初配信②
「じゃー俺のことも分かってもらえたことだし、こっからはマシマロ回答していくぞー」
マシマロとは、匿名で質問を投げつけることができるWebサービスで、攻撃的だったりネガティブだったりする文章はAIが自動的に除外してくれる優しいシステムだ。
「これも結構多かったんだよな。『男性ランク教えてください』ってやつ」
マシマロの画面を映しながら話すが、ざっと見た感じでも同じ内容が3桁以上は来ていたと思う。
*コメント*
:セクハラマロやめーや
:いや草
:なんで拾った
:わたし…気になります!
:実際知りたい
:解像度上げていけ
:好き
:軽率に個人情報公開していけ
:無理しないで
「これ俺も知りたいんだけど、家中探しても男性ランクが分かるようなもん無かったんよね」
*コメント*
:は?
:は?
:何言ってんだこいつ
:流れ変わったな
:好き
:男性ランク証明カードとかいうのがあるんじゃないっけ?知らんけど
:15歳の時に検査受けなかった?
:実家に置いてきちゃった?
「いや俺実家とかないんよ」
世界が変わった影響がどの程度あるか分からないが、元々の世界から俺には実家なんてものは無い。
よくある虐待からの施設行きの流れで、ずっと一人で生きてきたからな。
*コメント*
:あっ…
:誠にごめんなさい…
:闇を見せるな
:かわいそう…お姉さんが慰めてあげるね♡
:好き
:だとしたら男性ランク分かんないのがマジならやばくね?
:義務と権利はどうなってるの?
「それなんだけど口座明細とか見てもそれっぽいの無いし、やっぱ俺たぶん検査受けてねーんじゃねえかな?」
*コメント*
:ヤバすぎて草
:草
:検査漏れは大スキャンダルですよ
:他人事なの草
:自分のことだろ?!
:好き
:それ大丈夫なの?犯罪とかにならない?
:検査漏れなら基本的に男性の責にはならないから大丈夫。もし事実なら男性管理局の手落ちの可能性が高い。検査の同行を不当な理由で拒否させない程度の権限を持ちながらそれができていないのだから。
:解説助かる
:迫真の長文で草
「おー解説助かる。検索したら過去にも数件なら同じような事例はあるみたいだね。まあもしかしたら俺が紛失して忘れてるとかの可能性もあるけど、一回管理局に問い合わせてみるわ」
*コメント*
:それがいい
:冷静に対処できて偉い
:好き
:実際このイケメンの遺伝子を管理局が回収できてないなら相当の損失だろ
:草
:ほんとそれ
:義務はともかく本来受け取れていたはずの補助金とかもな
:確かに今までどうやって生活してきたんだ
「じゃあ次の質問いくよー」
…
◇◇◇
「ふぅ…」
なんとか初配信を終えて一息つく。
色々話すコトとか考えてたけど、実際やってみるとリアルタイムで返ってくるコメントを見ながらのほぼアドリブになってしまった。
余計なことまで話しちゃった気もするけど、まあ大きな問題は無いだろう。自己採点は甘めで良い。
「まあ…でも男性ランクの件はマジでどうにかしないとな…」
今日はもう遅いから明日にでも管理局に電話してみるか。