31話 雪乃ちゃんとデートしたかったんですけど!? ④
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「ここかぁっ!!」
メシャァッ!!
シンジさんがハイオークが振り下ろした棍棒の根元目掛けて小盾を叩き付けると、ハイオークが持つ棍棒は根元から折れて、先端が明後日の方向へ飛んで行った。
振り下ろす動作の途中で持ち手近くに打撃が加わった事で、ハイオークの右腕もまた大きく弾き返されている。
その隙を逃さず踏み込んだトワさんの剣による一閃がヤツの急所の頸部を深く切り裂いた。
ハイオークは身体を痙攣させて両膝を付くと、身体の端から黒い霧と化して、やがて消滅した。
「トワさんもシンジさんも短時間でかなり良くなりましたね」
俺は9階層の道中魔物を討伐した『ラッキー・パンチライン』の前衛2人に賛辞を送った。
2人とも中堅探索者パーティーの前衛だけあって、簡単な魔物の初動について教えただけで、動き出しが随分と早くなったのだ。
「神城君のアドバイスのおかげだよ。
成る程、身体の重心に注意すると体勢が崩れている事が分かりやすいね」
「ありがとな、ユーキ君。
確かにハイオークの腕に力が入った時の棍棒の向きを見たら、攻撃のパターンが読めるようになったぜ!
まさか、盾スキルを使わなくても弾き返せるとは思わんかったぞ!」
俺が手始めにシンジさんに送ったアドバイスは、彼の言葉通りハイオークの攻撃パターンの初動についてである。
Bランク以下の武器持ちの魔物の殆どは人間ではあり得ない程稚拙な攻撃しかして来ない。
先程のホブゴブリンも棍棒を持っていたが、ヤツも同様に稚拙。
パターンは振り下ろしと横薙ぎのみ。
見分け方は棍棒の握りを強くした時の棍棒の向き。
振り下ろしの場合は棍棒を縦にして握り、横薙ぎの場合は態々横にして握る。
その後のモーションも稚拙で、振り下ろしは思い切り腕を高く上げてから振り下ろすし、横薙ぎは思い切り胸を開いて腕を目一杯横に伸ばす。
コメ欄を見てもその事に気付いている人が殆ど居なかった事に驚きである。
そもそも、魔物の細かな動作を解析する人が殆ど居ないんだろう。
スキル頼みで何とかなるから。
だが、スキル使用は魔力を消費する。
魔力を温存する為にも、稚拙な道中雑魚戦で悪戯にスキルを乱発する必要は無い。
話が逸れたが、シンジさんはそれらのアドバイスを早速取り入れて戦闘を行い、見事スキルを使用せずにハイオークの攻撃を弾いて見せたのだ。
続いてトワさんだが、彼に送ったアドバイスはハイオークの重心を注視する事である。
人型のダンジョン魔物の殆どは基本前重心であり、コレを崩されると素早い反撃に移れない。
特に今のように盾で利き手を大きく弾き返されると大きく重心が後ろにブレて、反撃よりも先に慌ててバランスを取ろうとする。
つまり、体のバランスを整えるまでハイオークは攻撃をしないという事。
トワさんは相手が無防備な状態である事を見極めて、素早く踏み込んだのである。
ともあれ、その後も近接系道中魔物をシンジさんとトワさんの連携で倒して行き、特殊攻撃をするストーンドバットという大きなコウモリはミツルさんとチカさんが討伐に当たり、遂に我々は10階層小ボス部屋の前に到着した。
現在は各自で装備の損耗をチェックしている。
《何か、『ラキパン』のメンバー強くなってね?》
《8階層で『ガチ勢』から何かアドバイスを貰ってから、かなり動きが良くなったよな》
《ユーキ様に教えて貰えるとか羨まし過ぎるんだけど》
《雪乃ちゃん可愛い》
《イケメンニキって偉そうにしているのがイラっと来る》
《『ラキパン』をデビュー時から応援している俺氏が断言する。トワ氏はユキノちゃんを狙っている》
《ここまでノーダメで来るって『ラッキー・パンチライン』てかなり優秀なパーティーなんだな》
《ニキって歳上の人には敬語を使うのか》
《チカがメス顔でニキに話しかたのに素っ気なくあしらわれたwww》
うむ、コメ欄はゴチャついてるな。
俺アンチみたいなヤツも居るし、『ラッキー・パンチライン』の皆んなは嫌な気分になってないだろうか?
「おお!凄え!!
同接400万超えたぞ!」
「本当だ!『ガチ勢』の皆さん、本当ありがとう!!」
「うお!コメントの数やスパチャもヤバいっすね!!
コレが人気配信者か〜!」
「くっ!ウチ、メス顔なんてしてないんだけど!」
うん。シンジさんもトワさんもミツルさんも同接が多い事が嬉しいようだ。
DLSの生配信ってドローンが安全圏を確認したら自動的にCMが入るし、長時間行うから広告収入エグいんよな。
多分、『ラッキー・パンチライン』は広告収入だけで、2,000万以上稼ぐんじゃないかな。
Dランク魔石やドロップアイテムもそこそこの値段が付くだろうし。
暫く『ラッキー・パンチライン』の皆さんが落ち着くのを待ってから、俺達は小ボス部屋へと足を踏み入れたのだった。
◆◇◆◇◆
キキャーーーーッ!!
ブォンッ!!
「トワさん、シンジさん、見て下さい!
この位置です!相手の右を打った後はこの位置だとこのサルは反撃迄に一瞬間が空きます!」
小ボスは通常通り、Cランクボスのイビルエイプという2メートル弱の大きなサルだった。
俺は今、只管サルのパンチを躱しながら、前衛の2人にレクチャーを行っている。
《いや、イビルエイプの攻撃てクソ早いから普通は盾スキルで受けるだろwww》
《こんな無茶苦茶な動き出来るヤツ居ねえ》
【¥10,000,000:『餓狼』AYUM@:神城君、遅くなって済まない。とても丁寧なレクチャーありがとう!とても参考になるよ!】
《視聴者の皆さん、アレはニキのような変態にしか出来ない動きです。絶対に真似しないで下さい》
《キメ顔で何か言ってるけど、邪猿の攻撃躱すとか無理》
《雄貴様カッコ良すぎます❤️》
【¥1,000,000:『無双三連星』:ど素人共は黙ってろや!兄貴はポジション取りを説明して下ってるんだ!】
「あ、アユマットさん、『無双三連星』の皆んな、高額スパチャありがとうございます!
あと、視聴者諸君。『無双三連星』の言う通り、何も完全に躱す事のアドバイスじゃないからな。
確かに猿はクソ速いから、シンジさんが盾で受け流す事前提の位置取りを説明している。
基本、人型の物理攻撃魔物は踏み付けはするが、蹴りを使わない。
腕での攻撃がメインで、当然格闘技の練習もしてないから、パンチの打ち終わりは確実に身体が流れている。
所謂ど素人以下のパンチって事ね。
なので、それぞれの攻撃の後の立ち位置によって、かなり有利に戦闘を進める事が出来る。
コレは猿周回で稼ぐ探索者達にとっても参考になるはずだ」
俺はアユマットさんと『無双三連星』に礼を言って、視聴者に今のレクチャーの意図を説明した。
『ラッキー・パンチライン』の4人は緊張感の無い視聴者達とは違い、真剣な表情で俺の立ち回りを見ている。
その後、俺は引っ掻きや噛みつきなど別パターンの攻撃を引き出し、其々の攻撃をいなした後の立ち位置や体勢を事細かく説明して行った。
同接数は800万を越えているが、集中して立ち回りや立ち位置を見ているシンジさん達は気にも止めていないようだ。
俺が30分程只管イビルエイプの攻撃を躱し続けた所で、猿の動きに目が慣れた『ラッキー・パンチライン』が攻撃に加わった。
シンジさんは初動を見極めて盾で猿の攻撃をいなす。
既に理想的な立ち位置に移動済みのトワさんが、大きく体勢を崩した猿の横腹に力の乗った一閃を見舞う。
雪乃ちゃんから狙撃するポイントのアドバイスを受けていたアーチャーのミツルさんの矢がエイプの右眼を穿つと、前衛は一度後方へ下がった。
チュドーーーン!!
そこに彩音から攻撃魔法のアドバイスを受けていたチカさんの『フレイム』が炸裂。
一連の連携で見事、Cランク小ボスを仕留めたのだった。
◆◇◆◇◆
「キリちゃんパパ、清川さん、本当に、本当に、ありがとうございました!!
二人が助けに来てくれなかったら、俺は間違いなくあのまま死んでいた!!」
「キリちゃんパパ、清川さん。ウチの人を助けてくれて、何とお礼を言って良いのか……」
あの後、ボスドロップを回収して帰還用の魔法陣で地上に戻った俺と雪乃ちゃんとシンジさんは、ダンジョン前で待ち構えていた報道陣を撒いて、シータクでシンジさんの自宅へと向かった。
自宅に着くなり、シンジさんは家の前で待っていた奥さんのサクラさんと一緒に俺達に頭を下げて来た。
「いや、そんな。私なんて何も大した事はしてませんから」
「頭を上げて下さい。
今日は初パーティーコラボが出来て楽しかった。それで良いじゃないですか。
それでは、俺達も帰りますね」
雪乃ちゃんと俺は頭を下げっぱなしの2人をやんわりと窘めて、2人に別れを告げて待たせていたタクシーに乗り込んだ。
「何か、せっかくのデートだったのにゴメン」
「いえ、全然気にしないで下さい。
ユーキさんが優しい人だって再確認出来て、それだけで幸せな気持ちになれましたから。
それに、キィたんのお友達のパパを助けられて良かったです」
「雪乃ちゃん……」
ヤバい……俺やっぱ雪乃ちゃん好きだわ……
めちゃくちゃ可愛いし、思い遣りがあって、しかも飛び切り可愛い……
初デートは失敗に終わったものの、俺の中で確実に雪乃ちゃんの存在が大きくなったのだった……。
登場人物紹介に元嫁の備土瑠奈の挿絵を投稿しました。
この先、元嫁ともう1人のエピソードもちょくちょく出る予定なので、こんなイメージですという感じで描きました。
ご覧頂けると嬉しいです。
さて、今夜は井上尚弥王者の圧勝を期待して観戦したいと思います!
次回投稿は……未定です!
モチベが上がっていれば明日かと思います!