



「貴様のせいだ!貴様が弟クンっぽいイケメンだからこうなったんだからな!」


「え、あ、ご、ゴメンなさい…っていうか『弟クン』が誰だか知らんけど……


いや!今はそんな場合じゃないんですよぉ!

ボクは『暁月』というクランでリーダーをしている時雨(しぐれ)と言います!

このお面野郎は闇組織『ディアブロ』幹部のディスアキというクソ外道ッス!!


おい、ディスアキ!

少しでも変な真似をしてみろ?お前の脳みそを一瞬で凍らせるからな!!」


「何?『ディアブロ』の幹部だと?

ソイツが頭を一突きしたそこのロン毛も『ディアブロ』の幹部という話だが?」


「それは誤った情報だ!

こんなチンピラは幹部などでは無い!」



 む?急に無言を貫いていた仮面男が話し出したな。

 こんな怪しい男の言う事など信用出来ないが、確かにロン毛の重長は悪名高い『ディアブロ』の幹部にしては実力不足に感じるな。



「お面の貴様は幹部だと言ったな?

何故そのロン毛は弟ク…神城雄貴の関係者である私を拉致しようとした?」


「それはこのアホが勝手に先走っただけだ。

我々は神城雄貴を最大限に警戒はしているが、敵対したい訳ではない。

あくまでも神城の関係者を我々の計画に巻き込まぬよう、神城と交流のある人間達の監視を命じていただけだ」


「えっ!?お姉さん、神城君の関係者なの!?」



 お面男とのやり取りを聞いていた金髪イケメンの時雨クンが、急に大声を上げて私の方を二度見した。

 二度目は股ぐらに視線が行っていたが。



「うむ。私は弟クンこと神城雄貴の正式な婚約者だぞ!」


「嘘ぉん!!

神城君ってば、清川さん以外にこんな美人さんまで婚約者にしてんのかよ!!


おい…ディスアキ…そろそろ『蜷川コーポレーション』とのやり取りを全て白状しろ……何かイラ立って来たからいつまでもダンマリ決めてっとマジで殺すぞ?」


「ククク。殺せば良いだろう?

俺は命令を無視して組織を窮地に追いやったオモナガを始末出来れば……」



ベキゴシャァッ!!



 お面幹部のディスアキとやらが金髪イケメンの時雨クンを挑発した瞬間、ディスアキはの頭部が弾け飛んだ。

 時雨クンが至近距離から【アイスジャベリン】を放ったのだ。



「チッ!蜷川製の発信機を持ってねえ!ディスアキも外れだったかぁ……」



 時雨クンは死体の懐を漁った後、残念そうに呟いた。

 何やら彼は『ディアブロ』と因縁がありそうな雰囲気だが、今回のロン毛による弟クン関係者拉致事件が『ディアブロ』の指示では無いらしいので、時雨クンと『ディアブロ』の関係とかはどうでも良い。



 ただ……



「ふっふっふっ!死体も【アイテムボックス】に入れたようだし、時雨クンのミッションは終わったな?」


「え?あ、ああ。まぁ……」


「良し!では、私のお股をこんなにした責任を取って貰うぞ!!

さぁ、取り敢えず此処を出て然るべきホテルに行こう!」


「ちょ、ちょっと待って!

神城君の婚約者に手を出すとか、彼に殺されちゃうよ!!」



 服を着た私が彼の手を引いてカプセルホテルを出ようとすると、時雨クンは大慌てで私の誘いを断りやがった。

 男の癖に下着姿のチラ見だけで終わろうとするとか、何と情け無いヤツだ。



「大丈夫だ。弟クンはそのように狭量な男では無い!

不細工なロン毛男とは気が進まなかったが、弟クンと同系統イケメンの時雨クンならば弟クンの代役に丁度いい!」


「マジでゴメンなさい!ソレは無理ッス!


あ、でも、ウチのクランビルに女性がスッキリ出来るお店が入ってるんです!

本番的なアレは無しだけど、アロマ的なアレだから心身共にリラックス出来ちゃうんで!」


「フフフ、冗談だ。

何年も弟クンを我慢して来たのだ。あと数日くらい我慢してみせるさ」


「じゃ、じゃあ、今回色々やらかしたお詫びとして、ウチのスポンサー企業が運営している豪華ホテルのスイートルームを手配させて頂くのはどうかな!?

神城君の大切な婚約者をこんなセキュリティガバガバのカプセルホテルなんかに宿泊させられないし!」



 少し揶揄ってみただけなのだが、この時雨クンはイケメンな上に気遣いの出来るイイ男じゃないか。

 私は時雨クンのありがたい申し出を二つ返事で了承して、横浜の一等地に立つ立派なホテルに宿泊する事にしたのだった……。



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