70話 怪しい話を聞かされたんですけど!? 中編
いつも拙作をお読み頂きありがとうございます。
また、ブクマ登録や高評価を頂いて、とても感謝しております!
昨日の挿絵が投稿出来ない問題ですが、本日無事に挿絵をアップできました。
挿絵を見たら倉月のモデルが分かる人には分かるハズ!
という事で、引き続き拙作をよろしくお願いします!
ディアブロ……イタリアとかギリシャとか地中海的な場所に位置する何処かの国の言語で悪魔という意味だった気がする。
倉月の言う『ディアブロ』は裏社会の多国籍組織の事だ……いや、秘密結社だったか?
確かに何年か前にネットでそういうヤバい組織があるという噂は流れていた。
実際に某掲示板で『ディアブロ』の幹部を名乗るヤツがテロ予告をして逮捕されたりもしたが、捕まった連中は暇な浪人生とか中高生とかリストラされてむしゃくしゃしていた中年男で、怪しい組織の一員なんかでは無かった。
10人くらい逮捕者が出た辺りで、そんな組織など存在しないと結論付けられた。
そもそも『ディアブロ』なんて名前は中二病が過ぎるし、どっかの中坊が考えた妄想だという事で片付けられたんだよな。
まさかそんな都市伝説なのか中坊のイタズラなのか分からん架空の組織の名前を出すとは……
「ハァ……そんなモノは唯の都市伝説的な何かだろ?
理解不能な悪い事が起こると、陰謀論だの裏の組織だのカルト的な連中のせいにしたがる一部の連中の妄言みたいなヤツじゃねえの?」
俺は藍口君も時雨も思ったであろう事をストレートに伝えた。
しかし、倉月は真剣な表情のままソープな嬢に部屋から出るよう伝えると、咳払いを一つ入れて話し出した。
「……ネットで『ディアブロ』が起こしたとされる事件や事故の殆どはお前の言う通り、誰かが勝手に紐付けたでっち上げだ。
だが……9年前にイタリアのジェノヴァで起きた『ヴァルジニ本社ビル爆破事件』と、6年前にアメリカのミズーリ州で起きた『ジョンソン一家失踪事件』は『ディアブロ』の犯行と思しき痕跡が発見されている」
倉月の口から驚くべき情報が飛び出した。
『ヴァルジニ』は世界でもアメリカに次ぐ速さでダンジョンの民間解放をしたイタリアで起業された、魔導具製作を目的とした会社だったはず。
あの事故は日本でも連日報道されていて、結局は研究用として保管していたダンジョンドロップアイテムの管理が悪くて爆発したとか言われていた。
少なくとも日本では事件じゃなくて事故として報じられていた気がする……
もう一つの一家失踪事件は聞いた事が無いし、やっぱり『ディアブロ』なんて都市伝説じゃないのか?
「何で『ヴァルジニ』本社ビルの事故を事件と言うんですか?
何か証拠でも有るんですか?」
藍口君が倉月に問いかけた。
「確実な証拠とは言い切れないが……『オノケーリスの指輪』……ダンジョンが出現した年に、ドイツのシュトゥットガルトダンジョンの隠し部屋で発見された世界初の禁制品だが、聞いた事はあるか?」
クッ……コイツも質問に対して質問で返すタイプかよ……だが、まぁ良い。
今は話の続きだ。
「いや、無いですね」と藍口君。
時雨も首を横に振っている。
「俺も聞いた事が無いんだが、その何たらの指輪があの大規模爆発を引き起こしたのか?」
「さぁな。どんな性能があるのかは公開されていないから何とも言えん。
だが、WSAドイツ支局で厳重に保管されていた『オノケーリスの指輪』が何者かによって盗まれ、その3ヶ月後にイタリアで爆発事故が起きた。
しかも、魔力解析の魔導具で鑑定した所、『オノケーリスの指輪』から発していた魔力に極めて近い魔力が検知されたらしい。
『ジョンソン一家失踪事件』のジョンソン氏宅からも同様の魔力反応が検知されている。
少なくともこの2つの事件が『オノケーリスの指輪』の盗難に関係している事は確かだ。
そして、五味九図夫の自宅からも極微量な魔力だが、件の指輪に似た魔力反応が検知された」
……ダンジョンドロップした装備品で禁制品指定されたからには、その指輪は相当危険な効果があると見ていい。
それに、盗まれた禁制品の指輪を使った痕跡が2つの現場から見つかったという事は、3つの事件が繋がっている事は間違い無いだろ。
しかも、五味の自宅からも似た魔力反応が出たとは無関係とは言い難いな。
だが……
「3つの事件に繋がりがあるのは分かったケドさ〜、それと『ディアブロ』をどうして結び付けたのさ?
てか、ボクが仕入れた情報とも関係してるかもしんないから、詳しく教えて欲しいんだよねぇ」
時雨が丁度俺が疑問に思った事を質問してくれた。
ヤツの仕入れたネタも『ディアブロ』と繋がりがあるかも知れんのか……
「……数ヶ月前にアメリカのニューアークにあるBランクダンジョンで『復元魔導具』がレアドロップしたのは知ってるな?
CIAがソレを使って『ジョンソン一家失踪事件』の現場で破損していた物品を復元したんだ。
破損品の中に、高熱でグシャグシャにひしゃげた金ボタンのようなモノがあったんだが、ソレに復元魔導具を使用した所、ソレは悪魔のエンブレムが入った金バッジだった」
都市伝説で実しやかに囁かれていた悪魔のエンブレムは『ディアブロ』のトレードマークとされていた。
後にどっかの中二病の絵師が描いたんだろうとされていたが、中二病の絵師が金バッジを作って失踪事件の現場に置いて来るまではしないだろう。
「ふうん……それは興味深いね……
ボクの方のネタも幾つか倉月さんの話と似た所があってやぁ……ア、アカン、大阪弁が出てもうた!
んんっ!
今のナシね。ボクは横浜生まれダンジョン育ちでハマのワル共は大体トモダチなんでシクヨロ!」
何か知らんが、時雨が慌てて取り繕ったゾ?別に大阪生まれ大阪育ちでもええやん。
あ、そうか、『暁月』は横浜密着型クランだから、生粋のハマっ子じゃないとダメなのかも知れんな。
「で、ボクの方のネタは『蜷川コーポレーション』の専務取締役・吉賀一郎に関する事なんだケド。
1年くらい前から吉賀は、高里益夫という男に金を強請られてたみたい。
高里は吉賀の弱みでも握ってたんだと思う」
「何!?吉賀の身辺を洗ったが、そんな情報は出なかったハズ……」
公安でも掴んでいない情報をゲットしたなんて、時雨の情報網は凄えんだな。
「フン、ミオちゃんに身体の隅々まで洗って貰ったキミが、他人の身辺をマトモに洗える訳が無いよね?
言っとくケド、『終末洗体パイレンジャー』を経営している『大多喜グループ』はウチの大事なスポンサーさんなんだ。
店外デートの罰金300万はちゃんと払って貰うよ」
「クッ……公安の『ダンジョン犯罪対策室』に請求してくれ……」
時雨は店外デートの件を相当根に持っているようだ……
いや、それよりも……
「いや、公安に請求って何だよ!!
血税を風俗の罰金に回すって、日本国民を舐めてんのか!?」
俺は思わず言ってしまった。
さっきから話が進まなくてイラ付くが、倉月の発言は一納税者として看過出来ない。
……まぁ、俺はSSランクになって所得に関する税金が免除されているが、それでも20%の消費税と住民税はちゃんと支払っているんだ。
「ち、違うぞ!アレは捜査の一環……」
「テメェ!ソープ店の嬢と店外デートする捜査って何だよ!!
時雨君、罰金はしっかり倉木さん個人から取り立ててくれるかい?」
おお……藍口君も言うねぇ。
彼はコーキが瑠奈をボス部屋に放り込んだ時、真っ先にブチギレて瑠奈を助けに行こうとしたらしいし、余程正義感の強い男なんだろう。
金メダリストで正義感が強いって、アニメの主人公みたいなヤツだな……
「うん、当然倉月さん個人から取り立てるよ。
話が逸れちゃったから戻すと、吉賀を強請ってた高里が3ヶ月前、自宅のワンルームで首を吊って死んでいたのを、マンションの管理人に発見されたんだよねぇ」
「うん?それってただの自殺じゃ無いのか?」
「確かに争った形跡も無かったし、警察も自殺って事で片付けたんだけどさぁ。
ボクの知り合いに、孤独死とか自殺とか事件で死人が出た“いわく付き”賃貸物件の清掃業務を専門にやってるヤツがいるのね?
ソイツは元探索者でURスキルの【看破(極)】を持ってるんだけど、相当ヤバい性癖の持ち主でね。
看破スキルを使って、死んだ人の背景を探って性的に興奮するタイプなんだ」
時雨もまたぶっ飛んだ事を言い出したぞ!?
そんな変態の事はどうでも良いから要点をズバッと言って欲しいぜ。
「んで、ソイツが高里の部屋で『看破』を使った時、エアコンの室外機の中にこんなモノがね……」
そう言って時雨が俺達にスマホを差し出した。
そこには『エピノロロジウム』と思しき紫色の粉末が入った小袋と、USBメモリー。
そして、所々掠れていてハッキリはしないが、悪魔のエンブレムに見えなくもないモノが印刷された名刺が写っている……
「おい、この画像を俺のスマホに送ってくれ!」
「ふふふ、罰金を払ってくれたら考えるよ……
最初に見た時は名刺の印刷が掠れていてピンと来なかったケド、倉月さんから『ディアブロ』のエンブレムの話が出てハッキリした。
USBの中身は『エピノロロジウム』に関する金の流れのデータと、変な暗号文。
ほぼ間違いなく、高里はコレをネタに吉賀を強請っていたんだろう。
で、自殺に見せかけて殺されたって感じかな」
「……他殺と断定する理由は何だ?」
「罰金を今すぐ『暁月』の口座に振り込んでくれたら教えてあげる。
振り込まないなら今すぐ出て行ってくれ」
時雨は倉月を鋭く睨み付けた。
中々の殺気まで放っておる。
圧に負けた倉月はスマホを取り出してゴチャゴチャと操作をしている。
300万を振り込む為に、時雨から金融機関名と支店名、口座番号などを聞いてポチポチやっている。
「さぁ、振り込んだぞ。
他殺の根拠を聞かせてくれ」
「……部屋がね……物が沢山ある割に綺麗過ぎたんだってサ……
ソイツの話だと、計画的に自殺する人の中でも几帳面な人は、死ぬ前に身の回りの物を処分して、一通り片付けや掃除はするみたい。
だから、そういう人の自殺した後の部屋は物が殆ど無くて、水回りや床は綺麗に掃除しているんだって。
でも、高里の部屋は結構着古した服も、下着類も、エロブルーレイなんかも売られずに綺麗に整理整頓されて収納されていた。
何より不自然なのは押入れやクローゼットの中、そしてトイレやバスルームの天井まで綺麗になってたのに、洗濯物は洗濯籠に入ったまま。
ゴミ箱にはゴミが入っていて、ゴミ袋はベランダに放置したままだったんだ」
時雨はそう言って、変態掃除屋が撮ったと思われる画像を何枚か見せてくれた。
確かに不自然過ぎる……
トイレのタンクの中までピカピカにするヤツが、洗濯物を放置したりゴミ箱の中をそのままにするだろうか?
「なる程な……コレは所轄の怠慢と言わざるを得ないな。
掃除してある場所は主に物を隠しておける場所だ。キッキンの棚や換気扇、トイレの天井の換気部分やタンクの中、風呂場の換気部分……
高里を殺した連中は吉賀を強請っているネタを探し回ったんだろう。
荒らした形跡が残らないように、その辺りを重点的に掃除したんだ。
分かりやすく偽装工作の痕跡があったのに、所轄のヤツらは……
まぁいい。
気になるのは、何故ベランダの室外機が手付かずなのかというくらいだが、コレは他殺と見て間違いないだろう」
おお、時雨と倉月のやり取りによって、刑事ドラマ的な雰囲気がプンプンして来たぜぇ!!
コレは俺達が捜査に協力して、犯人タイーホの流れか!?
「ああ、それなら説明は付くよ。
高里が住む千葉のニュータウンにあるマンションは国道沿いで、ベランダは国道に面しているんだ。
道路の向かいには24時間営業の大型スーパーが有って、駐車場の防犯カメラの何台かは高里が住んでいるマンションの方を向いている。
不用意にベランダに出たら、防犯カメラに映るかもしれないよね?」
「なる程……ベランダのゴミ袋が放置されていた理由も説明が付く……か……」
時雨の名探偵モノっぽい現場の説明が炸裂した所で、倉月はブツブツと呟きながら席を立った。
良し、コレから俺達で現場を探るんだな!
横浜からニュータウンまで行くとなると、藍口君のレベリングをする時間が無くなるが、ここまでサスペンスな展開になったのだ!
俺達で事件を解決せねば!
「俺はコレからミオと3時間休憩してから、再捜査の要請をしなくてはならない!
先に失礼する!!」
倉月はそう言うと、ドバンと激しく音を立ててドアを開け、ズカズカと部屋を出て行った……
いや、俺達の存在わい!?
まぁ、俺らは警察でも公安でもないから当然ちゃ当然だけど……
つーか、再捜査よりも先にミオちゃんと休憩しちゃうの!?ねぇ、休憩しちゃうの!?3時間も!?
「済まない、一つ忘れてた」
あ、倉月が戻って来た。
やはり俺達の協力が必要なのか!?
仕方のないヤツめ、頭を下げて頼むなら犯人探しに協力してやらないでもない。
「……さっきの300万の領収書をくれ……」
「テメェ、経費で落とすつもりだろ!
誰が領収書なんて渡すか!!さっさと女とホテルにしけこみやがれぇっっ!!!」
まさかの藍口君が、怒りのツッコミを炸裂させたのだった……




