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地上波デビュー


 「セツナ、今日も外出するから護衛よろしくね」


 「ハッ! 畏まりました!」


 うん、こないだはなんだか落ち込んでいたみたいだけど、吹っ切れたみたいで良かった。

 役に立てなくて落ち込むなんて、なんというか忠犬みたいなやつだなと思ったけど、今のところ刺客を送られたりすることもなく平和に過ごしているのだから、ずっとこのままでいいだろう。

 そんな血生臭い活躍なんかよりも、料理の手伝いでもしてくれた方が嬉しいし。


◇◇◇


 今日は、日昇テレビ─通称日テレ─のお昼の情報バラエティ番組『女王のランチ』に出演予定となっている。


 涼子さんの部下の滝沢さんから電話で聞かされた時は、地上波デビューが生放送だなんてさすがに不安だと話したが、事前に質問台本を渡されての15分程度のインタビューと、ちょっとしたミニゲーム一本だけということだったので、それくらいならなんとかなるかと安請け合いしてしまった。


 出番まで10分──


 スタジオのセット脇で待機しているが緊張で心臓の鼓動が高まっていく。


 質問台本にも一通り目を通して受け答えは考えてあるが、きっちり答えることばかりを意識するよりかは自然に振る舞うことが重要かと考え、今は台本をスタッフに預けて落ち着くように目を閉じて深く深く呼吸を繰り返していく。


 「ハルさんそろそろ出番です」


 スタッフに小声で促されて目を開くと同時にMCの声が響いた。


 「はい、じゃあここまでの経緯は皆さん充分理解してもらえたと思いますのでね、後は直接本人から聞いちゃいましょう! そうです! 今日は張本人の方をお呼びしてます! もう皆さん待ちきれませんよね! どうぞー! 今最も日本で注目されてる男性の…ハルさんでーす!」


 出演者もスタッフも、観覧客もみな狂ったような大歓声と拍手で迎えてくれる中を笑顔で歩く。


 もう緊張は消えていた。


 用意された席につき改めて自己紹介をすると、出演陣から好意的なリアクションを頂き、MCからさっそく質問を振られる。


 「今回地上波では初のお顔出しかと思いますが、この番組にご出演頂けたきっかけとかあれば、教えて頂けますか?」


 「あー、もちろん僕もこの番組は好きでよく見させて頂いてますが、出演のきっかけと言うことであれば、お世話になっている管理局の職員さんからのご紹介ですね。この番組のスタッフにご友人がいらっしゃるそうで、信頼できると言っていました」


 ちなみに一人称は普段の配信では"俺"でタメ口にしているが、自分のホームじゃないので多少は丁寧に見えるように"僕"に変えている。


 「おぉ! スタッフ誰!? 大金星やん! ちょっと日テレの社長、そのスタッフに特別ボーナスあげたって!」


 さっそく芸人さんが拾って盛り上げてくれる。


 「番組を見て頂いてるのも嬉しいですね! ハルさんも見てる『女王のランチ』をよろしくお願いしまーす! じゃあ次の質問ですが、今yourtube上で配信活動をされているそうですが、これを始められたきっかけがあれば教えてください」


 「そうですね、建前から言うとリスナーの皆さんに楽しんで欲しいとか、笑顔になってもらえたら嬉しいなとか…そんな感じですかね」


 「それ建前て言うてもうてええの?! じゃあ本音は?」


 「本音は…ほら、僕ってイケメンじゃないですか。だからみんなチヤホヤしてくれるかなぁ〜って」


 「理由薄っすいなぁ! え? そんな感じで始めちゃってこんなコトなってんの?! そんなんナンボでもチヤホヤするに決まってるやん!」


 「どんな理由であれハルさんがそうやって表に出て活動してくれるのは、ファンに取っては嬉しいことですよね」


 今回、事前に男性だからと気を使わずにイジってもらって構わないと伝えておいたおかげもあってか、多少の気遣いは感じながらも話しやすい雰囲気だ。


 それからいくつかの質問に答えた後、ミニゲームに移った。

 ミニゲームの内容は、俺がSNSにムキムキの写真を上げていたこともあり、そのフィジカルが本物かどうかを出演陣と腕相撲で対決しようというものだった。


 せっかくだし多少は盛り上がるように色々やってみるか。


 一戦目


 「手、お綺麗ですね。なんだか僕もドキドキしてきましたよ。…はい、僕の勝ちです。」


 MCをしていたアナウンサーに、開始と同時に囁いてみると、真っ赤になってふにゃふにゃになってしまったのであっさりと勝利。


 二戦目


 「わぁ、手小さくてかわいいですね。両手使っても良いですよ。…はい、僕の勝ちです。…っと、大丈夫ですか?」


 ゲスト枠のアイドルさん、現役高校生らしく本当に手が小さかったので両手を使ってもらったところ、負けた拍子によろけてしまったので支えてあげると、爆発するような大歓声が上がってびっくりしてしまった。


 三戦目


 「あれ? もう始まってますよ? 力入れないんですか? えっ!? これで全力なんですか!? …じゃあ、はい。すみません僕の勝ちですね。なんで負けたか明日まで考えておいてください。」


 フィジカルに自信があるらしい芸人さんが相手だったので煽ってみたところ、しっかりノって大袈裟に悔しがってくれる。


 その後も数人相手にしたが無事全勝で終えることができた。


 「では、特別ゲストのハルさんありがとうございましたー! 私もう一生手洗わないです! よかったらまた来てくださいねー!」


 拍手と共に捌けると、滝沢さんの友人らしい、番組ディレクターからお礼を受けた。


 「ハルくん、今日はほんっとにありがとね! 反響もすごいことになってるし、もし今後もテレビの仕事とか興味あったらいつでも連絡して!」


 名刺を受け取って考える。


 自分に合ってるのは、家で自由にやれる配信の方なのは間違い無いけど、たまにはこういうのも新鮮で楽しいと思う。


 一仕事終えてちょっとフワフワした頭でそんなことを考えながら帰路についた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 知名度アップで良いですね〜 そういえば、女王って言葉は無くなりそうですよね 男王って言葉が誕生しそうだ
[一言]  この作品読んでると、貞操逆転世界からの転移者が居ないのに貞操逆転世界が浸透してるこの世界のエロ偏差値がめちゃくちゃ高い気がしてきますね。掲示板の人の書き方が上手いんだと思います。  誰が最…
[一言] これ、ハル君と触れあったタレントさん達同業の全員から恨み買いそうw 情報バラエティで肉体派タレントってなんだか昔の永井大のイメージが重なるw
感想一覧
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