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36話 初のパーティー生配信がPPVなんですけど? ①

 


 彩音が加入して2週間。


 最初は体捌きがど素人で、戦闘訓練では接近されるとクソ雑魚だった彼女だが、コツを掴むのは結構早かったので、何とか形になって来た。



 それでも、俺や雪乃ちゃんに比べるとまだまだ甘いんだが。



 ともあれ、何とか形になった所で、会長自ら俺達に国定依頼を通達された。


 今回踏破するのはBランクの吉祥寺ダンジョン。

 吉祥寺駅から徒歩2分と、交通の便が良い好立地のダンジョンだ…って言うか、旧南口のエスカレーター横にダンジョンの入り口がある。

 過去に認知症の老人がフラっと入ってしまって、帰らぬ人となった痛ましい事故があった為、旧南口は探索者やJSA関係者以外は立ち入れなくなっている。



 そんな旧南口で、俺、雪乃ちゃん、彩音は超高級魔導ドローンに向かってキメ顔を向けた。

 ADの小僧が俺達にカウントをする。



「さぁ、皆様大注目のSランクパーティー『ガチ勢』による吉祥寺ダンジョン完全制覇がいよいよ幕を開けます!

 それでは、中央にいらっしゃるリーダーの清川雪乃さんから今のお気持ちを一言お願いします!」


「あ、女子アナのチャンネエ、ちょい待ち。

 メディアへの対応は基本、年長者の俺の受け持ちなんだ。

 つー事で、俺が話すわ」



《イケメンニキがいきなりマイク奪ってクソワロタwww》

《“彼がJAPANで話題のIKEMEN=NIKIか。とても顔立ちの良いから俳優かと思ったよ”》

《早くも海外ニキがコメントしとるw》

《そりゃ、海外勢も見るだろ。世界でもBランクダンジョン完全踏破は4箇所しかされてないんだから》

《今回のPPV購入は1,000万人越えらしいぞ》

《PPV売上だけで1,000億越えとか凄過ぎて草》



 既にコメ欄が賑わっておるのか。

 同接も600万越えだし、此処はしっかりカッコつけねばな。



「さて、俺達は今からダンジョン内瘴気量とましょ……

 ダンジョン内瘴気量と魔素量が規定値を越えた吉祥寺ダンジョンを完全攻略する」



《噛んだ》

《噛み噛みやんw》

《噛んだのにキメ顔でしれっと言い直すハートの強さよ》

《噛んでも素敵過ぎる》

《ユーキ様のハーレムに加わりたいです❤️》



 クソ!視聴者の連中は顔が見えないのを良い事に、好き勝手にイジりやがる!



 まぁ良い。1万円も叩いてPPVを買ってくれているんだ。

 PPVボーナスだけで1人200億円という破格のギャラが手に入るし、国定依頼の成功報酬は1人50億円。

 金持ち喧嘩せずという諺があるじゃないか。別に無視だ、無視。



「桐斗〜!パパはこれから大活躍して来るからな〜!

 晩御飯一緒に食べような〜!」



 俺はJSAが提携するセレブ限定託児所で仲の良いお友達とPPVを観ている桐斗へと呼びかけた。



《相変わらずの親バカで草www》

《つーか、何で雪乃ちゃんがイケメンニキに腕を絡めてんの?》

《アカン…あれ、絶対に食ってますわ…2人の爆乳ちゃんと毎晩盛ってるヤツっすわ…》

《待て!晩飯前に終わるって宣言だろ?6時間位で攻略するっつってんの!?》

《ハーレムパーティーを築いた時点で察しろ》

《最高到達階層が14階層の吉祥寺ダンジョンを晩飯前に!?》

《国民的アイドルの彩音様に手ェ出すとか、舐めてんじゃねえぞ!》

《調子こいてるイケメンニキは四ね》

《ウチ、3番目で良いからユーキ様の女になりたい》

《私はペット扱いでも良いから側に置いて欲しい》



 コメント欄がゴチャつく中、俺達はダンジョン入り口へと入って行く。

 今回は大手配信会社によるPPV配信の為、撮影用魔導ドローンは超高性能だ。俺達の全力疾走にも付いて来られるらしい。


 たかが30階層しか無いダンジョンなど、幾ら一つの階層が広かろうが時間はかからない。

 ダンジョンの地面はかなり頑丈なので、全力で踏み抜いても陥没する事は無いだろう。



「フォーメーションを崩さずに注意しましょう!

 では、行きますよ!」


「「応!!」」



 雪乃ちゃんの声がけを合図に、俺達は一気に加速した。



《HAEEEEE!!》

《小谷の速球張りに速え!!》

《井下の右ストレートよりも速え!》

《おい!あんなペースで走って最後まで保つのか!?》

《“ワオ!ダンジョンをあんなスピードで走るなんてクレイジーだ!”》

《ユーキ様がカッコ良すぎて草》

《ミニスカくノ一スタイルの雪乃ちゃんがパンチラしなくて草》

《彩音ちゃんはスカート丈膝下なのにパンチラしてて草》

《あ、彩音様がパンチラだと!?》

《神配信キターーーーー》

《まぁ、元々パンチラ集団と呼ばれるアイドルグループ所属だしな》



 ふぅ…彩音は可愛いからという理由でスカートを選んだようだが、雪乃ちゃんのように下にショーパン履いておけば良かったのに。

 だが、今は探索中なので彩音がパンツを見せてようが構ってられん。



 魔力探知で極力魔物の少ないルートを俺が先導しているが、ダンジョン異常の予兆が出ているだけあって、かなり魔物が多いな。

 もう直ぐ7体のオーガと接敵する。



「雪乃ちゃん、前方にオーガ7体」


「了解です。少しペースダウンしましょう。

 私とユーキさんで討伐します」


「「了解」」



 オーガとの距離が10メートルに迫った時、雪乃ちゃんが4本のクナイを予備動作無くスローイングした。

 まるで銃弾のような勢いで飛んだソレは、4体のオーガの頭部を爆砕する。

 残りの3体が動きを止めた隙に、俺は一気に加速して先頭のオーガの懐に入ると同時にこしを落とし、地面を強く蹴る。



 ドパーーーン!!!



 伸び上がり様のロングアッパーがオーガの顎を捉えると、オーガの頭が破裂した。

 通常ロングアッパーは打ち終わりが無防備になるが、俺は他の2体との立ち位置を把握している。


 先頭のオーガの首無し死体によって、右側のオーガからは俺の姿が見えない。

 左側のオーガは少し離れている為、体が伸び上がっている俺に攻撃は届かない。

 慌てて左のオーガが一歩此方に踏み出そうとするが、予備動作がデカ過ぎる上に踏み出す時の体勢が悪い。



 鬼の見え見えな動き出しを視界に捉えた俺は、反射的に振り上げた右拳で異空間収納から出した片手剣を握り、右足を左手のオーガへと踏み出して片手剣を超スピードで振り下ろす。



 シュパァァァア!



 頭から真っ二つになったオーガを尻目に、俺は漸く動き出した右側のオーガが繰り出した右拳の打ち下ろしを大きくステップバックして躱す。


 紙一重で躱す等という漫画のような真似はしない。

 体格や膂力が人間を上回る癖に格闘技の練習をする筈も無いオーガに対してギリギリで躱すと、打ち終わりに流れた体にぶつかるリスクが高い。

 又、体がぶつからなくても巨体と接近し過ぎると、力を乗せた攻撃を打ち込むスペースが取れなくて小手先の攻撃になってしまう。


 予想通りオーガは格闘ど素人。


 力任せに不十分な体勢で振り下ろした拳を空ぶった事で、踏ん張りが効かずに体が大きく流れ、既に体勢が整っている俺に無様に頭部を晒している。

 俺は体内魔力を効率的に操作して強化した左拳をコンパクトなモーションで振り抜く。



 ボゴォォオン!!



 見事に俺の魔力強化左フックがヤツのテンプルを捉え、頭部を爆散させた。



《SUGEEEEEE!!!》

《耐久力の高いオーガを瞬殺…だと!?》

《“ジャパニーズニンジャは我々アメリカ人の理解を超えている…”》

《新参共、コレがイケメンニキのフルパワーじゃい!》

《雪乃ちゃんのクナイスゲエ…俺、投擲スキル持ちだからクナイ使ってるけど、あんな威力出ねえぞ》

《海外ニキテンパってて草w》

《あんな可愛い爆乳くノ一がイケメンニキに毎晩弄ばれていると思うと、悔しくて眠れねえよ…》

《イケメンニキが速過ぎて、どうやってオーガ三体屠ったか見えなかった件》

《【悲報】雪乃ちゃんのミニスカの下はショーパンだった【ノーパンチラでフィニッシュです】》



『き、清川さんのクナイが炸裂!そ、そして…神城さんの動きが速過ぎて、残像しか見えませでした!』



 コメント欄のざわ付きはスルーだな。

 どうせスパチャの機能は無いし。それより、実況の女子アナの声がドローンから流れるようになっているとはな。

 一応最初の戦闘だから、丁寧に解説しよう。



「雪乃ちゃん、ちょっと待って。

 最初の戦闘だけ解説しようか。

 先ずは雪乃ちゃんは体内魔力の操作や制御、圧縮などの基礎を絶え間なく行っている。

 ちな、今も体内魔力の循環が乱れないように制御中ね。


 で、雪乃ちゃんは予備動作を極力抑えながらの投擲の瞬間に、圧縮した魔力でクナイをコーティングしたってのが超威力クナイの種明かしね」



《ちょ、何言ってるか分からん》

《魔力って何となく力んだら体を覆う感じにする事は出来るけど、一瞬は強くなっても魔力消費が凄くて何度も使えないんだが》

《それな。武器だけをコーティングするとか普通に無理なんだが》

《そもそも、レベル24とかでオーガ瞬殺出来る時点で理解不能だから、ニキの理論を理解しようとするだけ無駄だぞ》



『コメント欄も混沌としておりますが、現役Bランク探索者兼女子アナの私も神城さんの言葉が理解出来ません。

 もしかすると、コレは革新的な新技術なのでは無いでしょうか!?』



 うん、この人達ダメな人達だわ……レベリングすると魔力という未知の力が身体に宿るというのに、その力をコントロールする術を身に付けようという発想に至らないのか?

 新たな力と自分の身体機能を上手くアジャスト出来ないと、理想的な体捌きも出来なくなるだろうが。



 俺は呆れながらも解説を続けた。



「ハァ…皆んなの理解度が分かりましたんで、次に俺の戦闘の方ね。

 魔力の使い方は言っても無駄だから省きます。

 で、まず最初に生き残り3体の位置どりと状況を見て、戦闘に立っていたオーガにどのポジションを取れば有利に立ち回れるかを考える。


 さっきのパターンだと、先頭の奴の右斜め後ろにいた個体の方が距離が近かったんで、俺が先頭オーガの左寄りに位置取りする事で、右斜め後ろオーガからは俺が目視出来なくなるって感じ。


 左斜め後ろのヤツは距離が離れていたから、先頭オーガのドタマをアッパーで吹っ飛ばしても、あの位置からは攻撃が届かない。

 先頭オーガがワンパンでのされて慌てて俺に踏み出した左斜め後ろオーガが拳を振う前に位置取りを修正した俺は、片手剣で一刀両断。


 鈍臭い右斜め後ろオーガ君が見え見えのパンチのモーションに入った瞬間に俺はバックステップして、右打ち下ろしを空振りして前につんのめった右斜め後ろオーガくんのコメカミに左フックを一閃。


 以上、俺の立ち回り解説でしたー!

 じゃあ、お二人さん。さっさと先を急ごうか」



《めっちゃ投げやりな解説ワロタw》

《いや、魔力については投げやりだけど、位置取りや立ち回りはかなり参考になるだろ》

《一般人の俺的にはスタンピード前にダンジョン攻略してくれたら何でも良い》

《あんな一瞬でそこまで考えて動けるか?》

《前に『餓狼』のAYUM@さんが言ってたけど、イケメンニキは魔物の予備動作を見た瞬間にステップワークで立ち位置を変えてるらしい。

反射的に身体が反応するように鬼練を積んだとか》

《解説された所で無理ゲ過ぎるwww》



『あ、あれ?魔力の使い方は…

 んんっ、し、失礼致しました!実況を続けます!』



 外野がどう騒ごうが、俺達は別に技術解説に来た訳じゃないから一々反応してられない。

 道を塞いでたらサクッと倒して、サクッとドロップ品を回収して、とっとと最下層のダンジョンボスを倒して、ダンジョンコアを回収して終わりさ。



 そう言やぁ、ダンジョンコアは低ランクでも魔石の何万倍ものエネルギーになるらしい。

 日本初のBランクダンジョンのコアは売ったら一体幾らになるんだろう?

 きっと、1,000億は超えるだろうな。



 俺は頭の中を煩悩塗れにしながら、ダンジョン攻略を続けるのだった。



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