表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

梟に憧れた蛇

作者: C-HAWK

或る所に、一匹の蛇がいました。


蛇には、いつもオリーブの枝で訪れる者の相談に乗る梟が、輝いて見えました。




或る日、相談者の列に蛇も加わりました。


「如何したら、貴方のように賢くなれますか?」

梟を見上げて、蛇は訊きました。


「お前は馬鹿だから、験するが良い」

梟は答えました。


「手も足もありません……」

蛇はそう言うと項垂れてしまいました。


「お前に無くても別の者には有ろう、もっと頭を使え」

梟は蛇を一喝しました。

蛇は頷くと、大学へ向かいました。




大学には様々な学者が集まっていました。


蛇は、自信満々に自身を万能と豪語する貪欲な学者を見つけました。


「全ての民を癒す“奇跡の薬”を作ると、上申せよ」

蛇は、貪欲な学者を唆しました。


「そんなことが出来れば、カネも、名声も、地位も手に入るだろう……しかし、そんな薬をどうやって作るんだ?治す病が無ければ、薬は作れない」

学者が蛇に尋ねました。


「無ければ、創ればいい。お前の手で、人々を逃げ場のない絶望の淵に追いやる病を創れ。お前には出来るんだろ?お前が作った病気なら、お前が真っ先に開発を始められる」

そう言うと、蛇は王宮へ向かいました。




玉座には、頭を抱えて苦しむ王様が居ました。


「王冠の重さに耐えられないか?」

蛇は王様に問い掛けました。


「知ったような口を利くな」

王様が答えました。


「民に支えて貰えば良かろう」

蛇は提案をしました。


「それはいいな……しかし、民と余の間にどれだけ距離があるか、お前には想像もつくまい」

王様は、蛇の提案に惹かれつつも、耳を貸しませんでした。


蛇は、玉座から離れて息を潜め、学者が来るのを待ちました。




やがて、学者が、計画を持って王宮に来ました。


「民のため、医薬技術の更なる発展のため、まだ見ぬ脅威をも克服する奇跡の薬を作らせてください。」

学者は大きな声で言いました。


しかし、王様は首を縦に振りません。


「王様が民を救えば、民は王様を慕い、王様の悩みも解消するでしょう。」

学者はさらに言いました。


王様は民を救えば、民に王冠を支えて貰えると思い、支援することにしました。



翌年、計画通り“陸に居ながら溺れ死ぬ病”を創り出すことができました。



しかし、薬の開発は難航しました。



不運にも、病が漏れ出て、救うはずの民が、掛かるはずの無い病に苦しみました。

夥しい数の死が訪れ、墓標の無いお墓ばかりが増えました。


民は、家に籠り、嵐の過ぎ去るのを神に祈るように、災厄が過ぎ去るのを待ちました。


学者は、絶望し、大学を追われました。


王様は、あまりに重い王冠に耐えられず、王宮を去りました。




蛇は、梟の留まるオリーブを訪れました。


「験を終え、何を学んだ?」

梟は蛇に訊きました。


「身の丈を」

蛇はそう答えて、薄笑いを浮かべ、藪に消えていきました。


最後までお読みいただきありがとうございます。

小説も書いていますので、もし宜しければそちらもどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ