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44話 『餓狼』の拠点にアポ無し凸をぶちかましますけど? ②

 


「こうして対面するのは初めてだというのに、バタバタしていて自己紹介が遅れて済まない。

 クラン『餓狼』リーダーのAYUM@こと、長内(おさない)歩夢(あゆむ)だ」


「此方こそアポ無し凸して済みませんでした。

 俺は『ガチ勢』荷物持ちの神城雄貴です。本名です」


「はじめまして。

『ガチ勢』リーダーの清川雪乃です。雄貴さんの婚約者です」



 魔導ヘリ乗り込むなり、アユマットさんは律儀に自己紹介をしてくれた。

 俺も遅ればせながら自己紹介をすると、雪乃ちゃんは俺が先日オサレディナーデート後にサプライズプレゼントしたダイヤの婚約指輪をしっかりと見せ付けながら挨拶をした。



 な、何かそういう風に露骨にアピールされると、嬉し恥ずかし深夜帰りなのだが……



 ともあれ、その後彩音も控え目にアユマットさんに挨拶すると、同じ魔導ヘリに乗っている『餓狼』の方々も俺達に挨拶してくれた。


 同乗しているのは、敷島(しきしま)(しおり)さん、田沢(たざわ)春輝(はるき)さん、佐藤(さとう)理未(りみ)さん、小田(おだ)英治(えいじ)さんの4名。

 全員Sランク探索者だ。

 この4人にAYUM@さんを入れた5人が、クラン『餓狼』の創設メンバーだそうだ。



 元々『餓狼』という5人パーティーだったのだが、パーティーメンバーが全員Aランクに昇格した時にクラン化したらしい。

 その時にパーティーは抹消しているのだが、コレは税金対策のようだ。


 日本の法律上では、クランに所属するパーティーがダンジョンアタックで収入を得ると、所属クランとパーティーそれぞれに税金が課される。

『餓狼』内で最もパーティーランクの高いアユマットさん達がパーティーのままで居ると、高額な報酬を得ても税金が二重に引かれてしまう。

 アユマットさん達が出張るような高難易度、超高報酬の依頼を受ける時はクラン『餓狼』として動けば、クランとしての納税のみすればOKというワケだ。

 YUNAさん所の『無限天領』なんかも同じ感じで、本来Sランクパーティーの『無限天領』を解散している。


 因みに、アメリカはクランとして得た収益はクランに課税され、クラン所属のパーティーが得た収益はパーティーにのみ課税されるようだ。

 所属パーティーからクランが跳ねる上前は、経費扱いとなるらしい。

 そんな背景から、俺をスカウトしたメアリーさんがリーダーを務めるクラン『VISITORS』には、メアリーさんがリーダーを務めるSSランクパーティーの『STRANGERS WITH ATTITUDES』が所属となっている。



 話は逸れたが、自己紹介を終えた所で、アユマットさんが真剣な面持ちで口を開いた。



「これから向かう所沢ダンジョンで起きている異常は間違いなくスタンピードの前兆で間違いない。

 現地からの最後の通話から、ダンジョンの構造は変わっていない事が分かった。


 ダンジョン変遷の可能性が消えた以上、スタンピードの前兆と捉えるべきだろう。

 ダンジョンの場所は富士見公園のど真ん中だ。

 周りは住宅地なので、ここでスタンピードが発生してしまうと、民間人に多大な犠牲が出てしまう。

 ウチのDランクパーティー『清水の花園』の救出が完了したら、そのまま所沢ダンジョンを完全攻略する予定だ。


 神城君、ドロップした魔石やアイテム類、ダンジョンコアの売却益は全て君達『ガチ勢』に渡す!

 更に成功報酬として20億を支払おう!


 どうか…どうか、完全攻略まで力を貸してくれないだろうか?」



 アユマットさんはそう言って俺に頭を下げた。

 他のメンバー達も同様に頭を下げている。



「アユマットさん、頭を上げて下さい。

 俺達はまだ新人にも関わらず、アユマットさんにはこれまで沢山目をかけて貰いました。

 昨日もテレビの取材の時に、彩音を庇ってくれたじゃないですか?


 成功報酬は要りません。

 友情参加という事で、アイテム類や魔石の売却益はキッチリ折半。

 他の報酬は要りませんから、俺達も完全攻略に参加させて下さい!」


「神城君……



 ありがとう!!本当にありがとう!!」



 俺とアユマットさんは固い握手をした。

 俺はこれまで目をかけてくれたアユマットさんを信頼している。

 アユマットさんからはスカウトを受けたのは報道番組越しのあの一回程度で、他のクランのように矢鱈とスカウトのDMを送って来るような真似はしなかった。


 それどころか、不用意なコメントで度々炎上しているらしい俺の火消しをしてくれたり、彩音がバッシングされないようにメディア対応までしてくれたのだ。



 絶対に『清水の花園』を救出して、ダンジョン攻略をして見せる!



 そう決意を固めて、所沢ダンジョンに突入したのだが……



「うぁぁぁあ!!

 清水!清水ぅぅ!目を開けてくれぇっ!!」



 超スピードで所沢ダンジョンを疾走して3階層に到着した俺達が目にしたのは、体の左半分を消し飛ばされたリーダー清水君の亡骸だった。



 少し離れた場所には、他の4人の死体が転がっている……

 歳の頃は20歳前後だろうか……



 クランリーダーのアユマットさんは当然の事、他の幹部達も有望株の彼ら彼女らの死に打ちひしがれている。

 だが、此処はスタンピードを起こす直前のダンジョンだ。

 周囲の警戒を怠る訳にはいかない。


 俺は【広域魔力探知】で周囲を警戒しながらも、初めて目の当たりにする探索者の死に直面した事で、冷静さを些か欠いてしまっていた。



 コレは映画やアニメでは無い……ヒーローが駆け付けて、危機一髪で救出するなんて事が都合良く毎回起こる訳がない……身近な人が死ぬ事も有るし、彼等の姿は明日の自分かも知れない……



 俺はこれまで自分が如何に順調に探索者活動が出来ていたのかを、若き『清水の花園』の死を前につくづく思い知った。



 コレは紛れも無い現実……そして、彼等の命を奪った元凶はまだこの階層に居る……

 1階層から2階層に現れた魔物は亡霊系Aランク上位のスケルトンバーサーカーだった……

 たかが全15階層のDランクダンジョンと侮る事は有り得ない……



 俺は初めて湧き上がる複雑な感情を胸の内に押し込み、【モード:エクスターミネーション】を解放した。



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