表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/31

第31話:始原の赤龍

 吹きすさぶ吹雪も洞窟の入り口で止まっていた。


 吹き溜まるわずかな雪に始原の赤龍と呼ばれるグラドノルグは自らの運命を悟る。


「長かった――。わらわの望みもこれで」龍の言葉で独り言ちたグラドノルグは洞窟から羽根を広げて舞い上がった。


 夜闇の中の暴風を揺らぎもせずに一気に上昇する。


 目的とする相手は既に予知した場所に辿り着きつつあった。


 グラドノルグは咆哮する――その声に驚いた狼たちが森から飛び出した。


 龍族は夜目が効く、その目に映る狼はグラドノルグを睨むと、遠吠えを上げてその姿を見送った。それを見てグラドノルグは咆哮を返したのだった。


 *   *   *


 グラドノルグが自らの死を悟ったのは一年前の事だった。


 彼女は長い眠りについていた、それをうっすらと破るように予知を見たのだ。


 かつては人間やエルフ、ドワーフたちから財宝を奪い、暴れ回った。


 老いが身体を蝕み、今は集めた宝を守る気力もなく、年月が流れるのをただ機械のように過ごしてきた。


 伴侶にも先立たれ、わずかな子らは龍の世界にずっと留まり、現世には関わろうとしなかった。


 グラドノルグは子供たちとは逆だった――この世界を愛して、最期の時まで留まろうと思っている。


 彼女は他に望むことは無かった。


 予知ではこの世界を混沌の支配する宇宙に書き換えようと、とある女神が目論んでいることを知った。


 それを阻止する力は自分にはもう無かった。


 この世界を護ろうとする者に力を貸すのが精一杯だ。


 せめてもの罪滅ぼしになれば――いや、そうしないといけない。


 自分の望みは潰えるのか、そう思った時、救いは訪れた。


 夢に出てきた人間の男――死神の騎士を見た時、グラドノルグは運命だと感じた。


 混沌をよく思わない死の王ウールム、その配下を助ければ、望みは叶う。


 死神の騎士に個人的に惹かれるものも感じ取ったグラドノルグは、彼の負わされた運命に同情した。


 グラドノルグは死神の騎士に惚れた。年甲斐もなく恋に落ちた――自嘲するように彼女は自分で自分を嗤った。


 死神の騎士に提供できるものなら有る。


 向こうは受け入れざるを得ないはずだ。


 飛竜ワイバーンにも匹敵する速度でグラドノルグは空を駆ける。


 鋭い視力に吹雪の中立ち尽くす黒い甲冑の人影を捉えた。


 速度を緩めると、グラドノルグは着地の体勢を取った。


 夢で見たとおりだ――彼女はその内容を思い出す。


*   *   *


〝始原の赤龍よ――死神の騎士、アトゥーム=オレステスを救え――〟夢うつつの境にいたグラドノルグは彼の姿を見、脳裏に響いた声に最初は幻聴を疑ったが、一瞬でその声の正体を知った。


 龍たちの中には敵対する者もいる、唯一神の言葉だと。


「世界を創るだけ創って、見捨てた神がそれを言うのか?」グラドノルグは夢の中で答えた。


〝私は世界を見捨ててはいない。人間たちが世界を見捨てただけ〟


「なぜわらわが人間に味方せねばならない」


〝そなたの望みを叶える為〟


「わらわに何の望みが有ると――全てを手に入れたこのわらわに」


〝世界を混沌の一柱が狙っている。混沌の女神アリオーシュ。それを倒すのは異世界から召喚される乙女二人。彼女らを救うのが死神の騎士〟


「女二人をわらわが助けるならまだ分かるが、なぜ死神の騎士を――」


〝死神の騎士はアリオーシュ以外に別の戦いをしなければならない。彼は心の病を患っている。斃れればこの世界のみならず龍神界も破滅することになろう〟


「だから何だと。わらわには関わりの無いことだ」


〝死神の騎士の神器アーティファクト


 グラドノルグは自ら集めた財宝の中に神器が有ることを思い出す。


 全身鎧。死神の騎士、ナイトオブデスの鎧だ。


 全てでは無いが、下腕部や太腿などの重要な部品が有った。


「ただで神器をくれてやるほどわらわは慈悲深くは無い」


〝栄誉がそなたの報酬となろう〟


 グラドノルグはその言葉に思わず鼻で笑った。


「交渉決裂だな。神よ」


〝そなたは死神の騎士を救うだろう〟


 その言葉に脅しの色は無かった。ただ事実を指摘しただけだと龍には分かった。だがそれに反感を覚えるかどうかは話が別だ。


「失せろ――全能を気取る似非神が!」グラドノルグの脳は一気に目覚めた。


 暗闇の中、微かに魔法によって光る財宝が自分の視界に入る。


 すっかり眠気が飛んだ龍は死神の騎士の顔を思い出した。


 美形だ――自分が人間なら間違いなく劣情を抱くほどの。


 一瞬彼との情交を思い描きかけたグラドノルグは長い首を振ると馬鹿な考えを追い払った。


 眠り直す気にもなれない――ふとかつて自分を助けてくれた女神にこの件を話してみようと思いついた。


 癒しの女神メルサリアの姉――双子女神にして心を癒す神ネルサリア、人間にはほとんど知られず、かつて神界の争いで落命し、その魂だけが妹の身体に宿った変わり種の女神だった。


 娘が狂気に囚われた時、ネルサリアを頼り、長い闘病の末快癒したのだ。


 死神の騎士が心の病を抱いているならネルサリアに治癒してもらえばいい。


 彼の顔に免じてそれ位はしてやってもいいだろう。


 メルサリアはネルサリアの人格と本来の人格の二重人格神となっていたが、ネルサリアが〝起きて〟いる時でも意識は失わない。


 神を召喚するのは大変等と言う言葉では片づけられないほど困難な魔法になる。


 だが、不可能では無い――グラドノルグはメルサリア/ネルサリアの神器を依り代に始原の龍の言葉で魔法を唱え始めた。


 数時間に及ぶ集中と詠唱を髪の毛一筋ほどの間違いも犯さずやり切った。


 静寂が龍の洞窟を包む。


 グラドノルグは成功に確信を持っていた。


 四分の一刻ほど、何も起きない。しかしグラドノルグは空気が変わったのを感じ取っていた。


 唐突に風が巻き起こった。


 グラドノルグの眼前に白装束に血のように流れる赤い髪の人間の女性、年の頃は20代前半の姿が現れた。胸に紅い薔薇を留め、その瞳も紅かった。


「グラドノルグ――久しいわね。それにしても神を呼びつけようなんて随分と肝が太い」


「人に仕えるのが神の仕事だろう。更に言えばわらわは始原の龍、神に匹敵する存在」


「まさか酒の相手が欲しいから私を呼んだ訳では無いでしょう――貴女ならやりかねないとは思うけど」


「そう言いたいところだが、流石に違う――そなたの姉ネルサリアの力を借りたい」


「貴女がそうまでして助けたい相手なの? また子が狂気に陥ったとか?」


「全知全能神の鼻を明かしてやりたい。死神の騎士は知っているだろう。彼の狂気を癒してやって欲しい」


「ネルサリアを起こすわ。私も陰で聞いてる」メルサリアは目を閉じた――再び目を開けた時、彼女の瞳は白色に輝いていた。


 いつの間にか白装束も紅の装束に代わり、胸の薔薇も白薔薇と化していた。髪さえも真っ白になっている。


 ネルサリアは告げる「グラドノルグ、貴女の願い――思うのとは違う形で叶えられる。死神の騎士を癒すのは貴女自身の力よ。私の力は彼を癒しへと導くけど、思うほど単純にはいかないわ」


 双子神でありながら声には微妙な違いが有る――それを聞き逃すグラドノルグでは無かった。


「癒しの魔法をかけてやるだけで良いのでは無いのか?」


「死神の騎士の病気は彼の運命と密接に結びついてる。それでなくとも心の病は本人の人格と深い関りが有るわ――無暗矢鱈に魔法をかけると自我が破壊されかねない。微妙な匙加減が必要なの」


「面倒な」


「それに彼は病に罹っていないと運命を成就することができない。病を抱えたまま困難に立ち向かう事が宿命なの」


「完治するのは運命を果たして死ぬ時――という訳か。神は慈悲も情けも無いのだな。わらわに喰われて死ぬ方がまだ苦しみは少ないだろう」


「彼が選んだ運命よ」


「そなたら神々は唯一神の肩を持ち過ぎだ。人質を取られている訳でも無かろうに」


「「人質を盾にするような方なら我らはとうの昔に反逆しているわ」」ネルサリアとメルサリアの声が重なった。


 グラドノルグは鼻を鳴らす。


「わらわが、死神の騎士を、助ける?」


「縁も義理もゆかりも無いのに? と言いたいんでしょう」ネルサリアが後を引き取る。


「わざわざ言わなくてもよいことを――だが、助けるに値するかどうかを試すくらいは許されるのだろう」


「彼を救うも救わないも貴女次第よ。試したいだけ試すといいわ」


「良いと言ったな。確かに言質は取ったぞ」赤龍は残忍な笑みを浮かべた。


 グラドノルグは呪文を紡ぎ始めた――。


「「一体何を――」」女神二柱が驚きの声を――抑制されてはいたが――上げた。


「まあ見ておれ――死神の騎士の実力を試す。わらわの召還した英雄に敵わないようでは世界を救う事など出来ぬ」


 呪文が終わり、光が集まる――人の形を取って、ひざまずいて実体化した。

「誰だ――俺を呼ぶのは。これは夢か」先に実体化したのは黒い鎧に両手剣ツヴァイハンダーデスブリンガーを持った死神の騎士、アトゥーム=オレステスだった。


 殆んど同時にもう一人が実体化する。


 北方の戦方士バトリザードの装束に奇怪に湾曲した二支剣を背中に吊るしている。


「俺は死んだはずだ――復活――いや、英雄召喚の魔法か。俺が英雄だなどと信じられんことだが」戦方士は辺りを見回すとグラドノルグに向き合った。


「〝死神の騎士〟アトゥーム=オレステス、それに〝憎悪の戦方士〟コールドゥ=ラグザエル。これから二人には死力を尽くして戦ってもらう」


「戦う――? 何の為に?」死神の騎士アトゥームが呟くように言った。


「勝った方にはわらわの財宝から何でも一つ、好きな物をとらせる。それでも不服か?」


「俺は構わないが、そちらの戦士はまだ寿命は尽きてないと見受ける。もし死んだら財宝など意味は無いだろう」憎悪の戦方士コールドゥが肩をすくめる。


「蘇生魔法はかけてやろう。それで駄目なら死んでくれとしか言えぬ」


 グラドノルグは嘘を言った――アトゥームは影を呼んだに過ぎず、実体はないから死ぬ事は無い、しかし本気の勝負をさせるには命懸けだと思わせる必要が有った。


「結構なことだ――で俺たちは何と戦えばいいんだ」自分を取り戻したアトゥームが聞いた。


「そなたたち同士で戦ってもらう」


 アトゥームはコールドゥの巨大な二支剣に目をやった。


「憎悪の戦方士……コールドゥ=ラグザエル……? 魔都マギスパイトの国際謀略組織、秩序機構オーダーオーガナイゼーションを壊滅させた、<憎悪>の神ラグズの使徒と謳われた、あの伝説の戦方士コールドゥ……!?」アトゥームは信じられないという顔になった。


「俺の望みは叶ったのか。王女たちが助かった事は知っていたが」コールドゥが口を挟む、ただし口調は真剣そのものだった。


「時間が無い。わらわが開始を宣言したら戦いを始めよ――」その言葉と共に二人は転移させられる。女神たちと赤龍が見守る前の広い空間に。


「青年、お互い恨みは無いが――」


「戦わなければ赤龍の怒りを買って黒焦げにはなる、か――」


 二人は皮肉な視線を交わす。


「始めよ!」グラドノルグは吠えた。


 アトゥームは両手剣ツヴァイハンダーデスブリンガーを抜きざまに斬りつけると見せてフェイントをかけた。


 コールドゥは呪文を唱えようとして、アトゥームの余りの速さに唱えきることができなかった。二支剣、その名を憎悪の魔剣イェルブレードと言う――を抜いて受け止めようとする。


 しかしアトゥームの剣はひらりとそれを躱しコールドゥの左籠手を襲う。


 決着が着いた――女神たちにはそう思われた。


 甲高い金属音が響く――コールドゥの左手は自然な人間のそれでは無かった。


 ケロイド――そう呼ぶには余りに幾何学的な火傷の跡が破れた服から覗く――鋼血の悪魔の力を宿した左手は恐るべきデスブリンガーの魔力をも食い止めた。


 アトゥームは舌打ちする。


 身体を反転させ今度は背中に回ろうとする。


 デスブリンガーとイェルブレードが真っ向からぶつかった。


 凄まじい火花が上がる。


 両者とも剣を両手で握り、一歩も引く構えは無い。


 がっきとつばぜり合いになった。


 体格ではコールドゥが劣るが、悪魔を植え付けられた身体は尋常ならざる膂力を瞬発的に発することができた。


 それでもじりじりとアトゥームは押した。


 コールドゥは無詠唱呪文を必死に紡ぐ――このままでは押し切られる。


 左手の悪魔の力を解放する手も有ったが、読まれていたら却って危険を招く。


 アトゥームが自分の事を知っていた以上、使うのは危急の時だけにしかできない。


 デスブリンガーの刃がコールドゥの顔面に迫る。


 あと指一本で刃が届くというところで呪文が完成した。


 コールドゥの姿がいきなり消えた。


 勢い余ったデスブリンガーが足下の岩を叩いた――余りの衝撃にアトゥームは両手剣を取り落としそうになる。


 死神の騎士は痺れる手を庇いながら必死に気配を探った――コールドゥはどこだ――真後ろから殺気が襲ってくる。


 アトゥームは回転しながら膝を折ってしゃがみ、ダガーを投げた。


 殺気の正体は予想通りコールドゥの悪魔だった。


 アトゥームの頭上を掠めて凄まじい速度で通り過ぎる。


 一方コールドゥは暗闇の中飛んで来るダガーを発見するのが遅れた。


 右目――コールドゥの右半身は悪魔の浸食が薄く、従って普通の人間に近かった――にダガーが直撃した。


 激痛にコールドゥは呻く。


 怒りが身体を覆った。悪魔を身体に引き戻す。


 無事な左目がアトゥームを捉えた時は既に遅かった。


 死神の騎士はダガーを投げると同時に膝を一気に伸ばしてダッシュしていたのだ。


 イェルブレードの間合いの内側にアトゥームが居た。


 デスブリンガーはコールドゥの首元に突き付けられている。


「俺の負けだ――やるな、死神の騎士」やれやれというように両手を上げる。イェルブレードが金属音を立てて岩場に転がった。


「満足か? 赤龍に女よ」アトゥームが油断なく彼女らを睨む。


 何の断りもなく勝手に召喚されて戦わされた――アトゥームもコールドゥも共にそのことに憤っていた。


 グラドノルグには予想外の展開だった。死神の騎士と言えどまだ若いアトゥームが伝説の戦方士コールドゥに勝つとは思っていなかった。


 グラドノルグは決定的にアトゥームに興味を持った。


「礼を失した事は謝る。訳有ってそなたの力量を知る必要が有ったのだ。詫びとして死神の騎士の鎧の兜以外の残りを渡す。足りぬなら他にも何なりと持っていけ」


 その言葉にアトゥームは目を丸くした――長年見つからないと思っていた死神の騎士の装備が突然降ってくるように手に入るとは。


「と言うことは、ここは始原の赤龍グラドノルグの住処か――」アトゥームは絶句するように息を止めていた。


 一方コールドゥはメルサリアに右目を治癒されていた。


「俺は当て馬か――王女アナスタシアと直属護衛女騎士カレンが知ったらさぞかし笑うだろうな」


「精いっぱい戦った方を笑う趣味は私にも王女にも女騎士にもありませんわ。しっかりなさって、〝憎悪の戦方士〟」


「それが笑ってるってことなんだが――まあいいか、俺も焼きが回ったという所なんだろう」


 メルサリアが手をかざすと白い光が溢れる――光がコールドゥの右目を覆うともう傷は完治していた。


 恐る恐る右目を開ける――視界は完全に元通りだった。


「あんた、凄腕の治癒術士ヒーラーだな。普通は治癒直後は痒みや視界不良があるもんなんだが」


 メルサリアはただ微笑むだけだった――神と知られない方が良い事も有るものよ――内心そう呟きながら女神は心からの微笑みを浮かべた。


 その笑みに魅了されかかったコールドゥは慌てて視線を逸らす。


 目の前の女性はただの人間とは思えない所が有った――この女は美しすぎる。


 生前ただただ神々に翻弄される人生だったコールドゥは神に対して複雑な思いを抱いていた。


 英雄召喚サモンヒーローの呪文で呼び出されたのでなかったらさっさと退散している所だった。


「席を外して構わないか? 現世の光は俺には眩しすぎる」


「「グラドノルグ、この方にかかった魔法を解いてあげて! 近年稀にみる戦いを行ったのよ!」」メルサリア――とその内に宿るもう一柱ネルサリア――は赤龍に呼び掛けた。


「ごきげんよう。憎悪の戦方士コールドゥ=ラグザエル。また会う時はもっと幸せな状況で会えますように」二柱と一体はコールドゥを見送る。


 死神の騎士も刀礼で戦方士との別れを惜しむ。


 コールドゥの身体を光が包み――そして薄れた。


 戦方士は元の世界に戻る。


 死神の騎士はグラドノルグたちの方に向き直った。


 その時その身体が崩れ出した――影を形作っていた魔素が崩壊を始めたのだ。


「夢か――これは。全て夢だったのか」


「違う――そうでは無い。近い内に証明してみせよう」グラドノルグは必死に叫んだ。


 死神の騎士は何か言いかけたが、それが言葉になる事は無かった。


 憎悪の戦方士と死神の騎士の二人が消えると、全き静寂が辺りを覆った。


「「私たちが顕現していられるのももう終わり――グラドノルグ、貴女に神の祝福が有りますように」」 メルサリアとネルサリアが神々の間で歌われる別れの歌を歌い始めた。


 数分後には二柱も消えた。


 不意に始原の赤龍は自分が、自分だけがこの世に一人だと思い知らされた。


 グラドノルグは孤独を痛感した――そして、自分がそれに耐えられなくなったことを腹立たしく思った。


「アトゥーム、コールドゥ、メルサリア、ネルサリア、忌々しい唯一神――わらわは一人は嫌だ。嫌だ。嫌だ――見捨てないで――お願い――お願いだから」


 応えは無かった――世界最強を謳われ、神に匹敵するとまで謳われた始原の赤龍は暗闇の中、たった独り、ひたすら永遠にすすり泣いているのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ