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119話 特別合宿が始まりましたけど?



「か、神城君、久し振り……

な、何か暫く会わない内に凄いメンバーを引き連れるようになったね……」


「おう、久し振り。

確かに言われてみると、豪華メンバーだよなぁ。

まぁ今は時間が無いし、さっさとヘリに乗り込もうぜ」



 合宿当日、JSA東京本部で『S.W.A』と『FUNKY RADIO』と合流した俺、桐斗、瑠奈、雪乃ちゃん、美優先生、彩音の『ガチ勢』ファミリーは、送迎用の政府専用防弾車両に乗って『餓狼』のクランビルへと向かった。

 クランビルの裏手で車から降りた俺に声をかけて来たのは、ご無沙汰していた藍口君だった。


 確かにパーティー世界ランク1位の『S.W.A』、2位の『FUNKY RADIO』と一緒なのだから、驚かない方がおかしいよなぁ。



「お、君がカスミンだね?

KOZIさんから噂は聞いているよ」


「か、神城殿、初対面で変なあだ名を付けないで下され。

は、恥ずかしいでござる…」



 ヘリに乗り込んだ俺は、藍口君の隣に座ってソワソワしているカスミンに声をかけた。

 このカスミンという美人JKは世良(せら)香澄(かすみ)というのだが、白銀に朱が混じったような不思議な髪色をした【剣聖】持ちのスーパールーキーだ。

 そして、藍口君の勇者パーティー、『大和魂』のメンバーでもある。


 彼女はKOZIさんの弟子であり、KOZIさんは彼女の才能を賞賛していた。

 因みにカスミンはKOZIさんに惚れているらしく、せっかく美人JKがメンバー入りしたのに、藍口君はイマイチテンションが上がらないらしい。



「神城君、世良さんはKOZIさん以外の男とは親しくしないんだ。

あまりグイグイ行くなよ」


「いや、グイグイは行ってないだろ。

でも、いきなり馴れ馴れし過ぎたよな。

ゴメンね、カスミン」


「い、いや、自分、殿方と話すのが不得手でして…面目ないでござる…」



 藍口君の言う通り、初対面で馴れ馴れし過ぎたな。

 一昨日BOINでKOZIさんから彼女をよろしく頼むと言われていたので、ついついガッツリ行ってしまった。

 カスミンとは少しずつ仲良くなれば良いか。


 その後、久し振りの藍口君とアメリカでの事などを話していると、俺の隣に座っていた美優先生がめっちゃテンションを上げて割って入って来た。



「あ、藍口クン!

私は弟クンこと雄貴の婚約者の吉永美優だ!

いきなりで悪いが、弟クンとガチスパーをした時の事を詳しく教えてくれ!」


「あ、え、あ、藍口竜樹です。

よ、よろしくお願いします。


あ、神城君とのスパーですか…

えぇ……神城君と対峙した時に最初に感じたのは、距離の遠さでしたね」


「分かる!分かるぞ!

弟クンはキックの鬼だからな!キックの間合いとボクシングは違うものな!」


「そうなんですよ!

あんなにジャブを外されたのは初めてだったので、高校生相手に大人気なく、マジのステップインをしちゃいました。

他には……あ、神城君は目がとても良い印象で、ステップワークやボディワークも見切られて捌かれてしまう。


なので、上下に細かく散らしてカウンターを狙ったり、ワンツーのモーションで敢えてワンを打たずにタイミングをズラしたツーから入ったり、素人に使うべきではないボクシングの引き出しをフル稼働しましたね」


「元金メダリストがそこまで本気になったのか?

流石私の弟クンだな!」


「国体やアジア大会はおろか、世界選手権や五輪でもあんなにボコボコに殴られた事は無かったですよ。

ボクシング人生初ダウンを喫しましたし、神城君があのままボクサーに転向していたら、アマなら五輪で金、プロなら4団体統一王者になってたでしょうね」



 ちょっと、ベタ褒めされ過ぎて恥ずかしいんですけど……

 美優先生はキャアキャア言いながら腕に絡み付いて見事過ぎるバストを押し付けてくるし……



 こんな所でモッコリを避けたい俺は、抱き抱えられた右腕を引き抜いて藍口君を窘めた。



「まぁ、藍口君。そんなに俺を持ち上げなくても良いじゃんか。

それより、カスミン以外のパーティーメンバーは決まったのかい?」


「いや、まだだよ。

でも、この間受付の由莉奈(ゆりな)さんにメンバー募集用のバナー告知を出して貰ったから、目ぼしいソロ探索者のアプリに表示されていると思うんだ。

合宿後には申請が集まってるはずだから、後は世良さんと選んで決める感じかな」


「勇者と剣聖に見合う職業スキル持ちからの応募があると良いな」


「うん。可愛いコが集まる事を願う…」


「可愛いコだと!?藍口君、まさかハーレムパーティーを築くつもりかよ!?

うわぁ、コイツやべぇよ!」


「うわ、わ、ちょっと今のは違う……

つーか、既にハーレムパーティーを築いてる神城君には言われたくねえわ!」


「い、いや、俺は別に狙って今のメンバーにした訳じゃ…」


「ちょ、そこの2人うるさいぞ!

離陸するからシートベルトを締めてくれ!」



 俺が藍口君との軽口を楽しんでいると、前の列のシートに座っていたアユマットさんに注意されてしまった……


 『餓狼』が所有する魔導ヘリは5機。

 定員は操縦士を除いて11名。

 俺の乗り込んだヘリには他に敷島さん、桐斗、瑠奈、雪乃ちゃん、彩音、そして何故かミュイがちゃっかり乗り込んでいる。


 犬猿の仲である『S.W.A』と『FUNKY RADIO』はそれぞれ別のヘリに乗って貰って、空席を埋めるように『餓狼』所属の『パンチラ三昧』の4人、『無双三連星』の3人、『ポイズン・ベリー』の5人、幹部の田沢さん、佐藤さん、小田さん、皆川の兄貴、姉貴といった各関係者が良い感じにバラついて乗っている。


 ともあれ、俺たちを乗せた5機の魔導ヘリは空高く舞い上がり、今回の合宿地である石垣島へと超高速で飛行したのだった。



◆◇◆◇◆



「ほら!メグとソージ、それからピザデフとダニーも!周回遅れになるぞ!

疲れても魔力操作をサボるな!」


「ハァ…ゼェ…ふ、ふぁい…」

「フゥ…ハァ…う、ウス…」

「ゼェ…ゼェ…ひゅごっ…」

「う、うぷっ、う、うるさい…て、天才のボクに…ヒギッ!あ、足が…」


《ニキがメグちむの後ろに引っ付いてて草》

《初っ端のランニングから人間の域を越えとる…》

《いつもの『ガチ勢』だけじゃなくて、『S.W.A』と『FUNKY RADIO』も居るとか最早奇跡としか言えないコラボ》

【¥50,000:大木尹五郎:ベガスを観光地に戻した英雄達への感謝スパ】

《イケニキは前屈みの体勢で良くあんなスピードで走れるよな》

《イケメンニキゴラァ!メグちむ様のミニスカの中を覗こうとするな!》



 2時間程のフライトでJSAが特別管理区域として所有している名蔵湾付近に到着した我々は、予めタテイシ・ラミレスに貰っておいた区域内施設使用許可証を提示して、特別管理区域内の豪華訓練施設へと向かった。

 皆川兄貴と姉貴がキッズルームで桐斗の面倒を見てくれているので、我々はバスケットコート8面以上ある屋内訓練場で訓練生配信をスタート。


 今は最初の軽めのランニングをしているのだが、『パンチラ三昧』のメグ、『ポイズン・ベリー』のソージ、お馴染みのピザデフとダニーが周回遅れ目前の状態だ。


 因みに今回は『餓狼』公式チャンネル、『大和魂』チャンネル、『VISITORS STATION』の3チャンネルで生配信を行う運びとなっている。

 


 うむ……『餓狼』公式は既に同接500万越えか……

 『VISITORS』の方は英語ばかりが羅列していてよう分からんが、1000万人以上が見ているようだ。

 それにしてもメグの尻は素晴らしい……



ギュミチチチィィッ……



「い、いでぇっ!!

ケツをつねるんじゃ……」



 ミニスカで走るメグの尻を堪能していると、突然ケツに焼ける様な熱い痛みを覚えた俺氏。

 涙目で振り返ると、そこには絶対零度の笑みを浮かべる雪乃ちゃんが……



「女の子のお尻に顔を近付けるなんて、どういうおつもりですか?

納得出来るように説明して頂けます?」


「い、いや、違うんだ!

メ、メグの…そ、そう、走る時のハムストリングの感じをチェックしていただけなんだぜ!」


「へぇ?元陸上部の私からすると、ピザ太りスケベハゲさんの方が走るフォームが遥かに悪いですよ?

メグさんじゃなく、ピザデフさんのハムストリングをチェックして下さい」



 く、くぅ……雪乃ちゃん……何て酷い事を言うんだ……ピザデフのケツを見るとか、絶対に嫌なんですけど!!

 そ、それだけは絶対にやりたくない!



「ピ、ピザデフは俺からするとフォームに問題はな…「は・や・く!ピザデフさんのハムストリングをチェックして下さい!」



 被せ気味に圧をかけて来た雪乃ちゃんの必殺のムード……く、くそう……俺は……俺はぁぁあ!



《ピザデフの尻を覗き込むニキがオモロ過ぎるwww》

《今季一番のメシウマ動画で草》

《イケニキの顔が歪み過ぎてイケメンじゃなくなっとるwww》

《いやぁぁ、私の雄貴サマがデブ男のケツに顔を付けてるぅぅ!》

《ピザデフ、今だ!バズーカ級の屁をこけ!》

【¥100,000:デブ・ケツ夫:男のケツに興味深々のニキにご祝儀です】

《屁をこけは草www》



 クッ、訓練風景を撮影する高級ドローンのモニターにゴミみてえなコメントが溢れとる……

 アーカイブに残す時はアユマットさんと藍口君に頼んで、この部分はカットしてもらおう……



 俺は雪乃ちゃんによって強いられた屈辱的なランニングを何とか完走して見せたのだった……



◆◇◆◇◆



 カンッ、キンッ、シュッ……



「あぁ、クソォッ!」

「フン!シッ!」


《ヤベェぞ…おい…》

《どういう事よ?轟君がSSランクのダニーを模擬戦で押してるぞ》

《 ト ド ロ キ 最 強 》

【¥300,000:野田唯:轟サマが素敵過ぎる❤️】

《この間の調布ダンジョン攻略でも思ったけど『無双三連星』ってCランクとは思えない程強えよな》

《ヤバ過ぎて草しか生えん》

《Bランク玄人の俺が断言するけど轟君はSSランク相当の力があるよ》



 地獄のランニングやシャドーを終えた後、力制限魔導具未解除での模擬戦を行ったんだが、コメ欄で言われている通り、『無双三連星』リーダーの轟が『FUNKY RADIO』のダニーを全局面で圧倒していた。


 素早いステップワークで常に有利なポジション取りをして、模擬戦用のロングソードを僅かな予備動作で振るう轟。

 ダニーはステータスの高さでギリギリ対応しているが、常に轟に先手を取られていて、返しの攻撃の時にはバランスを崩している。

 対する轟は重心をやや後ろにして、体捌きのみでダニーの短剣での返しを躱しざまにカウンター。

 鋭い一閃はダニーの左肩を掠めた。



 以前、『餓狼』とトレーニングコラボ配信をした時から今まで、『無双三連星』は相当な魔力操作トレをやったのだろう。

 特に轟の体捌きや体内魔力操作での身体能力強化の練度は高い。

 3日前に何とか体内魔力を認識出来たばかりのダニーでは手に負えない程、スキル無しの戦闘では差が出てしまっている。



 …素晴らしい!実に素晴らしい修練だぞ、轟!



「素晴らしいな……彼は……トドロキは探索者歴が長いのか?」



 俺が内心で轟の素晴らしさに賞賛を送っていると、いつの間にか俺の隣に立っていたマックスが感心した様子で俺に話しかけて来た。



「いや、轟も俺と同じ日に探索者デビューしたから、まだ半年も経ってないぞ」


「な、何!?あれ程の近接戦闘が出来るのに、半年以内なのか!?


……フゥ……


どうやらステイツの探索者達は俺も含めてランキングに囚われ過ぎていたようだな。

地道なトレーニングを集中してこなす日本人の勤勉さを我々も学ばなければならないようだ」



 先日までミュイに世界王者の座を奪われて発狂していたマックスだったが、流石超一流の探索者だ。

 己の力に慢心する事なく、自分よりも遥か格下の者からも学ぶべき点を見出している。

 俺もマックスのような真の超一流になりたいぜ……



「ハッハッハッ!

お前のパーティーメンバーは実にザコい!

デビューしたてのトドロキに負けそうだぜ?

『S.W.A』との差は圧倒的だなぁ!?」


「クッ……うるせぇぞ!

お前らのパーティーが伸びたのは全部ユーキ達のおかげだろうが!

この間のベガスでユーキ達に命を救って貰ったクソザコがイキってるんじゃねえ!」


「何だと!?テメェらだってユーキにあやかって力を付けようとしてるだろーが!」



 ハァ……またしてもベイツがマックスに噛み付いて来た……

 まったく、この2人はどうすれば仲良くなるんだよ?



 俺が内心でため息を吐きながら乱闘に発展しそうな2人を止めている間に、轟は一発逆転狙いで大振りしたダニーの前脚を払い、力み過ぎて無様に転倒したダニーの喉元にロングソードを突き付けて勝負あり。



 こうして努力の人・轟は、世界トップクラスの体捌きを誇る事を全世界にアピールしたのだった。



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