14話 何か同僚に因縁付けられたんですけど!?
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「ええ…それでは神城君の探索者としての活躍を願って…乾杯!!」
「かんちゃ〜い!」
大下工場長の乾杯の音頭に合わせて、桐斗がオレンジジュースの入ったコップを上げる。
その天使な可愛らしさに職場の仲間達の頬が緩みまくる。
そう。業務終わりに皆んなが俺の送別会を開いてくれたのだ。
工場近くの居酒屋のお座敷を桐斗はご機嫌な様子で駆け回り、あちこちの席で乾杯をしている。
あ、事務のおばちゃん達に捕まった……アレは暫く離してくれないだろうな…
「ユウキ〜、辞めないでくれよ〜。
今度、エナちゃんにお前を連れて店に行くって約束したんだよ〜」
俺がほっこりした気分でおばちゃん達に抱っこされる桐斗を見ていると、同期のカケルが情け無い顔で話しかけて来た。
コイツは同い年で、職場で一番仲が良かった。
軽薄そうでいて、桐斗がいる俺を気遣って残業を代わってくれたり、如何わしいお店のビンゴ大会で獲得したテーマパークの無料券をくれたりと、とても気が利くヤツだった。
「エナちゃんって、前に言ってたオッパブの女かよ!?
悪い事は言わんから、もっとまともな女の子と付き合えよ」
「おま、オッパブで働いてる女の子を差別するな!
エナちゃんを悪く言ったら、ただじゃ済まさんぞ!」
「い、いや、差別する訳じゃないけどさ、その手のお店で働いてるコって何というか…金銭感覚とか、何処か男を財布として見ている感じが…
って、タケモトが言ってました」
俺が夜の女の一般的なイメージを口にする度にカケルの目が座って行くので、俺は咄嗟に向かいに座る後輩のタケモトに罪をなすり付けてみた。
「はっ!?ちょ、ユーキさん!
俺そんな事一言も…」
「テメェ、タケモト〜!」
「や、ご、誤解ですって!カケルさん!」
おし!これで余計なトラブルは回避したな。
テーブルを挟んでわちゃわちゃする2人を放置して、俺は他のテーブルを回って他の仕事仲間達に挨拶をする。
殆どが俺の事を取り上げるニュースを見ていたらしく、激励を頂いたり、写真を求められたり、サインを求められたり、俺の大ファンを公言したという女子アナを紹介してくれと言われたり、結構しんどい感じになった。
最後に挨拶に行った大下工場長にはめちゃくちゃ泣かれたし…
まぁ、でも、皆んな本当に優しくて暑苦しくて最高の仕事仲間だった。
名残惜しくはあったが、夜8時を回った所で桐斗がおネムの時間になったので、主役ではあるもののお先に失礼する事となった。
そこで何故かカケルが俺を家まで送ると言い出し、俺はウトウトする桐斗を抱き抱えながらカケルと家路を歩いていた。
「なぁ、ユーキ…お前、マジでダンジョン探索気を付けろよ…」
「ああ、ありがとな。
そう言やぁ、カケルの従兄弟はダンジョン探索中に亡くなったんだったな」
「ああ…
嫁と娘を残してくたばりやがってよ…通夜の時のあの2人の悲しむ姿は忘れられねえよ…
キリトちゃんを悲しませたら、絶対に許さんからな!」
そうだよな。コイツは何だかんだで、芯の熱い良い男なんだよな。
心から心配してくれるなんて、俺は本当に良い友人を持った…
「ありがとうな。
俺には帰りを待つ桐斗がいる。這いつくばって泥水を啜ってでも生き延びて見せるぜ…」
「あ!ユーキさ〜ん!」
俺がカケルの想いに応えていると、不意に美少女的な耳に心地良い声が響いた。
何と、俺の家の前に雪乃ちゃんが居るではないか。
「ああ、雪乃ちゃんこんばんは。こんな時間にどうしたんだい?」
「え、あ、あの…その…ユーキさんに…わ、渡したいモノがあって…」
何故か赤面してモジモジする雪乃ちゃん。
ああ、こんな時間にオッサンに近寄られて怖いんだな。
俺は一歩距離を空けようとすると…
「て、テメェ!ユーキ!
お、お前、何でオッパブのエナちゃんよりオッパイでけえ女とイチャついてんだよ!
クソ!めちゃくちゃ可愛いじゃねえか!何処の店のコなんだコラ!」
「ひぃっ…」
盛大に誤解したカケルが大声で俺に詰め寄って来た。
余りの勢いに恐怖を覚えたのか、雪乃ちゃんが俺にしがみ付いてしまった。
桐斗の身体を支えている腕に…や、柔らかいお胸の感触が……
い、いかんぞ!現役JDの胸に欲情するとか、け、けしからんぞ!
直ぐにパッと後ろに下がった俺は誤解を解きにかかる。
「落ち着けよ。彼女はお隣のお嬢さんで、この間偶々探索者登録で一緒になっただけで深い関係じゃ無い」
「え…ユーキさん…私の事…浅くしか思ってくれて無いんですか?……」
な、何故雪乃ちゃんがそんなに落ち込むんだ!?
しかも、何か言い方が誤解を生む感じだ。
「て、テメェ!そんな爆乳美少女を弄んだっつうのか!?
この鬼畜野郎!地獄に堕ちろ!!」
くっ…先程まで俺の身を案じてくれていたカケルが、俺をぶち殺さんばかりの気迫で迫って来やがった。
「だから、誤解だって!彼女には一切手出しなんてしてないからな!
だいたい、有名お嬢様女子大に通う才女の雪乃ちゃんが、学の無いバツイチの俺なんか相手にする訳無いだろう!」
「そ…そ…んな事……な、無いんですけど…ず、ずっと、ま、前からユーキさんの事は真剣にっていうか……」
俺はカケルの圧に負けないように声を張った。
後ろで雪乃ちゃんがゴニョゴニョ言っていたが、彼女も邪な関係だと決め付けるカケルに納得が行かないのだろう。
俺の気迫にたじろいだカケルは、「わ、悪い、勘繰っちまった」と軽く詫びを言って居酒屋へと戻って行った。
俺達の完全勝利である。
「あ、雪乃ちゃん。変な事に巻き込んでゴメンね?
そう言えば、何か用事があったのかい?」
「ハ、ハイ!そうでした!
あ、あの、今日はユーキさんにこ、コレを…
『変わり身のペンダント』って言うレアアイテムで…
先日助けて頂いたお礼です!」
「え?そんな、レアアイテムなんて悪いよ。
それに、『変わり身のペンダント』って、致命傷の攻撃を一度だけ無効にしてくれる貴重品じゃないか。
JSA公式オークションで2,000万はするんだぞ?」
「い、いえ…あ、あの…『無双三連星』の人達から JSA経由で、私にもスパチャと広告収益の1割が振り込まれてまして。
結構凄い額を頂いたんです」
そうだったのか…確か、彼等の配信はアーカイブにもなっていて、10億再生を記録したんだとか。
スパチャだけで7億円越えだったので、律儀な彼等は俺にも5億円振り込んでくれたんだよなぁ。
今度彼等にお礼をしないとな。
「そうか…でも、こんな高額なレアアイテムを受け取るのはちょっと…」
「じゃ、じゃあ、来週の初配信で、わ、私とこ、コラボしてくれませんか!?」
雪乃ちゃんは潤んだ瞳で俺を真っ直ぐ見つめながら、コラボを提案して来た。
俺は日本中でかなり話題になっているみたいだし、登録者もかなり多い。
コラボをすれば彼女の登録者も増えるし、同接もかなりのモノになるだろう。つまり、広告収益も結構な額になるのだ。
俺は二つ返事でコラボの申し出を引き受けたのだった。