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大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍&コミックス1~2巻発売中!】   作者: K1you
消えた大魔導士編

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派手な成果

あけましておめでとうございます。

本年も更新を頑張りますので、応援よろしくお願いします。

 どーーーーん、と。


 超弩級の大音量が私達を襲う。

 表現が控えめなのは、耳栓で対策しているから。あんな暴音をそのまま聞いてしまうと、しばらく音を失ってしまう。

 ここはコキオの外に作った大規模実験場で、見学する私達は音源から大きく離れ、周囲には防音の魔法防護を展開してある。

 同時に、立っているのが精一杯なくらいの衝撃波が駆け抜けていった。


「「「…………(パクパク)」」」


 それでも、見学していた王族達は言葉を失ってしまったらしい。何か言おうとしているのに考えがまとまらないのか、口だけ何とか開閉させている。

 そのくらいの迫力があった。

 前世知識のある私も、初期の時点では身体の芯まで震わせる衝撃に驚嘆を覚えたくらいだった。射出実験に慣れた私達はともかく、初見の見学者達が呆気にとられるのも無理はない。轟音が去った後には、空を裂くように飛行機雲が伸びていた。


 何が起きたのかを具体的に説明すると、四基のブースターを備えた特殊飛行列車が轟音を響かせながら射出され、遥か彼方へすっ飛んでいった。


「な、なんだ!? なんだ、今のは⁉ 説明してくれ、伯爵」

「大陸間航行を見据えた新型飛行列車だと伝えていた筈ですが? 高速での移動を可能にしたあれを、私達は弾丸列車と呼んでいます」

「弾丸……その意味の通り、遥か遠方へ攻撃を加えたように見えたのは私だけか?」


 その印象はあまり間違っていない。飛ばしたのが飛行列車ではなく爆薬を搭載した弾頭だったなら、まんま大陸間弾道ミサイルとなる。着弾位置の設定がまだまだだから、兵器としての性能は低いけど。


「キャシーが開発していた火属性タービンエンジンを発展させたもので、瞬間的には秒速十キロを超える速度で航行できます。斜め上方へ打ち上げたのは航行距離を稼ぐためで、目標の近くで落下を始めた後は通常の飛行列車と同様に、反重力と闇属性の制御で操縦可能です。そのまま地面へ叩きつけられる心配はありません」

「……地面へ激突する以前に、あれは人が乗っていられる勢いなのか?」

「そこは問題ありません。あの飛行列車は特別仕様で、全体をオリハルコンで覆っています。たとえあのままの勢いで墜落したとしても、遮断効果で事故の衝撃は内部へ伝わりません」

「ここもオリハルコンか……」


 内部に設置してある計測装置でも、発射の重圧や落下の浮遊感が伝わっている様子はなかった。

 実際に乗ってみる勇気はまだないけれど。


 オリハルコンを便利に使っている事実が不満そうな殿下は無視しておく。オリハルコンの衝撃遮断効果がなければ、前世のように重量の制限と車体強度の底上げを考えなくてはいけなかった。強度の問題はともかく、飛行列車の居住性まで犠牲にしたくない。

 空間拡張魔法を開発して数年、長時間座っているだけの移動にはもう耐えられそうになかった。

 領地の開発に関しては自由にしていいと、保証してくれたのは殿下だった訳だし。


 ここからの説明は、製作者であるキャシーと代わる。


「燃料としているのはダンジョン鉱石フロギストンと火属性魔力をたっぷり充填させた魔漿液です。同じく大量の火属性魔力を蓄えたフロギストンは一定以上の温度で気化する性質がありますので、打ち上がった後、更に加速して高度を上げます。上昇の勢いで得た風属性魔力は、通常のコンちゃんと同様に推進力として降下後に利用しています」


 つまり、燃料の性質上自動で追加の推進力が得られる。別のブースターを用意する必要もなく、弾道飛行を実現できた。


「本日発射した車体の運転はぱぺっ君仕様に改造してありますので、降下後通常運航で帰還する予定です。この開発のおかげで、弾丸列車の試験がはかどりました」

「そうか、そうか。やはり、私の孫は凄いのだな!」


 記録係に扮装中の陛下が我が事のように笑っていた。この運用方法で尊敬するキャシーお姉様の力になれたと、本人も嬉しそうだった訳だけど。


「でも実際、フェリリナちゃんの発明はこれからいろいろなところで活用されると思います。人が立ち入れない場所、危険を伴う作業なんて、いくらでもありますから。以前にレティ様も、射手の安全がまるで保障されていない魔法籠手を作った事もありましたし」

「あったね、そんな事……」

「そうした活動は、技術の発展にとても寄与します。今回も、本来なら確認しえない列車内部を観察しながら調整を加えられました。魔王種事件の活躍は勿論ですけれど、彼女の発明は今後の貢献にこそ価値があるものだと思っています」


 最初の有人飛行も、ぱぺっ君越しに試乗訓練を積んでからの挑戦になると思う。どんなシミュレーターよりも実践に近い経験が得られる。この利点は大きかった。


「現状、二○○トン程度の重量限界を想定しています。重量の増加に伴って必要な燃料も増えますから、無制限といかないのが残念なところですね。反重力による補助も行なっているのですが、ここまでの推進力となると補助程度にしかなりませんでした。材質は主にアルミニウムとオリハルコンの合金を用いています。軽量化や強度だけを考えるなら総オリハルコン製でもよかったのですが、加工性を重視して合金としました。アルミニウム合金でも『永続』『不壊』特性は働いていますが、形状変更が容易という利点があります。消費魔力が抑えられるも特徴ですね。車体の大きな変更点は、射出時に大きな空気抵抗となる車輪を収納できるよう改良したところで、燃料の消費後に自動で展開されるよう調整してあります。車輪がなくとも反重力魔法の発動には影響しませんから、事故を起こすような危険は考えられません。同様に闇属性魔法も車体下部の影で働きますから、反重力魔法が停止しても大丈夫なよう二重の安全対策を行っております。それでも万が一地面へ激突した場合も、車内の無事が保証されているのはレティ様が先ほど説明したとおりです。ただしその場合、落下地点への衝撃は免れませんから、都市部や町村へ直接の降下は避けた方が賢明だと思います。射出先の調整は、角度、方向、推進力などを細かく設定して実用までに精度を高める予定です」

「…………」


 王族を前にした緊張と、やっとお披露目できた興奮で一気に話し終えたキャシーに、アドラクシア殿下は圧倒され気味だった。

 それでも、陛下を含めた記録係はペンを止めていない。


「うーむ……。おおよそは何とか理解できたが、あれだけの飛来物が確認された場合、何かの攻撃かと射出先で混乱が起きないか?」

「う゛」

「そこは大きな懸念点です。先ほど殿下が想像された通り、簡単に兵器へ転用できてしまう技術でもありますから」


 殿下が憂慮する前に、私も指摘した点でもあったので、キャシーは言葉を詰まらせてしまう。仕方がないので私が先を引き継ぐ。


「まず前提として、事前通告なしに他国へ射出するのは避けるべきでしょう。たとえ攻撃の意思はなくとも、いつでも攻撃できると示したようで印象が良くありません」

「そうだな。しかし、先ほどの発射は大丈夫なのか?」

「あれは衝撃こそ大きなものでしたが、仰角を高めに設定してありますのでそれほど遠くへは飛んでいません。試験段階の弾丸列車を大勢の目に触れさせるつもりもありませんから、大陸から大きく離れた海上へ降下する予定です」


 自由落下後に一旦停止し、今後のために着弾地点を正確に割り出してから帰還する。当然、輸送船の航路からも大きく離してある。

 もしも想定外の船影が上空から確認された場合は、高高度で停止してしばらく様子を見る。今のところ、そういった異常が発見された報告はなかった。


「なるほど、その配慮はありがたい」

「そして、大陸間の移動手段として採用する前に相手先の国で同様の試験を公開して、了解を得るべきでしょう。どのみち向こう側にも発射台を造らなければ、片道だけの移動手段にしかなりませんから」

「それなりの物量をこれまでよりずっと短期間で輸送可能となり、設備の建設は王国が負担するとなれば、導入を検討する国も多いだろう」


 無暗に技術を漏洩させるつもりはないから、建設費の負担は免れない。当然、作業員も王国から送る事になる。


「それと、決して攻撃には使わないと厳密に協定へ盛り込むべきです。王国が信用を得るのは勿論ですが、あれを見て兵器転用しようと模倣する国は必ず現れると思います」

「うむ、そのあたりは外交の仕事だな。東西の大陸に、かつての帝国のような国交に不安のある国は現状で思い当たらないが、今後交易が増えるとなれば不穏な目論見を抱く国も出るだろう。計画の段階で更なる調査を命じておく」

「お願いします」


 実用化のためには、国が率先して動かなければならない。殿下は面倒そうであったけれど、過度な不満は見せなかった。輸送力の向上は国としてもメリットが大きい。


 最初はアイテムボックス魔法と転移鏡による大量輸送を考えたのだけれど、空間に作用する魔法同士が干渉しあって膨大な魔力が必要となった。キミア巨樹のある南ノースマークでなら賄えるけれど、輸送を一領地に集積させるのは現実的じゃない。王都やコールシュミットの港も寂れて南ノースマークばかりに富が集中してしまう。

 その点、弾丸列車は輸送量に制限があるから従来の大型船舶の役割を奪わない。


「そう言えば、広域防護手段についても紹介があるのだったか? それは弾丸列車の射出手段を他国が兵器として運用した場合に備えてのものか?」

「うーん、それもありますが、竜や海獣の襲来、皇国で不穏な動きを見せた南大陸の国など、複数の脅威を想定したものになりますね」


 弾丸列車に限らず、これまで私が確立してきた技術が兵器開発に利用された場合、大幅に殺傷能力を高めてしまうって自覚はあった。

 強化魔法練習着の時点で、万能型兵士の増員によって戦略を塗り替えている。帝国との戦争でライリーナ様達が証明した通り、犠牲者を減らして王国側を勝利へ導いた。極端な話、それは一方的に帝国側が蹂躙された結果でもある。

 実際私も、帝国や教国に対して飛行列車を生かして有利に運ぶよう立ち回った。余裕があったから血が流れないよう調整できただけで、空中から魔法や爆薬を投下すればいつでも大勢を殺害できた。

 鉱化スライム片で率いた竜群は皇国を恐怖のどん底へ陥れたし、ラマン人工ダンジョンで今でも産出されている魔法金属の多くは、大型魔導兵器の生産に使われている。


 そんなつもりじゃなかった、だなんて言い訳はしない。

 間違いなく私は、大量殺戮が可能な兵器の開発に手を貸している。


 それでも、発展の足を止めようとは思えなかった。鉱化スライム片の更なる活用、新しい人工ダンジョンの設計、聖地デルヌーベンの謎、私の好奇心が惹かれる対象は多くある。

 だからと言って、兵器増強による戦争被害の拡大を軽視するつもりもないので、防護方法を考えてみた。少なくとも、一般人が戦火に巻き込まれる事態は避けたい。幸い、魔導変換器のおかげで僻地の村落であっても魔力は不足していない。だから、持ち運びが可能なら設置には困らなかった。


 矛が強力になったなら、盾も強化すればいい。

 運用が容易になれば、当然軍でも採用することになる。兵器と防護の増強がいたちごっこになる懸念はあるけれど、当面は王国が技術的にリードしているから防護性能を優先して高められる。最悪、オリハルコンで覆ってしまえば決して突破できない。

 前世では核って最凶兵器が大規模な戦争を抑制したのとは逆に、オリハルコンって絶対防御が戦争を無意味化してくれればいいのに……とは思っている。


 とは言え、今回は領地外での運用を想定して新型の魔法障壁を開発した。オリハルコンを触媒に不壊特性の魔法障壁が展開できないものかと検討しているものの、残念ながら成功には至っていない。


 話に上ったついでに、次の見学場所は障壁の紹介が丁度いいかな。コキオ全体に張り巡らせているものの、起動させた例は数回しかないから試験運用にも都合がよかった。


 もっとも、実験段階の弾丸列車発射場は防護範囲外なので、移動するのが先なのだけど。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
なろう系でよく語られる 「かつて存在した現代とは比べ物にならないほと発展した古代文明」って こうやって作られたんだろうねぇ。
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