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90話 『ディアブロ』の幹部にヤられてしまうヤツ 中編


挿絵(By みてみん)



吉永(よしなが)美優(みゆう)視点》



 ロン毛キモ男が全裸で距離を詰めた瞬間、私は脱衣所の床に置いていた使用済みタオルを入れてあるカゴをヤツに向かって蹴りつけた。



カツンッ……



「無駄無駄ぁ!俺様は【結界術師】のスキル持ちだぜぇ!?

そんな籠程度、何百発放り投げられようが屁でもねぇっつの!」



 ほう、結界術師SRの職業スキルで防御に於いては中々に優秀なスキルだ。

 ただ、ラノベのように無限にシールドを展開したり、離れた相手を囲い込んだり、この脱衣所を丸々結界で覆う事は出来ない。


 更に動き回る対象を結界で囲うなどは到底不可能。

 つまり、私が動き回っている限りヤツは私を結界で閉じ込める事は出来ないという事だ。



 与えられた情報で即座に戦法を決断した私は足を使ってヤツを撹乱する事にした。

 ロッカーの影に隠れるように走りつつ、取り敢えず弟クン以外の男に女性の大事な部分を見せぬよう、タオルを素早く身体に巻き付ける。



 コレでバスタオルを抑えておく必要は無くなった。

 両腕が使えるようになり、此方がステータスが高い分格段に有利かと言えばそうでも無い。


 先ず、剣が無ければ騎士系の職業スキルを持つ私は能力を活かせない。

 幾らムエタイの元王者でレベル300近いとは言え、素手で結界術師が張る防護結界を突き破る事は不可能に近い。


 弟クンや雪乃ちゃんは意味不明な技術を使うので、素手であの程度の結界を容易く粉砕しそうだが、あの2人は例外だ。



「ククク!意外と速えようだが、幾ら速かろうが俺がここの出入口を結界で塞いでいる限り、オメエは逃げられねえ!

アンタは見た所魔法系のジョブでも無さそうだが、どちらにしても探索者って人種は公共の施設内で攻撃魔法は使えねえ。

つまり俺の結界は破れねえっつう事だな。


逃げ回るのは辞めて、さっさと股を開け!」



 お喋りなヤツだが、ヤツの言う通り私にはヤツの結界を破る術は無い。

 剣や装備品は駅のコインロッカーに入れたマジックバッグの中だ。

 距離を取っていても(いずれ)は追い詰められる事は明白。



「……!!

な、何だ!?身体が重く……」


「フヒヒヒ。あんまりちょこまかとウゼエから、『スロウ』をかけさせて貰ったぜ」


「クッ……貴様、【状態異常魔法】のスキル持ちか!?」



 対人戦でもデバフ魔法を使うヤツは相当厄介だ。



 いよいよマズいな……

 

 

「それだけじゃねえぜ!

ちょっくら遊んでやらぁ!」


「……なっ!!」



 ロン毛は歪んだ笑みを浮かべながら、ロッカーの死角に身を潜めた私の方へと思いがけないスピードて急接近して来た。


 男は一瞬硬直した私に右の前蹴りを放つ。

 だが、初動が見え見えのど素人の蹴りなどスピードが速くても余裕で避けられる。

 私が右斜め後ろに躱すと、男は体勢を整えて左手のナイフで右腕を狙って来た……

 


 が、踏み込みが甘い。

 続けてバックステップで回避。直ぐに隣のロッカーの島へと移動した。



「くっ……アンタ、マジでBラン以下かよ?

『スロウ』で動作が鈍ってんのに、何つー動きしやがる!!」



 男は攻撃を躱されても余裕の態度を崩さず、直ぐに凄いスピードで追いかけて来た。


 私との距離が詰まると蹴りやナイフで攻撃をして来るが、動きがまるで格闘技未経験者のソレだ。

 躱しては距離を取り、追いつかれては躱すを繰り返す内に、ヤツの動きに翳りが見えて来た。



 うむ!逃げに徹した効果が現れたようだゾ!



「フッ、貴様は【支援魔法】のスキルで自分のステータスを上げたのだろう?

だが、戦闘スキルは単に使用するだけでも魔力を消費する。

併用で使えば魔力消費量は倍では済まなくなる。


私はこのまま貴様の魔力が切れるのを待つだけだ」


「ハァ…ハァ……うっぜ……


まぁ、短期決戦で仕留めきれなかった俺様の作戦ミスっつー事か……


アンタ、一体何者なんだ!?」


「人に聞く前に自分の身分を明かすのが先だろう?」


「そ、それもそっか……

俺ぁ、重長(おもなが)兆初(ちょうはつ)ってモンだ。

『ディアブロ』の幹部様ってヤツだな」



 『ディアブロ』か……ロンドンに居た時に何度か耳にした闇組織だ。

 世界各地のテロ組織と繋がっているという噂は聞いていたが、実際に『ディアブロ』に所属している者に会うのは初めてだ。



「フヒヒヒ…『ディアブロ』と聞いて驚かねえんだな?」


「いや、驚いてるさ。まさか日本に『ディアブロ』の幹部が居るとは思わなかったからな」


「そうじゃねえ。

『ディアブロ』が実在する事に驚いてねえって事だ。

日本の探索者には『ディアブロ』が実在する事は知られて無えんだ。

『暁月』っつークランの連中以外は皆、都市伝説の類と思っている。


アンタは『暁月』の在籍者のデータには無かった……つー事は海外所属の高位探索者っつー事だな?」


「ふむ、貴様は思った程馬鹿では無いらしい。

ご明察の通り、私はWSA UK支局に所属している高位探索者の美優だ」


「良いねえ、ミユウちゃんかぁ!

ブチ上がって来たゼェ!!

ミユウちゃん、コレが何か分かるかぁ!?」



 男はペンダントトップを開くと、中から赤黒く光輝く小さなガラス玉のような物を取り出した。

 アレは確か……



「…確か…『ソウルキャンディ』か?

そんなモノを作っているとは、やはり『ディアブロ』という組織はクソ外道以下という事だな」



 『ソウルキャンディ』は『ソウルスティール』というダンジョンドロップ禁制品を使用して作成された、人のステータスを封じ込めた飴玉だ。

 『ソウルスティール』をレベリングした人間の心臓に刺し込むと、件の魔導具はその人間の血液と魔力を吸収して、その人間のステータスを閉じ込めた飴玉を作るらしい。



 ロン毛は私の嫌悪感など知らぬとばかりに『ソウルキャンディ』をガリガリと噛み砕いた。

 まるで断末魔の叫びのような不気味な音が噛み砕く音に混ざっている。



 なる程、以前国際指名手配のテロリストと遭遇して右腕を失ったSSランク探索者が話していた通り、この音を聞くと即座に行動に移す事が出来ないな……



「……!!」


「フヒヒヒ……どーよ、ミユウたぁん……俺様は無敵じゃね?」



 一瞬身体が硬直した隙に、ロン毛男は私の背後を取り、首筋に『ブラッディー・スノージェル』を塗布したナイフの刃を当てていた。

 私は慌てて足に力を込めて、再びヤツとの距離を取った。

 


 クソ!こんな出鱈目なスピードに、今の私が対応出来る訳が無い!

 他人のステータスを取り込む事がコレ程の脅威になるとは……




 ……もう、今の私には打つ手が無い……




「……何故……ナイフで切り付けなかった?

『エピノロロジウム』中毒にすれば、私のこの体を貴様の肉奴隷にでも便器にでも出来るだろう?」


「フヒヒヒ……『エピノロロジウム』で木偶になったら、せっかくのアンタの高ステータスが台無しになるだろうが!!


知ってるかぁ?ステータスが高いヤツ同士のセックスはハンパ無くキモチいいんだぜぇ?

クスリなんて目じゃねえくらいになぁ!」



 現状、ロン毛男・重長を倒す事は不可能だと半ば諦めた私がナイフを使わない理由をヤツに聞くと、耳寄りな情報がヤツから飛び出した。



「ほ、本当か!?

じ、実は……私はレベリングしてからは……そういう経験が無いんだ……」


「フヒヒヒ、そうかよ。

アンタと同レベル帯の探索者達が毎晩狂ったようにヤリ捲ってるのは知ってるだろ?

それは、ハンパ無い快感に病み付きになってんだ」



 確かに高位探索者程、ステータスの高い異性を求めて男女問わず夜な夜なナンパをしまくっていたし、探索者の性の乱れは一般人が聞くとドン引きする程酷い。


 私は運が良いのか悪いのか、弟君と離れてからはずっとソロプレイだった。

 ソロでも身体のあちこちの感度が以前の比じゃない程良くなっていたし、ヤツの言う通りステータスの高い者と交われば凄まじい快感を得られるのだろう。



 くそぅ……長期に渡るソロプレイに加え、弟クンお預け状態からの羽田での弟クン祭りがここに来て祟っている……

 こんな醜悪な見た目のヤツの話だけで、お股がマズい事に……



「安心しな。

大人しく俺様に股を開くなら危害は加えねえ。

三日三晩ヤリ捲った後、アジトで神城雄貴の情報を話したら解放してやるぜぇ?」


「……男として正直な意見を言ってくれ。

貴様に抱かれるのも吝かでは無いと思えて来たんだが、貴様に散々抱かれて穢された私を弟クン…神城雄貴は抱いてくれるだろうか?」


「さぁな、正直言って分かんねえ……が、もし俺が真剣に好きな女がいたとしたら……


……他の男に抱かれてようが、関係なく抱くけどな」




 ロン毛男・重長はしっかりと考えた様子で答えてくれた。



 確かに、本当に愛し合っていれば、他の男と交わろうが抱いてくれるように思える……

 現に、ルナさんや雪乃ちゃん、彩音ちゃんを抱きまくったであろう弟クンに私は抱かれたくて堪らないワケだしな!

 色々とえっちな事を考えているだけで、身体が火照って仕方が無い!




 許してくれぇ……弟クン……




「わ、分かった……

貴様に抱かれるとしよう……だが、一つだけお願いを聞いて貰えまいか?」


「フヒヒヒ、何だ言ってみろよ。

ある程度の事なら聞いてやるぜぇ?」


「そ、その、見ての通りカラダが火照ってしまって、その……あ、汗とかが凄いんだ……

せ、せめて汗とかを拭いて、ロッカーに置いてある制汗スプレーを使いたいのだが……」


「ハァ?どーせヤッたら汗かくんだから、そのままで良いじゃねえか。

それに、ロッカーに武器を隠しているかも知れねーし、却下だな」


「武器や魔導具は誓って入れてない!

何なら先に中を調べて貰って構わない!


頼む……男に抱かれるのは久し振りなのだ……




……抱かれる時は……




……女でいさせてくれぇ……」



挿絵(By みてみん)



「……ゴクリ……

わ、わあったよ!なら、ロッカーのキーを寄越せ!

調べて問題なけりゃ汗拭きでもスプレーでも好きにしやがれ!」



 男は私からロッカーのキーを受け取ると、ロッカーの中を確認し始めた。

 当然、武器の類など入れていないので、ロン毛重長には出入り口付近まで離れて貰い、私は身体のあちこちを拭き拭きした。



 何か横目でチラチラと見ているが、ヤツには背を向けているし尻を見られる位は良いだろう……




 さて、久し振りの一対一の交わりか……緊張して来たな……

 弟クン……こんな私を嫌いにならないでくれよ……




 私はドキドキ感を抑えながら、全身に制汗スプレーを吹きかけたのだった。

 


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