7話 探索者登録に来たんですけど!? ②
本日2話目の投稿です。
興味を持って頂けたら、ブクマ登録を是非お願い致します!
「パパもうしゅぐヘッタになりゅの!?」
講習を終えた後、2時間の昼休憩となったので、俺は桐斗と姉貴と合流し、雪乃ちゃんも誘って近くのファミレスに昼飯を食べに来た。
お子様プレートのハンバーグを平らげた桐斗は、興奮した感じで俺に問いかけて来た。
うむ、今日も桐斗は安定の天使である。
「ははは。まだヘクターみたいに有名にはなれないよ。
これから初めてダンジョンに入るんだから、有名になる迄にはまだまだ時間がかかるんだよ」
「キャハハハ!パパ、ヘッタになりゅね!」
「あら、キィたんはヘクターが好きなの?
お姉ちゃんもヘクター大好きなんだぁ。キィたんと一緒だね」
「うん!ゆきのねえたんといっちょ!ボクとねえたんとパパといっちょ!」
桐斗の向かいに座る雪乃ちゃんが、桐斗と楽しそうに話している様は何とも微笑ましいものである。
子供好きで優しい雪乃ちゃんは、将来良いお嫁さんになるだろう…。
「ハァ…雪乃ちゃんゴメンね。
ウチのバカ弟が鈍くて。今度、私が女心をみっちり教えておくから」
「い、いえ!そ、そんな…わ、私は…キィたんのママになりたいなぁなんて…す、少ししか思ってなくて…
あ!違うんです!ユーキさんに興味が無いとかじゃなくて…
あ………
わ、私ったら、何言ってるんでしょう…」
姉貴が雪乃ちゃんに何か語りかけると、雪乃ちゃんは急に赤面してあわあわし始めた。
今日の雪乃ちゃんはいつもと少し様子が違うな…恐らく、初めてダンジョンに潜る事が不安なんだろう。
ここは人生の先輩として、不安を解いてあげなくては。
「雪乃ちゃん、大丈夫だ。
これから潜るのは初心者ダンジョンの1階層。最弱のスライムを3体倒せばレベルが上がるみたいだし、2名のCランク探索者が引率してくれるから不安になる事は無いさ」
ズビシッ!!
い、いでえ!良い事を言った筈なのに、元ムエタイジュニア王者の蹴りが脛にヒットしたぞ!?
つぅか、魔物の革で出来た脛当てを付けているのに、ここまでダメージが通ると言うのか!?
俺は対面に座る姉貴が醸す殺気に押されながら、粛々と昼飯を食べ進めるのだった…。
◆◇◆◇◆
「ちぇいっす!『無双三連星』の初配信へようこソッ!
俺がパーティーリーダーのトドロキだズェ!」
「うぇーい!俺はイケメン担当のヨータだ!」
「よっす!俺がパーティーのブレイン担当シモカワっす!
ツー事で、今日は初レベルアップ報酬のスキルゲット生配信をしちゃうっす!」
「やっほー。『キューティーペア』の笑顔担当マナぷよだよ〜!」
「ん。無愛想担当のセラ。
暇人はウチらの配信を見ろ。以上」
東京本部に隣接する初心者ダンジョン入り口で、先程講義を受けた野郎3人のパーティーと女の子2人組が配信用ドローンを起動させて生配信をし始めた。
この模様はWSA公式アプリのダンジョン・ライブ・ストリーミング(DLS)で全世界に生配信される。
先程の座学を受けた時点で、俺達のアカウントは収益化の認可が降りたと説明があった。
日本の探索者が行うDLSの広告収入の一部はJSAに流れるので、講義では生配信を積極的に行うよう言われていたんだが…まさか午後一で自分達がスキルを得る様を生配信するとは……
「あ、あの人達、随分と準備が良いんですね」
思わず本音を漏らした雪乃ちゃんも若干引き気味のようだ。
「まぁ、JSAも生配信を推奨しているんだから、アレが探索者として望ましい姿なんだろう」
俺ははしゃぎながら生配信をする連中を横目に、入念に全身をほぐしている。
例え初心者ダンジョンでも気を抜くなんて有り得ない。
格下相手に舐めプをしてKO負けする事は、格闘技の試合でも往々にして起こるものだ。
俺は例え相手がスライムでも油断はしない。
少し経って引率訳のCランク探索者2人がやって来ると、細かな注意点を説明し始めた。
心なしかCランクの2人の男も気が抜けていると言うか、かったるそうな雰囲気だ。
俺はど素人丸出しのCランク探索者に一抹の不安を覚え、集中力を高めてダンジョンに足を踏み入れた。