22話 こういう感じ久しぶりなんですけど?
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「ふぅ…キィたんようやく眠りました。
ホントに天使みたいに可愛いですよね〜」
「あ、ああ…迷惑かけてしまって済まないねぇ」
時刻は21時近く。
何故か雪乃ちゃんは湯上がり姿でウチにいる…
桐斗とお風呂に入ってそのまま寝かし付けてくれたのだ。
因みに、彩音にはどうぶつさんクイズが終わった所でお帰り頂いた。
しかし、雪乃ちゃんだけはそのまま晩御飯の準備をしてくれて、今この時間まで一緒に居るのだ。
「そ、その、そろそろお家に帰った方が良くないかな?
お父さんとお母さんも心配してるだろうし」
「あ、両親には今日ユーキさんの所にお泊まりするって言ってますから大丈夫です」
「は、はぁ!?
そ、そ、それはマズくないか!?名門女子大の授業とかもあるだろうし、嫁入り前の娘さんがオッサンの家に泊まるとかけしからんでしょう?」
「へ?ウチの両親もユーキさんなら大丈夫だって言ってましたし、全然平気ですから」
その後も不毛な言い合いは続き、5分くらいが経った頃、不意にインターホンが鳴った。
随分と非常識な時間の来客だと思いモニターを見てみると…
『桐斗〜!雄貴〜!ママが帰って来たわよ〜!
早く開けなさ〜い!』
何とそこには元嫁の瑠奈の姿が…
何故アイツがこんな時間に!?先月おざなりな感じで桐斗に会いに来たきり、ろくに連絡もよこさなかったアイツが…
突然の事に呆気に取られたが、いつまでも家の前で喚かれてはご近所迷惑になる。
仕方なしに玄関の鍵を開けると、酒の匂いをプンプンさせた瑠奈がフラフラとした足取りで入って来た。
「アハハハハ!ただいまぁ〜!桐斗〜!ママが帰って来てあげた…」
「お前、デカい声出すんじゃねえよ。桐斗が寝てるんだ。
だいたい今更何の用だ?」
「はあ?此間は桐斗が夜泣きするって泣き付いて来たくせに、随分な言い草よね?
このアタシが帰って来てやったんだから、高級ワインの一本でも出してもてなしなさいよ!
ニュースで見たわよ?相当稼いでるんでしょ?」
「だから大声を出すな。
俺の稼ぎはお前に関係ない。俺とお前はもう赤の他人なんだ。
桐斗に会いに来るのは止めないが、本人が起きている時間帯で酒の入っていない状態でだ。
つー事で今すぐ帰ってくれ」
「赤の他人?ホントはアタシに未練タラタラなんでしょ?
ギャハハハハ!金を払うなら抱かせてあげても良いわ!どーせ溜まってんでしょ!?」
何なんだコイツは?ただでさえ自分勝手な事しか言わんのに、今は酔っている分物凄くタチが悪い。
無理矢理外に放り出しても大声で喚き散らすのは目に見えているし…
「あの…玄関だと声が響くから、上がって貰ったらどうですか?」
「あらぁ?貴方お隣の子じゃない?
ちょっと見ない内にエロくなったわね?
てか、何でお隣さんがウチに居る訳?」
「良いから上がれ。リビングで話すぞ」
良いタイミングで声をかけてくれた雪乃ちゃんに内心で礼を言いつつ、雪乃ちゃんの提案に従って瑠奈をリビングへと引き摺って行った。
「おい!雄貴テメエ!アタシに隠れて若い女を連れ込むなんて、どういう事よ!?」
「アナタはユーキさんと別れてるんだから、ユーキさんが私を連れ込もうと関係無いですよね?
それに、ユーキさんが連れ込んだ訳じゃなくて、私がキィたんのママになりたくてここに来たんです」
「はぁ?メスガキが舐めた事言ってんじゃねえよ!
今から雄貴はアタシとヨリを戻すから消えろや!だいたい、桐斗の母親はアタシなんだ…」
「瑠奈、黙れ!!
何をどうすれば俺がお前とヨリを戻す事になるんだ?
お前は1年前に男を作って出て行った。
とっくに離婚届は受理されてるし、俺にはもうお前に対しての気持ちなんてコレっぽっちも残ってない。
だが、桐斗にとってお前が母親なのは事実だ。
だから、桐斗がお前に会いたいと言うなら、桐斗と会う事を止めはしない。
ただ、当の桐斗は先月お前と会って以来、お前と会いたいとは言わなくなった。
という事で、水を飲んで酔いを覚ましたらさっさと男の所にでも帰ってくれ」
「くっ!コ、コーキと付き合ったのだって、元々アンタが悪いんだからね!
アンタがアタシの事に見向きもしないで、口を開けば桐斗、桐斗ってさぁ!
桐斗が生まれてから、アタシを一度でも女として扱ってくれた事あった!?」
「いい加減にして下さい!!
アナタが浮気した事がどうしてユーキさんのせいになるんですか!?
それに、子供が生まれたら、子供中心になるのは親として当然でしょう!?
何ですか?自分を見てくれないって?
アナタは母親なんでしょう?」
自分勝手な主張をする瑠奈に、何故か雪乃ちゃんがブチギレてしまった……。
普段大人しい彼女には珍しい。
それだけ桐斗の事を大事に思ってくれてるんだろう。
「だから、ガキはすっこんでろっての!!
雄貴は絶対にまだアタシに未練があるんだから!
雄貴、今土下座をしてお願いするなら、アンタとヨリを戻してやっても良いわ。
桐斗だってそんなガキじゃなく、アタシが側に居て欲しいに決まってるんだから!」
「耳と脳が腐ってんのか?
俺はお前に対して何の情も無い。
それに、この間桐斗に酷い対応をしておいて、まだ桐斗に慕ってもらえてると本気で思ってんのか?
だとしたら救いようの無いバカだ」
「はぁ?この間の何が悪かった訳!?
ファミレスで桐斗の大好物を食べさせてあげたし、ドリンクバーも頼んであげたわ!」
「それがバカだって言ってんだよ!
何だソレ?大好物を食べさせただけで、桐斗の事をちっとも気にしなかっただろ!?
アイツの話を聞いたか!?託児所で仲の良いお友達のリョウちゃんの話とか、俺が良く卵焼きを焦がす話とか、雪乃ちゃんが作ってくれるオムライスが美味しいとか、雪乃ちゃんの家のワンちゃんが可愛いとか、探索者のヘクターが大好きだとか、マメマメ小僧の絵本を1人で読めるようになったとか、アイツはお前に色んな話を聞いて貰いたかったんだ!
それが何だ?ファミレスに着くなりスマホばかりいじって、桐斗が話しかけても空返事ばかりだったらしいな!?
子供を舐めてんのか!?
桐斗は今色々な事に興味を持って、毎日毎日成長しているんだ!
まだ話しは拙いけど、面と向かって桐斗の言葉に耳を傾けて、桐斗がどんな時間を過ごしたのか、今どんな事に興味があるのか、お友達とは仲良く出来ているのか、何が出来るようになったのか、その全てを受け止めるのが親ってもんだろうが!!
良い事をしたり何かを学んだら思い切り褒めて、失敗したり間違えた事をすれば注意をして次はどうすればいいかを一緒に考える。
俺も言う程完璧な父親じゃないが、いつも桐斗の事を第一に考えて、どうする事が桐斗にとって良い事なのか常に考えて毎日桐斗と生きているんだ!!
自分の事しか考えず、桐斗の事をちゃんと見ようとしないお前に母親を名乗る資格は無い!!
分かったらさっさと出て行け!!」
先月の瑠奈の態度に怒りを覚えていた俺は、思いの丈を瑠奈にぶちまけた。
最後の母親を名乗るなというのは言い過ぎたかも知れないが、それくらい言わないと彼女の性格上反省しないだろう。
俺が怒鳴った事で、すっかり意気消沈した様子の瑠奈は暫くして帰って行った。
そして、再び雪乃ちゃんと2人きりになったんだが、何とも気まずい感じだ……。
「あ、あの…お二人の事なのに、その…私なんかが口を挟んで済みませんでした…
ユ、ユーキさんを悪く言われるのは、そ、その…我慢出来なくて…
そ、その、す、好きだから……ユ、ユーキさんの事がほ、本気で大好きで……悪く言われて腹が立って……
はわわ!!わ、私ったら何てことを…
わ、私、やっぱり帰りますね…」
雪乃ちゃんの口から漏れた本音を聞き、鈍い俺でも流石に気がついた。
つーか、マジかよ!?
こんな美少女に好かれるとか、マジでテンション上がるんですけど!?
ちょ、ちょっと待て!落ち着かなくてはダメだな。
ここは俺も男として、先ずは雪乃ちゃんに誠意を見せなくては。
「い、いや。雪乃ちゃんさえ良かったら、と、と、泊まって行ってくれないか?
そ、その…俺は今まで桐斗の事ばかりで…そ、その…雪乃ちゃんの優しさに甘えてばかりで…
お、お互いの事をもう少し話したいなってさ…
す、少しずつ仲をその……距離を……ち、縮めて行きたいというのか…」
「は、はい!
わ、私もユーキさんの事、もっと知りたいです!
ユ、ユーキさんの事はほ、ほ、本気ですし、き、キィたんのママになりたいって、ほ、本気なんです!」
「あ、ああ。
ゆ、雪乃ちゃんみたいに、、、か、可愛いコに、、そ、そんな風に思われて、、、す、凄く嬉しいよ。
じゃあ、そ、その、紅茶とか飲みながら、お互いの趣味の話とかしようか」
何ともぎこちない感じで滑り出した俺と雪乃ちゃんの関係。
まだこの先どうなるかは分からないが、俺は久しぶりに女性と夜遅くまで会話を楽しんだ。




