18話 初めてのダンジョン生配信してますけど!? ③
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「さて、此処が本日のメインとなる10階層の小ボス部屋だ。
小ボスはBランクのヘルハウンド。地獄の業火を身に纏う狼型の魔物だ。
先ずは火炎攻撃をどう封じるかだが…」
《6階層から今まで無言で来て、急に今までの事が無かったかのように話し出すの草》
《突然の真面目モードwww》
《ボス部屋でもモッコリするに1万ペリカ》
《そろそろ茶化すの辞めようや。ヘルハウンドはまじでヤバいぞ》
《まぁ、スパチャもせずにコメ欄に常駐するのは民度の低いヤツしかおらんからな》
ま、マジかコイツら…好き勝手コメするにも程があるぞ?
唯一の救いはヤツらを諌めようとするマトモな人が少しだけ居る事だけだな。
何故かピンクなハプニングが度々起きてコメント欄は緊張感が無くなっているが、俺には帰りを待つ大事な息子が居るし、雪乃ちゃんにも帰りを待つご両親が居る。
探索者としては同期だが、大人として雪乃ちゃんを無事にご両親の元へ送り届けなくてはならない。
万一の時は大量に用意した1本30万の上級ポーションも惜しみ無く使おう。
俺はこれからのボス戦に向けて精神を集中させ、雪乃ちゃんのコンディションも確認してから小ボス部屋へと足を踏み入れた。
俺達が完全に部屋に入ると、扉がゆっくりと閉まる。
これでボスを倒さない限り部屋からは出られない。
ん?…部屋の様子がおかしい。
事前に何度も確認した過去の探索動画では、小ボスが出現する際の魔法陣は薄い青だった筈…
だが、目の前の床に出現した魔法陣は赤い光を放っている…
確かこの色は…
《『餓狼』AYUM@: マズい!それはSランクボスの召喚魔法陣だ!》
《え、嘘!?》
《マジ?》
《ヤバ!早くJSAに連絡しないと!》
《イケメンニキ逃げろ!》
《馬鹿!ボス部屋から逃げれる訳無えだろ!》
《『無限天領』YUNA: 今JSAに緊急連絡を入れました。ユーキ様、何とか20分持ち堪えて下さい!》
《うわ…》
《ま、マジかよ…》
《終わった…》
慌ただしくなったコメント欄をチラリと確認していると、魔法陣の赤い光の中から恐ろしい迄の魔力を宿した魔物が姿を現した。
グガゥァァアアアア!!!
視聴者が絶望する筈だ…
目の前に現れたコイツは三ツ首の巨大なワンコ…Sランク最上位のケルベロスだ…
「参ったな…
俺、ぶっちぎりの犬派なんだよな…」
《つまらんボケは良いから少しでも離れろ!》
《いや、離れた所で…》
《『餓狼』AYUM@: 神城君、ケルベロスは物理攻撃では殆どダメージを与えられない!
魔法は使えるか?光魔法がベストなんだが》
《早く逃げて!》
《魔法が使えた所で、ケルベロスはAランクとCランクの2人ではどうにも出来ないわ。
距離を取って牽制しながら時間を稼ぐのが関の山ね》
渾身のボケがスルーされた…
まぁいいや、普通は絶望するんだろうが、良い機会だ。コイツなら、俺のスキルを発揮出来る!
俺はこの日初めて、先日ナンシィ(仮)に打って貰ったおニューの剣を【アイテムボックス】から取り出した。
訓練では何度も使用したが、この剣は魔力伝導率がバカ高い。
俺の職業スキルとの相性はバッチリの逸品だ。
「雪乃ちゃん、出来るだけ離れていてくれ!
【モード:アクセル】!」
俺は雪乃ちゃんに指示を出すと、超レアスキルの【モードセレクター】を解放した。
3本首の内真ん中のヤツが口に魔力を溜め始めている。
正直、予備動作がデカ過ぎて狙いがバレバレだ。
【モード:アクセル】で急加速した俺は一瞬で巨大犬の懐に入り、伝説級職業スキル【魔闘戦鬼】の能力を使用する。
このスキルは魔力を体や武器に纏わせて超強化する事が可能なブッ壊れスキルだ。
毎日繰り返した魔力操作の訓練で身に付けた魔力の超圧縮を併用。
圧縮した魔力で素早くミスリル合金の剣身をコーティングする。
シュッ………ズズンッ!!
ピギャァァア!!!
うむ、通常の物理攻撃は効かないようだが、魔力をコーティングした剣戟は有効のようだ。
《はい!?》
《へ?》
《な、何か巨犬が倒れたぞ?》
《ケルベロスの脚が…》
《『餓狼』AYUM@: ば、馬鹿な…片手剣で前脚を斬り飛ばした…》
《TUEEEEE!!》
まだ終わらんよ!
更に加速して、のたうち回るケルベロスの背後に回り込むと、ジタバタしないように後ろ脚も斬り飛ばして見せる。
「おーい、雪乃ちゃん!脚を全部落としたから、ワンコロの頭にクナイを投げてあげて!」
「はへ?あ、え、は、はい!」
俺の指示を聞いて呆けていた雪乃ちゃんが慌ててクナイを連投する。
彼女も魔力操作の技術はハイレベルなので、常にミスリル合金製のクナイに魔力を纏わせて投擲している。
ケルベロスにも有効な攻撃のハズだ。
プギギギィィイアアア!!
案の定、地獄の番犬の3つの頭に雪乃ちゃんのクナイが次々と突き刺さり、ヤツは凄まじい程の悲鳴を上げた。
《『餓狼』AYUM@: 何故だ?何故投擲武器でケルベロスにダメージが入るんだ!?》
《やべえって!コレやべえって!》
《ユーキ様、私三戸奈々美って言います。ミスT大でお天気キャスターしているんですけど、抱いて下さい!BOINID:1111XXX△△》
《最強でイケメンて…もう人生が嫌になった》
【¥50,000,000:柊剛造: JSAを代表して、イレギュラー個体討伐報酬の前払い分をお渡し致します。また、協会の管理体制の不備につきましては、後日改めて謝罪させて頂きます】
《ケルベロスが手も脚も出ないて…》
《これ、余裕で世界ランクトップ10に入るんじゃね?》
《“リアルニンジャを始めて見たよ”》
《JSAの会長からスパチャキターーーー!》
《柊会長降臨!!》
《え、英語のコメが来とる》
【¥20,000,000: MARY J BRADLEY: “何てファンタスティックな男なの!是非私のクランに入って欲しいわ!"】
JSAの会長とか、外国人っぽい人からもスパチャが来とる…
同接も1,200万越えだし…
大騒ぎになりそうな予感がするから、さっさと倒して速攻て帰ろう。
「可愛い桐斗〜!パパが凄い必殺技でコイツをやっつけるからな〜!
【ジャイアントキリング】解放!桐斗のパパパーンチ!!!」
ドッゴォォォォオオン!!
俺は超レアスキルの【ジャイアントキリング】を使い、30倍になったステータスで飛び切りの一撃をケルベロスにお見舞いした。
ケルベロスはバラバラに弾け飛び、砕け散った肉片は黒い靄と化して消えて行く。
暫しの静寂の後、脳内にレベルアップ等を告げる女性の声が響き、ケルベロスが出現した場所には馬鹿でかい漆黒の毛皮とゴツい牙、特大の魔石が転がっていた。
俺はしれっとそれらを【アイテムボックス】に回収し、カメラに締めの挨拶をする。
「そんじゃ、疲れたんで配信終わりまーす!
俺の所と雪乃ちゃんの所のチャンネル登録お願いね!
スパチャをくれた人には後日お礼動画を上げるんで、許してチョ!
バイバーイ!」
《おい、ちょっ待て!》
《奇跡を目の当たりにした余韻に浸らせろ!》
《雪乃ちゃんが完堕ちしてて草》
《まさかボス部屋でヤるつもりか!?》
《海外ニキとか海外ネキも来とるのに》
《“リアルニンジャは随分とせっかちのようだね”》
俺は速攻で配信を切った。
その様子を見た雪乃ちゃんも、最後にお礼を言って配信を切った。
「気疲れがハンパないし、帰ろうか?」
「そ、そうです…ね。コメ欄が凄かったですし、ダンジョンに人が集まる前に帰りましょうか」
俺達は疲労を滲ませた顔で、部屋の隅に現れた地上へ帰還する魔法陣を使って帰ったのだった。
いつもお読み頂きありがとうございます!
昨日、15話に雪乃ちゃんの腹パン挿絵を入れましたが、女性がイライラしている表情を描くのが難しく、眉間にシワを入れると何か老けて見えるし、かなり苦労しました。
良かったらご覧下さい。