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9話 探索者登録に来たんですけど!? ④


執筆の活力になるので、ブクマ登録お願いします。


 


 《梢視点》



 雄貴がダンジョンに入っている間、私は可愛いキリたんと受付前エントランスで待っていた。


 直ぐに戻って来るだろうと思っていたけど、雄貴と雪乃ちゃんがダンジョンに入って30分が経ったくらいに、JSAの職員達が慌ただしくなった。

 ダンジョン異常が発生したという職員の喚き声を聞き、言いようのない不安が過ぎる。



「ねぇ、こずえねえたん。パパおしょいねぇ?」


「あ、うん。そ、そうね。

 キリたん、このスマホでヘクターの名シーン見てて良いから、何処にも行かないでここに座ってて。

 お姉ちゃん直ぐに戻って来るから」


「わぁい!ヘッタら!ヘッタら!」



 私は動画を再生させるとキリたんにスマホを渡し、騒然とするカウンターへと向かった。



「済みません!私、今ダンジョンでレベリングしている神城雄貴の姉なんですけど、ダンジョンで何が起きてるんですか!?」


「あ、あの…ど、どうやら、イレギュラーが発生してワーウルフが出現したようなんです」


 受付の女性は困惑した様子で最悪な事態が起きている事を口にした。


「はぁ!?なら、さっさと救援隊を向かわせなさいよ!

 雄貴の息子も来てるのよ!?

 弟に万一の事があったら、あの子は独りぼっちになっちゃうのよ!?」


「ひ、ひぃぃ…ご、ごめんなさい…

 も、勿論、館内の高ランク探索者が直ぐに初心者ダンジョンに向かったのですが…

 その…ダンジョンの構造が変化していて…出入り口が塞がってしまったんです…


 申し訳ありません!

 ですが、高位の魔法職が今出入り口を塞いでいる結界を解除してますから!」



 私は受付の女性の言葉を聞いて、目の前が真っ暗になった。

 ワーウルフは私でも知っているくらい強い魔物だ。

 新人が束になった所で、擦り傷一つ負わせられない。



 雄貴が命を落とすような事が有ったら…桐斗はどうなるの?

 何としても私が引き取りたいけど、普通は親権が母親に移るだろう。

 あの尻軽女に桐斗の面倒を見られる訳がない。




 神様……どうか雄貴を無事に返して下さい……可愛いキリたんから父親を奪わないで下さい……




 ーーーーーーーーーー




「危ないっ!!」



 ガギャッ!!


 俺はワーウルフが雪乃ちゃんに狙いを定めたことを察知して、ヤツが距離を詰めた瞬間に両者の間に割って入った。

 右腕を大振りに振るうワーウルフの前腕の内側に、左腕で持っていた小盾を思い切り叩き付けたんだが…


 流石にワーウルフの膂力が強過ぎて、力が乗り切る前に叩き付けても俺の体勢が崩されてしまっている。



「雪乃ちゃん、早く来た道を戻るんだ!!

 コイツは俺が引きつける!」


「え、あ…そ、そんな…ユーキさんを置いては…」



 俺は背後の雪乃ちゃんに指示を出したが、恐怖で身がすくんでいるのか逃げる気配が無い。

 何とか雪乃ちゃんが逃げる時間だけでも稼がなければ。


 俺がそう考えて体勢を整えたと同時に、ワーウルフが左腕を外に広げた。

 その初動を視界に捉えた瞬間、俺は深めにダッキングしていた。

 直後頭上で凄まじい風切音が鳴り、腕を凪いだ際に発生したっぽい風圧を感じる。

 ポジションは何度も繰り返した通り、ヤツの左脚の外側。

 気付いた時には、片手剣でヤツの前に踏み込んだ左太腿を切り付けていた。



 コイツは恐ろしく強い……が、イメージしていたワーウルフ程では無い……



 ボンヤリと頭にそんな事が浮かんだが、身体はヤツの初動に常に最適に反応している。



 右腕の振り下ろしの初動には左側へ大きくサイドステップ………ヤツは体勢が流れたまま、左腕を大きく横一文字に振るうモーション………ダッキングしつつ前に踏み込み、剣でヤツの脇腹を抉る………右腕が少し下がった………大きくバックステップ………初動が見える………直ぐに反応出来る………


 俺が暫くワーウルフと攻防を繰り広げていると、右腕を大きく弾かれて体勢を崩したワーウルフの背後から、もう1人のCランク探索者が斬り掛かろうと足を踏み出すのが見えた。



「待て!止まれ!」



 俺の声に辛うじて反応して足を止めたCランク探索者。

 直後、彼の目の前をワーウルフの鋭い爪が通過する。

 空振りの風圧だけで後ろに蹌踉めくCランクの彼に、ワーウルフは追撃のモーションに移るが…



 ズシャアアア!!



 俺は最小のモーションで右手に握る片手剣をヤツの背中に向かって振り抜いた。

 その一撃は有効だったようで、ワーウルフの背中を切り裂く事に成功した。コレまでで一番の手応えだ。



 グギャァァァア!!!



 ワーウルフは凶暴な叫び声を上げながら、振り向きざまに左腕を振るう。

 だが、初動のモーションがめちゃくちゃ大き過ぎて容易に反応出来る。俺は格闘のプロ(の練習を行なって来ただけ)なので、そんなテレフォンは貰わない。

 俺は余裕のダッキングでヤツの横凪ぎを躱してみせる。



 魔物は知恵が働かないのか、初動の通りの攻撃しか行わない。

 人間のプロ格闘家のように同じモーションで攻撃の角度を変えたり、フェイントをかけたり、途中で軌道を変えるような芸当は出来ないのだ。


 これまでの攻防で良く理解出来た。

 ワーウルフも身体能力がバカ高いだけで、動きはまるでど素人である。



「ス、スゲエ!!俺らの配信にめちゃくちゃ人が集まってるぜ!

 同接70万を超えたぞ!」

「うお、マジだ!

 あのイケメンさんへの応援コメがヤベエ!!」

「イケメンさん、スパチャがめっちゃ投げられてるっす!!

 振り込まれたら半分お渡しするっす!」



 クソ!『無双三連星』がごちゃごちゃとウルセェ!つーか、テメェらスキルと魔力を得たんだから、テメェらが真っ先に戦えや!



 俺はめちゃくちゃ苛立ちながらも冷静にワーウルフの初動を見極めて、反射的に躱してリターンを見舞う。

 中学の頃から積み重ねたプロ練が確かに役立っている。

 ただ、此方の攻撃は面白いくらいに通るが、ヤツは体表が硬いので魔力もスキルも無い俺では深傷を負わせる事が出来ない。



 クソ、地面が凸凹で上手く脚が面を捉えられない。

 暇があれば舗装されて居ない山道を走ったりもしたが、ダンジョンの地面のゴツゴツした感じはまた独特だ。

 下半身の強い踏み込みを余さずに上半身に繋げる事で、俺たちプロ(の練習を死ぬ程積んだだけ)の本領が発揮されるのだが、感覚を掴むのにまだ暫く時間が必要だ。



 その後も躱してはカウンター、ブロックしては即リターンを繰り返している内に、ヤツの動きに翳りは見えて来た。



 だが………未だに力尽きる様子は無い………



 対して俺の方は、地面を掴む感覚は随分と掴めたものの、あちこちの消耗が大きい。

 常に初動を感知しなくてはならない為、精神的な消耗が激しい上にブロックをする度に小楯を持つ左腕が軋んで、既に感覚が麻痺している。



「…しまっ!」



 ゴキャアア!!!



 麻痺した左腕でのブロックのポイントがズレて、俺は思い切り吹き飛ばされてしまった。



 クッ……左腕は肩からグチャグチャに骨折しちまった……まともに腕を動かせねえ……



「いやぁぁあ!!ユーキさん!!」

「イケメンさん!」

「マズいぞ!」

「イケメンの兄貴ぃ!」

「か、神城さん!」



 周りの声が響く…この中で戦えそうなのはCランク探索者の彼だけか……だが、彼の動きはまるでど素人。

 身体能力は明らかに俺より高いのに、動き出しが遅くてワーウルフの攻撃に反応出来そうにない。




 クソ………初動は見え見えなのに………コイツに蹂躙されるしか無いのか………




 その時、俺の脳裏に桐斗の顔が浮かんだ。

 桐斗が泣き叫ぶ声が聞こえた。




 馬鹿か、俺は!?こんなど素人相手に弱気になって、生きる事を諦めてどうする!?ヤツだって身体中傷だらけじゃねえかよ!!

 親父である俺が、幼い息子を残して死ぬとか有り得ねえだろ!!




 情け無い自分への怒りが脳内を満たした瞬間、俺の身体の奥底から力が溢れて来た。

 左腕は動かせないが、そんな事はお構い無しに俺は立ち上がる。



「ユーキさん!もう無理ですよ!

 どうして戦おうとするんですか!?」

「そっすよ、イケメンの兄貴!

 後は引率の人が何とかしてくれますって!」

「イケメンさん、休んでて下さいよ!」





「うるせぇ!!

 俺は……俺は桐斗の父親だ!!

 どんな強敵が相手だろうが………どんな困難に見舞われようが………俺は屈する訳には行かねえんだ!!


 俺はいつまでも、桐斗が誇れる父親であり続けなきゃならねえんだよぉっ!!」





 俺が力の限り叫ぶと、Cランクの彼と対峙していたクソワーウルフが此方を振り返った。


 もう弱気にならねえぞ…

 良いだけヤツの攻撃に晒されて、タイミングも攻撃の軌道も見切っている……そして、ヤツが右腕の爪の振り下ろしに絶対の自信を持つ事も理解出来た。



 次の一撃に気合いを入れろよ、俺の身体ぁ!!



 俺が構えると同時に野郎が動き出した。

 案の定右腕を振り下ろす初動を取ってやがる……クソど素人め……



 俺はヤツを引き付けてから、一気に大きく左斜め前へと踏み出す。

 大いに空振ったワーウルフの上体は完全に流れてバランスを失い、ついでに俺の姿も見失ってやがる…


 俺は力一杯脚を踏み切り、全身を押し出すようにして片手剣をヤツの野太い首に突き刺した。

 当然、反撃を予測して直ぐにバックステップで距離を空ける。

 剣は野郎の首に刺さったままだが、アレは間違いなく致命傷だ。

 傷口から大量の魔素と瘴気が吹き出している。



 ドス黒い霧のような魔素と瘴気がある程度吹き出した所でワーウルフは倒れて動かなくなった。

 やがて、身体の端々から黒い靄のようなものが立ち登り、遂にはヤツの全身が黒い靄と化して宙に溶け込んでいく。



【神城雄貴のレベルが11になりました】

【初レベルアップボーナスが与えられます】

【初討伐でレベルが10以上上がりましたので、EX職業スキルが与えられます】

【スキル未所持者がBランクダンジョン小ボスの討伐を達成しましたので、神城雄貴には特別補正がかかります】

【特定条件クリアが確認出来ました。神城雄貴にはスキルボーナスが与えられます】



 不意に脳内に無機質な女性の声が響くと、凄まじい力の奔流が俺の全身を駆け巡った。



 な、何だコレ?

 まるで、身体の骨格から作り変えられているような、何というか身体の節々がゴキャゴキャ鳴っている感じがする。

 気付けばグシャグシャだった左腕が無傷の状態になっている。



 つうか、今の俺とんでもねえぞ…さっきのワーウルフくらいなら素手で倒せそうなくらい力がヤベェ…



「ヤベエェェエ!!同接300万キタァァアァァア!!」

「凄えっす!イケメンの兄貴、兄貴へのスパチャがとんでもねえ額になってるっす!!」

「うおお、コメ欄が追い切れねえ!

 何か、感動して泣いたっつうコメントが多いぞ!」



 俺が自分の変化に唖然としていると、『無双三連星』の能天気な大声が響いた。

 そういやぁ、今の戦いって生配信されてたんだっけ。



「神城さん!神城さぁぁあん!」



 一際大きな声がダンジョンの出入り口から響いて来た。

 振り返ると、受付のお姉さんが大きな胸を震わせて駆けてくるでは無いか。



「ハァ…ハァ…ほ、本当にありがとうございました!!

 神城さんのおかげで、新人探索者達も引率の2人も死なずに済みました!!

 息子さんが待ってますので、さぁ、早くダンジョンから出ましょう!」



 お姉さん、めちゃくちゃテンション高いな。

 だが、確かにワーウルフを倒せなかったら全滅していただろうし、JSAの職員としては責任問題なんかの面倒事が避けられて嬉しいんだろう。



「ああ、直ぐにでも桐斗に会いたいんだが、まだレベリングが済んでない人もいるだろう。

 雪乃ちゃんもまだレベリングしてないし」


「わ、私…どういう訳かレベルが6になっちゃいました!

 な、何か女の人の声で色々凄い事を言われて、何か全身が凄い感覚で…何かヤバいです!!」



 お、おおう…雪乃ちゃんが何やら興奮して俺に密着せんばかりの勢いで捲し立てて来る。

 雪乃ちゃんはお胸とかの発達が著しいので、それ以上近付くと色々と宜しくない。



「そ、そうか。そ、それは良かった。

 あ、あとあの2人組は?『キューティーペア』とかいう」


「ああ、彼女達はワーウルフが出た途端ダンジョンから逃げようとしたみたいですが、出入り口が結界で塞がれてしまっていて、出られなかったみたいです。

 何か2人揃って失神してました。

 今、医務室に運びましたので、レベリングは後日になるかと」


 あの子らの姿がないと思ったらそういう事か。

 うん、最初にワーウルフにやられた探索者もポーションを背中の傷口にかけられて担架に乗せられているし、命に別状は無いようだ。



 安心した俺は、テンションの高い受付嬢と雪乃ちゃんと共にダンジョンから脱出するのだった。




ブクマ登録や高評価を下さった方々、本当にありがとうございます!!

取り敢えず主人公が冒険者登録を終えた所まで投稿出来ました。


ブクマ登録頂いた方が少しずつ増えているので、感謝の2話目投稿を18時に致します。

今後も本作を宜しくお願いします!



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