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招いた客と招かれざる客と


 今日は夕方頃に男装系配信者のショータくんとオフコラボをする約束をしており朝から到着を待っている。

 やるのはオンライン通信もできるゲームなんだからわざわざオフじゃなくてもと思うかもしれないが、家が割と近いこともありせっかくだし呼んでみた。


 狩りゲーってのは、一人で黙々とやるのも俺は割と好きなんだが、やっぱりその醍醐味はマルチプレイだろう。

 久々にわいわいゲームができると思うと今から楽しみだ。


 ─ピンポーン


 お、来たか。

 足早に玄関へ向かいドアを開ける。

 

 「あっ、ハルくん! えへ、えへへ、2つ隣の部屋に引っ越してきました、伯亜です。あの、これ、お土産とかも持ってきてて──いぃっ、イタイイタイ」


 招かれざる客に呆然としていると、現れたセツナに腕を捻りあげられていた。


 「あー、セツナ。…一応客人らしいから離してあげて」


 「はい、すみません。少々この女から邪気を感じましたので警告を」


 邪気って…まぁなんか発してそうではあるが。

 この間ビデオ通話した時には上げていた前髪も今日は下ろしているようでだいぶ目が隠れているし、怪しさも5割増しくらいだ。

 というか、この子俺のファンムーブしてた割に推しにジャージで会いにきちゃうのか。


 その残念具合に毒気を抜かれてとりあえずリビングに上げることにする。


 持ってきたお土産はある意味引越し挨拶の定番、お蕎麦のようだ。

 お茶を淹れてしばし歓談。今回はセツナも最初から姿を現したので三人でテーブルにかける。


 「そ、それにしてもハルくんの護衛って二条家のセツナさんだったんですね。わたし安心しました」


 伯亜はセツナのことを知っていたようで、セツナを褒めちぎっていた。曰く人類最強だとか、裏社会でその名を恐れぬ者はいないだとか…キミ裏社会にも詳しいの?


 なんて話していると再びチャイムが。


 ─ピンポーン


 こんどこそ来たか、と玄関へ向かうと全員ついてくる。


 「あ、こんにちは。ボク…えっと…あの、ショータこと、橘花翔子です。はじめまして…」


 おぉ、驚いた。


 ショータくんこと翔子ちゃんは普段の配信とは雰囲気が全然違った。

 ブラウスにチェックワンピを合わせた、いかにもガーリーなコーデは元々身長が低めな翔子ちゃんの少女らしさを際立てている。


 「あぁ、ごめんね。かわいらしい格好でちょっと驚いたけど、よく似合ってるね。…えーと、俺がハルこと高梨春樹ね、よろしく。んで、こっちが護衛のセツナと、ご近所さんの伯亜」


 手早く挨拶を済ませてリビングに招き入れる。

 時間もちょうどよかったので、伯亜の持ってきたお蕎麦を四人で食べてお昼ご飯にする。


 意外にも翔子ちゃんはセツナだけでなく、伯亜のことも知っていた。セツナは伯亜を知らなかったようだが、話によると、かつて話題になったが行方をくらませた天才IT少女だとか。


 マジかよ。


 まぁ、確かに俺には想像もつかない方法で個人情報を握ってきたりしたのだから然もありなんとも言えるが。


 「じゃあ、さっそく配信の準備して段取りのすり合わせとかしよっか」


 「あっ、あの! わたしにも手伝わせてください」


 配信機材とかツールには俺も詳しいわけではないので伯亜の手伝いに許可を出してみれば、なるほど天才というのも頷けた。

 今日やるゲームは、マルチプレイではそれぞれのプレイ画面が必要になるが、配信の画面はひとつだけ。

 そこで、伯亜はこの場に持ち込んだノートPCを接続してプログラミングを始め、画面制御プログラムを1時間も掛からずに開発した。

 ボタン一つの手動での切り替えに加えて、プレイヤーの音声にも反応して、配信画面に映すプレイ画面を切り替えることができる優れもの。


 「いや、素直に凄いわ。ありがとな伯亜」


 「ボクからも、ありがとうございます。…春樹さんの周りは凄い人ばかり集まっていますね」


 「い、いやー、そ、それほどでも無いです…もう少し時間があればAIも組み込んで画面のプレイヤーの動きに反応してとかも出来たんですけどね、AIの学習データも取らなきゃいけないし、今回は突貫だったので──」


 自分の得意分野は澱みなくペラペラ喋るよなこいつ…。


 「そういえば伯亜はこのゲームやったことあんの? 配信まで時間あるし、ちょっとみんなで遊んでみる?」


 「やります!」


 食い気味に答えた伯亜に聞いてみれば結構なガチプレイヤーで、逆にセツナはゲーム自体やったことない完全初心者とのことだったが、持ち前の観察力と上達速度でみるみる腕を上げ、四人でのゲームをしばらく楽しんだ。


 「いやー、やっぱマルチは楽しいわ。無限に遊べる。また配信関係なくてもこのメンツで遊びてーな」


 「わ、わたしも殆どソロ専だったので凄く楽しかったです! い、いつでも誘ってください絶対きます」


 「ボクはたまに同じ配信者の友達ともやるけど、今日は久々にガチれて楽しかったよ」


 「私はゲーム自体初めてでしたが、皆様のおかげで楽しめました」


 うんうん、なんだかんだでみんな仲良くなれて良きかな。


 「じゃあ、そろそろ配信始めるから、伯亜とセツナはまた後でな。たぶん今日も葵ちゃんくるから配信終わったらみんなで夕飯にしようか」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 出てくる登場人物にヤバい奴はいてもイヤな奴がいなくて読みやすい [気になる点] 本当に純粋な興味で聞くので気を悪くしないで欲しいんてすが、この26話がすごいデジャビュが起きたので聞いてみる…
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