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二日酔い

 「あ゛ぁー、頭いてー…」


 ってかむしろ全身痛いわ。

 普通に配信部屋のゲーミングチェアで寝てしまった。

 やっぱ酒弱いな俺、しばらく飲まなくていいわ…


 記憶は割と普通にあるけど、だいぶやらかしてる気がする。


 RAINに目を落とすと、送られている動画。

 憂鬱になりながらも再生ボタンを押すと蘇る昨晩の己の醜態。


 いやマジで何やってんだ俺…


 どう考えてもヤンデレストーカー風味のクソヤバ女が同じマンションに引越してくるらしいが、どっちかというと自分の醜態をシラフで後から動画で見てる羞恥の方がキツい。


 とはいえ実際彼女が俺の複数ある性癖の一つにクリティカルヒットしてるのは事実だ。


 もらった動画の転倒シーンで一時停止。

 ぽんこつ女子のえっちなハプニングっていいよね…なんかこう…ちんちんがイライラしてくるっていうか。


 顔立ちもかわいいし、ストーカーでもギリ許すわ。


 まぁ…なんとかなるだろ! 切り替えていこ!


 起きた問題は早々にぶん投げて、酒も抜けてないし今日はだらだら過ごすかなと思っていると、セツナから声がかかった。


 「春樹様、朝食の準備ができました」


 リビングに向かうと、どうやらセツナが一人で朝食を用意してくれたらしい。


 ご飯と味噌汁と焼き魚、ほうれん草の胡麻和え。

 根が小市民の俺としてはこれくらいの朝食が一番ホッとする。


 焼き魚は切り身を焼いただけだし、胡麻和えは俺が昨日作ってタッパーで保管していたものだから、そこまで難易度の高いメニューでは無いが、初めて一人で全てやってくれたことがとても嬉しい。


 最初は見て覚えようとしていたらしいが、最近は一緒に作るようになって色々と口頭でも教えているのでみるみる上達している。


 「セツナ、ありがとう」


 感謝を伝えるとほんのり顔を赤くして目を逸らす。

 

 「あぁ〜、味噌汁超うめえな、沁みるわ」


 二日酔いの朝には味噌汁が鉄板だよな、マジで。

 なんかシジミとか入ってるけど家に無かったような…と聞いてみれば、昨晩俺が配信で酒を飲んでいたことから、階下の待機部隊の一人に頼んで朝一で買ってきてもらったということだった。


 気を利かしてくれて有り難いけど、それは護衛業務に入っているんだろうか…


 「っていうか、セツナも配信見てくれてるんだね」


 「はい、当然です。護衛のためにも情報収集は必要ですので。…案の定妙な女に絡まれていましたが、見るからに素人。あの程度の女、私にかかれば赤子の手を捻るようなものです。ご安心を」


 …え? 配信後のあれも見られてんの?

 配信中は入らないように…って、いや配信後か。

 でも普通に部屋に入ってきたら気づくような…


 「人と会っている時は隠形を使って良いということだったので」


 あ、画面越しのビデオ通話でも人と会ってる判定なのね…

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