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66話 世界ランカー(元)に絡まれたんですけど!? 前編



 俺と雪乃ちゃんのモデルの仕事から3日が経った。


 あれからの事務所経由の仕事はちゃんとした新聞社のインタビューと、報道番組のインタビューの2本のみで、特に苛立つような事は無かった。

 どちらも入りや待ちを入れても1時間もかからないラクなお仕事だったんだが、皆川さん曰く『この2本のギャラだけで、昨年の上半期の『ラブリー・ワン』の収益と同額なんだよ』という事らしい。

 どんだけ俺達のギャラ高いんだよって事なんだが、怖くて額は聞いてない。



 で、もう一つ……瑠奈の事なのだが、彼女はほんの少しだけ『エピノロロジウム』の影響が残っているらしく、2〜3ヶ月程専門の医療施設に入院する事となった。


 中毒の症状としては、3日に一度程度の間隔で30分くらい思考力が鈍るというモノ。

 これは中毒症状の中でもかなり軽微な方だという。

 瑠奈がかなり軽度の中毒で済んだのは、『エピノロロジウム』がタバコに混ざっていた事、煙による吸引だった事、そしてコーキに金が無くて半年に一箱しか『エピノロロジウム』入りタバコを買う事が出来なかったという偶然が重なったからなのだとか。



 当然、俺は瑠奈の為に最も最先端の設備が整っている施設を全額俺の負担で手配させてもらった。

 他にも瑠奈が当面の生活に困らないよう、口座に10億円を振り込んでおいた。


 彼女は俺の支援を断固として断って来たが、これらは離婚時の財産分与分だから受け取って貰わないと俺がムショにぶち込まれると言い含めて、何とか納得して貰ったのだ。

 身内は週に一度だけ、瑠奈の状態が安定している時に限りお見舞いが許される。

 勿論、退院まで桐斗を連れて瑠奈のお見舞いに行く予定だ。



 言っとくが、別に瑠奈に良い格好をしたかった訳じゃない。

 誰が何と言おうと、2年前に瑠奈が精神的に追い詰められていた事に気付かなかった俺の罪はとても大きい。

 その贖罪として金を振り込んだ訳だ。

 ただの偽善や自己満足と取って貰っても構わない。俺は自分の犯した罪から目を背ける事なく、これからも色々な形で瑠奈への償いをしながら生きて行く。




 さて、冒頭から重たい感じになってしまったが、ここからが本題。


 あれからBOIN通話でタテイシ・ラミレスと話した時に知らされた情報がある。

 それは所沢ダンジョン内に響いた女の声の中で語られた『管理者』という部分について。


 これまで『管理者』については極秘事項扱いとなった為、俺に対してすら情報が伏せられていたんだが、6年前にクロアチアで起きたスタンピードの時、『管理者エリン・エ・ラ・テュルネイレ・マッシオ・ノ・ム・セマーリオ・ゲキオコ・ノリュヘイエム様の試練を乗り越える事が出来ませんでした』という言葉がクロアチア語でアナウンスされたらしい。


 クロアチア政府はその情報をトップシークレットにしたらしいが、WSA(世界探索者協会)には報告しなくてはならない。

 JSAトップのタテイシ・ラミレスも前回の件をWSAに報告したんだが、その後WSAからの回答としてクロアチアの情報を明かされたのだとか。



 何故、日本とクロアチアは『管理者』の情報を秘匿しようとしたのか?



 それはダンジョン異常が『管理者』なる人物によって引き起こされた人災の可能性が高い為である。

 そして、その事を世界に発表すると、世界中が大混乱に陥る事は明白。


 世界中の凡ゆる機関のデータベースに照らし合わせても、『エリン・エ・ラ・テュルネイレ・マッシオ・ノ・ム・セマーリオ・ゲキオコ・ノリュヘイエム』などという名前の人物はヒットしなかったらしい。

 という事は、その長たらしい名前が偽名の可能性が高くなる。

 又は、中世の魔女狩りのように、全世界の『エリン』という名前の人や『ノリュヘイエム』という名前の人が集団暴行を受ける事も考えられる。

 凡ゆる状況を鑑みた上で、『管理者』の情報は秘匿されていた訳だ。



 そんな感じでダンジョン異常は人災説が濃厚になった今、1年間のクールダウン期間が開けた日本は『管理者』によって更なる厳しい試練が課される恐れがあるよね!……ってのがタテイシ・ラミレスを含めた極一部の専門家達の見解である。



 前置きが長くなり過ぎたが、これらを踏まえた上でタテイシ・ラミレスから頼まれた事が……


 

「どうも〜、タッキーでぇ〜す!」

「ユウキで〜す!」

「「2人合わせてタッキー&ユーキで〜す」」


「視聴者諸君、ごきげんよう!『餓狼』リーダーのアユマットだ。

今日は『ガチ勢』流トレーニングを我々『餓狼』と、元金メダリストの藍口君が教えて貰う事になった」



 そう。トレーニング生配信である。

 1年後のクールダウン期間迄に探索者全体のレベルアップが必須だが、流石に俺達が全国に30万人もいる探索者一人一人に教えて回る事は不可能だ。



 そこで、全国の探索者の参考になるように、生配信で体捌きの基礎練やトレーニングの方向性をレクチャーしようって事になり、元々トレーニングコラボの約束をしていた『餓狼』と、瑠奈の件で迷惑をかけたお詫びに藍口君を呼んだって訳。

 


「今回は前衛の基礎体力の向上と、身体の反応速度を上げる為の『ガチ勢』流トレーニングをレクチャーする。

後は、魔力操作の基礎トレかな。


今我々はJSAの訓練施設に来ている訳だが、この施設にあるモノを使ってトレーニングするだけで充分な下地が作れるんで、前衛の探索者達には参考になると思う」



 一応俺がトレーナーって事なんで、魔導ドローンのキャメラに向かって本日の趣旨をザッと説明した。



《『餓狼』の公式生配信なんだから告知してくれよ》

《告知無しで生配信とかwww》

《え!?天才ボクサーの藍口じゃん!!》

《『ガチ勢』とコラボすると『餓狼』までゲリラ配信になるの草》

《愛してます竜樹様❤️》

【¥1,000,000:千田兼光:『ガチ勢』と正式な初コラボ記念ご祝儀です】

《ニキが前に出ると偉そうにするのがムカつくから、雪乃ちゃんが先生役で頼む》

【¥100,000:原大二郎:危険なテロリスト共を捕まえて下さりありがとうございます】



「あ、千田さん、原さん、高額スパチャありがとうございます!

スパチャをくれた方は後日アユマットさんがお礼動画を上げるみたいです!


つーことで、早速トレーニング始めますか!

では、先ずはこの施設のランニングコースを軽く50周ね。

レベリング前の藍口君は10周だけど、藍口君が10周する迄に50周出来なかったヤツは、罰ゲームで50キロのダンベルを使った追い込みトレって事で!


……じゃあ、位置について……よ〜い……スタート!!」



《『ガチ勢』3人とも速過ぎて草》

《お、新加入の『無双三連星』がやや遅れで付いていっとる!》

《AYUM@とシオリーナが出遅れて草》

《ハルキングは『無双三連星』の後に続いてる感じか》

《『パンチラ三昧』のメグちむがケツ丸出しで草》

《藍口くんマジでレベリング前か!?『パン三』のメグとリナと然程差が無いぞ!》

《『ポイズン・ベリー』のハヤトがハルキングの後ろに付いたか》

《やっぱ『マッスル・ハッスル』は有酸素系苦手みたいだな》



 ふむ……『パンチラ三昧』の前衛2人と『マッスル・ハッスル』の前衛2人は藍口君が10周する迄に30周も出来ないだろうな……


 ステータスに表される筋力や敏捷性等は瞬間的な最大値であって、常に最大値に近いパワーとスピードで動き続けられるかは、毎日のこうした地道なトレーニングがモノを言うと俺は考えている。

 例えレベリングをしていようが、持久力や動作の精度の鍛錬をやっていない者は、毎日アスリートとして追い込みをかけている藍口君には及ばないという事だ。


 なんて事を考えている内に最初のランニングは終わり、案の定『パンチラ三昧』と『マッスル・ハッスル』の前衛は罰ゲームとなったんだが……。




「カッカッカッ!!邪魔するゼェ!!


……おお!テメェがイケメンニキかぁ!!」




 罰ゲーム執行中に漢らしい角刈りのオッサンが、JSAの訓練施設に入って来るなりデカい声を上げた。

 歳は30歳くらいだろう。

 170センチ程で背は高くないが、良い感じに筋肉の発達した身体をしていて中々強そうだ。

 ヤツの頭上近くを魔導ドローンが飛んでいる所から、生配信をしているんだろう。


 彼は俺を見るなり、此方へ近付いて来た。

 



「その呼ばれ方は余り好きじゃない。

神城と呼んでくれ。

で、アンタの名は?」


「オイオイ!このオレ様を知らねえとは、随分と抜けた新人だなぁ!?


オレ様はかの有名なKOZI様だ!!」




 コーズィ……確か日本人唯一の世界ランカーだったか?

 名前は聞いた事があったが、顔を見るのは初めてだ。

 確かに探索者の大先輩で、日本人探索者の第一人者に対して知らない人みたいな態度を取ったのは失礼だったか。




「アンタが日本人唯一の世界ランカーとして有名なコーズィさんですか。

探索者暦僅か4年で世界ランク入りした天才探索者に失礼な態度を取ってしまいました。

どうも済みません」


「か、神城君……KOZIは世界ランクから外れ…」


「テ、テメェ!

嫌味かゴラァ!!この間のWSAのランキング更新で、テメェら『ガチ勢』と入れ替わりに世界ランクから外れたんだゼェ!!


その上、ワザとらしく天才だとか皮肉を言いやがって!!


クソ!!我慢ならねえ!!

模擬戦じゃあ!!模擬戦で勝負じゃあ!!」




 な、何だ、この人?

 俺は丁寧に挨拶したハズなのに、何を怒っているんだ!?




 俺は訳も分からぬまま、世界ランカーのコーズィさんと模擬戦をするハメになったのだった……。



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