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41話 目の前で総理が頭を下げてるんですけど!!

 


「神城雄貴殿、日本政府を代表して心よりお詫び申し上げる。

 この度は、ダンジョン管理大臣の小森が不当な圧力をかけて、申し訳なかった!」



 吉祥寺ダンジョンを完全攻略した翌日、俺が雪乃ちゃんと一緒にアメリカに高跳びする準備をしていると、何と内閣総理大臣の弓削(ゆげ)修二郎(しゅうじろう)がSPを引き連れて謝罪にやって来た。



 玄関口で俺に深々と頭を下げる弓削総理を見て、俺は真っ先にスマホを取り出してパシャパシャした。



「ククク。総理大臣が俺に頭を下げるなど、そうあるものでは無い。

 さて、謝罪は受け取ったから帰ってくれ。

 俺はこれから雪乃ちゃんのご両親と姉貴夫婦と合流して、USAに行くのだ」


「ま、待って頂きたい!

 あの馬鹿は!……小森大臣は議員資格剥奪の上、高位探索者殺害未遂で逮捕させた。

 また、これから色々と余罪を付けて行くので、一生刑務所暮らしになる事を保証する!

 何とか、この日本に留まって頂けないだろうか?」


「普通に無理だろ。

 日本の権力者達は信用出来ない。

 次は桐斗を攫って無茶な命令をするかも知れないし、俺はキャリフォルニア州かフロリダ州、ニューヨーク州の何れかに住んで、セレブリティな生活を送りたいんだ。

 特に、キャリフォルニアやフロリダはビーチが有って良い」


「わ、分かった!

 では、早急に探索者保護法案に、SSランクパーティーメンバーとその家族には不当な権力行使を認めないという条項を織り込もう!

 税金も永年免除!高位探索者特別健康保険と特別年金も設けよう!


 君達『ガチ勢』は今回の攻略で日本初のSSランクパーティーに昇格した。

 日本唯一のSSランクパーティーの保護を理由に、君達が住む品川の東五反田周辺は早急にゲートを作って、身分が確かでは無い人間を立ち入れなくしよう。


 それから、君が持ち帰ったダンジョンコアは日本政府が15兆円で買い取ろう。

 それだけ有れば、ロスだろうがマイアミだろうが好きな所に別荘を建てれるだろう。


 どうだろうか?

 我々日本政府は君に最大限の配慮を怠らない。

 この条件で…」


「良し!その条件で日本に住んでやる!

 15兆円か〜。一気にリッチになるなぁ。思い切ってこの家を建て直すか」



 俺は速攻で弓削総理の提案に乗った。



 確かに土地勘の無いアメリカに住むより、住み慣れた東五反田にいる方が生活に便利だしな。

 何より金を貰えるのが良い。

 パーティーの分配は雪乃ちゃん、俺、彩音で4:4:2の分配率になっている。

 6兆円も有れば、孫の代まで遊んで暮らせるだろう。



「ユーキさん、めっちゃお金に靡いてるじゃないですか…お金を貰えればどうでも良いんですか?」



 大金ゲットに浮かれる俺にジト目を向けながら、雪乃ちゃんはチクリと嫌味を言う。



「いや、だって雪乃ちゃんが大学卒業したら、俺たち結婚するだろ?

 そうしたら子供だって産まれるし、何不自由なく育てて行くのにお金は必須じゃないか。


 それに、キャリフォルニアのロス郊外やマリブはセレブが住んでいて、今ゴイスーらしいよ?

 雪乃ちゃんと一緒に行けたらどれだけ楽しいか」


「し、し、仕方ないですね…わ、私も…ユーキさんと…一緒に…その…アメリカ旅行とか…きょ、興味ありますし…」



 雪乃ちゃんはチョロかった…



 結婚前提のお付き合いをしてからは比較的堂々としている雪乃ちゃんだけど、2人きりでデートをする時なんかはまだぎこちない。

 一緒に旅行とかになるとテンションが上がるのだろう。


 俺達は結局、弓削総理の提案に思いっきり乗っかったのだった…。




 ◆◇◆◇◆




 それからの3週間程は世界情勢が結構凄い事になった。

 雪乃ちゃん率いる『ガチ勢』を取り込みたい諸外国対『ガチ勢』を国内に留まらせたい日本という構図が出来上がり、結構な緊張状態になったらしい。

 比較的日本と関係が良好な欧米諸国は、一時的なレンタル移籍で『ガチ勢』の出向を打診して来たようだが、それにも日本政府が首を縦に振らない為に結構マズい感じになっている。


 あの後何故か交換する事になったBOINで、弓削総理から度々外交の愚痴が来る。

 弓削総理的には未だに日本各地に魔素と瘴気が不安定なダンジョンが幾つかある状態で、例え一時的でも『ガチ勢』を国外に出したくないようだ。

 俺は何故かUSAに昔から憧れがあり、ユナイテッド・ステイツとは友好関係を持ちたいと考え、弓削総理をやんわりと窘めようと考えている。


 そんなアレコレがありながら、今日はダンジョン攻略依頼久しぶりに、ある父娘とサレオツなキャフェバーで対談している。

 そう。柊剛造と彩音である。



「……で?

 最愛とか宣ってた娘を易々と死地に送り込もうとした会長さん、JSAを辞める決心はついたのか?」



 俺は美味しそうにマンゴープリンを頬張る桐斗の頭を撫で撫でしながら、対面に座る柊剛造に問いかけた。


 柊はあの一件以来、世間から大バッシングを受け続けている。なのに未だにJSAを辞任していない。

 都内で活動する探索者達がストライキを起こしたにも関わらず、それでも会長の座にしがみ付いている。



「…フゥ……君は実に浅慮な男だ。

 何も分かっていない。JSAという組織の現状も、ダンジョン管理省との関係も、WSAとの関係も、何も分かってない!!

 今、JSAは各方面との絶妙なバランスによって…」


「副会長のヒロミツ・タテイシ・ラミレス」



 俺がタテイシ・ラミレスの名を言うと、柊は言葉に詰まった。

 今のJSAの実務を調整しているのは、タテイシ・ラミレスである。


 柊のやり方は余りに独善的過ぎる。表向きは探索者ファーストを謳っておきながら、自分の都合で平気で規則を捻じ曲げる。


 例えば、俺のAランクデビュー。

 こんな扱いは世界でも類を見ない。

 探索者後進国の日本はダンジョンの数に対して、高位探索者が極端に少ない。

 本来は定められた規定に従って、ランクは徐々に上がるものであり、長年地道に国民をダンジョン魔物から守って来た探索者達を蔑ろにする措置だ。

 その裏で、各所での説明会の手配をし、方々に頭を下げて回ったのが副会長のタテイシ・ラミレス。



 プエルトリカンの親父と日本人の母親の間に産まれたタテイシ・ラミレスは若い頃から貧困や虐めに苦しんだ苦労人だと聞く。

 これまで柊の身勝手な振る舞いの尻拭いを完璧にこなして来たラミレスであれば、JSAをより良い組織にするだろう。



「くっ…アイツは唯の雑用だ!

 実務を調整する能力は皆無なんだ!私が居なければ、日本の探索者の格差は広がっていた!

 知っているのか?諸外国の探索者事情を。

 日本独自のJSAという協会のありがたみは低ランクの探索者程理解している筈だ!」



 ほう…早くも論点をボカしに来たか。

 確かに日本独自のJSAという協会を立ち上げた事は素晴らしい事だ。

 他の国はWSA KOREA、WSA UKといった感じで、WSAの各国支局という形式を取っている。

 WSAはDLCに必要な魔導ドローンをBランク以上の探索者にしか支給しない為、日本のように配信で稼げる低ランク探索者が居ないのだ。


 だが、それはJSAを立ち上げて各所に根回しをしたタテイシ・ラミレスの功績で、柊剛造の功績ではない。

 そもそも、JSAの有用性=柊の有用性にはならんのだが。



「お父様、いい加減にして下さいまし!」



 論点ボカしからの力技で会長に居座ろうとする柊を、実の娘である彩音が一喝した。



「あなたは汚い政治家の言葉に乗って、日本屈指の探索者であるユーキ様を危険に曝しました!

 その責任を取って、潔く辞任するべきですわ!!」



 実の父親を糾弾など、彩音も本当はしたくないだろう。

 後は俺が引き継ごう。



「会長よぉ、池崎がアンタとの関係をゲロったぜ?

 そもそも、俺達にボス部屋前で時間を潰させるって言うのはアンタの意見だってなぁ。

 用心深い池崎はアンタとの会話を録音してたらしいぞ?

 音声データの解析が済んだらアンタは即逮捕だ。

 現会長が逮捕という報道と、前会長が逮捕という報道だと、後者の方がJSAにはダメージが少なくて済むだろ?

 更に言うと、自ら辞任した上で出頭するのが、アンタにとっても彩音にとっても一番傷が浅くなると思うけどな。


 それから、高跳びしようとか考えるなよ?

 池崎がゲロった日からアンタは公安にマークされている。

 海外逃亡未遂も上乗せされたら不名誉極まりない上に、愛娘の彩音は探索者活動に支障を来たしかねないぞ?」



 俺は弓削総理から聞いた裏情報を敢えて柊に伝えた。

 青い顔で話を聞いていた柊は観念したように項垂れ、娘を置いて出て行った。



 彩音は俯いて唇を噛み締めている…

 やはり、実の父が庇いようのないクズだと知って、相当ショックだったのだろう…



「親父さんの事は残念だが、救いようが無かった。

 辛いと思うが、分かって欲しい」


「はい……私も父が裏で汚い事をしているのは薄々気付いていました…

 幾らダンジョン経済の中心に居るとはいえ、父の羽振が良すぎましたから…」



 彩音はそう言うと、力無く笑った。

 いつまでも暗いムードで居るのも、桐斗の教育上良くない。



「ママァ、おうちかえったらママのはんばーぐほちぃ」


「あらあら、キィたんたら嬉しい事言ってくれちゃって〜!

 特別にキィたんのハンバーグに、目玉焼きを乗せてあげちゃうね!」


「わぁい!めらまはんばーぐら!わぁい!」



 うん、桐斗は雪乃ちゃんに甘えまくって、俺達の事など気にしてないな…

 もう当然のように雪乃ちゃんをママと呼ぶし、寝る時も毎日一緒だ。

 せっかく雪乃ちゃんと結婚前提のお付き合いを始めたのに、桐斗に独占されて夜の営みはまだ出来ていない。



 まぁ、スキンシップは追々でいいだろう。

 桐斗が託児所に行っている時は2人でデートもしているし、桐斗と雪乃ちゃんがいる日常は最高に幸せだしな。

 それよりも、彩音の事だな。



「彩音、お前はどうしたい?

 俺達的には『ガチ勢』に残って貰いたいんだが」


「へ!?私は追放されたのでは無いのですか!?」


「あ、あれは雪乃ちゃんと彩音を無事に地上に戻す為の方便だ。

 大体、パーティーからの脱退手続きだってしてないじゃないか」


「そ、そうですけど…私は…前回の探索で大した戦果も上げてないですし……私は……犯罪者の娘なのですわ」


「まぁ、暫くは世間からの風当たりが強いかも知れないが、『ガチ勢』で功績を上げれば世間の有象無象共も口を噤むさ。


 それに、『ガチ勢』はこれから世界に打って出るから、まだ新人の俺達にとって経験豊かな彩音の力が必要なんだよ」


「せ、世界に!?

 それはどういう事ですの?」



 俺の世界進出発言を聞き、キョトンとする彩音。

 俺達はUSAと強固な同盟関係を結びに行く。それには彩音の経験から来る知識が必要な場面が出て来るはずなのだ。


 その後は雪乃ちゃんと桐斗も彩音の説得に当たり、彩音は『ガチ勢』に残る事を決めたのだった。



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