45話 『餓狼』の拠点にアポ無し凸をぶちかましますけど? ③
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「ふざけんなよ!こんな時に!!」
悲哀と緊張が立ち込める所沢ダンジョン3階層にアユマットさんの怒声が響いた。
どうやら、『餓狼』メインスポンサーの『テレビ夕陽』から着信が来たようだ。
自分のクランに所属する若手パーティーが命を散らしたのだ。
アユマットさんが怒るのも当然だろう。
「このバカ!アンタ、クランリーダーでしょ!?
私情に流されてメインスポンサーからの連絡をシカトするとか、普通に有り得ないから。
さっさと電話に出なさい!!」
そんな怒りのアユマットさんを叱り飛ばしたのは、餓狼幹部の中で下手したらアユマットさんを上回る威厳を持つ敷島栞さんだ。
決して彼女は薄情な訳ではない。
先程まで『清水の花園』のメンバー達の遺体の前で泣き崩れていたし、今も目に涙を溜めている。
彼女はクランの為、自分の気持ちを押し殺してアユマットさんに檄を飛ばしたんだ……
その事がアユマットさんにも伝わったんだろう。
彼は眉間に深い皺を刻んだまま、スマホの通話ボタンを押した。
流石に他のクランとメインスポンサーの話を聞く訳には行かないので、俺達『ガチ勢』は少し離れた場所へと移動する。
通話を待っている間、スケルトンバーサーカーの軍団が何度か襲って来たが、【モード:エクスターミネーション】で撃退した。
エクスターミネーションは20個の黄金色に輝く球状の物体を半径30メートル内に展開して、領域内に踏み込んだ魔物を殲滅する広域殲滅型モードの一つだ。
球状の物体から放たれる魔力砲の威力は、俺の魔力量と知力値に比例する。
レベル64となった俺の現在のMPは3271で、知力は1759。
訓練で何度も試し撃ちをした所感では、Sランク魔物迄は殲滅可能な筈。
Aランクのスケルトン狂戦士は1つの球体から放たれた一撃で、数体が吹き飛んだ。
「待って下さい!此処には我々だけじゃない!
『ガチ勢』の皆さんも居るんです!
彼等は好意で協力してくれているのに……
ですが、ダンジョンは既に危険な状態だ!
こうして話している間も……
……はい……分かりました……」
アユマットさんは大声で何やら先方に抗議をした感じだったが、何かあったのだろうか?
電話を切ったアユマットさんは通話前よりも更に怒りの表情で、俺達の方にやって来た。
「神城君、清川君、柊君、本当に申し訳ない!
これから、我々のメインスポンサーの撮影用ドローンが来る事になった。
『テレビ夕陽』がダンジョン攻略の独占生配信をする為だ。
非常識なお願いなのは100も承知だが、ドローン到着まで待って貰えないだろうか?
その間、襲撃して来る魔物は我々が引き受けるし、君達にも1人20億円が『テレビ夕陽』から支払われるんだが……」
「何言ってんすか、水臭い。
俺達とアユマットさん達『餓狼』はダチみたいなモノでしょう?
ダチが困っていたら、当然力になりますよ」
「雄貴さんの言う通りです。
それに、『テレビ夕陽』の介入がアユマットさんの本意じゃない事も分かってますから、気にしないで下さい」
「私はアユマット様のおかげで、国民の皆様のご理解を得られたのですわ。
お気になさらないで下さいまし」
「き、君達……本当にありがとう!
君達の友情は絶対に忘れない!俺達『餓狼』も『ガチ勢』に何かあれば、最大限の協力を惜しまない!」
俺達はアユマットさん達と固い握手を交わした。
それにしても、日本最大手クランも大変なんだな。
麻布十番に立派なクランビルを建てられるのには、相当な苦労が有るんだろう。
その後、遅れて駆け付けた『餓狼』所属のAランクパーティー『ポイズン・ベリー』、『マッスル・ハッスル』、『パンチラ三昧』の3組が、『清水の花園』の遺体を定着に運び出した。
こんな時に不謹慎だが、『パンチラ三昧』は20代前半ぽいムッチリ美女4人組で、超ミニなスカートから素敵なTバックが常にチラチラしている特別仕様のパーティーだ。
俺も雪乃ちゃんと付き合う前、何度か彼女らの生配信を見たし、スパチャも贈った事がある。
アレは素晴らしい生配信だった………
コレはテンプレだが、4人のパンチラに気を取られていた俺は、雪乃ちゃんから強烈なビンタを食らった。
でも、男の子はパンチラには無条件で反応してしまうモノ。
俺は頬の痛みを堪えながら、不思議と後悔はしていなかった。
◆◇◆◇◆
「このクソが!死にさらせぇぇえ!!」
ズドドドドドド!!!
ダンジョンに俺の怒声と魔力砲による炸裂音が響く。
俺達とアユマットさん達はドローン到着後に攻略を再開して、仇敵である3体のレイスと遭遇した。
俺はヤツらを射程に収めた瞬間、【モード:エクスターミネーション】による集中放火をお見舞いしたのだ。
他の面々は俺の怒りの砲撃にドン引きしているが、俺の脳裏には未だ『清水の花園』の痛々しい亡骸が焼き付いて離れない。
此処にいる誰も、死なせたくないんだ。
「ハァ…ハァ…やったか!?」
俺は砂煙の向こうに目を凝らしながら、期待を込めて声を上げた。
《イケメンニキハンパねぇ……》
《やれてないフラグ立てるのやめろwww》
《ニキって殲滅能力も有るのかよ!もう無敵じゃねえか!》
《抱いて下さい❤️》
《寧ろ、あの攻撃でヤれない理由が浮かばない》
《オーバーキルどころの騒ぎじゃねえ》
《めちゃくちゃイケメン❤️》
クッ…コメ欄のヤツらが好き勝手ほざきやがる…
まぁ、結果ヤれてた訳だけれども。
因みに、今回の生配信は『テレビ夕陽』系の有料動画配信サービス『U-DIVE』で行われているらしい。
既に同接は500万を超えている。
月額6,000円で会員になった上に、20,000円でPPVを購入してまで視聴している人が500万人以上居るのか……
アユマットさんが怒りたくなる気持ちが分かるな。
俺達は命懸けで探索しているのに、テレビ夕陽はそれを金儲けの道具にしている。
ただでさえ、自分のクランに所属しているパーティーが命を落としたのに、見せ物にされては文句の一つも言いたくなる。
ともあれ、再開したダンジョン攻略は、俺のエクスターミネーションメインで道中魔物を瞬殺しながら進むのであった。




