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109話 今度こそあの人とご対面しましたケド!? 前編



《時雨視点》



 ハァ……本当に大変な1週間だった…正確には7泊8日だったけど……



 いよいよ本日、日本時間8時頃に神城君達がJSA東京本部2階大会議室に帰還予定だ。



 あの後の美優さんについて触れよう。

 例の『エスプロジオーネ』騒動の後、雅美(ミヤビ)さんと飲み明かしてそのまま早朝4時から雅美さんと一緒に神城君達のダンジョン攻略生配信を鑑賞したんだけど、最初に神城君をブチ切れさせた失礼な女性レポーターに対して美優さんがブチ切れ出した。

 『あのレポーターコロす!』とか物騒な感じで騒ぎ出し、何故か雅美さんも美優さんに同調。


 何とか治まったと思ったら、今度は神城君が画面に映らないとブーたれ、ミュイレラさんという世界的にも有名な遊撃役が殺される直前に彼女を颯爽と助けた神城君を見て大興奮。

 ボクも一緒に見てるというのに、お股をサワサワし始めた……何故か雅美さんまで……


 何とか一人慰めは止めたものの、その後の神城君無双に美優さんと雅美さんは大騒ぎ。

 支配人からめっちゃ苦情が来た……



 で、ダンジョン攻略観賞後に仮眠を取ってからは、神城君の行き付けだという『巌窟堂』という日本一の装備品店に行き、ナンシィ(仮)というバケモ……店主と遭遇。

 神城君の婚約者を名乗る美優さんに店主は凄み出したんだケド、美優さんの強烈過ぎるミドルキックを受けた店主が何故か美優さんを『お姉様』と言い出して意気投合。


 あのナンシィ(仮)とかいう店主はバケモノっぽい見た目に反して相当天才的な装備品職人で、美優さんの【姫騎士】スキルは騎士装備を着用する事で真価を発揮すると美優さんに指摘した。

 美優さんが店主に『ギャルティエ』とスポンサー契約している為に『ギャルティエ』製品しか装備出来ない事を伝えると、何と店主はエドウィン・ギャルティエと旧知の仲だと言う。

 ギャルティエ氏に話を付けて、コラボ製品として美優さんの現在の装備品を改良して姫騎士にピッタリな装備品にして見せると豪語した。


 そんな感じでキワモノ店主とも義姉妹となった美優さんは、その日の深夜に神城君とパイロン大統領との仲直り配信を見てえらく感激&興奮した。

 神城君を見ると性欲が爆発するのは美優さんにとってデフォらしく、その日の晩は美優さんが独りで色々励むとの事で、ボクは久し振りに自宅マンションに帰ってグッスリ眠った。


 翌日曜日は本当に平和なモノだった。

 美優さんの面倒を見ていた中で唯一の平和な日だ。

 地上波の放送局が神城君と『ガチ勢』を讃える特別番組を放送していたので、美優さんはその特番を見ながら独り慰めをするとの事で、ボクは御飯時以外は美優さんとは別行動を取る事が出来たのだから。


 

 月曜日はアホの宮原課長から仕入れた情報で、神保町にある『長嶺魔石加工株式会社』の本社ビルにアポ無し凸をぶちかました美優さん。

 お目当ては本社ビルに隣接する『神城雄貴記念館』なのだから、本社に凸する必要なんて無いのに何故か凸してしまい、工場の時と同様に美優さんの破格の人間力が炸裂。


 長嶺社長自ら神城君を接待する時に使う小料理屋へとエスコートすると言い、当然のように提案に乗った美優さんは社長が話す神城君の『謙虚さエピソード』を聞き出した。


 コレはボクも意外だったのだが、神城君はメインスポンサーの『長嶺魔石加工株式会社』から月額5万円しかスポンサー料を貰っていないらしい。

 神城君は生配信の他、取材や会見などでも頻繁に『長嶺魔石加工株式会社』のアピールをするので億単位は余裕で貰っていると思っていたが意外だった。

 『神城雄貴記念館』で上がった利益も僅か1%しか受け取らず、接待も一流料亭を提案しても神保町の小料理屋で良いと言うのだとか。


 『会社と工場の皆んなに恩返しがしたかった。俺の為に使う金が有るのなら、その分を会社の為、工場の皆んなの為に使って下さい』という神城君の発言を長嶺社長は涙ながらに語り、美優さんも珍しく感涙していたっけな。


 で、その後は社長自ら『神城雄貴記念館』を案内して、神城君とのコラボ商品だったり神城君グッズを美優さんは爆買いしていた……何故婚約者なのにグッズを買うのかが謎過ぎるけど、一番の謎は神城君が当時着用していた作業着や魔石研磨道具のレプリカを買った事だ。

 あんなモノ何に使うの!?神城君が実際に着ていたとかならまだ分かるけど、レプリカだよ!?


 神城って刺繍されているだけのそこいらのワークショップで売ってそうなライトグレーの作業着に12万払う意味が分からなかった。



 その後も色々酷かったんだ……4階の『神城式』というトレーニングジムではトレーニング中の会員さんにダメ出ししたり、トレーナーさん達にダメ出ししたり……終いには自分が指導するとか言い出すし……


 火曜日は夏休み中だというのに神城君の母校にアポ無し凸。水曜日は『餓狼』のクランビルにアポ無し凸。木曜日は神城君の自宅に不法侵入しようとした……。

 で、昨日は『弟クンとの再会の前に今までのおさらいだ!』と言って、コレまで巡ったスポットを全て回った……。



 中でも納得行かなかったのが、『餓狼』の対応だ。

 水曜日にアポ無し凸を仕掛けた時、何故か同行しているだけのボクはビルの敷地内から追い出され、美優さんだけは手厚くもてなされたんだよ……。

 美優さんがAYUM@と敷島さんと談笑しながら『餓狼』のクランビルから出て来たのは、凸を仕掛けてから9時間後。

 『餓狼』が贔屓にしている会員制の高級イタリアンに行くから運転しろと言われ、レストランに着いてもボクの事なんてガン無視で3人で盛り上がり、何故かお会計はボク。

 4人で941万円のお会計だった……。

 


 いや、過ぎた事はもう良い!

 神城君に美優さんを引き渡したらボクはお役御免というワケだ!!



 ボクは重過ぎる荷物が背中から降りるような安堵感を感じながら、美優さん、ラミレス会長、『ガチ勢』専属受付の美鈴さんの4人で神城君の帰還を待った……。



 そして、午前8時7分。いよいよその瞬間が……



 会議室のボードが設置してある開けたスペースに転移スクロールのモノと思われる魔法陣が現れたのだ。

 魔法陣が光を放ち、沢山の人影が現れた。



 その光が収まると………



「弟クン!!」



 姿を現した神城君に、美優さんが声をかけて歩み寄った。

 てっきり猛ダッシュして抱き付いて、そのままエッチな事を始めるかと思ったんだけど、意外と本人は冷静なようだ。



「へ!?み、美優先生!?

ど、ど、どうして!?えっ!?ウソ!?

ホントに!?」


「弟クン………」










バチーーーン!!!










 神城君の前に進み出た美優さんは、突然の再会にテンパっていた神城君に強烈なビンタをぶちかました………。



 ボク………神城君に会わせたらダメな人を連れて来てしまったのかも………



◆◇◆◇◆



 俺が転移スクロールでJSAの東京本部に帰還すると、信じられない事に美優先生が待ち構えていた。

 思いもよらない状況にフリーズした俺は、美優先生の強烈なビンタをモロに浴びてしまった……



 て言うか、何でこんな所に美優先生が!?



 先生と思しき『YOSSY』という探索者はWSAのUK支局に所属のままだった筈。

 彩音からイギリスはアメリカよりも他国への探索者の流出に厳しいと聞いていたから、美優先生が『YOSSY』とは別人だとしても、気軽に日本に来る事が出来ないらしいんだが……



 俺が完全にパニックになる中、美優先生は眉を吊り上げて言葉を続けた。



「何で私を娶りに来てくれなかったんだい、弟クン!

私がどれ程弟クンに恋焦がれていたか、分かっているのか!?」



 美優先生の言葉が胸を抉る……



「お、俺だって……美優先生と本気で結婚したかった……

俺なりに必死に格闘技に取り組んださ。


で、でも、俺はど素人のパイセンを殴って植物状態にしちまったんだ……


格闘家になる資格を失った俺には……」


「弟クンはもう私の事を愛してないのか?

私は今でも弟クンの事が好きで好きで堪らないんだが」



 俺が必死に言葉を搾り出していると、美優先生が悲しげな表情で俺に問いかけて来た……



 俺の気持ちは……美優先生を目の前にした今の俺の気持ちは……



 俺は深く深呼吸をしてから静かに口を開いたのだった……



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