表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大魔導士と呼ばれた侯爵令嬢 世界が汚いので掃除していただけなんですけど… 【書籍2巻&コミックス1巻発売中!】   作者: K1you
1年生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/692

盗賊掃討

すみません。

1人、冒険者の名前を変更しました。


グリー → グラー


もともと後者のつもりでしたが、入力ミスしてましたので修正しました。

 盗賊の襲撃がまたあるかどうかは分からないけれど、可能性がある以上、警戒はしないといけない。

 私達は宿を引き払って、車内で寝泊まりする事になった。空間魔法を使う訳にはいかなくて多少手狭だけれど、貴族用車両なのでそこそこのスペースはあるからね。私の防御付与なしでも防弾対策はしてあるので、いざという場合にはそのまま脱出する予定。


 キャシー達の護衛騎士とフラン達侍女、そしてウォズ含む商会関係者も不寝番を買って出てくれた。

 村からも協力を申し出てくれた人はいたのだけれど、村長の失態で信用をなくしてる為、私達に近付く許可は下りなかった。代わりに村の外の見張りを強化してもらった。そもそもお貴族様の傍に居続けられる胆力はないだろうから、丁度いいよね。


 烏木の牙帰還は予定通りなら2日後。それまで持ち堪えればいい。

 こちらの銃器は、短機関銃5丁、ライフル銃2丁。それと、防衛、狩猟用として村にあった短機関銃1丁、ライフル銃2丁、散弾銃2丁。過去2回と同規模の襲撃なら足りると思う。

 でも、向こうが私達の滞在を知っているなら増員はあるだろうね。堂々車列を率いて来たし。


 オーレリアは想定していたけれど、キャシーもマーシャも落ち着いている。突然盗賊に備えなければならなかった事への戸惑いはあったけれど、襲撃に対する不安は見えない。現実味を実感できてないだけかもしれないけども。


 彼女達を傷付けさせるつもりは無いから、私もこっそり動いた。

 聞いたところ、最初の襲撃は無警戒だった村へバイクで侵入して、駆け抜けながら銃弾をばら撒いたらしい。住人は混乱しながら逃げ惑い、戦意を喪失して言われるままにお金を差し出したと言う。

 2度目は崖の両側からバイクで乗り付けて逃げ場を塞いだ。村を封鎖してから端側の民家へ機関銃を撃ち散らかした、と。

 この情報から、連中の移動手段が明らかになったので、車止めを用意する事にした。

 ただし、脆くて、車やバイクが突っ込めば、容易く壊れそうに見えるのがポイント。スチール製の強固な奴じゃなくて、廃タイヤ材の頼りなさそうなのを見繕ったよ。

 通行する車は普通にいるから、簡単に設置撤去できないとね。村に入るにはスピードを落とすのが原則だから、一般の車からすると、ちょっとした通行規制にしか見えない。

 でも、私がしっかりモヤモヤさんを込めたから、何も考えずに突撃したら、ただでは済まないだろうね。

 温泉を我慢しなきゃいけなくなったんだから、これくらい嫌がらせは許される筈。




 準備はしたけど、襲撃なんて無いに越したことはない。そんな希望的観測は、日が暮れてすぐに鳴り響いた騒音に打ち砕かれた。

 轟音の源は村の南側。

 崖上に沿った道路上に30を超える点灯が見える。忍ぶつもりは無いみたいで、エンジン音を響かせ、大声で笑いながら、警笛をけたたましく掻き鳴らしている。

 群れて気が大きくなっているのか、承認欲求がよっぽど強いのか、あの手の連中はどうしてあんなにも騒がしいんだろうね。道理から外れた連中を受け入れてあげようなんて特異な人、いる筈ないのにね。


 側でマーシャが震えているのが分かった。あれだけの暴漢が迫っているのだから無理もない。

 友達を怖がらせている奴等に腹が立つ。


「レティの車止めを越えたら、殲滅に入る、でしたよね」


 オーレリアの視線なんて氷点下だよ。

 ヴァンデル王国の剣、カロネイアの一員として、彼女は打って出ると決まってる。立場的に指揮を預かった私が許可すれば、あっという間にすっ飛んで行きそうです。

 強化魔法を少しずつ習得して、益々手が付けられなくなってきてるからね。


「オラオラ! 今日も取り立てに来てやったぞ田舎者共!!」

「金だけじゃ物足りねえ、女だ、女を寄越せ! 世間知らずのお嬢様とか、最高だ!」

「金に替える前に、たっぷりかわいがってやるからよ!」

「死にたくなかったら逃げろよ。轢いちまうぞ、撃っちまうぞ。俺等を楽しませろ!!」


 盗賊達は威勢よく村へと突撃して―――車止めに激突して、盛大に転倒した。


 私の付与で固めた車止めは、どんな速度でぶつかったところで、微動だにしないからね。

 交通法なんて順守するつもりは無かったみたいだから、何人かは宙を舞って崖下へ落ちたし、もう何人かは路面を滑って赤い塊になったよ。

 これで10人以上が脱落。


「なんだこりゃあ!?」


 異変に気付いて慌ててブレーキをかけたみたいだけど、半分以上は転倒を免れなかった。後続の車体に轢かれた人もいたよ。

 スピードの出し過ぎって怖いね。同情しないけど。


 うまくいけば少しくらいは数が減らせるかもと作った車止めだったけど、思ったより考え無しに飛び込んできたたから、効果抜群過ぎたね。仕掛けた私が吃驚だよ。

 げぇとか、うわぁとか、味方側もドン引いてます。


「ヒッ―――」


 平静を保とうとしてたキャシーからも、短い悲鳴が漏れた。

 ごめんね。

 ちょっと惨劇が想像以上で、女の子には刺激が強過ぎたよね。

 オーレリアは少し溜飲下がって微笑んでるけど、あの子は武闘派女子枠だからね。


 私?

 前世のままなら、とても見ていられなかっただろうけど、非常時に感情を切り離せるよう、訓練してる。状況を客観視して、情動を立ち入らせない。

 今回は敵側の被害のみだけど、同胞に犠牲を強いる時もあるかもしれない。そんな時、感情が邪魔しないよう、心が壊れないよう、スイッチの切り替えを身に着けた。


 ―――ぱんっ ぱんっ ぱんっ


 想定より遥かに気勢を削いで、討伐組に攻撃指示を出そうとした時、乾いた音が3回響いた。


 橋の向こうで音の数だけ男が倒れる。


「そ、狙撃だ!! 隠れろっ!」


 状況把握は盗賊達の方が早かった。

 道の向こうの岩陰に、車止めに激突して引っ掛かったバイクの陰に、その身を隠す。しかし、その場所決めの判断が、彼らの運命を分ける。


「―――残念っスけど、ここはもう占有済みっス」


 ゆらり、と。

 丸い身体が岩陰から染み出てくる。


 え!?

 グラーさん? いつからそこに居たの?

 俯瞰して戦況を捉えていた筈なのに、まるで気付かなかったよ?


 離れていたから私の視界に辛うじて入っただけで、間近にいる盗賊達は背後から忍び寄る存在に気付いてもいない。

 逃げ込んだ筈の先で、襲われたと気付く前に首を斬られてゆく。


 グラーさんを視認して、漸くさっきの狙撃音の主に思い至った。どこにいるのか全く分からないけど、ヴァイオレットさんだ。

 今も銃声がする度に1人、また1人と倒れていってる。


「申し訳ねーです、スカーレット様。帰ってきたら、賊共が向かってるのが見えたんで、自分達の判断で介入させてもらいました」

「!!」


 クラリックさん?

 突然、後ろから声を掛けられて驚いたよ。

 と言うか、貴方達、ニュースナカの南側、現在盗賊達と交戦中の向こうの山へ行ったよね? なんで後ろに回り込んでるの?


「すんません。戻った事を伝える為に、俺だけ先行しました」

「え? でも、何処から?」

「連中が邪魔で道は通れなかったんで、崖を越えてきました」


 崖? 幅1キロくらいあるけど?

 一旦降りたの?

 川は泳いで渡ったの?


「クラリックさんは強化魔法、特に脚力や跳躍力の強化が得意なんです」


 オーレリアの補足が上手く頭に染み込んでくれない。


 まさか、飛び越えたの?

 それ、跳躍と言うより、飛行って領域じゃないの? 手と足の間に皮膜とかあったりしない?


 とりあえず、烏木の牙の皆さんが、常識では測れないって事は分かったよ。

 これが高ランク冒険者の水準なの?


 私が驚いてる間に、戦闘はほとんど終わってた。


 姿を晒せば狙撃されて、身を隠す先には正確に急所を切り裂くグラーさん。残った盗賊に取れる手段は2つしかなかった。


 1つは逃げる事。

 ヴァイオレットさんでも間を置かずに狙撃は行えない。犠牲は出るかもしれないけれど、何人かは抜けられる。それに彼等はまだバイクに跨っているから、ライフルの射程さえ出れば追いつけない。


 その先にニュードさんが控えてなければ、だけどね。


 狙撃を免れたのは3人。全開でアクセルを回してたけど、バイクごと崖下へ投げ捨てられました。走るバイクを掴む腕力ってどんなだろうね。


 もう1つの手段は橋を渡って村に入る事。

 バイクを乗り捨てたなら、車止めは障害にならない。村人を人質にでも取れば、交渉できるとでも思ったのかも。


 私が迎撃を指示するより先に、グリットさんの刃が追い付いたけどね。

 一縷の望みをかけて突撃してきた4人は、たった一振りでまとめて上下に分割された。


 奇襲があんまり上手く決まったから、ヴァイオレットさんの狙撃を除けば、一度の銃声もなかったよ。彼等がいてくれたなら、車止めの小細工も必要なかったかもね。

 本当に凄過ぎて言葉もない。

 ただの面白い人達かも、とか考えててごめんね。

お読みいただきありがとうございます。

感想、評価を頂けると、励みになります。宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
車止めのアイディアは良かったね。 一見ボロい車止めが最高硬度のオブジェ、作っちゃった車止めは置いて帰るの?回収するの?
[良い点] 超自然的な力が関係しているにもかかわらず、このレベルの戦略と戦術の表示を見るのは素晴らしい. 欺瞞は戦いの鍵です。
[一言] ようやく50話まで到達。ここまで読んできて文体が「私、能力は平均値でって言ったよね! 」とかのFUNA先生っぽいな…となんとなく思いました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ