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同時視聴配信

 【同時視聴】「わたしの執事がヤバい」最終話【ハル/???】


*コメント*

:待機

:待機

:この一週間が長かった…

:引きでケンカしたまま終わると一週間気が気じゃなくなる弱いオタクが私です…

:どうせ仲直りしてイチャラブするんだから安心よ

:ネタバレやめてください!

:今気づいたけど配信タイトルの"???"ってゲスト?

:最終話でゲスト……まさか!?

:知っているのか雷電

:わからん

:はやくきて…♡

:まだー?


 「こんはるー! みんなの執事系配信者のハルとー……」


 「こ、こんはる…Starlight Angels所属、アイドル兼女優の宮本美玖です、よろしくお願いします」


*コメント*

:こんはるー

:こん!

:待ってた♡

:今日も執事服で助かる

:と?

:と?

:きちゃああああああ

:うわあああああああああ

:みっくじゃん

:あ゛……

:二人とも本番衣装!?

:主役二人と最終話同時視聴とか豪華すぎん

:控えめに言って最高

:…いつの間にハル様の自宅に招く仲になってたの?

:ドラマの枠を越えたリアルでの恋…あると思います

:どんな感情でドラマ見たらいいんだよ!


 「いやー、美玖がどうしても今日の配信一緒にやりたいって言うからさ、連れて来ちゃったよ」


 「言ってないわよ! あなたが来て欲しいって言うからでしょ!」


*コメント*

:お?

:うーん、これはハル様がダウト

:なんだケンカか? いいぞもっとやれ

:ドラマでもリアルでもケンカしてどうするw

:むしろただならない関係性を感じる…

:"あなた"ねぇ(ニチャア

:脳が破壊される音が聞こえました

:なんだろう、この敗北感は…

:衣装も相まって麗華と隼人に見えてきた


 「じゃあそろそろ始まるからみんなもテレビつけてねー」


*コメント*

:おけ

:はーい

:もうつけてる

:!?

:イヤホンシェア!?

:なにやってんだwww

:おいいつものワイヤレスイヤホンはどうした

:ぐぬぬ…

:見せつけやがってよォ…!

:よく見たら空いた耳にワイヤレス付けてて草

:意味のないシェアだよ……

:こいつら…リスナーを煽るためだけに…!

:ガキが…舐めてると潰すぞ…


 リスナーをおちょくって遊んでいるとドラマが始まった。


 前話では麗華お嬢様と執事の隼人がケンカ……というよりは、麗華が一方的に距離を取って避け始めたところで終わっていて、その続きからということになる。

 どんな命令にも唯々諾々と従う隼人に対して、何故かと尋ねてみれば、返されたのは「そういう雇用契約だから」とすげない言葉。


 これは隼人なりの照れ隠しも含まれているのだが、俺も演じながらもっと他に言い方があるだろと思ってしまった。


 それまでの殆ど毎話でイチャイチャしたりして、これで付き合ってないってのは無理があるだろ感を出していたところから一転すれ違いでは、視聴者をやきもきさせても仕方ないだろう。


*コメント*

:早く仲直りしてくれ

:私…苦しいよ…

:お前らはイチャイチャだけしてろよ!

:それでも…隼人ならなんとかしてくれる!


 そう、我らが隼人くんならやってくれる。


 いつもなら事ある毎に命令を出してくるお嬢様から命令がない、それどころか部屋からも退室するように言われた隼人は困惑する。


 『なぁ、なに怒ってんだ?』


 それが主人に対する口の聞き方かよと突っ込みたくなるが、まぁフィクション世界ならよくあることだ。


 『別に……ただの雇用契約上の関係のあなたには、関係ないでしょ』


 「うーん、お嬢様分かりやすすぎる」


*コメント*

:草

:それな

:言われてみればw

:遠回しに説明してくれるお嬢様


 当然隼人も自身の失言が原因だと気付く。


 『あれは……その…最初は、命令を聞くのは確かに仕事だからと思ってやってたけど……それだけとは言ってないだろう』


 『じゃあ他に何があるのよ』


 麗華に詰められた隼人は、言葉に詰まりながらも顔を背け、お前のためだとぶっきらぼうに言い放った。


 だがしかしこれでめでたく仲直り……とはいかず、気持ちがネガティブになっていたお嬢様は素直になれない。


 『なによ……同情か何かのつもり?』


 いくら違うと隼人が否定しても言葉は届かず、麗華の自身を卑下する言葉は止まらない。抑えてきた劣等感が溢れ出した。


*コメント*

:ネガネガ……

:まぁこれは境遇考えたらしゃーない

:介助なしじゃまともに生活すらできない頃があったんだもんなあ

:人の優しさが同情としか受け取れないんだ

:お嬢様に悲しい過去…


 『──違う、同情なんかじゃない。そもそも俺は…むしろお前を羨ましいと思っていた』


 そう、隼人から見れば麗華は自分に無いものを全部持っていた。同情なんかするわけがない。麗華の心に打ち込まれた楔を一つずつ引き抜くように言葉を重ねていく。


 『でも…私は…私なんかが、次の当主として認められるわけが──』


 ここからが、例のシーン……美玖と二人で練習を重ねたあのシーンが始まる。


 なおもネガティブな言葉を繰り返す麗華に隼人が迫った。壁際から逃がさないように手をついて顔を近づける。


 『もし、麗華がまだ不安だって言うなら…俺が守るよ』


*コメント*

:壁ドンきたああああああ

:あ……♡

:麗華視点のカメラえっぐ

:ひゃあああああああ

:ハル様にこんなこと言われたら秒で堕ちるわ

:オラオラ系執事…しゅき♡

:なぁ、この後って……

:まさかするのか!?


 そう、ここからが本番のキスシーンだ。

 隼人が執事としてではなく、一人の男としての覚悟を示す場面……現実ではそうそう有ることではない男の側からのキス。


 二人の唇が重なった。


*コメント*

:うわあああああああああああ

:ぎゃぁぁぁぁあああああ……

:マ? これマ?

:本当にやりやがった!

:エッッッッッッッッッッッッ

:えっろいキスするなぁ

:おい麗華そこ代われ

:はぁ…はぁ…♡

:ガチでやってるじゃんこれ

:いいなぁ いいなぁ いいなぁ

:いやキス長くね?

:いつまでやってんだ!

:原作再現◎

:もうこれは麗華が襲ってる絵面なのよ


 自分のキスシーン…それも隣には相手役の美玖がいる中で視聴しているのは、さすがに羞恥心がある。


 チラリと美玖の方を伺えば彼女もまた頬を薄く染めてはいるが、真剣に画面に見入っているようだった。


 なんとなくちょっかいを掛けたくなって、配信画面に映らない下の方で美玖の手を握ってみると、一瞬驚いたようにビクっと跳ねたが握り返してくれた。

 画面の下でリスナーに隠れて手を握り合うなんて、たったそれだけのことなのに、妙な背徳感とスリルを覚えて高揚する。


 そうこうしてるうちにドラマではキスシーンからのエンドロールとエンディングの主題歌が終わるところだった。


*コメント*

:よかった

:最高だったわ

:まだキスシーンが頭から離れない

:いつの間にかテレビが涎まみれになってた

:あれ? 時間ちょっと余ってね?

:まさかCパートか!?


 テレビ画面には、差し込む朝日に身を起こす麗華とその横で眠る隼人の姿があった。


 原作にはない、いわゆる朝チュンのシーンである。


*コメント*

:ファッ!?!?

:エッッッッッッッッッッ

:見え…見え…ねえ!

:朝チュン!?

:聞いてねえぞ!?

:これシーツの下のハルくん裸なの?

:えっちだ…

:地上波でやって大丈夫なのこれw

:キスとかいう爆弾の後に核爆弾はいかんでしょ


 特にセリフは無く、眠る隼人を見て穏やかに微笑む麗華のカットで暗転して終わる。


 「はい、じゃあこれで本当に終わりだね。いやーよかったね最終話……これまでの撮影の話とか感想とか、色々語りたい事はあるけどそれは次の配信でやろうかな」


 「私も、今日は呼んでくれてありがと。視聴者の生の声を聞きながら自分の出演作を見たのは初めてだけど、色々勉強になった」


 「じゃあ、そういうわけで! おつはるー」

 「お、おつはる…」


*コメント*

:待って

:行かないで

:感想配信にもみっく呼んで欲しいな

:みっくもお疲れ様!

:感想配信楽しみ

:おつはるー

:おつはる!

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― 新着の感想 ―
[一言] 誰かに隠れながら手を握る、そんな青春を送ってみたかった話だった...
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