88話 神城雄貴と行き違いになったヤツ
《吉永美優視点》
久し振りに日本に戻って来た。
愛する弟クンに抱かれる為に……そして、彼の3番目か4番目の嫁にして貰う為に……
地味にロンドンを出るのに結構な日数がかかったのが痛い……
あのクソ馬鹿ジョシュアにしつこくされた後、速攻でマンションに帰って3回くらい弟クン動画で慰めの儀式をしてから大雑把に荷物を纏めて日本行きのチケットを取った。
で、いざヒースロー空港に行って搭乗手続きをしたら職員に止められたのだ。
何でも世界ランカーが拠点を離れる際は拠点としているWSA支部の承諾書が必要だとか何とか。
で、またWSAのロンドン支部にタクシーで引き返して、再三のクソ下衆ジョシュアからの求婚をヤツのデコへの右肘一閃でシャットアウト。
支部長に日本に拠点を移す直談判をしたんだが、結局承諾書が発行されるまで4日もかかってしまったのだ。
さて、過ぎた事はどうでも良い。今は弟クンに激しく凌辱して貰う事に全集中だ。
9年振りの故国だが、すっかり様変わりしたな……羽田空港がかなり広く立派になっている。
「お姉さん、お姉さん、メチャクチャ可愛じゃん!
そんなにデカいキャリーケース持ってこれからどっか旅行に行くの?
それとも東京に観光に来た感じ?」
帰郷した途端コレか……ロンドンも日本もバカな男は多いようだな。
20代くらいのチャラついた男がアホ丸出しでナンパして来たが、私は無視を決め込んでタクシー乗り場に向かう事にした。
「アレ?もしかして東京は初めて?
学生さんで夏休みに東京に遊びに来たって感じじゃんね?
さっきからキョロキョロしてるけど、何か探してる感じ?
俺は仕事で何度も羽田と全国各地を行ったり来たりしてっから、全然ヨユーで案内しちゃうよ?」
「うるさい、黙れ。
貴様のような浮ついた男の話を聞く程ヒマでは無い。他を当たれ」
似合もしない金髪のチャラ男を適当にあしらってタクシー乗り場に向かったんだが………マズい……
完全に迷ってしまった……
土産物や様々な物品を販売している店が並んでいるエリアが広過ぎて、現在地が良く分からんぞ……
「お、さっきの美少女じゃん!
やっぱり初めての羽田で道に迷い中な感じ?モノレール乗り場を探してるの?
それとも駐車場に誰か迎えに来てる感じ?
案内するから言ってみ?」
クソ!さっきのダサい金髪に再び遭遇してしまった……
し、しかし、空港で足止めを食ってる場合では無い。
さっきから所々の広告用スクリーンにBNAの広告のようなモノが出て、美男子過ぎる弟クンのキメ顔が登場するのだ……
いつまでもこの場でチマチマしていると、お股が大洪水になるかも知れない。
念の為に多い日用のナプキンを付けているが、それでも食い止められる保証は無い。
「クッ……タクシー乗り場を教えてくれ……行き方さえ教えてくれたら自分で行くから」
「ああ、タクシー乗り場ならお安いご用ッス。
ちょっと待ってね、今娘と嫁がトイレに行っちゃってるから、2人が戻って来たら案内するッス」
金髪のチャラ男はどうやら家族と一緒のようだ……てっきりナンパかと思って警戒してしまったな。
私は自意識過剰だった事が恥ずかしくなり、彼の嫁と子供が来るまでスマホを操作する事にした。
「何か調べ物っスか?」
「あ、ああ……久し振りにある人と会うのでな。こう、ゴージャスなホテルを押さえておきたいのだが……」
「へ!?これから泊まる所を探すんスか?
今は夏休みシーズンだからホテルなんて取れないッスよ?」
な、何!?夏休みだと!?
し、失念していた!探索者活動とセルフ慰め活動ばかりしていたせいで、世間的な常識が欠落していた!
「パパ〜!お待たせ〜!イケメンニキグッズ買って〜!」
「マコト君、このコがさっきから『イケメンニキコーナー』に行きたいってしつこいのよ!
何とか言ってあげて」
私がショックを受けていると、金髪の彼の娘と嫁と思しき2人がやって来た。
それよりも、『イケメンニキコーナー』だと?確か弟クンは『イケメンニキ』という変なあだ名をつけられている……という事は、弟クンのグッズが色々とそのコーナーにあるという事か!?
「セリナ、『イケメンニキコーナー』は今度で良いかな?
今、この可愛いお姉さんが道に迷ってて、タクシー乗り場に案内しなきゃならんのよ」
「い、いや、タ、タダで案内して貰うのは悪いから、せめて娘さんにイケメンニキグッズをプレゼントさせてくれ!
良し、そうと決まれば『イケメンニキコーナー』に行こう!今すぐ行こう!」
そんな流れで、金髪のマコト君の娘チャンのセリナと『イケメンニキコーナー』に来たんだが……
「はぅぅ……カッコいい弟クンがいっぱい……ハァ…ハァ……マ、マズいゾ、ココは!
あ!あの『日本初SSランク探索者爆誕記念』と看板が立っている売り場は特にヤバい!!
……ハァ…ハァ……等身大抱き枕は絶対に買わねば……」
「パパぁ、お姉さん凄くハァハァ言ってるよ?」
「み、見ちゃいかんス!た、多分、アレは相当な『ニキマニア』だから、セリナは絶対にあんな風になったらダメッスよ!」
私は売り場の人集りの中に飛び込んで、等身大抱き枕や、各サイズのクリアファイル、弟クン監修のプロテイン等を次々に購入した……
無論、セリナの欲しがっていたフィギュアやスマホケースを買ってプレゼントをして、実に充実した時間を過ごす事が出来た……
「何かワザワザウチの娘の為に色々買って貰っちゃってスンマセンッス!」
「いや、こちらこそタクシー乗り場に案内してくれて助かった。
礼を言う」
「ニキマニアのお姉ちゃん、ありがとー!」
「ふふふ、可愛い娘さんだな。
それでは、私は行くよ。また縁があれは何処かで会うだろう」
私は親切な家族に礼を言ってタクシーに乗り込んだ。
取り敢えず、目指す先は弟クンが拠点にしているJSA東京本部だ。
待ってろよ、弟クン!!感動の再会をしたら激しくも情熱的なプレイに興じようじゃないか!!
◆◇◆◇◆
「何!?弟クン……神城雄貴がアメリカに行っただと!?」
東京本部に入った私は寄って来たナンパ野郎どもを殺気で遠ざけ、先ずは受付で拠点移動の申請を行う事にしたのだが、私の探索者カードを見た受付嬢はギョッとした表情でカウンターの奥の方へとダッシュした。
戻って来た受付嬢に2階の会議室に案内され、そこで今回の移動手続きを会長のラミレスという男自らする事になったんだが……軽く弟クンの事を質問して返って来た言葉が、『神城さん達は1週間アメリカに行ってます』というモノだった……
「チクショウ……弟クン……コレは焦らしプレイの一環かい?……フフフ……上等じゃないか……ソッチがそういうプレイに走るなら、私だって独りで慰めていた時に妄想で考えたプレイを……」
「あ、あの、ヨッシーさん?
神城さんとはどのようなご関係で?
ヨッシーさん?」
ラミレス会長に何度か呼びかけられて、私は漸く正気に戻った。
「す、済まない。
弟ク…雄貴との関係だったな……私は彼の婚約者だ」
「こ、婚約者!?
いや、彼は清川雪乃さんが婚約者のハズですが……」
「ああ、色々と込み入った事情があってな。
彼が小学5年生の時に彼に結婚を申し込まれて、私はそのプロポーズを受けたという訳だ」
「ちょ、ちょっと待って下さい?
神城さんは小学生だったんですよね!?そんな子供の頃の口約束なんかで婚約者とは言わない……」
「子供の口約束などでは無いっ!!
あの時、彼とは何度も何度も口付けを交わしたし、その…胸とかも…
いや、それ以上は言えないが、間違いなく私こそが神城雄貴の正式な婚約者なのだ!」
私は子供の頃の戯言だと決めつけるラミレス会長に、確固たる真実をぶつけた。
会長は己の過ちに気付いたのだろう。
気不味そうに俯いている。
「や、ヤバいぞ、美鈴君!
神城さんがヤバい女に追われている……」
「た、確かに……ヨッシーさんって30歳で、神城さんは確か今年で25歳……
神城さんが小5という事は、ヨッシーさんはJK……JKが小学男子の唇を奪うとか……」
「や、やめるんだ!それ以上はマズい!
通報の臭いがするじゃないか!
仮にも彼女は世界ランカーだ、さ、流石にもう犯罪めいた事はしないとは……願いたい」
会長は何やら受付の女性とヒソヒソ話しているが、コレで疑いは晴れただろう。
「良し!弟クンがアメリカに行ってるなら仕方ない!
再会まで時間はたっぷりある訳だから、弟クンに縁がある場所を巡るとするか!
では会長、移転の手続き宜しく頼むぞ!」
私は意気揚々とJSA本部を出て行ったのだった。
ブクマ登録や高評価を下さり、本当にありがとうございます!
最近の挿絵が美優先生に染まりつつありますが、そもそも本作の構想を思い付いた時のメインヒロインが美優先生と元嫁の瑠奈で、雪乃と彩音は脇役な感じでした。
色々と変更してしまった為に美優先生はかなり登場が遅れてしまいましたが……
此処からは雄貴視点のアメリカでの話と、その裏の美優先生視点での日本の話という感じで切り替わりながら進みます。
引き続きお読み頂けると嬉しいです。




