伯亜とデート
今日は先日の約束通り伯亜とデートをすることになっている。
こないだの翔子ちゃんとの時は、初デートだというのに行くところまで行ってしまったが、普通はそうそうそんなことはないだろう。
もう少し段階を踏んで…と思いつつも、なんとなくだが今回も同じようなことになりそうな予感もしている。
まあ結局のところ自分も含めて人間の感情は水物であるし、なるようにしかならないかと思い直す。
そんなことを考えながら伯亜を待っていた。
出会ってからというもの、彼女とはほぼ毎日のように顔を合わせており、特に起業してからは一緒に過ごす時間も更に増えていて、いつも助けられている。
だが昨日は丸一日会っておらず、どこか物足りなさを感じていた。と言うのも、翔子ちゃんに改造計画と称されて伯亜が連れ回されていたからだ。
俺としてはいつものジャージ姿もそれはそれで地味子属性として嫌いではなかったが、さすがにデートくらいお洒落しなさいということだったようだ。
「おっ、おまたせっ! ハルくん!」
その声に振り向くと、とびっきりの美少女がそこにいた。
……誰?
と思いたくなるのも無理はない。さすがに声やしぐさで伯亜と分かるが、その変わりように驚いた。
野暮ったかった髪は整えられ、無造作に両目にかかっていた前髪も、精々片目の端にかかる程度のアクセントとして残されているくらいだ。
いつもの眼鏡もコンタクトに変えて、薄くメイクも施されており見違えている。
綺麗だ……だがあえて言いたい、俺はメガネ萌え派なんだと。それを外すなんて、もったいない。
たまに漫画やドラマなんかで、メガネを外して美人に変身!みたいな演出があるが俺としてはむしろ逆。
裸眼かと思ってたあの子が、実は自宅では眼鏡っ子だったと分かった時にむしろグッとくる…!
それはともかく服装もいつものジャージではなく、いわゆる地雷系に近い清楚にフリルを少し足し算したような格好だ。
ガーリーな服装を好む翔子ちゃんのプロデュースならこうなるかと謎の納得をしつつも、オタクちゃんのオシャレが清楚地雷系と言うのはツボを心得てるなぁなんてアホな考えも浮かぶ。
「どうですかね…翔子は似合ってるって言ってくれたんですけど…」
「あーごめん、ちょっとびっくりしてた。すごく似合ってると思うよ、ホントにかわいい」
って言うか翔子ちゃんの呼び方も以前と変わってるんだなと、二人が以前より仲良くなってると分かる些細な変化も嬉しい。
それはそれとして、いつものメガネ姿も好きだとさり気なく伝えてみると、実際コンタクトはまだ慣れていないらしくメガネも持ってきているようだ。
途中でメガネに変えるのもそれはそれで二度おいしくていいね。
「じゃあそろそろ行こっか」
並んで歩き出すと、俺の腕を取って横に並ぶ伯亜。
あからさまに慣れていない様子で、へっぴり腰で腕にしがみついているようにも見えるその姿に少し笑ってしまいそうになったけど、腕を組むように動かしてあげると、まだ少し堅いながらもまともに歩けるようになった。
しかし腕を組むと、何とは言わないが結構デカい。
女性特有のサイズにはあまり詳しくないからはっきりとは分からないがEはあるんじゃないだろうか。
その柔らかな感触に翻弄されながらも最寄の駅へと向かう。今日は電車で秋葉原まで移動するつもりだ。
先だって伯亜にデートはどこに行きたいかと聞けば、ゲーセンなんて言い出したので、さすがに一日ゲーセンはキツいと思い秋葉原デートを提案したのだ。
電車に乗ることに少し不安はあったが、時間帯的にそこまで満員ということもなく、この間の配信でプライベートではそっとしておいてと言ったこともあり、大きなトラブルは無かった。
ファンの民度が良くて助かる。
「よーし着いたね、じゃあ今日は楽しもうか! まずはどこか行きたいところある?」
駅を出て、伯亜に尋ねてみるとノータイムで返ってくる。
「ネカフェ! こっ、個室のとこ!」
いや……ゲーセン行きたかったんじゃねーの?




