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97話 何故か俺がワルモノになってしまったんですけど!?

 


「も、もしかして、ヤツらは『SLAUGHTER』じゃないか?」


 イラっと来た俺が黒装束達の方へ向かおうとすると、近くに居たギルド職員が気になる単語を口にした。

 ボコる前にヤツらの情報を聞いておくか。



「おい、スローターって何だ?」


「あ、ミスター・カミシロ。

『SLAUGHTER』は探索者殺しでレベルを上げた虐殺者共の組織です。

中央に居るのが恐らく、リーダーのセイン・マッケンローJr.。

ヤツは【略奪者】というレアな職業スキルを持っています。

能力は殺した相手の各ステータスの1%を奪う事が出来るスキルです」



 ほう…それは中々ヤバいのではないか?

 最弱のノーマルスライムで各ステータス値が80前後と聞く。

 1体殺せば各ステータス値が0.8上がる訳か……小数点以下がどうなるか分からんけど。



 そんな破格の能力を持ちながら、アイツは探索者殺し(PK)でレベルを上げたという。

 レベリング直後のレベル2の探索者で各ステータス値が平均200前後。まぁ、所持スキルによって筋力値が高かったり、敏捷値が高かったりするので、あくまで平均だけど。

 以降、レベルが1上がる毎に各ステータス値は1〜5上がって行く。

 上昇値もやはりスキルによって筋力が上がりやすかったり、知力が上がりやすかったりする。


 また、レベル100超えボーナス、200超えボーナス、300超えボーナスというのがあるらしく、そこからステータスの上がり方がヤバくなるらしい。



 因みに、レベル11で平均220前後らしいが、俺は何故か平均値が614だった。

 ステータス値の上がり方もレベル100前から異常過ぎて最早笑えない。


 という訳でレベル91になった今、各ステータス値は概ね4000を超えている。

 レベル327のミュイが一番高い敏捷性でスキル補正込みで4300越えと言っていたので、現在敏捷性が4102の俺氏は結構ミュイに近付いたのではないだろうか?



 おっと、今はそれどころじゃない。

 ヤツはつまり、探索者を殺す度にレベルアップの上昇値とは別にステータスが上昇して行くチート能力を持っているという事だ。

 まぁ、ステータスがバカ高いだけのど素人では、宝の持ち腐れも良い所だが。


 情報を得た俺はゆっくりと居並ぶ報道陣の外側を回り込むように移動する。



「おっと、オメェNIKIだよなぁ?

だとしたらコソコソしねえでこっち来いや!

エリクサーはお前かメアリーが持っている事は映像で見て知ってるんだ!」



 うむ。バレバレだったか。

 だが、野郎はドローンのキャメラの範囲外で俺とメアリーが行っていた事までは分かるまい。


 俺はヤツの指示に従って、報道陣をかき分けて黒服集団のボスの元へと向かった。



「おっと、オメェは素早い。

それ以上近付くな!」



『SLAUGHTER』のボスは近付く俺を制止した。

 ヤツとの距離は3メートル。



 馬鹿なヤツだ…



 既に獲物を抜いているヤツと丸腰の俺氏。

 3メートル程度の距離なら、既に魔導具の制限を緩めた俺氏が本気を出せば、ヤツに反応させる事無く接近して瞬殺出来る。

 ヤツの射程である1.5メートルの位置に俺を置いておく方が、まだ0.0001%くらいはヤツの勝機があると言うのに……



 それに、ヤツらは雪乃ちゃんの存在を忘れている。

 彼女もヤツらに怒りを抱いている表情だった。

 俺がコイツらの所に行く時に頷いて見せた事から、雪乃ちゃんなら先ず間違いなく連中をやってくれる。



 ヤツらには大きな奢りがある。



 それは、レベリングした探索者は魔物と同様に銃火器類では有効なダメージを与えられないという事。



 魔物認定されてるみたいで悲しいが、だからこそ連中は遠隔狙撃への警戒心が薄い。

 市街地で魔法なんてぶっ放す訳にはいかんし、弓使いが居ても弓を番える動作で簡単に狙撃を察知出来る。

 まぁ、高位の弓術スキルを持ってるヤツなら気取られる事無く狙撃可能だが、奴らも我々にアーチャーが居ない事は確認済みだろう。



 さて、後は俺がヤツらの気を引くだけだな。



「お前ら何を勘違いしている?

俺は俺を煽ったアメリカの記者連中が大嫌いだ。

そんなババアの記者がどうして人質になると思ったのか理解しかねるな。

ホラ、別に俺は気にしないから、さっさとソイツを好きにしろ」


「はっ!?テ、テメエはスタンピードからコイツらを救う為にダンジョンを攻略したんだろうが!!

ハッタリも大概にしろよ!」



 ククク。人質を取った右端の男が食い付いたゾ!



「何を馬鹿な事を。

俺は提携を結んでいる『S.W.A』が命よりも大事に思っているネバダ州の民間人を助けたかっただけだ。

何処ぞの記者がどうなろうと知ったこっちゃない。

ただ、ソイツを殺った瞬間、お前の手足を引きちぎって目を抉り抜いてやる」



 そう言うと、俺は一気に周囲にガチの殺気を解放する。

 周りの連中が目に見えて怯んだ刹那、俺の横を一筋の光が通過した。



 ボシュンッ!



「グワギャァァアア!!」



 絶妙のタイミングで、雪乃ちゃんのクナイが人質を取っていた男の右肩を吹っ飛ばした。

 俺は即座に記者の女の腕を掴み、既に臨戦体勢を整えているベイツの方にぶん投げる。



「ベイツ!彼女をキャッチしろ!」



 続いて、鋭い踏み込みから棒立ちの雑魚3人の武器を握る腕をワンパンでグシャグシャに砕いて行く。

 耳障りな叫び声を上げて蹲る『SLAUGHTER』の雑魚ども。



 俺は完全なる棒立ちで反応出来ずにいたボスの前に進み出る。



「さて、親玉のお前はどうする?

大人しく武器を捨てて投降すれば、痛い目に遭わなくて済むぞ」


「ウッ!


…クククッ…


ソイツら雑魚どもを屠った程度で図に乗るとは片腹痛いわ!

俺様は超レアスキルによって、全てのステータスが5,000を超えている…」ボシュンッ!「はぎゃぁぁぁぁぁあ!痛えよぉ!超痛えよぉぉ!腕が!腕がぁぁあ!」



 ボスの男が仰々しく口上を述べている最中、雪乃ちゃんのクナイがヤツの右肩を吹き飛ばした。

 ヤツの右腕は剣を握りしめたまま地面に落ちている。

 悲鳴を上げてギャン泣きするボス…先程迄の余裕は何処へやら。



「ククク…コレはお前らがエリクサーだと思った液体だ。

鑑定も何もしてないからエリクサーという保証は何処にも無いが、使ってみるか?」



 俺は水色の輝きを放つ液体が入った豪奢な小瓶を蹲ってギャン泣きするボスの目の前に差し出した。



「うわぁぁぁあん!寄越せぇえい!

ひぐっ!うぐっ!いでぇよぉぉ!」



 ボスは俺から引ったくった小瓶の液体を一気に飲んだ。



「うぶぉえええ!何じゃこりゃぁぁあ!

おぇぇええっ、ゲボッ!ぐぇぇえ!グゼェェェエ!クゾマジイィィィイ!!」



 ククク……ソレは俺のションベンだ……



 キャメラに映らない場所でハイポーションの空瓶に流し込んだモノに、メアリーが偽装魔法をかけたモノだ。


 俺のションベンを一気飲みしたボスはゲロを吐きながらギャン泣きしていたが、肩口からの出血が酷い為、白目を剥いて気絶した。



 ふぅ…実の所、結構緊張していた。


 決まった攻撃パターンしか繰り出さない魔物と違い、人間はフェイントもかけるし、同じ初動から軌道を変えた攻撃もする。

 更にど素人は玄人ではあり得ない体勢から攻撃を仕掛けて来る事がある。

 格闘技であればバランスガタガタの出鱈目な攻撃など貰った所で大したダメージにならんが、レベリングされた探索者はスキルの効果などで、出鱈目な攻撃でも無視出来ない。



『SLAUGHTER』の連中が雪乃ちゃんの投擲にすら気付かないど素人で助かった。

 俺は心底安堵しながら、地面に転がった『SLAUGHTER』の連中の脚をグシャグシャにへし折って、逃げられないようにしたのだった。




◆◇◆◇◆




「キリト、ありがと。

キリトのおかげでお姉ちゃんは助かった」


「むいねぃたんちゅよかったね!しゅぱぁ、しゅぱぁ!らったね!」


「うふふふ…キリト可愛い…」



『SLAUGHTER』の5人をギタギタにしてFBIの探索者犯罪対策何たらいう部署の偉いさんに引き渡した俺達『ガチ勢』と『S.W.A』。

 どうやら

 幸いな事にPPV中継が続いており、言い逃れ不可能な証拠があったので特に面倒な手続きは無く俺らは解放された。

 メアリーの話では『SLAUGHTER』は『ディアブロ』との関連性は無いとされているらしいが、それを含めてFBIとCIAが合同調査をするとの事だ。



 全てが終わった後、ミュイは真っ先に桐斗の所に行き、俺を説得したお礼を伝えた。

 桐斗は自分の偉大さに可愛いくらい無自覚なので、ミュイを手放しで称賛すると、目に涙を溜めたミュイは桐斗を抱きしめた。



 うん。幼児に自分をお姉ちゃんと呼ばせる辺り、やはりミュイからは危険な匂いがする。



 親父として桐斗を守らねば!



「ハイハイ、そこまでね。

ホラ、桐斗。パパとママと一緒にマリブの別荘に戻ろうな」


「いやぁ!ムイねぃたんがまものしゃぱぁちたおはなちきくの!」



 俺は危ない女から愛息を引き離しにきった。しかし、桐斗はミュイに甘えて離れようとしない。

 クソ!この後はチャーターした超セレブ車両に家族で乗り込んで、グランドキャニオンに行こうと思っていたのに!



「騙されたらダメだぞ、桐斗。

ミュイはお前のお姉ちゃんじゃないんだ。パパに18歳の娘なんていないんだぞ?」


「チッ!ユーキウザい!

キリトはミュイの弟。異論は認めない」


「お前の方がウザいんじゃ!

お前なんて桐斗の姉でも何でもねえ!眼帯に猫耳ヘッドホンをしているオタク女が桐斗の姉であってたまるか!!」


「ふぇぇえん!パパぁ、ムイねぃたんをいぢめちゃいやぁぁあ!」



 クッ……桐斗が泣いてしまった…



 俺は正論しか言ってないのに、何故ワルモノ扱いをされなきゃならんのだ……



 結局、俺は見兼ねた様子の雪乃ちゃんに窘められ、俺達のセレブ車両に何故かミュイも乗り込む事になったのだった。



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