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83話 マリブビーチに誘惑されると思ったんですけど!?



「うぉぉ!ここがマリブかよ!

凄え!何か、オシャレな建物もオシャレに軒を連ねておる!!

ちょっとイメージと違うけど凄え外国っぽい!」



 俺、桐斗、雪乃ちゃん、姉貴と婚約者で専属マネの皆川さん、清川夫妻、そして彩音の8人はメアリーと共にUSAへとやって来た。



 ……が、残念な事に我々は長時間フライトした訳では無く、『VISITORS』が用意してくれた長距離用の『転移スクロール』で来たから、そこまで旅行って感じがしないんよなぁ……


 何故飛行機じゃ無いのかと言うと、今回はアメリカ大手クラン『VISITOS』からの依頼という形式となっており、飛行機で入国すると色々と手続きが面倒らしい。

 転移スクロールで直接WSA US支局キャリフォルニア支部に転移して、依頼契約書やJSAからの書類を渡すと1時間程の手続きだけで済むらしいので、サクっと終わらせた。


 それにしても、夏のキャリフォルニアはヤバい。

 何か、日本よりもカラッとしていて日差しが強い感じがする。

 何度か行った千葉県の九十九里とは全然違うぜ。



 あ、ヤバ。ボインな水着ギャル2人が近付いて来た。



「“貴方ってもしかしてイケメンニキよね?

マジでカッコイイ……今晩、私達とクラブで遊ばない?”」

「“クラブで楽しく踊った後は…3人で楽しみましょう?”」



 うぉぉ、何言ってるか分からんが、距離が近えし胸がデケエ……

 うわ…後方から雪乃ちゃんの殺気も凄え……

 此処は男らしくビシッと断らねば…



「シャット・ダ・ファッカップ!!ファッキン・ビッチ!!」


「“何この人?頭おかしいんじゃない?”」

「“何よ、このイカれ野郎!!

こんなクソ相手にしてられないわ。行きましょう”」



 良し。追い払う事に成功した。何か赤いビキニのコに中指立てられたけど、まぁ良いだろう。

 コレで雪乃ちゃんもご機嫌なはず。



「ちょっと、いきなり何て事を言うんですか!?

一般人に喧嘩を売るとかやめて下さい!」



 何故か雪乃ちゃんに怒られた…

 AYUM@さんに地元民に付き纏われた時にコレを言っておけば大丈夫だと言われたのに…



「雪乃さん、どうやらユーキ様は自分が言った言葉の意味を理解してないみたいですわ。


良いですか、ユーキ様。

貴方は彼女達に『黙りやがれ!性悪女!』と言ったのですわ」


「ええ!?付き纏われたらさっきの言葉を言えば間違いないってAYUM@さんに教わったのに」


「あははは!パパ、しゃっだふぁかぁっ!しゃっだふぁかぁっ!」


「ああ…キリトちゃんまで真似してしまって…

キリトちゃん、そんな汚い言葉を覚えてはいけませんよ」



 まさかAYUM@さんに担がれるとは…いや、彼も英語が苦手そうだった。恐らく彼自身が出鱈目を吹き込まれて、それに気付かずに居るんだろう。

 雪乃ちゃんは先程の女性達の所に行って、謝ってくれている。



 気を取り直した俺達は、メアリーさんの案内でビーチ近くの色々なお店を見て回った。

 昔、映画で見たマリブはセレブの別荘っぽい家が海岸沿いに並んでいて、長閑な別荘地みたいな感じだった。

 しかし、実際に来てみると海沿いの山が昔映画で見た時よりも随分と切り開かれて、高台には近代的な建物が並んでいる。

 近代都市化した別荘地のような雰囲気というのかな。


 イメージと違う事をメアリーに伝えると、彼女はこの10年間で起きた変化を教えてくれた。(彩音経由で)

 どうやらアメリカはダンジョン災害が日本よりも多く、高ランクダンジョンが無いロサンゼルスやサンタモニカからマリブ近辺の都市開発が進んだらしい。

 その影響で、マリブにも安全を求めた富裕層が以前よりも多く集まるようになったのだとか。


 広大な大地や自然が多いイメージのアメリカだが、ダンジョンの影響で富裕層は高ランクダンジョンの少ない西海岸に集まったという感じか。

 現在進行形で山の麓が急ピッチで切り開かれているようだし、アメリカの方が日本よりも危機的な状況なのでは?



「ユーキさん、もしかしてワールドニュースとか見てないんですか?」



 ご機嫌な桐斗を抱っこする雪乃ちゃんが、残念な人を見る目で問いかけて来た。



「あ、うん。

日本のダンジョン事情にばかり目が行ってた。

あと、桐斗がヘクターファンだから、ヘクターが拠点にしていたNYのダンジョンの事を調べたくらい。


マリブってもっと自然が多いイメージだったから、都市っぽくなっている所だけちょっと残念かも」


「アメリカの惨状を知らずに行きたがっていたのはビックリです。

だったら、3日後に向かうラスベガスを見たら、ショックで卒倒するかも知れないですね」


「え!?あの砂漠の中の煌びやかな街でしょ?

今回のツアーにベガス行きも含まれてるって聞いて、ワクワクしてたんよね」


「はぁ…遊びに来た訳じゃ無いんですよ?

ラスベガスのTGTグランド・フラワーアリーナダンジョンはAランクダンジョンで、NYのメイトポリタン歌劇場ダンジョンと並ぶ、ダンジョン異常を起こす可能性が高いダンジョンなんです」



 余りにショッキングな情報だった…まさかボクシングの聖地TGTグランドにダンジョンが出来ているなんて…


 ていうか、最近ボクシングの興行がベガスで行われないのはそれが原因か。

 奇跡の8階級制覇王者のムハンマド・アーリーJr.のクルーザー級二団体統一戦もカリフォルニアのカーソンで行ったしな。

 アーリーJr.の「ハエのように飛び回り、蚊のように刺す」は格闘界の名言だよなぁ。

 相手が打たれた事に気付かない一発というのは滅多にお目にかかれない究極の打撃…



「ユーキさん?全く関係無い事考えてません?」


「ひゃ、ひゃい!」



 不意に声をかけられて、俺は飛び上がる程ビビった。

 いかんな…キックとボクシングの試合の事になると、つい我を忘れてしまう…



 俺達は都市開発が進んだマリブの街並みを堪能して、俺たちの為に『VISITORS』が用意してくれた豪邸へと向かったのだが… …




 一言、ヤバいとしか言えない……




 綺麗な海が見える高台に建てられた3階建の本邸は、何かデカ過ぎてヤバい……吹き抜けのエントランスは高級ホテルのようだ……



「パパ、じてんちゃらちて!」


「うん、そうだね…めちゃ広いから桐斗の自転車の練習にもってこい……ってダメだよ!?

確かに此処はとても広いけど、おウチの中だからね?」


「えぇ〜!じてんちゃ〜!

ブンブンしゅるの〜!!」



 桐斗がゴネ出した……



 でも、この広くてピカピカなエントランスを見たら自転車を乗り回したくなるのも頷ける。

 何せ、右側と左側にパルテノン神殿みたいな柱が立ってるんだから。

 子供じゃなくても、自転車でギリギリを攻めてみたくなるのだ。



「ユーキさん、自転車出そうとしてません?」

「ひゃ、ひゃい!」



 雪乃ちゃん…まさか俺の心が読めるのか!?

 いや、そんな事はどうでもいい。

 今は大人としてビシッと教育せねば。



「桐斗、おウチの中で自転車に乗ると、綺麗な床にタイヤの跡が付いて汚れちゃうだろ?」


「いやらい!じてんちゃのるんらい!」



 うむ、桐斗のイヤイヤ病が発症か…

 俺も小学生の頃、学校の友達と自転車でどこまで行けるか試したり、公園で競争したよなぁ…

 男の子とはそういうモノだ。


 なまじ気持ちが分かるだけに、そこまでビシッと言えなかったので、結局桐斗を説得するのに15分も程要してしまった…



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