48話 所属プロダクションが決まりましたけど?
「神城君、清川君、柊君、何とお礼を言って良いか……
君達のおかげで俺も栞も死なずに済んだ!
本当にありがとう!!
この借りは必ず返して行く!」
「私も『ガチ勢』の皆んなに本当に感謝しています。
命を助けて頂いて、どうもありがとうございました!」
地上に戻った後、そそくさと『餓狼』の魔導ヘリに乗り込んだ途端、アユマットさんと敷島さんが俺達に頭を下げてお礼を言って来た。
こういうのは何ともむず痒いし、田沢さん達まで何度も頭を下げて来るものだから、此方の方が申し訳なく思えてしまう。
「『餓狼』の皆さんが無事で本当に良かったです。
私達『ガチ勢』は『餓狼』の皆さんにこれまでお世話になって来ました。
私達はこれまで頂いてばかりだった恩を返せたという事で、貸しとか借りは無しにしませんか?」
雪乃ちゃんが美少女然とした愛らしさで、『餓狼』の皆さんをやんわりと窘めてくれた。
流石、ウチの美少女リーダーは纏めるのが上手いぜ!
雪乃ちゃんの言葉を聞いた『餓狼』の皆さんの表情も漸く緩んで、俺達はそれぞれ健闘を讃えながら握手を交わした。
リーダーの機転のおかげで、ヘリの中はとても和やかな雰囲気になったのだが、『餓狼』のクランビルに到着する前には再び重い空気になって行った。
ヘリがクランビルへと到着した時、ビルの前の駐車スペースには既に『餓狼』に所属する100人以上の人達が整列していた。
誰もが皆、悲痛な表情で俯いている。
号泣している人達も少なくない。
リーダーのアユマットさんはそんな彼等の前に進み出て、厳しい表情で口を開いた。
「皆、『清水の花園』の事は聞いていると思うが、改めて俺の口から説明させてもらう。
我々が所沢ダンジョンに駆け付けた時には、既に彼等は事切れていた……
今回の悲劇は、全てクランリーダーである俺の至らなさが原因だ!
大切な仲間を失う事態になってしまい、誠に申し訳無かった!!」
アユマットさんはそう言うと、深々と頭を下げた。
「リーダー、頭を上げて下さい!!
貴方の責任なんかじゃありません!!」
「そうです!誰のせいでも無い!!
今回の事は誰であっても防ぎようが無かった!」
「そんなに自分を責めないで下さい!」
「リーダーと敷島さんが無事で何よりです!!」
「リーダー達は『ガチ勢』の皆さんと偉業を成したんです!」
「リーダー達は我々の誇りですよ!!」
「君達……
君達の気持ちはありがたく思う。
だが、俺はこのクランのリーダーとして、所属してくれる仲間たちの命に対しての責任がある!
これから俺と敷島は『清水の花園』の遺体をご遺族の所に返して、誠心誠意謝罪する。
だがその前に、先ずはこの場で所沢市民の為に勇敢に戦った誇り高き5人の戦士に黙祷を捧げよう。
清水政成、古村茜、茂木佑、雷萌香、渡部雫の5名は、何も才能と優しさに溢れた素晴らしい探索者だった!
我々『餓狼』は彼等のような素晴らしい仲間に恵まれた事を心より誇りに想う!
『清水の花園』メンバーの冥福を心より願い、此処に黙祷を捧げる!!」
アユマットさんは悲しみに声を震わせながらも、リーダーとして立派に振る舞って見せた。
彼の後方に並んでいた俺達『ガチ勢』も、『清水の花園』に黙祷を捧げたのだった……
◆◇◆◇◆
あれから1週間が過ぎたが、とんでもない状況になっている。
我々『ガチ勢』と『餓狼』を救世主のように崇めるような報道が相次ぎ、着信とかDMとかBOINが尋常じゃない程来ているのだ。
方々から俺のメイン口座に凄まじい金額が振り込まれているのに、スポンサー各社やJSA、アユマットさん達からのメールやBOINが埋もれてしまい、入金内容の確認もままならない。
自分の収入管理や関係者との連絡が無理ゲーになった俺は、12月12日に姉貴と結婚する皆川颯太さんに連絡を入れた。
皆川さんは探索者プロダクション企業『ラブリー・ワン』に勤めており、探索者のマネジメントには定評がある。
俺が知り合った人達の中でも群を抜いて善人の皆川さんに『ガチ勢』をマネジメントして貰えれば、先ず間違いは無い。
勿論、雪乃ちゃんも彩音もその事には了承済み。
皆川さんに俺達『ガチ勢』が『ラブリー・ワン』に所属する意向を伝えると、皆川さんはめちゃくちゃ驚いていた。
実はこれまで何度か皆川さんには所属プロダクションについて相談しており、その度に皆川さんからは『オスカー・デラポーヤ・プロダクション』や『ハイ・ランカー・プロモーション』といった業界最大手の企業を薦められていた。
最初は俺の提案に難色を示していた皆川さんだったが、俺が皆川さん以上に信頼できる人は居ないと伝えると、渋々といった感じで会社の偉いさんとの話し合いの場を設けてくれると約束してくれた。
そして、『ラブリー・ワン』CEOとの面談当日…
「我々の希望は全部で5つ。
一つ目は皆川颯太さんを俺達の専属マネージャーとして据える事。
皆川さんは俺達以外をマネジメントする事や、俺達のマネジメント以外の業務を皆川さんにさせる事は認めない。
二つ目は皆川さんを重役に昇格させて、給料と賞与を今の100倍支払う事。
三つ目は皆川さんは1日8時間労働の週休3日制として、しっかりと有給や福利厚生も付ける事。
四つ目はこの会社の誰だろうと皆川さんに仕事の指示をする事は許さない。
彼の仕事に口出しをするな。
最後に、皆川さんのサポートとして、優秀な秘書を3名付ける事。
以上を遵守出来るなら、俺達『ガチ勢』は『ラブリー・ワン』と専属契約を交わしてやろう。
其方の取り分は、俺らが得た全収入の20%だ。
どうだ?破格だろう?」
建物内の中でも取り分け豪華な部屋でCEOの横山さんと対面した俺は、挨拶もそこそこに上からな言い方で此方の要求を突き付けた。
「に、に、20パー……収入の?
……よ、よ、喜んで、その条件でマネジメントさせて頂きます!!
いやぁ、皆川君、大手柄だ!!
本当に良くやってくれた!!
はははははっ!!やったなぁ、おい!君は出来る男だと前々から目をかけていたんだよ!
お〜い!上等なシャンパンを持って来てくれ!
世界の大スターがウチの所属になったんだ!!祝杯を上げよう!!」
横山さんはテンション爆上がりで、真昼間から酒盛りをすると言い出した。
部屋にいたCEOの秘書的な美人さんが何とか横山さんを窘め、『ラブリー・ワン』の担当弁護士が呼ばれて条件面の確認と契約書の作成が執り行われる事となった。
結構、俺の提示した条件の内、全収入の20パーを渡す所が法に抵触するらしく、法律で認められた最大割合である全収入の12.7パーが『ラブリー・ワン』の取り分という事で契約書が交わされた。
結構すんなりと姉貴の婚約者で超善人の皆川颯太さんが、俺達の専属マネージャーとなったのだった。




