20話 修羅場の臭いがするんですけど!?
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「この度は、我々JSAがダンジョン災害の予兆を察知出来なかった事、心よりお詫び申し上げる…
…
…で、この泥棒鬼畜野郎は、俺の可愛い可愛い彩音ちゃんに何してくれちゃってんの?
なぁ?」
「うぇぇぇ…パパァ、おいたんこわいい!!」
「テメェ!オッサンゴラァ!!
俺の可愛い桐斗をビビらせるとか、ぶっ殺されてえのかゴラァ!!」
「ちょ、ちょっと、ユーキさん…」
初生配信から一夜が明け、JSA本部からお詫びとお礼がしたいと連絡が有り、雪乃ちゃんと桐斗を連れて本部最上階の会長室へと赴いた俺。
そして、何故か会長を名乗るオッサンに詰められて、この有り様である。
雪乃ちゃんは慌てて俺を止めようとするが、桐斗を怖がらせた罰は死を持って償わせねばならない。
俺はオッサンの胸倉を掴んで思い切り締め上げる。
「お、おやめ下さい!
協会長に暴力を振るったら、探索者資格を剥奪しますよ!」
何か秘書っぽい女まで止めに入ったが、しゃらくせえにも程がある。
「うっせえぞボケ!
ライセンスが剥奪されたら、アメリカで活動すりゃ良いだけだろうが!
コッチはいきなりこのジジイに訳分からん因縁ふっかけられて、可愛い桐斗まで怯えさせられたんだ!
なぁ、桐斗?このジジイ怖かったよな?」
「うわぁぁぁあん!パパがこわいぃぃい!
おごっぢゃらめぇぇえ!」
「あ、違うんだ、桐斗!
ホラ、パパ怒ってないぞ?な?ほら」
「ふぇぇえ……ほ、ほんとに?
お、おこっちゃやらよ?」
「ホントさ、ホント。
おい、そこのお前。可愛い桐斗にマンゴープリンを持って来い!」
「え?は?ま、マンゴープリン…ですか?」
「そうだ!飛び切り上等なヤツを用意しろ。
ほら、桐斗。マンゴープリンくれるってさ」
「え?ほんとに?わぁあい!
まんごぷりんら!まんごぷりんら!」
ふぅ、まさか俺が恐怖の対象にすり替わっていたとは思わなかったからビックリしたぜ。
秘書の女は部屋の外に控えていたヤツに指示を出しているようだ。
「さて、桐斗に免じて殺さないでおいてやるが、いきなり吹っかけられたのは事実だしな。
こんな横暴な組織の下で働くとか絶対に有り得んだろ。
つぅ事で、俺はアメリカに渡る。
ビジターズとか言うクランのリーダーが、契約金1億ドルと俺と桐斗と姉貴夫婦が安全で快適に過ごせる住環境を整えてくれるって言うしな」
「ま、待ってくれ!!
先程の発言は全面的に謝る!この通りだ!
お願いだから、日本で活動を続けてくれ!
桐斗君、さっきは怖がらせてしまって本当に悪かった!」
「あ!まんごぷりんら!
パパ、いたらきますしていい?」
「うん。もちろんだとも。
桐斗もアメリカに行きたいよな?凄く広いおうちに住めるみたいだぞ?」
「むにゅにゃむ…おいちい!
まんごぷりんおいちい!」
「そうか、アメリカに住みたいか。
キャリフォルニアのマリブビーチ近くの大豪邸とか、普通にセレブだよなぁ」
「いや!桐斗君はマンゴープリンが美味しいってしか言ってないよね?」
「いや、マンゴープリンが美味しい=マリブに住みたいって事だ」
「そ、そんな馬鹿な…なぁ、何とか思い留まってくれないか?
君だって桐斗君の父親なら分かるだろう?
天塩にかけて育ててきた娘が、急に結婚したいなんて言われたら取り乱すのも無理は無いだろう?」
俺が当て付けのようにアメリカ移住をゴリ押しすると、ジジイがやたらと情に訴えかけてきた。
まぁ、精神的にビビらそうと思って言ってみたが、もう少し遊んでやるか。
「まぁ、親の気持ちも分からんでは無いが…
アメリカに誘われたらなぁ…セレブな暮らしが待ってるしなぁ…」
「わ、分かった!では、JSAの予算でマリブに君専用の別荘を建てるから!
な?君のような破格の実力者が海外に流出したら、日本にとってとんでもない損失だ!」
「か、会長。それはいくら何でも無理ですよ。
JSAの予算はWSAの確認が必要なんですから」
「そんな物どうとでもなるだろう?
今回神城君達が短時間でケルベロスを討伐してくれなかったら、あのままダンジョン異常化が進んでスタンピードを起こしていたんだ。
東京都を救った英雄を手放すなどもっての外だ!」
「あ、悪い…その、アメリカには行かないから、そんなマジにならんでくれ」
「ほ、本当か!?
いやぁ、感謝する!!
そうだ、お詫びと言っては何だが、六本木ガーディアンレジデンスの最上階ペントハウスを君にプレゼントしよう。
それくらいなら予算をちょろまかしてどうとでも…」
「い、いや!マジでそういうの良いから!
大体、JSAは今や日本の防衛の一翼を担っている重要な機関だと聞く。
俺に余計な金は使わんで良いから、ちゃんとダンジョン管理に当ててくれ」
「神城君…君ってヤツは……
その漢気に感服した!!ええい、こうなったら日本の至宝彩音を嫁にくれてやる!
身を斬られる程痛いが、何処ぞの馬の骨の嫁になるくらいなら、神城君のような真の漢の嫁になった方が遥かに幸せだろう!」
こ、コイツ、何言ってんの?
俺は変に暴走し始めた会長を何とか諌めたのだった。
結局、今回は謝罪の他に謝礼金5億円が俺と雪乃ちゃんそれぞれに贈られる事となり、俺はSランクに昇格、雪乃ちゃんはAランクに昇格となった。
若干気疲れした状態で桐斗と雪乃ちゃんと会長室を出ると、凄まじいスピードで俺の方に飛び込んで来る影が…
俺は咄嗟に桐斗を抱き抱えて大きくサイドに飛んだ。
ズデーーン!!
「ま、まさか不意打ちのハグが避けられるなんて、流石は私の旦那様ですわ」
俺が立っていた位置に突っ伏した女性はそう言うと、スクと立ち上がって俺に向き合った。
歳の頃は雪乃ちゃんと同じくらい。
ピンクブロンドの髪をツインテールにした、凄まじいまでの美貌の持ち主だ。
そして、破壊力満点のお胸を所持してらっしゃる。
「誰だ君は?初めて会った女性に旦那と呼ばれる筋合いは無いんだが」
「え!?お父様が結婚をお認めになったとお聞きして、急いで罷り越したのですが…」
「お父様?結婚を認めただと?
では、君は…」
「はい!初めてお目にかかりますわ!
私は柊彩音!JSA会長柊剛造の一人娘ですわ!」
ご令嬢のような言葉使いの爆乳美少女は、何と先程の暴走ジジイの娘さんだった。
そして、先程から不穏な空気を垂れ流しにする雪乃ちゃん。
目元に影が落ちていて、その表情は窺い知る事が出来ない。
俺はかつて無い修羅場を予感するのだった。