104話 真夏の昼のファンタジー的なラブコメのテンプレ展開が来ましたけど?
「ちぇー、せっかくアメリカに来たのにクソつまんねえでやんの」
桐斗の天才っぷりを堪能した翌日、俺はマリブの別荘で1人不貞腐れていた。
実は桐斗が『探索者ヒーローズ』のアトラクションの魔導具を5体程壊してしまい、その事を施設の偉い感じの人に説明して弁償しようという話しをしている内に周りの客にバレてしまって、『アニバーサル・スタジオ』が偉い騒ぎになってしまったんよなぁ……
桐斗を守りながら何とか『VISITORS』の拠点に戻ったらメアリーがお冠で、俺だけマリブの別荘で謹慎するように言い渡されてしまって今に至るって訳。
確かに俺も悪いよ?
親として桐斗にルールを守って遊ばせなかったのは確かに悪い。
でも、レベリングもしていない3歳児が素手で魔導具を壊すなんて、普通は思わないだろう?
ともあれ、今は昼1時……桐斗は姉貴と義兄さんに連れられてアクアリウムに行っている……彩音はビバリーヒルズでショッピング……雪乃ちゃんはお昼ご飯は一緒に食べたんだが、食べ終わったらそそくさと何処かに行ってしまった……
つまり、このバカデカい別荘に俺一人……厳密にはハウスキーパーのおばちゃん達が10人くらいいるけど、そこまで打ち解けてないから話し相手にもならない……
「ああ…何で謹慎が俺一人なんだよ……連帯責任で桐斗……は可愛いから姉貴達と遊びに行くのは良いか……
せめて、彩音と雪乃ちゃんも謹慎にしろよなぁ……」
俺はバカデカいリビングダイニングで盛大にボヤいた。
誰も俺の言葉に答えてくれる人は居ない……
虚しさに襲われた俺は、せめてアメリカの夏を少しでも感じようと海パンに着替え、マリブの綺麗な海が見えるメインのプールへと移動した。
「はぁ……マリブの海はガチで綺麗だな……
桐斗や雪乃ちゃんとビーチで一緒に遊びたかったゼ……
去年の今頃は『長嶺魔工』の工場の皆んなと湘南に行ったよなぁ……」
マリブの綺麗な海を見ながら、ふと俺は去年の夏の事を思い出した。
桐斗と一緒に砂でお城を作ったり、カケルやタケモトが桐斗の為にゴムボートを用意してくれて、皆んなで楽しく遊んだっけ……
アイツらマジで良いヤツらだったよなぁ。
今でも月2でメシ食い行くけど、タケモトはいつも桐斗の事を気遣ってくれてカケルがオッパブに行きたいとゴネても窘めてくれるし……
あ、そうだ!アイツらと大下工場長に土産を買って行かないと…
いや、今は大下統括部長か……そう言やぁ、カケルも課長、タケモトも係長になったんだよ……
俺は懐かしい前の職場の面々の事を思い出しながら、プールサイドでムエタイの肘打ちの練習を始めた。
コレは何故か海を見るとやってしまう癖のようなモノで、恐らくガキの頃に姉貴に無理矢理ムエタイ合宿に連れて行かれたトラウマが原因になっているんだと思う。
「フンッ!チクショウ!
去年の夏休みはサイコーに楽しかったのに、今年の夏休みは全然楽しくねえぜ!!
フンッ!プールで肘の練習以外する事無いって、罰ゲームみたいな夏休みだゼ!」
「あ、あの…私と一緒の初めての夏休みは……つまらないですか?」
俺が下から上にカチ上げる縦の肘をやっていると、不意に背後から美少女の声がした。
雪乃ちゃんの声だ!
慌てて振り向くと……
そこには真夏のファンタジーが展開されていた……
雪乃ちゃんがメチャクチャセクスィな水着を着て立っているのだ……
うぉぉ!メチャクチャ良い!マジで最高!
「はぅぅ…そ、そんなにマジマジと見られたら恥ずかしいですぅ……
へ、変じゃないですか?」
や、ヤベェ!そんなに頬を赤らめながらの上目遣いなんてされたら、可愛過ぎて俺のあちこちが爆発しちまう!!
「ぜ、全然へ、変なもんか!!
もう、サイコー!!雪乃ちゃんの可愛さがヤバ過ぎて……もう、何だかヤベェゼ!!
今年の夏休みはダントツで史上最高だぜぇっ!!」
「うふふ……喜んで貰えて嬉しいです……
……あの…………オ、オイルとか……
塗ってもらったらダメですか?」
「な、何ぃぃぃい!!」
雪乃ちゃんの可愛らしさ満点の唇からとんでもない言葉が溢れ出た……
真夏のオーシャンビュー……オイル塗り……セクスィな水着……コレは、昔のラブコメ漫画とかでDTの主人公を生殺し状態にして来た定番シチュ……
だが、俺はその辺のDTとは訳が違う。
歴とした一児の父親であり、惚れた女には何処までも紳士だと定評のある真の漢だ!!
俺は雪乃ちゃんの可愛いおねだりを快諾したのだった……
◆◇◆◇◆
「あ、あの、ま、前は自分で塗りますから、後ろだけお願いします……」
「も、勿論そのつもりサ!
前は自分で濡れるけど、後ろは自分では塗りにくいモノな!」
俺が紳士的にプールサイドに柔らかタオルを敷くと、雪乃ちゃんが高級オイルの瓶を差し出してそんな事を言い出した。
当然さ。俺は紳士なのだから。
可憐な清純美少女の雪乃ちゃんのお胸に触れるなんて事は一切しないさ。
俺はうつ伏せの時に苦しくないようにフカフカクッションをセッティングして、雪乃ちゃんに仰向けに寝てもらったのだが……
ヤ、ヤベェ……この子の水着……お尻が紐だゾ……
そう。何と、雪乃ちゃんの水着はお尻がTバックみたいな感じにゴッツリ食い込んでいるのだ……
く、くぅぅ……凄い勢いでモッコリしとる……
こんなけしからん状態を雪乃ちゃんに知られるのはマズい!!
何処までも紳士な俺は変なモノが雪乃ちゃんに当たらないよう、思い切り腰を高くして開脚前屈のような状態で、雪乃ちゃんの美しい頸から肩、背中にかけてオイルを塗り始めた。
や、ヤバ過ぎる……何この柔らかくも弾力のあるしなやかな広背筋……
オイルのヌルヌルも相まって手触りがヤバ過ぎるんですけど……
「んっ……はぅんっ……」
突然、雪乃ちゃんからけしからん感じの吐息が漏れた……
マ、マズイぞ!!このけしからんテイストの吐息は俺の股間に一極集中するタイプの吐息だ!!
さっさとこのミッションを終わらせなくては、最悪爆発してしまうかも知れん!!
「雄貴さん…じょ、上手ですぅ…んっ!
あ、あの……もう少し横の方も……はんっ!
……お、お願いできますか?」
よ、横ですと!?
お、お乳に……横乳に触れてしまう事になりますがっ!?
「あ、ああ……ちょ、ちょっと、む、胸とかに触ってしまったらゴメンね?」
「……だ、大丈夫です……よ、横の方ですし……大好きな雄貴さんに触られるのは……へ、平気ですから……」
クッションに顔を埋めるようにして、雪乃ちゃんは恐ろしく破壊力のある言葉を口にした……
俺は恐る恐る横にはみ出している丸こい横乳さんに触れると……
「あんっ!はぅっ!……
……はぁ……はぁ……」
過去一けしからん声を上げた雪乃ちゃんに、俺の下半身も過去一でけしからん程反応している……
こ、コレはもうリタイアか!?
「んっ……はぅん……はふぅ……
ふぅ……ふぅ……
雄貴さん、下の方もお願い出来ますか?」
し、し、下だと!?
し、下ってお尻とかがある下半身の事だよねっ!?
「い、いや、それは……足とかならアレだけど、お、お、お尻とか……ねぇ?」
「はふぅ……雄貴さん、塗るのとても上手なので……お、お尻とかも……お、お願いしたいですぅ……
ダメですかぁ?」
クッ、雪乃ちゃんは耳まで真っ赤にしている……
俺は何て下衆な男なんだ!?
雪乃ちゃんは相当恥ずかしいだろうに、純粋に綺麗に日焼けをしたいという一心で俺にお願いをしているのだ!!
下心を消し去って、オイルを塗るのがモノホンの漢ってモンだろうが!!
俺は意を決して、深呼吸を一つ入れてから雪乃ちゃんの足の方へと移動した。
クッ!足の方から眺めるヒップの辺りはヤバ過ぎる!!
ダメだ!オイルを塗る事に集中だ!!
「はっ!んっ、あんっ!!
……ら、らめっ!……ふぅんっ……」
グッ……まだだ……雪乃ちゃんのえっちぃ声に気を取られるなっ!!
意識をオイルを塗る脚に集中だっ!!
幸いな事に、この開脚前屈は理想的な体勢だ。
どれだけ下半身がテントを張ろうとも、カチカチになったブツを雪乃ちゃんの清らかなお体に触れさせるような事は無い!
つまりこの開脚前屈こそ、今季一女性に安心して貰える体勢という事!!
後は、俺のマインドがけしからん方向に向かわないように集中力をマックスにするんだ!
オイル塗りへの一極集中だ!!
気持ちを完全に切り替えて暫くすると、雪乃ちゃんのけしからん吐息が耳に入らなくなって来た……
周囲の音……ホームキーパーさんの靴の音だったり、庭の方から聞こえる芝刈り機の音も聞こえなくなって来た……
凄い……コレが一部の超一流格闘家が口にする『ゾーンに入る』という事か……
コレまでのスパーや戦闘でも、ここまで意識が研ぎ澄まされた事は無い……
目の前には美しい曲線と、その狭間に黒い太線がひっそりと佇んでいる……
吸い込まれてしまいそうな黒だ……
あの黒は小宇宙と言っても過言では無い……
近付いて来る……少しずつ……あの黒が……小宇宙が……
ムッ!?小宇宙は単一的な黒では無いようだ……
少しずつ中心部から黒いシミのようなモノが広がっているように見える……
ほんの少しずつではあるが……ジワジワと小宇宙のシミ的なモノが広がっている……
「あんっ!雄貴さんっ!
見ちゃらめぇっ!!
雄貴さんっ!
そんなにお股の所見ちゃらめえっ!!」
俺は雪乃ちゃんの大声で『ゾーン』から抜け出した。
我に返った俺は、目の前の小宇宙が雪乃ちゃんの水着のお股の部分である事に気付いた。
そして……何とも素晴らしい……素晴らしくもけしからん香りがほんのりと鼻腔をくすぐっている事にも気付いた。
「……じゅるり……ゆ、雪乃ちゃんの……けしからん香りがする……」
「いやぁんっ!
恥ずかしい事言わないで下さい!
雄貴さんの触り方がえっちぃから……ふぇぇん……恥ずかしいですぅ……もう、雄貴さんのバカぁ!!」
か、可愛い……メチャクチャ可愛いバカを頂いたんですけど……
は!?しまった!
オイル塗りがまだ途中だったぞ!!
小宇宙に気を取られ過ぎて、肝腎要のヒップと小宇宙付近が手付かずだった!!
完全に正気に立ち返った俺は、慌てて塗り残しがある雪乃ちゃんの芸術的なヒップから、内腿にかけての塗り塗りに取り掛かった。
「あぅんっ……はぁ、はぁ……雄貴さん、ソコらめぇ!!
あんっ!いやんっ、らめっ、気持ちいい!」
「このぉっ!!人の大事な娘になんて事してるんだぁっ!!」
雪乃ちゃんのけしからん声と芸術的なお尻の弾力に脳をやられた瞬間、非常に聞き覚えのある男性の怒声が響いた……
恐る恐る声がした方へ顔を向けると……
「えっ!?あ、パ、パパ!?」
「ヒェッ!き、清川さん!!」
何と、怒りに表情を歪めた雪乃ちゃんのパパ……清川英治さんが立っていたのだった……
ア、アカン……コレ……殺されるヤツや……