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29話 神城雄貴に敵わないヤツ

 


 《リョウちゃんパパこと鳥谷(とりたに)慎二(しんじ)視点》



 俺は今から7年前、20歳の時に探索者登録をした。

 親友でパーティーリーダーの床場図(とこじょうず)永遠(とわ)から、「探索者は女にモテる」と言われた事がキッカケだ。


 勿論、最初の頃の俺達は全然ダメダメで、普通はデビューから1年で昇格出来るEランクに2年もかかったっけな……。

 だが、Eランク昇格を果たした時、今の嫁の櫻から俺宛にDMが届いた。

 俺は初めて女からカッコいいというメールを貰って有頂天になったね。

 永遠の言ってた事は本当だったんだと。



 まぁ、永遠は相変わらず未だに彼女いない歴=年齢だが……



 で、実際にデートしようってなって、櫻を初めて見た時はブチ上がったもんだ……何たって、ムチッとしてエロい体つきだったんだからな。

 22歳童貞だった俺には勿体ない程イイ女だよ……


 そんな櫻と翌年にデキ婚。

 可愛い涼太が産まれて、順調にパーティーランクも上がってコレからだって時に彼が現れた。



 キリちゃんパパだ……



 アレは去年の事だ。

 託児所から涼太と帰って来た櫻が、「凄くイケメンのパパさんがいる!」と色めき立ってやがったんだよな…



 しゃらくせぇ



 ソレがその時の俺の気持ちだった。


 それから1月位して、実際にキリちゃんパパに会った時……



 イケメン過ぎねえか?



 男の俺でもそう思っちまった。

 心の中で敗北を認めざるを得なかったんだ。


 だが、俺にも男の意地がある。

 櫻には「幾ら色男だろうが、所詮は俺がダンジョンで取って来た魔石を磨いている冴えねえ下働きだ」と言って、激しく嫁を押し倒した。



 何故かその日は燃えたんだよな……。



 それから暫くは俺の中で「キリちゃんパパは所詮俺の下働き」と断じる事で自我を保っていたんだが……




「何じゃこりゃぁあ!!」




 俺はリビングのモニターに映るDLSダンジョン・ライブ・スリーミングの映像を見て絶叫した。



「きゃああ!キリちゃんパパカッコ良過ぎるぅ!!」

「キリトくんのパパしごい!つおいよ!!」



 櫻と涼太まで興奮している。


 だが、それもその筈。

 キリちゃんパパの動きはとてもレベリング前の素人の動きじゃねぇ。

 つーか、ワーウルフなんて俺らのパーティーでも太刀打ち出来ねえ。

 そんな化け物を、キリちゃんパパは圧倒しているんだ。


 しかも、コメント欄は女性と思しき物も散見される。

 《抱いて下さい》《愛しています❤️》《カッコ良過ぎて心臓が止まりそう》etc……



「クソ!何でデビュー前からモテてるんだよ!」



 俺は思わず本音を叫んでしまった。

 櫻は俺にジト目を向けながら、口を開いた。


「何言ってんの?

 キリちゃんパパはイケメンだし、強いんだからモテない方がおかしいでしょ?


 あの後ろの子、絶対キリちゃんパパに惚れてるわね。

 完全に恋に堕ちたオンナの顔してるもん」


 俺は櫻の言葉を聞き、キリちゃんパパの後方に居る女を注視する。



「……!!

 ず、ズリぃぞ!!

 何でそんな美少女に惚れられてるんだよ!!乳もスゲェしよぉ!!

 そこいらのグラドルが見たらショック死するレベルの爆乳天使じゃんかよぉっ!!!」



 バチーーーン!!!



「このドスケベ野郎!!

 若い女に鼻の下を伸ばすなんてどういうつもりよ!?」


「あははは!このどしゅけべやろー!」



 俺は櫻に頬を張られ、怒声を浴びせられた。


 クッ…涼太まで変な言葉を真似してやがる…。



「うっせぇ!!お前だって、キリちゃんパパに鼻の下伸ばしてるじゃねぇか!!

 このアバズレが!!」


「きゃははは!このあばじゅれー!」


「は!?テメ、何つった!?

 殺されたい訳!?」



 それから俺ら夫婦はガチ喧嘩になりそうだったんだが……



「パパァ!ママァ!

 キリトくんのパパが!!」



 涼太の声で我に返った俺と櫻は揃ってモニターを見た。

 そこには、左腕が潰されて地面に転がるキリちゃんパパの姿が……



「うぉぉ!マジでヤベェだろ!?

 JSAのヤツらは何してる!?救援はまだか!?」

「いやぁぁあ!キリちゃんパパ、早く逃げて!!」



 俺も櫻もモニターに向かって叫んだ。

 あんな状態で戦えるわけがねえ。

 そう思った矢先、何とキリちゃんパパは立ち上がった。

 左腕がぐちゃぐちゃになって居るにも関わらず、右手は剣を握り締めて闘志を漲らせている。

 周りの連中は口々に彼を止めて居るが……



『うるせぇ!!

 俺は……俺は桐斗の父親だ!!

 どんな強敵が相手だろうが………どんな困難に見舞われようが………俺は屈する訳には行かねえんだ!!


 俺はいつまでも、桐斗が誇れる父親であり続けなきゃならねえんだよぉっ!!』



 キリちゃんパパの言葉に胸を打たれた。

 瀕死の状態に追い込まれても息子の為に立ち上がるその姿に、同じ父親として涙が溢れた。

 それは櫻も同じようで、ボロボロと涙を流しながらキリちゃんパパを見つめている。


 俺はその時思った。



 キリちゃんパパは凄え漢だ。

 チャラ付いた色男じゃなく、キリちゃんを心から愛している強え親父だ。



 俺もあんな父親でありたい。

 可愛い涼太にいつまでも誇りに思われるような……



 ーーーーーーーーー



「ははっ……やっぱキリちゃんパパみてえには行かねえよなぁ……」



 突如出現したマッドゴーレムにより、俺らのパーティーは瓦解した。

 盾戦士の職業スキルを持つ俺は、パーティーメンバーを逃す為、ヤツのヘイトをコントロールしながら駆け回ってダンジョンの脇道へと誘い込んだんだが……



 ヤツの強力なパンチを盾で受け損ねて、両腕の骨がイッちまったか……



 20分以上逃げ回った挙句行き止まりに追い込まれて、たったワンパンでこのザマかよ……

 このまま地べたに這いつくばってくたばるのか……



「まぁ、永遠達を命懸けで救ったんだ……

 涼太も俺を誇りに思ってくれるかもな……」



 ドゴォォォオン!!



 俺が独り言を呟いた刹那、爆音と共にダンジョンが揺れた。

 俺は何事かと思って顔を上げると……



「な、何で……キリちゃんパパ……」


「あ、どうも、リョウちゃんパパ。

 いやぁ、こないだコラボの約束してたでしょ?

 今日、偶々俺も雪乃ちゃんも予定が空いていたもので、押しかけちゃったって感じですかね」



 キリちゃんパパと清川さんが俺の前に立ち、俺に手を貸して立ち上がらせてくれた。

 ふとその向こうを見ると、ゴーレムの野郎がバラバラになっている。



 やっぱ、スゲェ漢だな……

 ハハっ!キリちゃんパパには敵わねえや……



 俺はキリちゃんパパが渡してくれた上級ポーションを飲みながら、しみじみとそう感じたのだった。



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