35話 素の漢の部分がダダ漏れですけど!?
「あらぁぁあん!ダァリン、ユキノお姉様、いらっしゃぁあい!」
来た……やむに止まれずまた来てしまった……『巌窟堂』に……。
初っ端からナンシィ(仮)の圧が凄い….
何故か雪乃ちゃんをお姉様認定してやがるし、今日のコイツの出立ちは何だ?
肩のはだけた漆黒のワンピ?ドレス?を来ている点でコイツの異質な感じが一目瞭然だが、更にどデカい帽子を被っている事によって、存在感がマシマシになっている。
「何だか、勘違いしたパンスタグラマーみたいな帽子だな!!」
俺は思わず突っ込んだ。
リア充アピールしたい時代錯誤系女と、尻画像を載せまくってフォロワーを増やしたい勘違いインフルエンサーの巣窟であるパンスタグラムに、こんな変な帽子を被っている熟女が居そうだと感じたのだから仕方がない。
「あら、やだわぁん。
アタシ、パンスタのフォロワー400万人以上いるのぉ。
勘違い系じゃなくて、ちゃんとしたインフルエンサーなんだからぁ」
ま、マジかよ……
こんなヤツをフォローするヤツが400万人以上も居るなんて、世も末だな……
「ナンシィ(仮)ちゃん、今日は私とユーキさんの装備品の微調整と、コチラの彩音さんの装備品を見立てて欲しくて」
「あ、あの、は、初めましてですわ。
わ、私、柊…」
「じゃかましいわボケェ!!
今はアタシと雪乃お姉様のゴージャス姉妹の時間なんじゃぁ!!
腹黒オヤジの娘っ子がしゃしゃってんじゃねぇど!!
その無駄にデカい乳を…おぶぇぇえ!!」
またも素の漢の部分を前面に押し出したナンシィ(仮)に、あの日の再来となる雪乃ちゃんの腹パンが炸裂。
以前よりもモーションがコンパクトで、ストマックに深々と刺さっている。
我が彼女ながら、惚れ惚れするようなボディブローだなぁ。
俺はそんな事を思いながら、怖さ7、優しさ3の笑顔でナンシィ(仮)を窘める雪乃ちゃんのヒップ付近に目を落とす。
やはり、彼女は大臀筋がしっかりと発達していて、動き出しが抜群に速い。
俺でも雪乃ちゃんの瞬間のスピードに遅れを取る時がある。
最近では、この下半身の加速や地面を強く蹴り出して発生したパワーを、上手く上半身に連動出来るようになっている。
雪乃ちゃんの戦闘能力の高さを世間が知るのも、そう時間はかかるまい……。
俺は彼女の芸術的なヒップから目線を逸らす事無く、皆んなと一緒に何時もの地下特別室へと移動するのだった。
◆◇◆◇◆
「ちょっと、アナタ!
何故私の魔法を見ようともしないのですか!?失礼が過ぎますわ!!」
俺と雪乃ちゃんにベッタリなナンシィ(仮)に剛を煮やした彩音が、ナンシィ(仮)の容貌に臆する事無く食ってかかった。
「あぁん?タヌキ親父の箱入り娘の事なんざ、眼中に無えんだ。
オメェはリッチなパパに買ってもらったお高い装備が有るだろうが」
ナンシィ(仮)はまるで虫ケラでも見るような目線を彩音に向けて、最早完全に素の語り口調で彩音をあしらった。
彩音はその言葉を聞いて表情を歪めている。
どうもナンシィ(仮)は彩音に冷たいんだよなぁ……。
「ナンシィ(仮)ちゃん、彩音さんもお客様なんだから冷たくしないであげて」
「お、お姉様……あぁん、こんな虫ケラにすら気遣う雪乃お姉様は、全乙女の目指すべきお姿だわぁぁん!!
し、仕方ないわ…アンタの装備品も作ってあげるから、雪乃お姉様に感謝なさい」
雪乃ちゃんのフォローのおかげで、何とかナンシィ(仮)は彩音の装備品も作ってくれる気になったようだ。
重過ぎる腰を上げて、彩音の魔法の試し打ちをハナクソを穿りながらではあるが見始めた。
俺は少しコイツの態度に気がかりな点が有るので、しれっとナンシィ(仮)に問いかけた。
「なぁ、何でお前は彩音……って言うか、柊会長を嫌っているんだ?」
「あらぁん!雄貴サマったら、乙女の秘密を暴きたくなっちゃったのぉん?」
「うざ……話しかけるんじゃ無かったな」
「ジョ、ジョークよ!オネェジョーク!!」
ハァ…やっぱコイツと喋るの疲れるんですけど。
つーか、オネェってのは自覚してるんだ!?乙女じゃなかったのかよ?
「まぁ、現役時代に色々とあったんだけどね……
極め付けはあのタヌキオヤジ……高位探索者アワードの会場で……
………
スピーチでアタシの事を『気色悪いオカマ』って言ったのよぉぉぉぉお!!
許せない!!断じて許せないわぁぁあん!!
あのタヌキ以上にデカいキャン◯マ引きちぎって胸に入れて、巨乳ジジイにしたろうかと思ったくらいよぉぉおおん!!」
マ、マジか……それは会長が悪いな。
ジェンダー系の事は立場のある人間が発言する時は注意しなくてはならない。
公のスピーチで性的マイノリティを差別するような事を言うとは……。
「雄貴サマ、その事はアタシの私怨みたいなモノだから気にしなくても良いケド、あのジジイはちょっと注意した方が良いわぁん」
「あぁ、あのオッサン相当腹黒そうだからな」
「既にお気付きのようねぇん。
ダン管省(ダンジョン管理省の略)のお偉方とズブズブっていう噂も耳にしたし、あの娘にも注意は必要よぉん?」
成る程、それで彩音にあれ程敵意を剥き出しにしていたのか……。
俺はナンシィ(仮)のアドバイスに耳を傾けながらも、コイツの言うような警戒は彩音には必要ないと感じていた。
一緒に訓練するようになって分かった事は、彩音は探索者として強い信念を持っているという事。
地獄のようなトレーニングも倒れるまで付いて来るし、模擬戦で雪乃ちゃんにボコボコにされても決して音をあげない。
裏で不正に手を染めるような奴が、倒れるまで地味なトレーニングを続けるなんてとても思えない。
俺はナンシィ(仮)に軽く礼を言うと、彩音の装備品の事を任せて、彩音ちゃんと共に幾つかの探索者用品を見に一階へと戻った。
次のダンジョン配信はPPVで行われる事がほぼ決まっているらしい。
2人で赤面しながら手を繋ぎ、緊急時に備えたバカ高い転移スクロールや高級ポーション類を物色したのだった。




