61話 変な2人とバチバチの時に魔物が乱入して来たんですけど!? ⑦
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おかげ様でゴタゴタしつつも、モチベーション高く執筆出来てあります。
あと、こんな時間の投稿でゴメンなさい!諸事情で明日の分をこの時間に投稿しました。
明日は休載で、間に合えば明後日続きを投稿します。
「なぁ、オメエよぉ……
テメェらが売り捌いた『エピノロロジウム』で大規模なテロ事件が起きたのを知ってて、ンな寝ぼけた事ほざいてんのかぁぁあ!?
テロに巻き込まれた人達は、今のテメェみてえに命乞いする暇を与えられたと思うか?」
俺は殺気をすこぶる放ちながらも、冷静にクソったれの朧に問いかけた。
努めて『殺すゾボケ!』や『ふざけてんじゃ無えぞクソアマ!』等の乱暴な言い回しを避けて質問したというのに、朧も儚も涙目になってガタガタと震えてやがる……。
《ブラックニキが予想の3倍ブラックで草www》
《恐怖しかない》
【¥100,000:杉山太一:頼む、デビルニキ!コレで2人を許してあげてくれ!】
《美少女2人をヤク◯張りに詰めるニキは全女性の敵》
《コロす気か!?》
《クソ女どもは、漆黒のユーキ様に挽肉にされるべき》
《普通にテロリストなんだからコロされて当然だと思うの俺だけ!?》
《絵面がもうアウトロー系映画のワンシーンなんよ》
《見ている俺氏も涙目》
《杉山氏はテロリストを庇うような事はやめた方がいい。下手したら公安に目を付けられる》
コメ欄の連中は他人事みたいな感じだな……まぁ、他の生配信でもコメ欄はこんな感じだろうし、イチイチ反応してられねぇか。
「……チら……なぃ……」
「あぁあ!?全然聞こえねよ!!
こうすりゃデケエ声出すか、ゴラァ!!」
「イヤァァァア"ア"ア"!!」
ボソボソと何かを喋った朧にイラつきまくった俺は、儚の二の腕を引きちぎった。
コレでアホの朧もハッキリとした声で話すだろう。
「ウ、ウチらが捌いたブツじゃないって言ったの!!
ヨーロッパで起きた事件は、ウチらは何も関与して……「黙れクソが!テメエらもテロリストに『エピノロロジウム』を売り付けたヤツらと同様の蛆虫だろうが!
テメエらが『エピノロロジウム』を捌いた連中が偶々大規模なテロ事件を起こさなかっただけで、『エピノロロジウム』関係の殺人はあちこちで起きてんだよ!!
俺の元嫁だって……瑠奈だって……そこで小便垂れ流してブルってるクズに『エピノロロジウム』入りのタバコを吸わされて、人生を狂わされたんだ!!
……つー事で、先ずはテメェの大事な儚から、少しずつ引きちぎって殺してやるゼェ!!」
大丈夫……ダイジョーブ……オレは冷静だ……冷静にこのクソどもの肉を少しずつ……少しずつ摘み、握り、捻り、引きちぎるんだ……
ギュミチィィィ……
「ヒギャァァァアア"ア"ア"!!」
「止めろぉぉおおっ!!」
パシュンッ!!ズシャアアアッ!!
俺が処刑を再開した途端、ゴミ屑の朧が拳を振り抜く初動を見せたんで、軽ーーく足払いをかまして転がしてやった。
ただ足払いをしただけなのに、朧の左足は膝から下が変な方向に折れ曲がってやがる。
「フン、クソゴミ以下のウジ虫め!
テメェは黙って、大好きな儚ちゃんがゆっくりとミンチにされる様を見学してりゃあ良いんだよ!!」
「クソ!!コロす!!
絶対にアンタを殺してやる!!どんな手を使ってでも、お前のガキも!婚約者も!元嫁も!!」
「何だと?
……止めだ!先にテメェから殺してやらぁっ!!」
オレの大切な存在を害そうとする発言は許せねえ!!
俺は敢えて拳を頭の高さまで上げて、【拳神】スキルで神ったオーラを拳に纏わせた。
次の瞬間、周囲の大気が振動して、場に圧倒的な魔力が充満する。
朧も儚も地面に膝を付いた状態で、完全に身動きが取れなくなっている。
呻き声の一つも上げられない様子だ。
このスキルは魔力消費がまぁまぁ大きいが、どうやら敵対する対象をこの圧倒的な魔力で停止させる効果があるらしい。
こんな効果があると知っていれば、簡単にこのクソ女どもを挽肉に出来たのに……
さて……取り敢えずこのクソアマをブチ殺してやるか……
「待って、ダァリン!!」
そんな俺に待ったをかけたのは、俺がこの姿になって以来フリーズしていたイワ、ナンシィ(仮)だった。
「何だ、ナンシィ(仮)。
俺の邪魔をするんじゃねぇよ」
「オボロはアタシの初代ダァリンの進サマを殺しやがったの!!
罠を仕掛けた厚木ダンジョンに指名依頼をかけて……オボロがダンジョン内で育てていた『ダイレリアード』に捕食させる為に……
お願い!!アタシに進サマの仇を取らせて!!」
ナンシィ(仮)から衝撃的な情報が飛び出した。
朧がダンジョン内でSランク魔物を育てていたというのだ。
そんな事が本当に可能なのだろうか?
厚木ダンジョンは脅威度Bランクで、確か植物系の魔物がメインのダンジョンである。
『ダイレリアード』は厚木ダンジョン最下層のボス魔物だが、最下層のダンジョンボスをボス部屋で育てる事など不可能だ。
何しろ、ボス魔物は召喚されて出現するのだから、戦闘が終わると消えてしまう。
「ほう…『ダイレリアード』は食人花のSランク魔物じゃねえか。
そんなモノを本当にBランクの厚木ダンジョンで育てていたのか?
最下層のボス部屋でボス魔物を育てるとか聞いた事が無いんだが」
「ええ!間違い無いわ!
進サマとパーティーを組んでたアタシも交戦したんだから!!
それと、育てていたのはボス部屋じゃないわ!
12階層道中の隠し部屋で育てていたのよ!」
……マジかよ……イカれた殺人狂を演じている場合じゃねぇな……
俺は【拳神】スキルを解除して、朧に語りかけた。
「オイ、正直に答えろ。
少しでも口篭ったり、嘘をついている素振りを見せたら儚の肉を引きちぎる。
良いな?」
「わ、分かった…」
その後、俺は朧に殺気を強めにぶつけながら、厚木ダンジョンで行っていた事、これまで行って来たダンジョン犯罪、そしてバックに付いている黒幕について質問した。
俺の質問に対して、朧はアッサリと知り得る情報をゲロって行った。
厚木ダンジョンの隠し部屋に『モンスター・シード』というダンジョンドロップした禁制品を持ち込み、特殊な培養魔導具を使ってモンスター・シードから生まれた『ダイレリアード』を育てたようだ。
『ダイレリアード』は魔力を持つ人間を捕食すればする程、強い洗脳効果を与える花粉を生成するらしい。
強い魔力を持つ探索者に指名依頼をかけ、『ダイレリアード』に捕食させていた時に引っかかってしまったのが、ナンシィ(仮)と窟田進が組んでいたSランクパーティーの『マッスル・ラバーズ』だった訳だ。
そして、それらを朧に指示していたのが『蜷川コーポレーション』の統括部長・五味九図夫というヤツらしい。
これまで、儚と朧は五味の指示を受けて、様々な悪事に手を染めた。
『エピノロロジウム』の売買や、ダンジョンでドロップした禁制品指定の魔導具やアイテムの略奪。
『蜷川コーポレーション』が裏で進めていたアメリカからの禁制品輸入計画を嗅ぎ付けて、計画を潰そうとしていたSSランク探索者のグッモーニン・アンダーソンの殺害を遂行したのもその一つだ。
「……アンダーソンの殺しの依頼はとてもスリリングだった……
アイツはそこそこ強かったから、初めて【変化】スキルを使う羽目になったし。
でも、結果は楽勝でバラバラ死体に出来たケド」
《“クソが!俺達のヒーローをよくも殺してくれたな!!”》
《“IKEMEN=NIKI、お願いだ!その女の身柄をステイツに引き渡してくれ!”》
《“オボロをUSで公開処刑にしよう!”》
《USニキが発狂してて草www》
《『おはようアンダーソン』を瞬殺したオボロたんをビビらせるブラックニキの凄まじさよ》
《つーか、『蜷川コーポレーション』ってヤバくね?》
《クリーンな企業っつーイメージだっただけに、『蜷川コーポレーション』の評価は地に堕ちたな》
聞いてもいないアンダーソンとの事まで朧が語り出すと、それまで静かだったコメ欄が再びワチャワチャとし出した。
英語のコメが結構入っているから、アメリカ人も結構見ているんだろう。
同接数も1000万を越えている。
「2つ気になる事がある。
お前と儚は何故、コーキとか言うどアホのゴミ野郎を匿おうとした?
そんなアホを使わなくとも、『エピノロロジウム』で隷従させた兵隊を使えば良いだろ?」
「ああ…ソレは『エピノロロジウム』で傀儡になったヤツは、【鑑定】スキル持ちに直ぐに見抜かれるから。
アト、重度の中毒になると『エピノロロジウム』を摂取出来なくなったら何も考えられなくなる。
公安には【鑑定】スキル持ちが多いらしいし、傀儡が捕まって禁断症状が出たら、あの粉末欲しさにヤバい情報でも簡単にゲロするわ。
それなら、簡単に口車に乗せられるどアホな小島幸樹の方が遥かに使い易いって判断したのよ……まぁ、それが命取りだったけど……
……アンタ、本当はウチらを殺す気なんて無かったんでしょ?」
「チッ!何だよ、バレてたのか……
まぁ、ブッ殺したいくらいムカついたけど、死ぬ程痛めつけてビビらせてやれば良いかなって感じかな……
つーか、分かっていたなら何でペラペラと悪事を話したんだ?」
朧に俺の迫真の演技を見抜かれていた事を知り、俺は体表を覆っていた闇属性魔力を解いて朧に問いかけた。
因みに、この肌が黒く見えたのは、【魔闘戦鬼】からの派生スキル【魔力武装】の効果だ。
瑠奈を救助した時に身に付いたスキルで、コーキを追いかけている時にこっそりスキル効果を確認して、中2っぽくてカッコイイと思ったから使ってみたって訳。
「……何でだろ……五味さんにこれ以上の悪事をして欲しくないって思ったから……かな」
「む?お前らは、ゴミとやらに金で雇われてるだけの関係では無いのか?」
「違うわ……ウチと儚は7年前に五味さんにダンジョンで保護されたの。
言葉も分からない程の完全な記憶喪失だったアタシ達を、五味さんは一生懸命世話してくれたんだ……
大したお金も無かった、当時Dランク探索者だった五味さんがウチらの事を守ってくれた……
だから、今度はウチらが五味さんの力になりたいって……悪い事だとは分かってたけど……それが五味さんの為になるならって……」
朧は瞳を潤ませながら、自分達の過去を語った……
余り他人が聞いて良い事では無いと思った俺は生中継を中断して、複雑な表情のナンシィ(仮)と朧の話に耳を傾けたのだった……。