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60話 変な2人とバチバチの時に魔物が乱入して来たんですけど!? ⑥



「遅い!遅い!遅いデスゥゥゥウウ!!」



 突如鬼っ()と化した(ハカナ)が狂ったように叫びながら、両手に持った鉄扇を超スピードでぶん投げて来る……。



 鬼っ娘・(ハカナ)が取った戦法は実にいやらしいモノだ。

 俺が躱す方向を絞るコースに鉄扇をぶん投げて来ては、躱した先に突進してゴツくなった手から生えた鋭い爪で攻撃して来やがる。

 モチ、【リストレイン】をバンバン駆使して。


 ブレスレットの魔導具で力を半分封じてる俺とヤツではステータスに差があり過ぎて、とてもヤツの連続攻撃を躱し切れない。

 単純なステータスの差だけで、ドシロートの拙い連撃を食らう回数が増えて来た。

 まだ辛うじて深傷(ふかで)を負わないように立ち回れている事が救いだが、俺の消耗度合いからもそれも長くは続けられない事は明白。



 (ハカナ)が先程よりも背が低くなった事で着物が更にダボついていて、ヤツの攻撃の初動が見辛くなっているんだよなぁ…。



 ヤツの戦闘スキル【リストレイン】の効果でジワジワと身体の自由が利かなくなっている事もあって、俺はいよいよ手詰まりになって来た。



 ブレスレットの力制限をもう少し緩めるか?

 だが、これ以上制限を緩めると反応速度まで上がってしまうので、儚の攻撃を躱しざまに反射的にカウンターを打ってしまうだろう。

 この領域の戦闘で放つカウンターは間違いなく致命傷となり得る。

 ここに来て、殺しに一切躊躇いの無い儚と、殺しに躊躇いしかない俺の差がハッキリと浮き出たのだ。



 迷いを感じている間に、鬼っ娘の連続攻撃の内の何発かを貰ってしまった…。

 鬼に対する先入観から、変身後の(ハカナ)はパワータイプだと思ったのだが、まさかのスピードに特化していた事も俺にとっては有り難くない。

 近接戦闘でのスピード差はかなり厄介だ。


 苛烈さを増して行く儚の攻撃をギリギリで躱して行くという綱渡りな戦闘は20分程続き、俺は身体のあちこちに出来た斬り傷からの出血と【リストレイン】のW効果で動きが落ちて来た。

 


 自分を本気で殺しに来る人間、それも破格の実力を持つ相手との戦闘とはここまで過酷なのか……

 格上との戦いに最適な【ジャアント・キリング】を解放すれば余裕で捲れる……だが、余裕で(ハカナ)を殺してしまう……

 あのスキルは余りに強力過ぎて、力の制御がまだ上手く出来ないっていうか、そもそも訓練で【ジャアント・キリング】を使えない。



 俺が思考のループに落ちていると……



「フゥゥッ……アナタが弱過ぎて、全く楽しめなくなりましたねぇ?

一旦、攻撃は止めてあげましょう」



 (ハカナ)は攻撃の手を止めて、俺が直ぐに飛び込めない絶妙な位置に身を置いて話しかけて来た。

 うん、そうしてくれるのはとても参考になる……実にありがたい……



「……傷を回復出来るチャンスだと思ってますね?

そんな時間を与える気は有りませんが、一つ提案があります」



 うん、勘違いしてくれるのもありがたい。

 コイツが喋り続けてくれれば、俺の頭に過った仮説が誤りでは無い可能性が高くなる。


 俺は敢えて表情を顰めて身を低く構えてみせた。



「フフフ…そんなに警戒しないで下さい。

アナタの返答次第では殺したりはしませんから」



 うん、コレはほぼ間違いないな……



「神城雄貴、私の配下になりませんか?」


「なる訳ねえだろ!」



 俺は返事と共に【モード:アクセル】を使用。

 急加速で一気に距離を詰めると、余裕を見せているフリをして身体を休めている儚の腹に右ボディストレートを放つ。



ズドォォッ!!



 モロに俺の打撃を喰らった儚は後方に吹っ飛び、ダンジョン入り口の外壁に激しく背中を打ちつけた。



「カハァッ!……ハッ、ハッ、ハッ……


……ウプッ……うぇぇぇえ!!」



 俺のボディをモロに喰らった儚は、思い切り血を吐いた。

 胃が破れて、血が食道を逆流したのだろう。そのまま地面に膝を突いて腹を抱えている。


 俺は再び儚に詰めようとした瞬間、儚はスマホの画面を俺に向けて来た。

 そこにはJSA近くのファミレスで楽しそうに食事をしている桐斗、瑠奈、彩音、そして雪乃ちゃんの姿が映っている。



「うぇぇっ!

えぼぉっ!

このクソがぁぁあ!

テメェェエ!動くんじゃねぇぞゴラァァア!!

テメェのガキは私の配下が100人体制で囲んでんだ!!

私がスマホのアイコンをタップした瞬間、ガキも女も纏めてブッ殺すぞボケェェエ!!」






……は?コイツ何つった?





可愛い桐斗を……雪乃ちゃんを……コロス?








プツン……










「あ"あ"あ"あ"あ"!!

舐めんなクソアマァァァァア!!」









 一気にブチギレた俺は、能力を全て解放した……ステータスも、【ジャアント・キリング】も、【身体能力超強化】も、【拳神】スキルも……









 初めてだ……人を本気でブチ殺したいと思ったのは……









 心がドス黒く染まっていく……凄まじい殺意に比例して、恐ろしい程の力が全身に漲っている……

 








《黒っ!!》

《や、やべえぞ!ニキが何か黒くなっとる!!》

《何であんな黒くなるんだ!?》

《完全にホラーで草》

《イケメンニキまで変身キターーー!!!》

《ブラックニキ爆誕!》

《子供に見せたらアカンやつや……》

《ニキの第二形態が凶々(まがまが)し過ぎて草すら生えない件…》

《ニキは色々とモードを選べるから、アレはデビルモードじゃね?》

《漆黒のユーキ様とかヤバ過ぎます❤️》

《デビルニキかよ!》





「イヤァァァアア!!く、来るなぁ!!

が、ガキがどうなっても良い……ヒギィぃぃぃい!!!」



 耳障りな声を上げるクソアマの両手の親指と人差し指を毟り取ってやったゼ。



「舐めんなよ、クソアマァ!!

オメエの兵隊如き、彩音や雪乃ちゃんが出るまでも無えんだ……

タテイシ・ラミレスが常に桐斗の安全を確保してくれてるからなぁ……周りで変な動きを見せるヤツがいたら、ソッコーでラミレスが付けてくれているSP達がソイツらを鎮圧するんだぜぇぇえ!!


オイ、生配信を見てる中に、薄汚えゴミ共もいんだろ!?

俺の大事な桐斗や雪乃ちゃんに危害を加えよーとするゴミクズがどーなるか、よーく見ておけやぁぁっ!!」









ブチ……ブチブチ……ビチ、ビチャァッ……









「ヒギャァァァアアアッ!!

や、止めでぇぇえ!!イヤイヤイヤイヤァァァァア!!」











ブシュゥッ……ビキッ……ブチブチ……ミチィィィ……











「フンフフ〜ン♫……クソアマの肉はこーして引きちぎるのがイーんだよなぁぁあ!」




 俺は脳内を(ひた)す仄暗い感情の赴くまま、儚な腕や脚の肉を摘み、捻じり、引きちぎって行く……








ズシャアッ…









「た、頼む!(ハカナ)を見逃してくれ!


……ウ、ウチの事を引きちぎってくれて構わないから、どうか……どうか儚だけは……」



 せっかく俺が鼻歌混じりに肉を引きちぎっていたのに、(オボロ)のボケが儚の隣に飛び込みざまに土下座をブチかましやがった……





 ……コイツら……何処までもヒトを舐め腐ってやがる……





 俺は2人のクソアマに対して更なる怒りを覚えるのだった……



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