118話 まだ一日は終わってませんけど?
両親の墓参りで微妙なテンションになってしまったが、こんな状態で巌窟堂に行くのは気が引けてならない。
だが、巌…基、ナンシィ(仮)から美優先生の姫騎士装備の最終調整が必要だという連絡があり、明日から皆んなで短期合宿に行く事になっているのもありで、日程的に今日調整に行くしか無いんよな。
ちょうど瑠奈も合宿参加の為に4日間の外泊許可を取って治療院から出て来ているので、瑠奈の聖女用装備もイワ…ナンシィ(仮)に依頼するとしよう。
内心でため息が溢れる中、『巌窟堂』に到着すると……
「いやぁぁあん!雪乃お姉様ぁ、美優お姉様ぁぁあ!
お待ちしていたわぁぁあん!!」
クソ……初っ端からナンシィ(仮)の圧が凄え……正直帰りたい……だが、俺は俺でアイテム類の大人買いという目的もある。
逃げてはいけない……逃げてはいけないんだ……
「あははは!なんちぃたん、おくちにちがちゅいてりゅ!」
「き、桐斗、あれは血じゃなくてお化粧なの!
あ、う、ウチのコがす、す、すみません…」
お、物怖じしないタイプの瑠奈がめっちゃ弱気になっとる。
コレは中々レアな光景だな。
「あらぁん、相変わらずキリトちゃんは食べちゃいたいくらい可愛いわぁん!
そちらは瑠奈お姉様ね?お話はダーリンから伺ってるわぁん。
アタシはナンシィ(仮)っていう生粋の乙女よぉん。
よろしくお願いねぇ!」
「び、備土瑠奈です…こ、こちらこそよろしくお願いします…
あの…ダーリンって、もしかして雄貴の事ですか?」
「そうよぉん!
決まってるじゃなぁい!」
「へぇ……アイツ、そっちの趣味もあるんだ……」
う、うお…瑠奈がめっちゃ睨んで来たゾ!
あの睨みは洗脳されていた時の荒みきった瑠奈の鋭い睨みだ……
「ひとしきり挨拶も済んだようだし、ナンシィ(仮)よ。
早速新装備の調整をしようじゃないか」
案の定、場がカオスとなりかけた所で美優先生が上手く流れを変えた。
ナンシィ(仮)も本来の要件を思い出してくれたようで、社員通用口から店の特別室へと案内してくれたのだった。
◆◇◆◇◆
タタタ…ダンッ!
「フンッ!シッ!
お、このソールはかなり良い感じじゃん!
適度な柔軟性も有るし、耐久性も高いな」
美優先生と瑠奈はナンシィ(仮)と装備品の調整と打ち合わせを兼ねて工房に行き、雪乃ちゃんと彩音は店のバックヤードにアイテム類を物色に行った。
姉貴と義兄さんと桐斗は応接室で時間を潰すと言うので、俺は特別室で探索活動用のおニューのブーツを選んでいる。
俺は履き心地もさる事ながら、特にソールを重視している。
ダンジョンの地面は独特のゴツゴツ感があり、鋭い踏み込みや俺独自のステップワークを行うのに、足裏の感覚はかなり重要なのだ。
ソールが薄過ぎると痛みを感じるし、厚過ぎると足裏の感覚が鈍くなる。
ナンシィ(仮)は装備品職人としての腕だけは超一流で、コレまで俺の理想通りのブーツを仕立ててくれていたが、今回は愛知県からレア素材を入手出来たという事で、せっかくなので3足程新調しようと考えたって訳。
ダンジョンの地面って全て同じ訳じゃ無いから、今回は硬質な地面用、ザラザラした地面用、粘度が高い地面用の3種類を購入するか。
その後も用意してくれた20種類のブーツを試着して、黙々と履き心地とソールを確認していると…
ガチャッ……カシャン…
「……雄貴……コレ、どうかな?……」
ドアが開く音と施錠する音がした後に、ドアの方から瑠奈が声をかけて来た。
俺は後ろを振り返ると……
「なっ…瑠奈…それって…」
そこには人気アメコミ『リバーサイド・スクワット』のキャラクター、パイレー・アイーンの格好をした瑠奈の姿が……
ヤベェ……めちゃくちゃ完成度高え……
『リバーサイド・スクワット』はアメリカのJK3人組がメタボ化を気にして川岸でスクワットを始めた所から始まり、長きに渡るスクワットで見事な足腰を手に入れたJKが悪の組織に取り込まれるダークヒロインモノである。
中でも見事なヒップを誇るパイレー・アインは圧倒的人気キャラで、クロスオーバー作品にも登場頻度が高い。
俺も勿論どハマりしたキャラクターだ。
「ふふふ…雄貴ってパイレー大好きだったでしょ?
ナンシィ(仮)ちゃんが既製品に手を加えて作ってくれたんだけど、かなり再現度高くない?」
「さ、さ、最高だぜ!
瑠奈、似合い過ぎてめちゃくちゃヤベェよ!」
「ホラ?昔みたいに……しちゃわない?」
「え…で、でも、ここは店の中だし、音とか響くじゃんか…」
「特別室の防音はバッチリって言ってたし、ナンシィ(仮)ちゃんが気を利かせてこの部屋を1時間貸切にしてくれるって。
やっぱ私じゃ…ダメ?」
最後に軽く尻を突き出しながらおねだりをする瑠奈の姿に理性が崩壊した俺氏。
ブーツと服を脱ぎ捨てて、コスプレした瑠奈を押し倒したのだった……
◆◇◆◇◆
「あ、アンタが性豪なの忘れてたわ……
久し振りのえぃちで元嫁を失神させるとかありえないでしょ……」
「ス、スマン……」
あれからハッスルし過ぎた俺氏は、失神から意識を取り戻した瑠奈に恨み言を言われてしまった…
だが、俺も完全な野獣にはならなかったんだぜ?
完治一歩手前の瑠奈をしっかり気遣って2回で我慢したんだから、そこは評価して貰いたい所ではある。
「でも…また雄貴と出来て最高に幸せ…かな…」
「瑠奈…俺も最高に幸せだ…」
俺はタマらず瑠奈を抱きしめてキッスをした……
むぅ、コレは…舌を絡めるタイプに発展したぞ……むぅ……コレは……下半身が反応してしまうタイプの……
「……弟クン、いつまで盛っているつもりかな?」
ど、ど、どきぃぃいん!!
やや低めの凛とした声が響き、慌てて声の方を見るとそこには……
「ちょ、ちょ、ちょっと!
美優先生、何ですかそのエロけしからん格好は!?」
色々とハミ出そうなけしからん格好の美優先生が立っていた……
「むっ?気に入らないか?
ギャルティエとナンシィ(仮)のコラボ装備で、過去最高潮に力が漲るのだが……」
「い、いや、き、気には入りますけど、そんな格好で探索者活動なんてすると、全世界の野郎どもの格好のネタにされちゃいますよ!」
「別に減るモノでも無いし、見られるくらい良いだろう?」
こ、この人、JK時代から変な水着とか着せられてるからネジが外れてるんだろうな……
だが、俺以外の男に美優先生のセクシーボディを見られたくねえ!
「俺は嫌なんじゃ!
自分が惚れた女の体を他の男に見られたくないんじゃ!
だから瑠奈も装備は露出度の高いヤツはダメね!」
「わ、私がそんな格好する訳ないじゃん!
桐斗のママとして恥ずかしく無い格好をするわ!」
「ふふ、安心しろ。
独占欲の高い弟クンの為に、下半身を覆うようなロングスカートのアタッチメントも装着可能だ。
胸もこの上にチューブトップ的な装備品を付けるから、ハミ出る事は無い」
「そ、それなら良いんだけど、それなら何でアタッチメントを着けた状態で来ないんですか?」
「ふふふ、決まっているだろう?
弟クンに可愛がってもらう為さ……瑠奈ちゃん、弟クンをお借りしても?」
「ええ、勿論。
じゃあ雄貴、ちゃんと美優さんも満足させてね?
私は桐斗とお絵描きしてるから」
瑠奈はそそくさと服を着て部屋を出て行ってしまった……
そして、俺のジュニアはけしからん格好の美優先生にめちゃくちゃ反応してしまっている……
結局、その後美優先生との行為で失神させられた俺は、3時間も桐斗を放置した事を姉貴にめちゃくちゃ怒られたのだった……
正に父親失格の大失態の一日だったぜ……