16話 初めてのダンジョン生配信してますけど!? ①
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「み、みなさん、こ、こんばんは…あ、えと、雪乃チャンネルへようこそ。
し、新人探索者の…き、清川雪乃です…」
「そして、俺が日本一有名な新人探索者にして、前代未聞のAランクデビューを果たした神城雄貴だ!
雪乃チャンネルのみなさんはじめまして!俺のチャンネルの皆んなも来てくれてありがとな!」
コラボ当日。
俺はメインスポンサーの『長嶺魔石加工株式会社』と印字された革鎧を着て、自分用と雪乃ちゃん用の魔導ドローンそれぞれに向かって挨拶をした。
因みに、先日完成したナンシィ(仮)特製のミスリル合金ガントレットも両腕に装着済みである。
雪乃ちゃんもナンシィ(仮)がかなりの熱量を込めた装備品を着用しているが、羽織っている大き目のマントが身体を覆っているので、視聴者からは見えていない。
話はそれたが、コメントは同期したスマホ画面で拾うらしいので、それぞれのドローンにスマホを固定している。
既に凄い勢いでコメントが寄せられている。
《新人の癖に偉そうで草》
《ユーキ様が今日も素敵すぐる…》
【¥10,000,000:『餓狼』AYUM@: 神城くん、初配信ご祝儀だよ〜】
《今日もイケメンやなぁ》
《雪乃ちゃんのオッパイに触れたら56すからな!》
《雪乃がメス顔でイケメンさんを見ていて草》
《おお!『餓狼』のアユマットさん凄え額スパチャしとる!!!》
《ハァハァ…キリトきゅんはまだでしゅか?》
《雪乃ちゃん、マントで覆われていてもバストの主張が凄い…》
《アユマットは神》
【¥7,777,777:『無限天領』YUNA: ユーキ様、初配信おめでとうございます❤️】
《キリト君にハァハァするヤツ通報した》
《隣のあざと系女子ウザいんですけど》
【¥2,000,000:『無双三連星』:兄貴、初配信おめでとうございます!押忍!!】
《いつ濡れ場になってもいいようにティッシュスタンバイ完了www》
《ユナお姉様から高額スパチャキターーー!!》
《日本5大クランの『餓狼』と『無限天領』のリーダーから高額スパチャて…イケメンニキに抱かれたい!》
何か初めて生配信のコメント欄見たけど凄いぞ…
それに、ヤバい額のスパチャが飛んでる…アレはテレビで俺を指名した…アユマットさんと読むのか。
あと、ユナさんという人もクランリーダーなのか…こちらも凄い額だ。
「アユマットさん、ユナさん、超高額スパチャありがとうございます!!
『無双三連星』の皆んなもありがとな〜!
他にもたくさんの人からスパチャが来ていてマジで感謝してるぜ!
スパチャに関しては最後にまとめてお礼を言うかな。
あと、コメントが凄え来てるから拾いきれん。
とりあえず、先に俺のメインスポンサー様の紹介をするぜ!
確かな研磨技術を持つ職人が揃っている『長嶺魔石加工株式会社』様は、俺の前の職場でめちゃくちゃお世話になりました。
魔力供給率を損なわない加工クオリティは間違いなく日本トップクラス!概要欄にホームページのURL貼ってるんで業者の皆様よろしく!」
《雪乃が放置されとるw》
《初っ端からスポンサー紹介www》
【¥10,000:マサヒデ: 脱サラ記念スパ】
《前フリ長www》
《ウチ、魔導具作ってるから『長嶺魔石加工』から魔石仕入れようかな》
《長嶺さんの魔石はかなり質が高いのは確か》
《それより、ダンジョンはよ》
《ダンジョン攻略見せろ!》
【¥3,000:ヨシダ:バイト代少なくて済みません】
《コメント欄にサクラがおるwww》
ヤバい。前フリ長くてコメ欄がごちゃごちゃしとる…
「さて、お喋りはこれくらいにして、これから俺と雪乃ちゃんは立川ダンジョンに潜るぞー!
目標は10階層の小ボス討伐だ」
《は?》
《え?》
《ちょ、》
《馬鹿なの?》
《は?》
《は?》
《探索者デビューでBランダンジョン凸とか頭おかしい》
《ヤバ》
【¥600:鹿島:葬式代】
《中止しろ》
《イケメンの自殺配信キターーー》
《葬式代少な過ぎて草www》
どうやら、ど素人共の注意を引く事に成功したようだ。
BランクダンジョンはBランク探索者4〜6人のパーティーでアタックするモノで、Aランクデビューしたとは言え新人の俺とCランクデビューした雪乃ちゃんの2人で潜るような場所では無い。
これから潜る立川ダンジョンは脅威度Bランクで、30階層構造だ。
10階層に小ボス部屋、20階層に中ボス部屋、30階層にダンジョンボス部屋が有る。
ただ潜るだけで無く、新人2人で小ボス部屋に突撃しようと言うのだから、視聴者がざわつくのも無理はない。
だが、俺はある程度強い魔物が相手じゃないとスキル的に旨味が無いし、雪乃ちゃんも格上と戦った方がリターンが大きくなるはずだ。
コラボが決まってから今日まで雪乃ちゃんと特訓をしていたが、彼女は凄まじい能力を持っている事が分かったし、問題は無いはず。
俺はコメント欄のざわつきを気にする事無く、雪乃ちゃんを連れてダンジョンの階段を降りるのだった。
◆◇◆◇◆
「先ずど素人の視聴者が多いだろうから事前解説ね。
1階層〜10階層に出て来るのはCランク魔物のハウリンウルフ、オークジェネラル、カースドバイパーの3種類。
特に警戒すべきはカースドバイパーだけど、攻略wikiで擦られているんでまぁ少し警戒すれば良い程度かな。
じゃ、最初は俺が解説を交えて戦うから、雪乃ちゃんは階段近くのセーフティゾーンで見てて」
「は、はい!ユーキさん、お気をつけて!」
《巨νちゃんの胸が揺れとる!》
《胸でユーキ様の注意を引くの許せないわ》
《しれっと主人公ムーブしてて草》
《何かふらっと散歩でもしてるように歩くなw》
《イケメンニキの動きがど素人過ぎるw》
コメント欄は下らん連中が多いのでシカトで良いだろう。
俺は先日の戦闘で得たレアスキルの【アイテムボックス】を使い、異空間収納からマトン肉っぽい匂いを放つカプセルを取り出してばら撒いた。
すると程なくして、匂いに釣られたハウリンウルフ3体が洞窟の奥から姿を現した。
「コイツらの初動は見切り安い。
メイン攻撃は飛び付き様の噛みつきか、前足の爪での振り下ろしだ。
つまり、攻撃の前に人間に飛びかかって来る事が分かっている。
飛び付きの初動を見極めていれば…」
ブォンッ…グワシャアッ!!!
《は!?》
《は!?》
《何!?》
《狼が一体消えとるww》
《ちょ》
《何があったか分からんw》
コメ欄の素人がざわついているが、今は無視だ。
既にもう一体が飛び付きのモーションに入ってる。
ブォン…ジュパァァア!
《うぉ》
《え?》
《斬った?》
《おい!》
《急に狼が斬られて草》
《解説はよ!》
話してる暇ねえんだっつの。初動や予備動作を見逃すと大怪我…はしないか。
今の俺のステはかなりヤバいからな。
お、もう一体来るか。
フォンッ…ズチャァッ!!
《ぎゃああー》
《グロッ!》
《キャァァア》
《ニキの貫手が狼の喉を貫いとる…》
《ギャオス!》
《狼が画面から消えたらニキに殺られた合図》
《うぇぇっ》
うむ!ナンシィ(仮)のガントレットはマジで凄ヤバいぞ!
魔力伝導率がハンパ無いから、攻撃にも使える優れ物だ。
さて、3体を仕留めた所で解説しますか。
何かレベルアップの声が頭の中に響いているけど、取り敢えずそこは無視だな。
一階層は相対的に魔物が少ないから、暫く第二陣は来ない。解説するには今が最適だろう。
俺は狼共がドロップした魔石とアイテムを素早く【アイテムボックス】に収納すると、ドヤ顔で解説をする事にした。
因みに、この嫌味なキャラはナンシィ(仮)のアドバイスを取り入れて設定し、練習したモノだ。
どうやらダンジョン配信者界隈では、強くて礼節を重んじるタイプは大して人気にならないらしい。
ズバズバと思った事を口にして多少他の探索者を煽ったりする方が話題になるし、切り抜かれたりしてバズりやすいとの事だ。
「さて、格闘ど素人の貴様らに教えてやろう。
ハウリンウルフは必ず飛び付きから入ると言ったな?
その予備動作としてヤツらは必ず上体を落とす。で、鼻先を僅かに下げると同時に飛び付いて来る訳だ」
《意味不明w》
《さも常識と言わんばかりで草》
《いやいやいや!そんな動作するなんて知らんし》
《俺には上体が少し下がったと思ったら消えたように見えたんだが》
《イケメンニキ、普通は盾役がスキルで飛び付きを食い止めて、剣士や魔法職が攻撃するんだが》
《後は光魔法で目潰しをしてから攻撃するとかな》
やはりど素人には分からんようだ。
体の使い方の基礎が分からんヤツはスキル頼みで無駄の多い戦い方をするようだ。
いちいち反応してたらキリがないからちゃっちゃと解説を終わらせよう。
「ハウリンウルフの飛び付きという動作の性質上、どうしても直線的な動きになるし、種としての本能なのか8割は首元目掛けて来る。
幾ら飛び付くスピードが速かろうが、予備動作と動きの軌道が見え見えならば体を軌道から外し様にカウンターを打ち込む事は容易い。
まぁ、外して即リターンの練習を反射的に出来るまで繰り返す必要はあるがね。
さっきの戦いだと、一体目は飛び付きと同時に右斜め前に大きく踏み出しつつ、すれ違い様にヤツのガラ空きの土手っ腹を軽く殴って吹っ飛ばした感じ。
より見切りの精度が上がった二体目は、少し大きく左に旋回して片手剣でヤツの背中を両断した。
で、最後のは敢えて深目のダッキングで下に沈んで、ウルフの喉に貫手をお見舞いした感じ」
《コレは無理ゲーw》
《特訓?もよう分からん》
《恐らく、イケメンニキには全てがスローモーションに見えてるんだろう》
【¥5,000,000:『餓狼』AYUM@: 体捌きの素晴らしさに見惚れて初討伐ご祝儀遅くなった】
《俺らとは時間軸が違うという事か…》
《ユーキ様が素敵過ぎて抱かれたい…》
《Sランのアユマットが見惚れるってヤバない?》
「あ、アユマットさん、ご祝儀あざっす!!
因みに、ニュース番組の解説でアユマットさんのが一番的確でした。
他の連中は的外れな解説ばかりで話にならんかった」
《ご祝儀貰ったから露骨なゴマスリw》
《あー、はいはい。ソウデスネソウデスネ》
《マジコメすると、ユーキさんは相当ハイレベルな格闘技術を身に付けている。
3体と対峙した時の位置どりからして普通じゃない。何故あの一瞬で一度に飛び掛からせない場所に身を置けるのか解説して欲しい》
「お、玄人っぽい人のコメントに答えようか。
近接戦闘では特に相手との間合いのとり方が重要なんだが、さっきの戦闘は最初しれっと3体の射程外に足位置を置いて、右の個体だけがギリギリ攻撃可能な間合いに踏み込んだだけ。
どうすれば良いのか?って質問には、相手の魔物が攻撃を仕掛けるギリギリの距離を過去の誰かの配信でしっかりと研究しておく事が重要。
ハウリンウルフの飛び付きの間合いは8.17メートル〜9.07メートル。ちな、イレギュラー個体は除いてね。
距離の把握さえ出来れば、後は只管基礎訓練で足の運びやフットワークを腐る程鍛えるだけ。
さっき言った躱して即リターンの訓練中も、射程を頭に入れて繰り返し行う感じかな」
《いや、ガチでこの人なんなん?》
《そこまでピンと来ないけど、研究と反復練習が大切って事は分かった》
【¥500,000:黒鉄久史: 質問者です。詳しく教えて下さりありがとうございました!少ないですが、貴重なアドバイスを頂いたお礼です】
《ガチ勢は皆んなこんな感じなのかな?》
《話は良く分からないけど、イケメンなのは間違いない》
《雪乃ちゃんが完全に堕ちてて草》
《質問者ってAラン探索者のクロガネさんだったのか!?》
【¥5,000:ハジメ: 俺も分かったフリしてお礼スパチャ】
《一流所だと今の説明で分かるんだな》
《ハジメ君とやらの額の少なさよwww》
質問者は結構有名な探索者らしい。
律儀に結構な額のスパチャをくれたし、凄く良い人なんだろう。
俺も礼を言わないとな。
「クロガネさん、高額スパチャありがとう。
高位探索者にニーズがあるなら、また後日にでも基礎訓練の動画を上げような。
あ、取り敢えずお話はここまで。
次の狼が来たんでちゃっちゃとヤッちゃいますわ」
俺は近付いて来る狼の魔力を感知して、再び臨戦体勢に入る。
現れた2体のハウリンウルフを同様に瞬殺したのだった。