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初めての誕生日

 1歳になりました。

 高速ハイハイで部屋中をお掃除する毎日です。

 壁や柱に掴まりながら立ち上がって、少し高いところも払えるようになったよ。払うと簡単に消えてくれる。楽ちんだね。

 でも何処からともなくすぐに湧き出してきてしまうから、私はいつも大忙し。メイドさん達をハラハラさせるくらい、とっても元気です。


 誕生日当日は、家族、使用人みんなで祝ってくれた。

 まだ離乳食で、少しずつ固形物を足し始めた状況なので、残念ながらご馳走とかはない。その代わり果物を柔らかくミルクで煮たデザートが付いた。

 甘味美味しい。いっぱい食べられないのが残念。少しずつ、複数回に分けないと身体が受け付けてくれないんだよね。


「おめでとう。日に日にお母さんに似て美人に成長しているレティには新しいドレスを用意したぞ」


 お父さん、忙しくて顔を見せる機会は少ないけれど、実は私にデレデレです。

 でも、幼児に特注でそんなヒラヒラフリルのドレスを作っても、すぐに着られなくなるんじゃないかな?

 着て行くところもないよ?

 お洒落は嫌いじゃないけど、前世庶民の私の感覚からすると、勿体無いって思ってしまう。

 まあ、このお家、吃驚するくらいお金持ちみたいだから、大した出費には当たらないのかもしれないのかな。

 折角だから内緒で着て、お父さんだけのサプライズを演出してあげよう。うん、私親孝行。


「私は、レティにお友達を用意したわ。仲良くしてね」


 お母さんのプレゼントは、今の私より大きな熊っぽいぬいぐるみ。私より大きい。埋まりそう。何故か額の辺りに角が生えている。一角熊?

 きっとベッドに置くと思うから、とりあえず汚れを払っておく。


「……レティは綺麗なドレスより、ぬいぐるみの方が好きなのか……?」


 すぐにプレゼントに近付いたので、気に入ったと思われたらしい。

 今着る予定のないドレスの汚れは後に回しただけだからね。落ち込まないで、お父さん。

 幼児にドレスは微妙だとは思うけども。


 ところで父の言う通り、私のお母さんはとっても美人さん。

 髪は光に当たると輝くサラッサラのブロンドで、眼は宝石みたいな緑色。色白で鼻は高くて、少し垂れ目気味の瞳が可愛らしい。

 おまけに、本当に私を生んだのってくらいに抜群のスタイルをしてる。

 前世のアイドル、俳優含めても、こんなに綺麗な人は覚えがない。私の将来、とっても明るい。


 で、父はと言うと、ぽっちゃりさん。

 丁度貰った熊さんそっくりの体形をしている。身嗜みはいつも整えられているのでだらしなさは感じないし、顔の作りは悪くないのだと思う。なのにお肉がそれを覆い隠してしまっている。

 実はお腹を太鼓みたいに叩くと気持ちいい。

 茶色の短髪に青い瞳。人の善さが滲み出るような優しい顔をいつもしている。お腹太鼓も笑って許してくれるよ。


 母はこの人で良かったのかな?

 そう思わなくもないけれど、2人はとってもラブラブなんだよね。私に会いに来た筈なのに、私を放ってイチャイチャしている事が割とある。


「きっと貴方の優しさはレティに伝わってるわ。レティがどれだけ可愛らしいか、大勢に伝えたいのよね」

「君はいつだって綺麗だけれど、着飾るともっとだからね。レティもおめかしした方が、強く記憶できると思ったんだ」


 今もへこんだお父さんを慰めて、2人の世界に旅立ってしまった。

 弟か妹が生まれるの、きっと早いだろうな。


 仲睦まじい2人は放っておいて、メイドさん達からもプレゼントを貰う。


「お嬢様、これからも宜しくお願いしますね」


 使用人さん達を代表して渡してくれたのは、メイド長の娘で、最近見習いに入った7~8歳くらいの女の子。多分、お友達兼、将来の専属候補なんだろうね。

 癖のある赤毛で、いつもおさげが2つ揺れている。釣り目気味で活発そうな印象なのだけど、私に付く時はメイド長も一緒になるので、彼女の視線を気にしながら大人しくしている。厳しく躾けられているみたい。

 お姉さん振っていつも色々教えてくれる。

 でも、転生者(わたし)だから大体理解できているけれど、普通の赤ちゃんは付いていけないよ?


 貰ったのは、小さな箒―――を模したおもちゃ。

 柄の部分は綺麗に飾り彫りしてあって、穂はサラサラ、柔らかい獣毛で出来ている。今の私でも持てるようにと軽い木を用いて、柄は短め。まだ小さな掌にすっぽり収まる太さに調整されている。

 実用性は無くて筆に近いものだけど、間違いなく私の箒だった。


 ―――嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい……!


 実は、モヤモヤさんを払うのに使えるんじゃないかって、見かける度に興味を示していたんだよね。

 それを覚えていてくれて、でもお嬢様に箒そのものは渡せないからと、特別に作ってくれたらしい。


「……ねーちゃ、あーあと!」


 胸が一杯で堪らなく嬉しくて、その感謝をできる限りの言葉にしたら、場の空気が凍った。


「―――」

「―――」

「―――」

「―――レ、レティ……?」


 飛んで行ってた両親の意識も帰ってきた。

 心持ちお父さんの声は震えてる。


 ごめん、やっちゃったね。


 一番喜んだプレゼントが使用人からっていうのは良くない。うん、分かる。

 しかも、ありがとうって口にしたの、初めてだった。きちんと文章を言葉にしたのも初めてだったかも。


 でもすっごい嬉しかったんだもん。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] いつもの如く無駄話を少々w 実は私小学校低学年の頃腎炎患いまして当時の医者から水分を多めにとるようにと言われまして、当時、親が買って来てくれた西瓜を赤い部分が見えなくなるくらいまで食ってたこ…
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