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96話 ムカついたんでバックレますけど!? ⑤



チュドォン!ドォォーン!!ドゴーン!!

シュパァァァアン!!



PUGYAAAAAASS!!



 俺が吹き飛ばされた直後、凄まじい炸裂音が連続で響き、続いて斬撃の音、少し遅れてミノタウロスキングの情け無い悲鳴が部屋にこだました。

 ミノタウロスキングの野太い左腕は肘から切断されて、地面に転がっている。



「チッ!大外れだぜ!!

何で、魔法攻撃をするボスが出ねぇかなぁ!?」



 俺はヤツの腕を斬り落として直ぐに距離を取ると、苛立ちを込めてボヤいて見せた。



《ウソぉぉぉお!?》

《信じられねえ!》

《待て!ニキはさっき吹き飛ばされただろ!?》

《ジャパニーズニンジャァァア!!》

《【悲報】ミノキンたん、『ガチ勢』に蹂躙される》

《翻訳班:『ああ、期待外れだ。どうして魔法攻撃を使うボスが出てこないんだ(キリッ』かと思われ》

《イ ケ メ ン 二 キ 最 強 !》

《彩音たんの爆炎魔法と雪乃たんのクナイもヤバ過ぎる……》

《ミノキン君、初っ端からフラフラやんw》

《翻訳班マジで有能!!》

《ミノキンが斧落として斬られた左腕押さえとるの草》

《あ…彩音たんが追撃でミノタウロスの足の親指を吹き飛ばした…》

《これ、マジか!?西アフリカのSランクやSSランクの探索者パーティーが集結してもヤツ一体に蹂躙されたんだぞ!?》

《見たか!コレが日本の至宝『ガチ勢』だ!!》



 うん…コメ欄があっという間にいつもの調子に戻ってる……



 まぁ、近接戦闘の個体は幾らデカかろうが、幾ら速かろうが、正直動き出しが丸分かりなんよなぁ…



 俺が囮になって攻撃を引き受けたら、後は彩音の爆炎魔法を無防備なドタマに、雪乃ちゃんのクナイを体重がかかっている右脚にお見舞いすれば、簡単にバランスが崩れるんよね。

 後は予め衝撃波で飛ばされる角度を計算してジャンプした俺が、一気にヤツのサイドに着地して左腕を切断。



 以上が一連の流れである。



 確かにヤツの耐久力は凄まじい。だが、それだけだ。



ドバシュンッ!!



PIEEENGUMOMOOOO!!!



 俺がミノタウロスキングから距離を取ったタイミングで、彩音の圧縮した『ファイアランス』が右足の親指を吹き飛ばした。


 彩音は俺達のトレーニングに必死に喰らい付いた結果、魔力操作の応用技である魔力の圧縮技術を身に付けた。

 魔法でミノタウロスキングの頭部の破壊は無理でも、今の追撃みたいに手足の指一本を集中すれば、吹き飛ばす事は可能な程破壊力が増している。



 俺は彩音にサムズアップをすると、彩音は満面の笑みで頷いた。



「さて、ちょっと痛め付け過ぎたが……ミュイ!参加して良いぞ!

それとベイツも体力が戻ってるなら戦ってみろ!

『ガチ勢』がサポートに回るから、思う存分に暴れろ!!」



 俺が2人に向かって声をかけると、真っ先にミュイが痛みに苦悶するミノタウロスキングに向かって走り出した。

遅れてベイツも剣を手に走り出す。

 2人の接近を見て慌てて斧を拾おうとするボスだが……今の2人にとっては遅過ぎる……



 ミノタウロスが前屈みになり、下に降ろした右腕を蹴ってミュイが跳躍すると、手に握る短剣でヤツの右眼球を斬り付ける。



BIESYAAAAA!!!



 ミュイは未だ魔力操作まで訓練出来て居ない為、短剣の攻撃ではキングの硬い体表には通らない。

 だが、眼球ならば渾身の一撃で傷付ける事は可能。


 跳躍して得た推力とスピードを抜群のボディコントロールで眼球の一点に乗せ切る辺り、やはり天才としか言いようが無い。


 続いて逆サイドの左側に回り込んだベイツが、剣術スキル【ライトニング・スラッシュ】をキングの左腕の切断面に叩き込む。



BEHIBEHIBEIBEEEEEE!!!



 ん?ホ◯イの歌かな?と思わせる絶叫が、ダンジョンの空気を震わせた。

 傷口の脆さを上手く突いて見せる辺り、流石はSSランク探索者だ。

 ミュイの攻撃に気を取られたキングの意識の隙を突くセンスも素晴らしい。



 後は俺達『ガチ勢』が2人の動きに合わせてキングのヘイトを誘って行けば、完勝出来るだろう。



《ミュイたんと幸薄い系イケメンもかなり強えな》

《合衆国最強ぉぉぉお!!》

《見たか、ジャップ共!コレが『S.W.A』だ!!》

《『ガチ勢』には及ばんけど、『S.W.A』もやるやん》

《幸薄い系イケメンは草w》

《途端に息を吹き返す海外ニキ達》

《もう海外ニキヘイトは良いんじゃね?パイロン大統領も会見でニキに1兆ドル払って謝罪するっつってたし》

《ミュイたんがパンチラしまくったせいで、我が家からティッシュが消えた……》

《流石はSSランクパーティーの前衛だよな》

《イケメンニキが2人は天才っつってたし、ダンジョンマラソンの効果なのか探索序盤の時よりも動きが速く感じる。

この2人は凄えんだな》



 コメ欄に常駐する日本人もヘイトが薄れているようだ。


 そもそも俺が怒った件は『S.W.A』とは関係ないしな。

 彼等とはこれからも良い付き合いを続けたいので、ここは残りのメンバーも持ち上げておこう。



「日本の視聴者も気付いたと思うが、ミュイとベイツはこの僅かな時間でも目に見えて成長した。

他の3人はまだ結果が出るまで時間はかかるだろうが、元凡人だった俺よりも素質が有るのは間違い無い。


後3ヶ月も『ガチ勢』流の訓練を続ければ、『S.W.A』は世界中のSSランクパーティーの中でも頭2つ以上抜きん出た超強豪パーティーになっているだろう」



 俺がキャメラにキメ顔でそう伝えると同時に、ミノタウロスキングが力尽きて地面に倒れた。


 やがて、ヤツの体は端の方から黒いモヤになり、完全に姿が消えた。

 続いて脳内にレベルアップやスキル獲得を告げる声が響く。



「やった……やったぞぉ!!

俺達の手でボスを倒したぞぉぉお!!ベガスの皆んなを守ったぞぉぉお!!」


「ベイツ、うるさい。

ユーキ達がボスを削ってくれなかったら、絶対に倒せてない」



ベイツの喜びの声とミュイの冷静なツッコミ。


だが、そう言うミュイも頬が緩んでいる。

厄災と称されるSSランク強化体を討伐出来て、ミュイが嬉しくない訳が無いのだ。



「おっ、魔石とドロップアイテムじゃん!

何かめちゃくちゃ高級そうな斧と、めちゃくちゃ高級そうなネックレスか……あと、コレは?

ポーションか何かか?」



 金に卑しい俺氏。

 ベガスの人々を守り切った喜びよりも、ドロップアイテムに目が行った。

 その中から、綺麗な水色の輝きを放つ液体が入った小瓶を拾い上げる。



「ユーキ…それを異空間収納に早く仕舞って下さい。

それは恐らくエリクサー。

オークションで一体幾らの値が付くかも分かりません」



 いつの間にか横に立っていたメアリーが、小声で俺に液体の正体を告げて来た。



 奇跡の霊薬エリクサー。

 それはどれだけ瀕死の怪我や不治の病に侵されていても、完全回復した上に寿命が5年伸びるとされている。


 コレまでにドロップしたのは7年前のリバプールダンジョン攻略時の一度だけ。

 その時は高位鑑定スキルを持った人が何人も確認した上でオークションにかけられて、30兆円近くで中東の大富豪が落札したとニュースになっていた。


 確かに生配信で広く知れ渡るとトラブルになりそうだ。

俺はキャメラに映らないように異空間収納に小瓶を入れた。




◆◇◆◇◆




「パパァァ!ママァァ!」



 あの後、他のドロップ品やダンジョンコアを回収した我々は、地上への転移魔法陣でダンジョン入り口へと戻って来た。

 報道陣に一斉に詰め寄られる中、姉貴夫婦と一緒に俺達を迎えに来た桐斗の声が耳に入った。



「桐斗!!」「キィたん!!」



 俺と雪乃ちゃんは報道陣を蹴散らして桐斗の方へ向かうと、姉貴の腕からひったくるように桐斗を抱き締めた。



「パパとママ、ちゅおかった!

いっぱい、いぃっぱいちゅおかった!」


「そうか、そうか!

ああ、桐斗は無限に可愛いなぁぁ!」


「キィたん、ママにも抱っこさせて」



 俺は雪乃ちゃんに桐斗を渡すと、雪乃ちゃんもギュッと桐斗を抱き締める。

 当然、力加減はしっかりと行なっている。


 ダンジョン探索後に桐斗を抱き締めると、無事に帰って来れたのだと心から実感する…

 ハァ…この笑顔を見れて幸せだぜ……ん?




イヤァァァァアア!!!




 嫌な雰囲気を感じ取った直後、報道陣の方から女性の叫び声が聞こえた。


 其方の方に視線を向けると、手にダンジョン用武器を握った黒装束の5人組が立っているでは無いか。



 真ん中のヤツの足元には首から大量に血を流す中年男が倒れており、右端のヤツは中年女性を人質に取っている。

男女はどちらも記者だろう。



「『S.W.A』と『ガチ勢』に告ぐ。

ボス部屋でドロップしたエリクサーを速やかに渡せ。

断ればこの女性記者の命は無い」



 真ん中の男は機械のような音声で、俺達にエリクサーを要求して来た。



 せっかく可愛い桐斗と雪乃ちゃんと家族の時間を楽しんでいたのに、マジでイラつく野郎だな。

 しかも、瑠奈(るな)関係でダンジョン犯罪に対処したばかりだし、もしかしたらアイツらは『ディアブロ』の連中かも知れん。



 俺は黒装束軍団をボコボコにする事に決めたのだった。



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