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112話 魔力操作の特訓がスタートしましたけど!?



 美優先生お手製の美味しい朝食を食べ終えた俺、雪乃ちゃん、美優先生、彩音、そしてミュイは、桐斗を託児所へと送り届けてからJSAの訓練場へと向かった。

 既にミュイを除いた『S.W.A』メンバーと『FUNKY RADIO』のメンバーは訓練場に到着しており、ストレッチ等の準備運動を終えているようだ。


 ピザデフが顔をボコボコにしている辺り、ヤツは性懲りも無くアマンダのケツを揉んでマックスにボコられたのだろう。



 先ずはいつもの走り込みやシャドウ、魔物の動きを想定した体捌きの基礎練をみっちり行ったんだが、『FANKY RADIO』のマックス以外のメンバーは俺達の訓練に最初は目を剥いて驚いていた。

 マックスがこそっと教えてくれたのだが、一般的にアメリカの探索者は模擬戦と的に向かってスキルを使用する訓練がメインで、敵の攻撃を躱す動作や距離や位置取りを延々と繰り返すような地味な事はしないらしい。


 対人戦は勿論大事なのだが、魔物と人間とでは攻撃の種類やリーチがまるで違う。

 一般的な模擬戦だけでは物理攻撃型の魔物への対策は難しいと俺は考えている。

 俺達『ガチ勢』は魔物の攻撃パターンとリーチや間合いを徹底研究した上で、リーチが長い魔物を想定する場合は長さを細かく調節したスポチャン用の剣を使って体捌きの訓練をしているんだが、『FANKY RADIO』が俺達の訓練に疑問を持った状態で体捌きを練習しても効果的ではない。



 俺はこれらの訓練の意図をしっかりと『FANKY RADIO』に説明した上で、体捌きの訓練をみっちりと行ったのだった。



 2時間たっぷり基礎訓練を行った所で、いよいよお目当ての魔力測定魔導具による体内魔力の把握訓練に移る事にした。



「良いか、先ずはこの魔導具の一般的な使用方法を説明する。

このパネルに利き手を翳すと、数秒後に此方のモニターに体内魔力値が表示される。


先ずは皆んな、順番に普通の魔力測定を行なってくれ」



 俺の言葉を聞いた一同は、訝しむような表情でタッチパネルに手を翳した。

 普通の使用方法の時に反応したのはマックスとミュイの2人だけである。



「なる程、そういう事か!

コレは体内魔力を感じ取る事が出来るかも知れないな!」


「……ユーキ!手のひらから……何か少し温かいモノがジワジワと内側に来る……」


「流石、マックスは体内魔力操作をハイレベルに習得しているだけはある……そもそもマックスはこの練習をやる必要は無いしな……



それよりも……ハァ……



……ミュイ……お前、嫌になるくらい天才だな!?


もっと、こう……空気を読めよ!!

他の未習得の皆んながポカンとしてるじゃねえか!」


「むぅ……そんな事言われても天才なのはミュイのせいじゃないし……」



 俺は天才過ぎるミュイにイラッと来て、ついつい強目に言ってしまった。

 覚えの悪過ぎるヤツに指導するのもイライラするが、優秀過ぎるヤツに指導するのもイライラするモノだな。



「ミュイ、済まん。

今のはただの天才への僻みだ。


んんっ!では、諸君聞いてくれ!

実はこの訓練のファーストステップは、今ミュイが言ってくれた手のひらから微弱な魔力が浸透して来る感覚を掴む事だ!

その為に、パネルに魔力値が表示されても手を離さずにそのまま手のひらに意識を集中させてくれ!


半数以上がファーストステップをクリアした所でセカンドステップに移ろうと思う!

つー事でミュイは優秀過ぎるから、半数がファーストステップを習得するまで待機してくれ」


「ん。ミュイは天才だから皆んなを待つ。

メガネチビは才能ゼロだから3ヶ月はかかると思うけど」


「な、何だと猫耳チビ!お前みたいなザコに出来る事が俺様に出来ない訳がねえだろうが!」



 ミュイがまたもダニーを挑発した。

 ランニングからずっとコイツらはこんな状態だし、体捌き訓練後の簡易模擬戦でも喧嘩腰だった……ていうか、前回のダンジョン攻略で急成長したミュイは露骨に舐めプをしながらダニーを模擬戦用武器でボコボコにしていた。

 予備動作や初動を察知する能力の高いミュイに戦闘スキル使用不可の模擬戦で勝てるのは、俺達とマックスを除けば美優先生だけだろう。



 そう言えば、ミュイにコテンパンにボコられたダニーが悔し泣きし、美優先生に軽くあしらわれたミュイが悔し泣きするという不思議な光景が繰り広げられていたなぁ……。



 因みに、美優先生は剣術も身のこなしも何方も超高次元に備わっている。

 世界ランキングが62位なのが不思議な程だが、マックス曰く『ソロ探索者では熟せる依頼数や依頼難易度に限りが有るんだ。WSAのポイントが上がらないからYOSSYはランクが上がらなかった。下らんポイント制を考慮しなければ、彼女は世界でトップ10に入る程の実力者だ』という事らしい。

 当の美優先生は脳筋なので、そういった細かいポイントの事を知らずにコレまでソロでやって来て50位代止まりだったんだろう。

 そんな美優先生が俺達『ガチ勢』に加入するというんだから、この先凄い事になりそうだ。



 話は反れたが、その後魔力測定魔導具でのファーストステップを2回目でクリアしたのは美優先生、メアリー、ベイツの3人。

 美優先生に至っては、体内魔力を感じ取った瞬間に魔力操作の基礎である魔力循環を行って、魔導具をエラー表示にしてしまう程の応用力を見せた。

 で、3巡目でオリビアと『FUNKY RADIO』の盾戦士にして常識人のヴィンセントがクリア。

 その後も順調にチラホラと合格者が出て行った……



◆◇◆◇◆



「そう落ち込むなよ。

人には向き不向きってもんが……」


「うっせぇ!慰めるな!

余計に惨めになるでしょうが!

……ぅぅぅ……チキショウ……何で天才の俺が……」



 結局、午前の訓練では体内魔力を把握できなかったダニーに、俺は慰めの言葉をかけた。

 隅の方で体育座りで泣いている彼の姿を見て、託児所で仲良しのマホちゃんに『モテモテのキリトくんなんてキライ!』と言われて落ち込んでいた桐斗の姿とダブったんよなぁ……


 マホちゃんの普段の様子から桐斗の事が大好きなのは明白。公園で探した綺麗なお花を押花にして桐斗にプレゼントしたり、おママごとの時はシン君やリョウちゃんを差し置いて必ず桐斗を旦那さん役にする程だ。

 所が桐斗は誰に似たのか分からんが、マホちゃんの分かりやすい好き好きアピールに無自覚で、他の女の子と一緒に手を繋いでお歌を歌ったりして嫉妬されたのだ。



「……全く……桐斗と来たら仕方のない息子だゼ。

3歳でマホちゃんから嫉妬されてたら、この先何人の女の子を泣かせるか分かったモンじゃない。

少しは俺を見習って……」


「雄貴さん?

雄貴さんがキィたんの事を仕方ない呼ばわり出来るんですか?

私の好き好きアピールにも無反応だったユーキさんが……」



ド、ドキィィイン!!



思わず桐斗の事を呟いていたら、雪乃ちゃんに聞かれてしまっていたようだ。



「い、いやいやいや、俺は桐斗みたいな女泣かせじゃないさ!

思わせぶりな事はしないし……」


「ほう?

弟クンよ、実に面白い事を言うじゃないか。

君が中1の時に私の弟子の莉央というコが弟クンに告白したそうだが、君はその時莉央に何と言ったのかね?」



 な、何故美優先生まで入って来るんだよ!?

 しかも持ち出す話が中1の頃って……



「え?いや、そんな昔の事なんて覚えて無いんすけど……」


「フッ、『その髪型可愛いね』だの、『肌が白くて綺麗だね』などと、まるで息を吐くかのように褒め言葉を吐かして莉央をその気にさせて……


……告白の返事が『君には一ミリも興味ないからゴメンなさい』だったそうじゃないか?」


「酷い!!

雄貴さん、それは絶対にアナタが悪です!

今からでもその莉央さんに謝りに行って下さい!」 



 くぅぅ……何故自分でも全く覚えていない昔の事で非道漢呼ばわりされなきゃならんのだ!?

 今は亡き親父殿から、『良いか、雄貴。漢たる者、女の子には常に優しく接しなくてはならぬ!』と口酸っぱく言われて来たのだ!

 女の子を褒めもするし、相手の要求に応えられない時はちゃんと理由を言ってから謝るを徹底して来た!


 話を聞いても顔も名前も思い出せないリオちゃんとやらの事は、当時の俺は間違いなく一ミリも興味が無かったに違いない。

 断り文句も実に正直だし、ちゃんと謝ってるじゃないか!!



 結局、2人に盛大に責められた俺は、ダニーの横で体育座りをするのだった……



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