プロローグ
宝くじが当たったら会社を辞める。
誰しも一度は考えたことがあるのでは無いだろうか。
そして俺はそれを叶えた。
一等12億円。完全非課税。
誰にも悟られぬよう、みっちり1ヶ月かけて仕事の引き継ぎをし、惜しまれながらも会社を無事退職。
業界的にも転職は珍しいことでも無いし、トラブル無く円満退職できたと思う。
その間もせっせと新しい住居の準備を進めていた。
都内の高層マンション最上階、独身男性には広すぎる8LDKとかいうアホみたいな広さ。
撮影用のキッチンスタジオ並みの広さのオープンキッチン。
泳げるレベルのバカ広い風呂にはサウナもついている。
寝室にはキングサイズのベッド。
有り余る部屋は、トレーニングルーム、ゲーム部屋、シアタールーム、完全防音の配信部屋など、これからの仕事の無い日々を全力で楽しむために整えた。
今日、ようやく俺は引っ越しや手続きの全てを終わらせて、明日からは仕事から解放された新生活を始めることになる。
さて、明日から何をしようか。
わざわざ部屋を用意したことからも分かるだろうが、配信活動にも興味がある。
割と自己肯定感が高めな俺としては、自分の容姿や声、トークや頭の回転には多少の自信がある。
収入を第一の目的にするつもりは無いし、気楽に配信するってのも悪く無いだろう。
──そんなことをぼんやり考えながら、ふかふかの広すぎるベッドで眠りについた。