5話 お店で魔物?に遭遇したんですけど!? 後編
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「お前の方こそ俺の可愛い桐斗に何をしようとした?」
「あらん、嫌だわぁ。アタシはただ、可愛い坊やの頭を撫で撫でしようとしただけよぉん」
俺はしゃがみ込んで桐斗に何かをしようとした魔物っぽい男に警戒しながら問いかけたが、どうやらコイツに害意は無いらしい。
それから、一応コイツは人間のようだ。
オネェ言葉と見た目のギャップが凄すぎて、コイツの話している内容の理解が追いつかないが、桐斗に害意を向けていた訳では無いらしい。
だが、例え害意が無くともヤツの肉体は凶器でしか無い。
「い、いや。そのはち切れんばかりの筋肉を誇る貴様に撫でられたら、可愛い桐斗の首が折れてしまうだろうが」
「失礼しちゃうわね!コレでも元探索者だったのよ!?
ちゃんと力の制御くらい出来るわよぅ。
それよりアナタ。剣の扱いはど素人なのに、身のこなしは恐ろしくレベルが高いわね?」
「ほう。筋肉ダルマの癖に俺の体捌きが分かるのか?」
「ちょっ…アナタ、さっきからアタシに対して失礼極まりないわよ!
アタシはれっきとした乙女で、ちゃんとナンシィ(仮)っていう名前があるの!
ちゃんとナンシィ(仮)ちゃんって呼ばなきゃ、装備品選びのポイントを教えてあげないんだから!」
お、怒られてしまった…
確かに初対面の人に対して失礼だったよな。
何か色々とヤバ過ぎて警戒し過ぎたようだ。
「す、済まない。
アンタの言う通り俺は剣についてはど素人だ。
来月辺りに探索者登録をしに行こうと思っているんだが、レベリング前でどんなスキルが手に入るか分からんだろ?
だから、後衛系の職業スキルになっても扱う事を考えて、軽めの片手剣を…」
「ん?ん?ん?ちょっ、ちょっと待ってねぇん?
色々とツッコミたいわ。
先ずアナタ、レベリングしてないのにあんなにとんでもない動きをしたの?」
「とんでもない動きって…
プロ格闘家(の練習を鬼程積んだ)なんだから、アレくらい動けて当然だろ?」
このナンシィ(仮)は言う事が大袈裟過ぎる。
俺は確かにトップ所のプロ選手達とのスパーで、プロからも驚かれていたが、それは本気を出した時の動きに対してだ。
今のは別にそこまで本気では無い。
隙だらけだったナンシィ(仮)のすっトロい動き出しにノイズを入れただけに過ぎない。
「と、当然な訳無いでしょ!
アタシはコレでも元Sランクなのよ!?そのアタシが一瞬でバランスを崩されて、アナタの姿を見失ったのよ!?」
「ほう、ナンシィ(仮)は元Sランクだったのか。
だが、忖度無しに言わせて貰えれば、アンタも立ち姿からして隙だらけだ。
探索者登録するに当たって色々な探索者の配信を見たが、殆どの連中は体術レベルがお粗末過ぎて、戦闘を舐めてるとしか思えなかった。
何故、命懸けの探索者という職業に就いているのに、体捌きという戦闘に重要な部分の鍛錬をしないのか、俺には理解出来ない」
俺はドヤ顔で玄人視点から探索者について語ると、ナンシィ(仮)の付け睫がバサバサと音を立てて上下する。
何かあの付け睫、ムカデの脚みたいに見えて来たぞ……
「ア、アナタ素晴らしい素質の持ち主ね…
ちょっと、地下の特別室に来てちょうだい!アタシ自らアナタにピッタリの装備を見繕ってあげるわぁん!」
「ちょっ、ナンシィ(仮)は店員だろ?
勝手に店の特別室とやらに客を連れて行って良いのか?」
「あらん、アタシはここのオーナーよ?
ご存知無かったかしら?」
ナンシィ(仮)はこの装備品ショップ『巌窟堂』のオーナーだった……
事前に取得していたJSAアプリの掲示板で、『巌窟堂』は都内で最も質の良いオリジナル武具を置いていると評判だったから来たんだが、オーナーがまさかこんなキワモノとは……
ともあれ、俺は桐斗を抱いてキワモノオーナーの後に付いて行った。
ショーパンのケツがプリプリと蠢いていたが、視線を向けないようにした。
何故かナンシィ(仮)のケツを見たら負けだと感じてしまったのだ。
◆◇◆◇◆
《ナンシィ(仮)視点》
可愛い坊や連れのイケメンさん。名前は神城雄貴さんと言うみたい。
彼の印象はチグハグなイケメンさんで、思わず食べちゃいたいと思ってしまったわ。
歴戦の猛者という言葉がしっくり来るような、一分の隙も無いタチ姿…なのに、片手剣を振るうその姿は…。
「ううん、やっぱり剣術はまるでダメね」
本当にダメダメなのよねぇ……。
試し斬り用の的への足運びは超が付く程の一流。正直、私が現役の時でもあれ程の踏み込みは出来なかった。
なのに、いざ片手剣を振るうと、力任せに金属の板を叩き付けるような感じになっちゃうのが残念過ぎるわぁ…。
「そうだろ?剣術はパンチや蹴りとはまるで違うから、今は動作の擦り合わせからやってる所だ。
所謂チューニングかな。
因みに、この試用品の剣の一番斬れ味の良い所はどの部分だ?」
「あら、やっぱりただのフィジカル馬鹿じゃ無かったようね」
うん。中々良い所に気付くじゃない?
剣は刃の部分で有れば、何処でも等しい斬れ味という訳では無いの。
普通は探索者になって徐々に感覚を掴んで行くモノなんだけど、雄貴サマはその辺にもビンカンなようね…。
はぁぁ、食べちゃいたいわぁ…
アタシは暴走しそうなマインドを落ち着かせて、雄貴サマに剣のスイートスポットを教えてあげた。
すると、ユーキ様は何度か片手剣を振るってから、今度は試し斬りの的との距離を取って、足運びだけを繰り返し始めた。
仕切りに脚位置を確認しながら、30分以上繰り返している。
「うん。後は靴が重要かな。
見た所ダンジョンの地面は凹凸が酷い。足の裏の感覚が重要になるから、ソールが分厚過ぎず、適度な柔軟性が必須で、素材は……」
こ、この男、異常過ぎだわ……。
踏み込んだ時の脚位置は恐らく魔物との戦闘を強くイメージして行ったモノ。
立ち位置の調整からミリ単位で行っている辺りで、もう常人とは違う。
更には試し斬りの前に気にするのが靴だなんて…しかも、ダンジョン内での戦闘を強く意識して靴に注文を付けて来た。
値段も7〜9万円の間という現実的な価格帯を突き付けて来る。
ここまでのやり取りで、アタシの乙女レーダーはビンビンになっちゃったわぁ…。
雄貴サマは探索者界隈には余りに異質。でも、このイケメン様は間違いなく日本中に名を轟かせる傑物よ!!
アタシの乙女レーダーがここまでギンギンになっているんですもの!
アタシは溢れ出す気持ちを堪えながら、雄貴サマにピッタリの片手剣、小盾、ダークリザードの革で作った軽鎧、同じくダークリザードの革製のブーツを用意したの。
ふふふ、色々とサービスしちゃったから、雄貴サマのお尻をひと撫でする位は許して貰えるかも知れないわね。