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55話 変な2人とバチバチの時に魔物が乱入して来たんですけど!? ①



 ……皆さんは大ダンジョン時代の昨今で、世界的に最も罪の重い犯罪は何かお分かりだろうか?



 まず真っ先に思い浮かぶのは殺人だろうか。

 当然重罪だが、そうでは無い………







 世界的に最も重い犯罪……それは、『ダンジョン犯罪』である……







「ママぁぁあ!びぇぇぇえ!!ママぁぁぁあ!!」


「桐斗……ゴメンね……本当にこんなママでゴメンね……」



 桐斗が大泣きしながら瑠奈に抱きつき、瑠奈も大粒の涙を流しながら桐斗を抱きしめている……



 良かったなぁ……桐斗……お前の大好きだったあの頃のママが戻って来たんだよ……



 俺は少し離れた所で抱きしめ合う2人を見て涙腺崩壊。

 涙と鼻水が止まらねえよ……チクショウ……



 おっと失礼…あの後の事を色々とはしょってしまったな。

 無事に瑠奈の救出を終えた俺は、ボス討伐後の帰還用魔法陣で瑠奈と共に帰還した。


 本当は直ぐに瑠奈を桐斗の元に連れて行きたかったが、瑠奈はレベリングを終えてかなり良いステータスとスキルが身に付いていた。

 殆どのステータス値が350を越えていた瑠奈が、まだ幼い桐斗と触れ合うのは余りに危険過ぎる。

 そんな訳で先にJSAの窓口で能力の測定と探索者証の発行を行って、力制限の魔導具を付けてから桐斗と再会させたって訳。


 暫く泣きながら抱き合っていた桐斗と瑠奈だったが、瑠奈が優しいママに戻っている事に気付いた桐斗は次第にいつも雪乃ちゃんに甘えるように、瑠奈に甘え始めた。



「ママぁ、ボクねぇ、うんとねぇ、にんじんたべれるんらよ!」


「グスッ…う、ぅぅぅ……

そうなの、桐斗…偉いわ……にんじんを食べられるなんて本当に偉いわ」


「えへへへ……それからねー、うんとねぇ、じてんちゃもブンブンれきるの!」


「へ?ウソ!?

桐斗ったら、もう自転車に乗れるの!?

て、天才だわ!!あぁぁ!もう、可愛いだけじゃなくて天才だなんて!」



 ああ……瑠奈が桐斗の話をちゃんと聞いてくれている……あの様子ならば、桐斗は前のようにママと会いたがるだろう。

 瑠奈も桐斗と沢山会いたいだろうし、雪乃ちゃんに相談して彼女が気を悪くしなければ、瑠奈には自由に桐斗に会いに来てもらおう。



 桐斗からママとの暮らしを奪ってしまったせめてもの償いに、母子の時間を極力作ってあげたい。

 その内瑠奈の暮らしも安定するだろうし、桐斗と瑠奈が望むなら週に何日かは瑠奈の家に泊まらせるのも全然良いだろう……。



「さて……そろそろクズ野郎を地獄に突き落とすとするか……


オイ、お漏らし変態野郎。

コレが何だか分かるな?」



 瑠奈と桐斗の母子の触れ合いに感動しまくった俺は、絶対に許す事の出来ないドブ以下の手錠男にハンカチーフに包まれたタバコを見せる。



「は!?し、し、知らねえ!!

そんなモン知らねえ!!」


「ほう……お前が瑠奈に餞別だと言って放り投げた所が生中継されていたらしいが、知らないとはなぁ……


知ってるか?

俺は日本初のSSランク探索者だ。

国際探索者法第12条4項に、SSランク探索者にはダンジョン犯罪取り締まりにおいて全権を認める物とするとある。


お前はたった今、そんな俺に対して堂々と嘘を吐かした訳だ……



フーーー……



藍口君、レベリング前だというのに申し訳ないが、俺のスマホでコイツとのやり取りを動画撮影してくれないか?

警察に突き出す時の証拠にしたい」



 俺はコーキの横で睨みを利かせている藍口君に動画撮影をお願いした。

 藍口君は二つ返事で快諾。

 藍口君がキャメラを回した所で、俺は再びアホのコーキに質問をした。



「改めて聞く。

このタバコはお前が所持していたモノか?」


「し、し、知らねえっつってんだろ!し、し、し、しっけーんだよ!!」


「あ、そう。

このタバコを俺がEXスキル【極細鑑定】で調べた所、『エピノロロジウム』が含まれている事が分かった。


『エピノロロジウム』は知っての通り、特定のダンジョンでドロップする『エピノロロスの種』を精製して得られる超強力な『ダンジョン麻薬』だ。

効果は強い中毒作用と思考力の著しい低下……強力な興奮作用……

そして、超極力な洗脳作用」



 俺が発した『エピノロロジウム』という単語に、周りの新人達やJSA職員はざわついた。

 何故ならば、某国のテロ組織が『エピノロロジウム』を民間人に投与して、1,000人から成るテロ兵団を組織したニュースが一時期世間を賑わせていたからな。

 5年前、そのテロ兵団は主にヨーロッパ各国の国際空港で自爆テロを起こし、150万人を超える死傷者を出したのだから知らない訳が無い。



 その事件以来、殆どの国で『エピノロロジウム』を入手した者はかなり重い刑罰に処されている。

 更に故意に他人に投与した場合、ほぼ間違いなく死刑となる程の『ダンジョン犯罪』なのだ。



「し、知らねえ!

そんなモノは知らねえ!」


「ふぅん……

では、何故このタバコを鑑定した時に、『コーキ・コジマが“オボロ“から購入した』と出て来るんだろうなぁ?

つーか、”オボロ“って何だ?」


「ひぇっ……う、ウソだ……

オボロの事がバレるワケねぇ……そ、そんな……」



 俺がコーキに鑑定結果を伝えると、ヤツは途端に動揺して滝のように汗をかき始めた。

 どうやら、“オボロ”というのはバレると相当ヤバいヤツらしい。


 『エピノロロジウム』入りのタバコを国内に流通しているのは、恐らく『蜷川コーポレーション』だろう。

 『蜷川コーポレーション』は表向きはダンジョンからドロップする魔導具を解析して、得た技術を他社に高値で開示する事で利益を上げているらしい。

 しかし、ネット界隈では裏でダンジョンドロップした禁製品を流していると噂されている。



 これまで何度も『蜷川コーポレーション』にガサが入ったのだが、悪事の尻尾が掴めなかった為、唯の噂である可能性もある。

 しかし、唯の噂レベルの事で警察やダンジョン管理省が動くとは思えないんだよなぁ……。



 もしかすると、コーキを詰めれば『蜷川コーポレーション』の悪事に繋がるかも知れないと考えた俺は、コーキがポケットに入れている怪しい魔力を放つ物体には気付かないフリをした。


 コーキのポッケはスルーで、タテイシ・ラミレスや大学の授業で別行動となっている雪乃ちゃん、そしてアイドルの仕事に行っている彩音に今起きている事態についてBOINしておこう。

 後は国際テロリスト認定されそうなコーキのガラを公安が確保に来るのが先か、コーキのポッケの中の怪しい物体が動くのが先か……



「カッ……カッカッカッ!

フ、フカシをかまして俺様をドーヨーさせようったってそーはいかねー!!


ヘナチ◯野郎!俺様を直ぐにサツに突き出さなかったテメェのミスだゼ!!」



 コーキのダサいジャージのポッケが光り出すと、アホなコーキは勝利を確信したかのような台詞を吐いた。



ドシュンッ!!ビュォォオン!!



 次の瞬間、コーキの身体は上空に舞い上がり、風切り音と共に東の方へと飛んで行った。



「藍口君、登録に来ただけなのに変な事に巻き込んで申し訳ない。

今回迷惑をかけたお詫びに、後でレベリングについての耳寄りな情報を教えるよ。

レベリングは後日改めてやってくれないかな?」


「え!?あ、ああ、うん。

それは構わないけど、あのど底辺野郎が逃げたのは良いのかい?」


「ああ、あの程度のスピードなら直ぐに追いつけるから問題無い。

では、タテイシ・ラミレスに追跡許可を貰いますか……」



 俺は藍口君に詫びを言うと、タテイシ・ラミレスに電話をするのだった……。



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