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54話 思いがけないヤツと再開したんですけど!? ③


 

備土(ビツチ)瑠奈(るな)視点》



「ありがと……おかげで落ち着いた」



 あの後、雄貴が何も言わずにアタシが泣き止むまで胸を貸してくれたおかげで、アタシは随分と落ち着く事が出来た。

 アタシが雄貴のバッキバキの胸から顔を離してお礼を言うと、雄貴はとても穏やかな顔で口を開いた。



「大した事はしてないさ。

それより、昔の瑠奈に戻ってくれたみたいで安心したよ。


瑠奈が出て行く半年前くらいから妙な言葉遣いをするし、雰囲気も随分と変わってたから、出て行った後はお前の事が少し心配だったんだ」


「あの……言い訳みたいに聞こえるかも知れないケド、あの時の……幸樹と付き合い出した頃のアタシは……何か……アタシであってアタシではなかったっていうか……」


「言い訳だなんて思わないよ。

確かに、あの頃から瑠奈は人が変わったようだった記憶があるな……


言い辛かったら話さなくても良いけど、あの頃に何かあったのか?」



 雄貴は相変わらず優しい。

 ハッキリしない言い回しをしたアタシを疑うでも無く、やんわりと話を促してくれる。



 アタシも当時の事を出来るだけ詳しく話して、自分の中でのケジメも付けたいんだけど、何だろう……

 それ程昔の事では無いのに、どういう訳か幸樹と出会った最初の頃の記憶にモヤがかかったような感じがして、上手く思い出せない……



 ふと目線を落とすと、幸樹が放り投げて来たタバコの箱が地面に転がっていた。



 タバコ……さっきもタバコに対して妙な違和感を覚えたんだよね……







……あっ!!!







 その時、アタシの頭の中に当時の記憶が蘇って来た……






ーーーーーーーーーー



「ぎゃぁぁぁあ!!びぇぇぇええ!!」


「どうしたの?桐斗?

ポンポン空いたの?」



 今から役2年くらい前のある昼下がり。

 桐斗にお昼寝をさせようとしていたら、急に桐斗は不機嫌そうに泣き出してしまった。

 当時のアタシは慣れない育児に疲れ果てていたんだと思う。

 とにかく気持ちに余裕が無かった。


 抱っこをしても、離乳食をあげようとしても桐斗は一向に泣き止まず、もう訳が分からなくなってしまった。

 すっかり気持ちが滅入っていた時に尋ねて来たのは、義姉である梢さんだった。



 梢さんは桐斗の事を可愛がってくれるだけで無く、アタシの体調面や精神面も気遣ってくれる優しい義姉だったっけ……。

 


「瑠奈ちゃん寝不足で大変でしょう?

私がキリたんを寝かしつけるから、ソファで横になって休んでて」


「す、すみません。梢義姉さん。

桐斗の事お願いします」


「気にしないの、新米ママは大変なんだから。

ほーら、キリたん。梢お姉ちゃんだよ〜」



 当時アタシの救いは、家に居る時は率先して桐斗の面倒を見てくれたり家事全般を引き受けてくれる雄貴と、ちょくちょくウチに訪ねに来てアタシを気遣ってくれる梢義姉さんだった。


 それでも、桐斗と一緒にいる時間が長いのは当然母親のアタシだった。

 桐斗の事を言葉に出来ない程愛しく思う反面、当時1歳半だった桐斗のコロコロと変わる感情に振り回されて、疎ましく思ってしまう事も……



 今では1歳半の幼児なんだから当然の事だと思えるし、当時のアタシなんかよりも大変な想いをして子育てしているママさんなんて五万といただろう。



 アタシなんて恵まれている方だった……



 でも、愚かなアタシは極端に視野が狭くなっていた。



 義姉さんが桐斗を寝かしつけてくれている間、アタシはソファに横になりながらスマホを弄った。

 前に高校時代の同級生に聞いたマッチングアプリをインストールしてしまったのだ……。



 これは決して言い訳では無く、その時アタシは浮気をするつもりなんて微塵も無かった。

 ただ、愚痴を聞いてくれる異性を求めてマッチングアプリを使ってしまった。



 何故、ママ友や同級生に愚痴を言わないのか?

 それはアタシが大馬鹿でクズな見栄っ張りだから。


 その頃付き合いの合ったママ友は、とにかくリア充アピールがエゲツなくて、やれ海外に家族旅行に行っただの、やれ旦那がブランド品のアクセサリーを買ってくれただのと自慢話ばかり。

 とても弱音を吐けるような関係性じゃ無かった。


 高校の頃の友達は逆にアタシの事を矢鱈と羨んでいた。

 同じ高校の中でもイケメンでスポーツ万能で女子人気ナンバーワンだった雄貴と結婚した事、桐斗が凄まじく可愛い事、雄貴が理想的なマイホームパパな事、若くして東五反田にマイホームを購入した事等……。

 とても愚痴なんて言える感じじゃ無かった。



 同姓に対しては見栄や虚勢を張ってしまうアタシにとって、気軽に愚痴を言えるとしたら同年代の異性くらいしか思いつかなかった。



 そんな背景で手を出したマッチングアプリ。

 そこでやり取りをした中で、アタシの愚痴を聞いてくれそうだったのが幸樹だった。



 で、アタシの人生が狂ったのは幸樹とやり取りを始めて2週間が経った頃だ。

 その日は様々な偶然が重なった。


 雄貴が働いている工場で納品ミスが発生して、急に泊まり込みになった事。

 アタシの事を気遣ってくれた梢義姉さんが桐斗を一晩預かってくれた事。

 



 そして……幸樹が愚痴を聞くから偶には羽根を伸ばして飲みに行こうと誘って来た事……。




 その後に起きた事は当然、100%アタシが悪い。

 運が悪かったとか、幸樹のせいにするつもりも一切無い。

 ただ、アタシが大馬鹿で、母親として、妻として未熟だっただけの事だ。




 そんな糞クズなアタシは幸樹の誘いに乗って居酒屋に行き、妊娠して以来久し振りに酒を飲んで、日頃の愚痴をこぼした。

 幸樹はただただ調子よく相槌を打ってアタシに同調するだけ。

 ただそれだけなのに、アタシは日頃の鬱憤を吐き出して気分が軽くなって行った。




 妙な事が起きたのは、そのままの流れで行った2軒目のバーでの事……。




 1軒目で3時間以上愚痴を吐き出したアタシは、久しぶりに解放された気分になって幸樹と他愛もない馬鹿話をしていた。

 話し始めて30分程して幸樹がタバコを吸い出したのだが、その辺りから妙に頭がクラクラし始めた。


 最初に思ったのは、久し振りに外で飲んで酔っ払ってしまったのではという事。

 でも、アタシは話す事に集中していて、ハイボールを2〜3杯しか飲んでいない。


 次に思ったのは、所謂レイ◯ドラッグ的なモノ。

 でも、アタシはその辺りは警戒していたから、トイレに立ったのは飲み物が空になった時だけだったし、飲み物のグラスに幸樹が変なモノを入れないかを注意していた。

 

 自分の体調の変化に戸惑いながらその原因について考えていると、急に周りのお客さん達の声が聞こえなくなって、幸樹の声だけが矢鱈と頭に響くようになった。

 何故か、幸樹の話す事がこの世の全てだと思えて仕方なくなったのだ。



「なぁ……ルナちゃんの旦那って最低なクズ野郎だな」



 雄貴を露骨に腐す言葉が頭に響く……

 でも、何故かソレは正しい事のように思えて仕方ない……



 ああ……何か……タバコの煙が……とても甘い香りがする……



「そ、そうかも……雄貴って最低なクズかも……」


「だろ?

フツー、ルナちゃんみてぇなめちゃくちゃ可愛い嫁さんがいたら、ルナちゃんを女王みてぇに扱うのがフツーじゃん」


「そ、そうだね。

……アタシを女王扱いしない雄貴が悪いよね……」


「そうそう。

いい感じじゃん、ルナちゃん。

ホレ、このタバコ吸ってみ。旦那の事なんてクソくだらねえって思えて来るから」



 そう言って、幸樹は甘い香りのするタバコを差し出して来た……




 アタシはソレを手に取って思い切り煙を肺に吸い込んだ……



 

 ああ……コレ……サイコーだわ……




 マトモな判断が出来なくなったアタシは、そのまま幸樹の口車に乗せられて、幸樹の住むワンルームマンションに行ってしまった……

 



ーーーーーーーーーーー



《雄貴視点に戻る》



「……ぅぅぅ……ゴメンなさい……

アタシが大馬鹿だったの………」



 瑠奈が辛い過去を思い出し、泣きながら当時の状況を話してくれた。

 俺はその話を聞いて、コーキを今すぐにでもブチ殺したくて堪らなくなった。



「瑠奈、大丈夫だ。

お前は何にも悪くない……そんなにストレスを抱えていたのに気付いてやれなかった俺の責任だ……


俺の方こそ瑠奈の事をちゃんと見てやれなくて、そんなに辛い経験をさせて本当に申し訳なかった……」


「ぅぅぅ……ゆ、雄貴は悪く無い!

アタシが本当に馬鹿だったの……


あんなに可愛い桐斗を疎ましく思ってしまったり……

梢義姉さんや雄貴もアタシが疲れていないかいつも気遣ってくれてたのに……」



 泣きながら尚も自分を責める瑠奈を抱きしめて、俺は腑が煮えくり返る怒りを何とか鎮めながら彼女を窘めた。

 恐らく、俺と瑠奈の気持ちは同じだと思う。



 失ったあの頃の幸せな日々はもう二度と戻らない……



 俺はもう雪乃ちゃんを心から愛してしまっているし、雪乃ちゃんとの結婚しか考えられない。

 瑠奈に深く同情をしているが、それで再婚したとしても俺も瑠奈も幸せにはなれないんだ……



 瑠奈も俺の同情を買ってヨリを戻そうと考えてこんな事を話した訳じゃない。



 ただ、俺達の中に有るのは失った日々が戻る事はないやるせなさと、その元凶となったコーキとかいうクズ野郎への強い怒りだ……



「瑠奈、そのタバコを調べても良いか?」


「ん?別に良いけど……でも、調べるって言っても検査する機械みたいなモノは無いでしょ?」



 俺は瑠奈が落ち着いてから、一応瑠奈にタバコを調べる事に断りを入れた。

 瑠奈は不思議そうな表情で問いかけて来たけど、確かに今の俺を知らない彼女が疑問に思うのは無理も無い。



「実は俺はレアな鑑定スキル持ちでね。

チョチョイとそのタバコにヤバいモノが入ってないか、調べる事が出来るのさ」



 俺は瑠奈に説明すると、EXスキルの【極細鑑定】を使用した。

 コレはとんでもないブッ壊れスキルで、試しに雪乃ちゃんを鑑定した所、レベルやステータス、スキルはおろか、スリーサイズやヴァージンである事、そしてファーストキスの相手が俺だという事まで鑑定出来たのだ。

 当然、雪乃ちゃんに事前に断りを入れてから鑑定したのだが、判明した情報を彼女に伝えた所、思い切りビンタされてしまった……。


 話は横に逸れたが、タバコを鑑定した所、とんでもないブツが含まれている事が判明した。



「クックック……コイツはヤバいな……


瑠奈、このタバコにはあのクズ野郎を死刑に追い込める程ヤバいブツが含まれているぞ。

取り敢えず、瑠奈をこんな目に遭わせたオトシマエを付けさせてやろうぜ!」


「あ、アンタ……そんな悪い笑顔どこで覚えたのよ?

マジで引く程の悪人面なんだけど……」



 瑠奈にドン引きされてしまったのはショックだが、俺はハンカチーフでタバコを包んで【アイテムボックス】に回収した。



 先ずは桐斗に瑠奈の元気な姿を見せてあげて、野郎を地獄に突き落としてやるか……。




ブクマ登録と高評価を下さった方々に深い感謝を。

おかげ様でブクマ登録が100人以上になって、ポイントも300を越えました。

本当にありがとうございます!!


そう言えば、小島幸樹(瑠奈の彼氏)の挿絵のアクセス数がたった4でした。

コレには思わず吹き出してしまいました。

本作の挿絵は基本的にどの挿絵も100以上のアクセスを頂いていて、腹パン雪乃ちゃんの挿絵は700以上のアクセス数なのに……


たった4て……


確かにめっちゃ適当に描いたけど、まだ本編に登場していない(おぼろ)さんですら15とかなのに……


面白いので、小島幸樹の挿絵は4のままでいて貰いたいなと思っております。


話は逸れましたが、ここからあと数話が第一章的な括りで、その後メアリーさん率いる『STRANGERS WITH ATTITUDES』が本格的に登場する予定です。

引き続きお楽しみ頂けるとありがたいです!


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― 新着の感想 ―
[一言] おい、主人公。一人の女性と恋に落ちることができると誰が言ったのですか?さあ、男になってハーレムを作り、複数の女性と結婚しましょう。
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