81話 ついにあの人とご対面しますけど!? 後編
「ブラッドリー様が『こんな侮辱を受けたのは初めてだ。あなたを訴えるわ』とおっしゃってます」
「おう、訴えろ。
その代わりアンタとの話し合いは終わりだ。金輪際アメリカの探索者とは一切交流しない。
お前の話も一切聞かない。
そう彼女に伝えてくれ」
あの後、何やらお怒りのご様子のブロンド美人こと、SSランク探索者のメアリー・ブラッドリーを8回くらい足払いで転ばせた所で、彼女がギャン泣きし始めた。
今、彼女のエージェントの女性が泣きながら怒鳴っているメアリーの言葉を通訳してくれた。
俺は雪乃ちゃんから彼女の名前を聞いて、コレが世界に名を轟かせる超大手クラン『VISITORS』のリーダーなのかと大いに呆れた。
立ち姿がまるでど素人。
戦闘を生業にしている世界トップクラスの実力者とは到底思えない。
俺はそんな彼女が訴えると言っているらしいので、勝手にすれば良いと思ってしまったのでエージェントに気持ちをどストレートにぶつけた。
エージェントが訳してくれた言葉を聞き、メアリーは慌てて立ち上がり、何かを話しながら俺に近付こうとしたが生憎俺は英語なんて一ミリも分からない。
アイハブアペンとかアイハブアンアップル程度の学しか身に付けていないのだ。
俺は再び隙だらけのメアリーに足払いをして転がした。
彼女が着ているワンピースのスカート丈は短く、先ほどから黒いオトナ下着が見えまくっているが、俺はそんな事はほんの少ししか気にならない程イライラしていた。
「アンタの言いたい事は大体分かる!
これまで何度か日本語訳してクランへのお誘いを受けていたからな!
だが、面会したいなら面会したいと先ずはDMしろよ!
何だよ、身分を伏せて接触して来やがって!
てっきり美優先生がサプライズで会いに来たのかと勘違いしたじゃねえか!!」
俺が再び泣き出したメアリーにイライラをぶつけてみた。
コレで俺はスッキリしたんで、この辺で帰らせてもらおうかな。
せっかく赤羽まで来たんだから、久し振りに雪乃ちゃんと皆川さんと大国主神社に行くのも悪くない。
「ミスター・カミシロ。
僭越ながら私が意見をさせて頂きます。
貴方は世界ランカーの重みを何も理解していない。
世界ランカーの存在というのは、所属する国の防衛力を現す重要な存在です。
アメリカにとってのメアリー、日本にとってのミスター・カミシロ、ミス・キヨカワ、ミス・ヒイラギは何としても自国に留めておきたい戦力なのです。
それを気軽にDMで直接やり取りなどあり得ません。
お互い間にエージェントを挟み、それなりの金銭を提示した上で面会するというのが通常のやり方です。
身分を開示しなかったのは、アメリカの国内情勢として余り大っぴらに面会する事が出来なかったからです。
幾ら事情があったとは言え、其方のご事情も考慮せずに今回のようなオファーを出した事はお詫び申し上げます。
あなた方に誤解を招くようなオファーをしてしまい、誠に申し訳ございませんでした」
うん……このエージェントは堅苦しくて話しづらい。
それに、何やらお互いの国がどうとか言い出したし……
……そうだ!弓削チャンに相談しよう!!
俺は早速スマホをポチポチBOINした。
【神城雄貴:今ヒマ?】
『弓削修二郎:神城さんから連絡が来たらどんな時でも暇にしますよ(^^)v』
【神城雄貴:なんか今、アメリカから『VISITORS』のリーダーが会いに来てるんだけど、赤羽に来て一緒にお茶しない?】
『弓削修二郎:メアリー・ブラッドリーが来てるんですか!(◎_◎;)
まさか、アメリカ政府が裏で引き抜きをかけようとしているのでは』
【神城雄貴:その辺が分からんし、俺難しい話とか無理だから弓削チャンが代わりに話してくれない?】
『弓削修二郎:分かりました(`_´)ゞ
これからヒロミツ・ラミレス会長にも連絡を入れて赤羽に向かいます!
政府専用の魔導ヘリで向かいますが、赤羽の何処に行けば良ろしいでしょうか?』
【神城雄貴:『ダンジョンパレス赤羽』の3階の桔梗という会議室にいるよん】
『弓削修二郎:では、30分で向かいます!』
うん、弓削チャンの顔文字はウザいな……
まぁ、オッサンなりに頑張っているんだろうし、弓削チャンは総理大臣として結構色々と尽力してくれるから無碍に出来んのよな。
あ、そうだ!タテイシ・ラミレスも来るならアユマットさんも呼んでみよう!
【神城雄貴:今ヒマですか?】
『AYUM@餓狼:暇では無いけどどうした?』
【神城雄貴:今、赤羽で『VISITORS』のリーダーと会ってるんですけど、これから一緒にお茶しません?】
『AYUM@餓狼:何!?『VISITORS』が『ガチ勢』をスカウトに来たのか!?』
【神城雄貴:いや、まだ詳しい話してないんです
俺、難しい話は苦手なんでアユマットさんに来て貰えたらなって】
『AYUM@餓狼:分かった!俺も難しい話は苦手だが、丁度栞も一緒にいるから栞と一緒に向かうよ
場所は何処だい?』
【神城雄貴:ダンジョンパレス赤羽3階の桔梗という会議室です
ていうか、敷島さんと何してたんですか?】
『AYUM@:分かった、ダンジョンパレス赤羽の桔梗だね
1時間で行くよ』
【神城雄貴:いや、敷島さんと何してたんすか?】
クッ!既読スルーしやがった……
「雄貴さん、どうしたんですか?
メアリーさん達が困ってますけど」
「ああ、いや、今色々な人を呼んだんだけど、アユマットさんが昼間っから敷島さんとエッチな事しててさぁ」
「え!アユマットさんと敷島さんが!?
良いなぁ、敷島さん……
……あっ!いや、そうじゃないんです!
雄貴さんに乱暴に初めてを散らされたいとか、そういう事じゃ無いんです!
やっぱり初めてはロマンチックな感じで優しく雄貴さんにリードして貰って……」
「落ち着け、雪乃ちゃん!
けしからん妄想をしている場合じゃないぞ!」
「はっ!そうでした!
私ったら雄貴さんにされた過ぎて……ゴメンなさい」
何とか雪乃ちゃんを窘めた俺は、困惑するエージェントに1時間待つように伝えて皆んなの到着を待ったのだった……
◆◇◆◇◆
凄い事になっている……
ビジネスホテルの会議室にイカついSPが8人……何れもレベリング済みのSランク相当の実力者だ。
実は警察機関や自衛隊にはダンジョン出現当初から探索を行い、レベリング済みでレベル200以上の実力者が結構いる。
先日泡の国のお姫様をお持ち帰りした倉月もレベルは271らしい。
当然、高い戦闘能力を身に付けた警察官や自衛官はかなりの高待遇で採用されている。
民間の探索者にもガラの悪いヤツは結構居るが、そんな人らがレベリングされた能力で犯罪に走らないのも、警察官がメチャクチャ強い事が一因になっているようだ。
「な、なぁ……何か弓削総理が居るんだけど、こんな所に何で呼んだんだよ!」
俺がSP達のゴリゴリな雰囲気にビビっていると、予想以上に物々しい雰囲気の会議室に遅れて入って来たアユマットさんが恨みがましく耳打ちして来た。
俺もこんなに厳粛な雰囲気になると思って無かったんだから許して欲しいんだが。
我々の対面に座るメアリー&エージェントと、我々の両隣に陣取る弓削チャンと秘書らしき人、そしてラミレスが凄い剣幕で英語で何かやり取りしてる……
弓削チャンは英会話もペラペラなんだな……流石は日本一の東帝大学文Iを卒業しただけはある……
おっと、そこに敷島さんも加わったぞ!!
弓削チャン以上に流暢に聞こえる英語を駆使して、メアリーと凄いトークバトルを繰り広げ……いや、何か2人が笑顔になったゾ?
お、お、総理もラミレスも少しずつ穏やかに意見交換をしてるっぽい……
「やはり、栞を連れて来て正解だったな。
アイツはガサツでズケズケした物言いをするから女としては終わっているが、昔から俺達と頭の出来が違ったから英語も堪能なんだ」
「なる程、確かに敷島さんはサバサバして知的な美人という感じですもんね。
で、そんな美人な敷島さんとアユマットさんはさっきまで何処で何をしていたんですか?」
「……そこを突くのは野暮というモノだよ、神城クン……」
「ちょっと、アナタ達バカ2人はうるさい!
メアリーは神城君の力を借りたいから、1年の期間限定で『VISITORS』に加入して欲しいって言ってるのに、何で当人のアナタが他人事みたいな感じを出してるのよ!?
バカなの!?」
えへへ…敷島さんに怒られちゃった……
何故か敷島さんには俺特有の屁理屈も出んのよなぁ。
彼女の言う事が100パー正しい事が決まっているような、言う通りにしていれば間違いないみたいなオカン感が凄いんよ。
「母ちゃんゴメンなさい」
「誰が母ちゃんよ!ホントに失礼しちゃうわ!私はまだ20代だっつーの!」
「いや、本当に済みませんでした。
敷島さん、俺に日本とアメリカがウィンウィンになる妙案があるんです。
『VISITORS』にも『餓狼』にも、日本の他のクランにとっても悪い話じゃないはず。
俺が言う事を正確にメアリーに伝えて貰えませんか?」
俺は敷島さんに謝ってから、ある俺の腹案を耳打ちしたのだった……




